清水理史の「イニシャルB」

警察への捜査協力で1カ月分の監視カメラ映像を提出!

ついでに7999円で500万画素&夜間フルカラーにグレードアップ

 数年前、宅配弁当を盗み食いされたことから、わが家の玄関先へ監視カメラの設置に踏み切った。以来、NASへの録画を休むことなく続けてきたが、この映像が初めて第三者の役に立つときが来た。

 そして、さらなる画質アップを目指し、夜間でもフルカラーで撮影できる500万画素のネットワークカメラへとアップグレードすることになった。

筆者宅の玄関先を守り続けてきた初代のネットワークカメラ(上)と、今回設置した新カメラ(下)

NASに撮り貯めた1カ月分の映像提出で捜査に協力

 数カ月前のある日、スーツ姿のサラリーマン風の人から、玄関先で警察手帳を見せられたときは、正直、驚いた。

 もちろん、後ろめたいことは一切ないのだが、目の前であの手帳を見せられると、思わず後ずさりしてしまうものだ。

 話を聞いてみると、地域を管轄する警察署の方で、この地域で車に傷を付ける事件が連続で発生したとのこと。そして、監視カメラがある家や店舗から、映像を集めているということだった。

 本コラムではたびたび紹介しているが、わが家は数年前に宅配弁当を契約していたことがあり、ある日、その弁当が盗み食いされ、丁寧に翌日、容器だけ玄関先に返却されていたことがあった。

 その事件以来、玄関先にWi-Fi接続のネットワークカメラを設置し、NASに映像を撮り貯めてきたのだが、その映像を貸して欲しいということだった。

 事件の詳細を詳しく教えてもらうことはできなかったのだが、すでに犯人は別の監視カメラの映像で、はっきりと確認できているそうで、わが家の映像は、その前後の足取りや行動を確認するためのものとして使いたいのだという。

 「何日分ありますか?」との問い合わせに「1カ月分は」と答えたところ、「では全部ください」とのやり取りを経て、十数GBほどのデータをUSBメモリにコピーして渡した(時間がかかるので後日受け取り)というのが、事の顛末だ。

 その後、USBメモリは返却されたものの、果たして役立ったのかどうかは分からない。

 しかしながら後日、「あやしい人物など映っているのだろうか?」と自分でも気になって過去の映像を見返してみたのだが、見てもよく分からない上に、そもそも映像の画質が悪い……。

 もともと、自宅の玄関先だけ録画できればいいと思って設置したため、カメラは古く30万画素と簡易的なタイプで、画質はVGAと貧弱。赤外線で夜間も撮影はできるので、何となく人物を特定することはできるものの、はっきりと顔まで区別できるほどの映像は残っていなかった。

 あんなにぼやけた画像を1カ月分も彼は何日もかけて1つずつチェックしたのだろうか?

 そう思うと、かえって申し訳ない気分になってしまった。

画質の悪さにカメラの買い換えを決意

 というわけで、わが家の玄関先を守り続けてきたカメラを買い換えることにした。

 購入したのは、「H.VIEW」というメーカーの「HV-WF500G2V5」という製品で、Amazon.co.jpでの購入価格は税込7999円。

H.VIEWの「HV-WF500G2V5」。500万画素、夜間フルカラー撮影可能で屋外設置可能なWi-Fi対応カメラ
側面

 2.4GHz帯と5GHz帯のWi-Fiに対応した固定式(パンチルトなし)のIPカメラで、IP67の防水防塵で、屋外設置に対応した製品となる。

 購入の決め手となったのは次の3点だ。

  • 夜間フルカラー撮影対応
  • 500万画素(2592×1944ピクセル)の高画質
  • ONVIF対応でSynology製NASへの録画対応済み
正面
底面
電源ポートと有線LANポート

 圧倒的なコストパフォーマンスの高さも魅力だが、実はNASで使える監視カメラは、国内販売製品では選択肢が非常に少なく、それを探すだけで苦労する。本製品であれば、Synologyの「Surveillance Station」アプリに機種情報がプリセットされており、苦もなく接続可能となる点が最大の魅力だ。

 中国製のネットワークカメラは、数年前に脆弱性の話題が大きく取り上げられたことがあったため、手を出しにくいと考えている人も少なくないかもしれない。だが、その後、脆弱性の話が大きく取り上げられることもないし、筆者の場合はNASへの録画がメインなので、インターネットからは完全に切り離した状態で運用するため、問題ないと判断した。

