清水理史の「イニシャルB」

家庭・SOHO内ネットワークの話題を1年間のランキングで振り返る

「イニシャルB」で2017年に読まれた記事について清水理史さんに聞いてみた

 弊誌人気連載「清水理史のイニシャルB」で2017年に掲載した記事について、2017年1月1日から12月21日までのアクセス数(ページビュー)に基づいた1~10位までのランキングをお届けします。執筆当時の狙いや、それぞれの結果、1年を通した感想などについて、清水理史さんに記して頂きました。

 この記事を見れば、この1年間の家庭やSOHOのネットワークにおける無線LANルーターやNASのトレンド、セキュリティ関連といった話題すべてを振り返ることができるでしょう。(編集部)

  • 1

    余る5千円で買えるコレ(Archer C1200)を実家に置くと、親は喜ぶし、外のWi-Fiから安全にネット接続(VPN)できるから一石二鳥な件

     安いVPNルーターということで、製品としても特徴があったのですが、VPNの用途を見直すことで切り口を変えたコラムです。タイトルなど、ある意味「狙った」部分もありますが、個人的なメッセージを詰め込んだ回になっています。スマートフォン向けの無料VPNサービスで、ちょうどプライバシーの問題などが話題になりつつあり、もともと自宅VPN使えばいいんなじゃいかと思っていたのですが、そもそも自宅にブロードバンド回線がないというケースもあるので、じゃあ実家で、という発想でした。これが1位なのは納得です。

  • 2

    ネットが遅い!を解決、実質2倍以上に速くなる@nifty「v6プラス」を試してみた

     これは、“インターネット接続が遅い”という読者が抱えている不満と、取り上げた内容がうまくマッチしたコラムになりました。内容的には、決して新しい情報ではなく、技術的に深く掘り下げたものでもないので、個人的には、さほど力を入れた回ではなかったのですが、結果的に多くの人に読んでもらえたのは幸いです。きちんとデメリットにも触れたのがよかったのかもしれません。

  • 3

    「7年前のNAS」をQNAPに替えたら、速度と容量が数倍に、管理も楽になった件

     ほぼ編集部の功績です。企画自体は編集部の側が練ったもので、僕はそのストーリーに若干、肉付けした程度です。そもそも、僕はこの企画には否定的で、もっとシンプルな話にしたいと、当初、「いやだ」と駄々を捏ねたのですが、大人の事情で書くことになりました。筆者がやりたい記事というのは、とかくピンポイントでマニアックなものになりがちなので、そうではなく、みんなの役に立つ記事にすべきであることを気付かされたコラムです。

  • 4

    FTPの50倍速! 感動モノの高速さでWAN間ファイル転送できる「Presto File Server」

     書き手が感動したことを素直に文字にすればいいというのは、どんな分野でも共通なのでしょう。「すげえな」と思ったので、素直にすごいと書いたらウケました。機能的にも、用途的にも、どちらかというと地味ではあるのですが、ファイル転送という身近な操作が劇的に速くなるという点に、多くの人が興味を持ってくれたようです。

  • 5

    ウチのWi-Fiは安全? 無線LANの通信が暗号化されているかどうかを確認する方法

     毎週連載を続けていると、新製品や新サービスなど、特に目新しいことがなく、いわゆる「ネタ」に困る状況というのが年に何度かあるのですが、そんなときに苦し紛れに放った一発が、たまたま風の流れに乗って的に命中したという感じです。ネタとしては、広く読まれる一般的な話をやさしく解説したもので、特に目新しいものではないのですが、ちょうど無線LANのセキュリティに対して、各方面から警告が発せられていたタイミングで、それにうまく乗っかったという感じです。

  • 6

    Atermがアンテナ増+チャンネル自動選択で無線を強化、NECのミドルレンジルーター「Aterm WG1900HP」

     売れ筋の製品を良いタイミングで記事にできたこと。それに尽きると言えそうです。書き手からすると、高価な製品とか、特徴的な機能を備えた尖った製品の方が書きやすく、こうしたミドルレンジの製品というのは、どちらかというと書きにくいのですが、普段はスルーする「ストリーム」などの用語も、詳しく説明しながらレビューしたのがよかったのかもしれません。

  • 7

    Webカメラが乗っ取られる! ネット機器の脆弱性、検証して専門家に聞いてみた

     これは、長期にわたって検証と取材をして、丁寧に仕上げたコラムです。個人的には、これが1位であって欲しかった回です。年に何回か「どうしても書きたい」という話があるのですが、これはまさにそれです。内容的に、参考として掲載したブログ記事の後追いになりそうだったので、一時、お蔵入りになりそうだったのですが、トレンドマイクロ社が取材を受けてくれたことで、深みのある記事になりました。しかし、なんでこれが1位じゃないかね……。

  • 8

    QNAPやSyonlogyと真っ向勝負できるNAS アイ・オー・データ機器「HDL2-AA0/E」

     これも、まあ、言うなれば切り口が成功しているコラムかと思います。NASというと、QNAPやSynologyの海外メーカーに目が向きがちですが、そんな中、「国産メーカーってどうなってるのさ?」と思っていた方々の疑問にマッチしたのではないかと思います。記事内容は、奇をてらっている部分はありませんが、海外メーカーとの差などを丁寧にやったのがよかったのかもしれません。

  • 9

    お宅に悪用されそうな不具合や設定ミスはありませんか? 無料の「Nessus Home」で自宅デバイスの脆弱性をスキャン

     「やってみたらおもしろかった」という結果オーライの回です。だいたい、ソフトやサービスものの記事を書くときは、ハードウェアの入手に手間取ったり、検証に時間が取れなかったときで、ネタ不足のときなのですが、これもそんな回の1つでした。ただ、使ってみたら、意外に便利で、実際にどういう機器に脆弱性があるのかも判明したため、個人的にもとても勉強になった回でした。

  • 10

    VLANやLAGも可能な管理機能付きスイッチが3000円以下で TP-Linkイージースマートスイッチ「TL-SG105E」

     値段が安い機器は、注目度も集まりやすいのですが、まさかスイッチが10位になるとは思いませんでいた。TP-Linkが日本市場に本格参入して間もなかった時期で、無線LANルーターなどのレビューは、そこかしこにあってもスイッチのレビューがあまりなかったのがランクインの要因かと思われます。選んだ商品とタイミングがたまたまよかったという話かもしれません。

2017年のあとがき

 これはウケるだろう、なんて考えていても、実際に驚くほどビューが伸びない記事というのは、星の数ほどあります。

 というか、10GbEのNICが発売されたというニュース記事が、媒体内で1位になるほど読まれるのに、皆さん、どうして僕が同じような製品をレビューしても読んでくれないのですか? 意味が分かりません。値段が高めの無線LANルーターとかも同じで、ニュースのアクセス数が多いからと、買ってレビューしたはいいものの、結果はイマイチということがよくあり、とてもヘコみます。

 え? 文章が長いですか? 分かってます。編集長からも、そう言われました。Facebookの「いいね」よりも断然「Pocket」への登録が多いのですが、皆さん、その場ですぐ読むのが面倒なんですよね。分かります。僕も書いていて、イヤになるほど長くなっていることに毎回気付いてますから。でも、そこが本コラムの生命線だとも思ってます。

 今回のランキングは、意外に思う記事がランクインしていることに驚きもありますが、より広い読者を想定しないといけないんだなぁ、と実感させられました。長年コラムをやっていると、どうしても、個人的な興味の掘り下げに走ってしまいがちで、独りよがりの文章になっていることがあります、それも「味」かもしれませんが、これからは、もう少し広い読者層を考えて「コラム」を執筆していきたいと思っています。