本体には技適マークがないと焦ったが、技適マーク付きのシールが箱に貼られていた

 技適に関しても、Amazon.co.jpの製品情報に、技適およびPSEの認証を取得済みであることが明記されている。

 購入後に本体シールを確認したところ、FCCとCEマークしか見当たらずに少しあわてたが、梱包されている箱に本体と同じシールが貼られており、こちらに技適のマークが記載されていた。

 認定番号で検索したところ、どうやら製品としてではなく、内蔵の無線LANモジュールで取得した技適が記載されているようだ。

見よ、この圧倒的な画質

 まずは、この画質を見比べてほしい。

 分かりやすく夜間の映像を掲載するが、午後9時、該当の明かりがある中での撮影で、この違いだ。

撮影画面の比較。VGA解像度で夜間赤外線撮影の古いカメラ(左)と、2592×1944ピクセルで夜間フルカラー撮影可能なHV-WF500G2V5(左)

 古いカメラでは、赤外線撮影で白黒になるだけでなく、街頭の明かりで何とか周囲が見える程度で、周囲をほとんど区別できない。

 これに対してHV-WF500G2V5は、夜間でももちろんフルカラー、街灯が逆に明るすぎるほどで、遠くの対象物まではっきりと映る。ちなみに、この画面はSynologyのSurveillance Stationでタイル表示した状態なので、アスペクト比が強制的に変更されてしまっている。実際の映像は、もう少し幅広だ。

 画角も少し違う。本製品は110°の撮影が可能で、従来のカメラよりも広いエリアを撮影できるようになった。

 個人情報に結び付くと困るので、あまり実際の映像は掲載したくはないが、2592×1944ピクセルの解像度も圧巻で、通り過ぎる人物の顔はもちろん、上記の画面では明るくて潰れてしまっている自動販売機も、昼間の映像ではデジタル拡大することで、商品のラベルくらいなら判別可能なほどの精細さで撮影できる。

「Surveillance Station」からカメラ映像をデジタルズームした様子。昼間なら自宅向かいに設置されている自販機のラベルまで識別可能

 2592×1944ピクセルでの撮影時はフレームレートが最大15fpsとなるので、30fpsで撮影する場合は2304×1296ピクセル以下に設定する必要がある。しかし、監視カメラの場合、映像のなめらかさはあまり重要ではない。夜間のクリアさと、細部まで判断できる精細さの方が重要となるため、2592×1944ピクセルに設定して常用することをお勧めする。

 なお、動画エンコードのコーデックはH.264とH.265に対応し、ビットレートやキーフレーム間隔なども設定可能な上、メインストリームに加えて、低解像度のサブフレームも同時に出力される。

 オーディオはマイクのみ搭載でスピーカーは非搭載だ。音声のコーデックは標準ではG.711Aに設定されているが、AACでの利用も可能だ。

ビデオの設定画面。2592×1944ピクセルでの撮影時には、フレームレートが15fpsまでとなる

YouTubeのライブ配信もOK

 設定まわりもよくできているが、まずは注意点として、管理者アカウントについて触れておきたい。

 本製品には出荷時にadmin/12345の管理者IDとパスワードが設定されている。このため、初期設定では必ずこの値を変更しておく必要がある。ユーザーアカウントを複数設定できるので、adminのパスワードを複雑かつ長いものに変更し、普段の管理用には別のアカウントを登録して使うことをお勧めしたい。

スマートフォンから設定や管理が可能

 初期設定はスマートフォンで行えるが、このときだけはカメラを有線LANで接続する必要がある。ネットワークに接続した状態で「EZVision」というスマートフォンアプリを起動すると、LAN内のカメラが一覧表示され、Wi-Fi接続などの設定が可能になる。

 アプリからは、映像の監視、録画設定、録画した映像の確認などが可能だ。本体底面のネジを開けるとmicroSDカードスロットがある。ここに装着したカードに映像を録画する場合は、このアプリを使って管理することになる。

 今回は、先にも触れた通り、SynologyのSurveillance Stationで管理をしたが、カメラの一覧から選択することで、簡単に認識させることができた。

Surveillance Stationからは機種を選択するだけで設定可能

 なお、本製品は、いわゆるP2P方式と呼ばれるカメラの接続方式を採用している。中間サーバーを経由することで、アプリとカメラがインターネット経由で接続される仕様だ。

 この方式は、NAT越えが楽にできるため、環境を問わず外部アクセスができるのがメリットだ。しかしながら、先にも触れた通り、筆者は外出先からアクセスする必要がない(必要ならSynology経由でアクセスする)ため、カメラのWi-Fi設定でデフォルトゲートウェイをルーター以外のIPアドレスに設定することで、外部アクセスを禁止しておいた。

 P2P方式であっても中間サーバーの管理がしっかりとしており、カメラのアカウントが複雑であれば問題ないが、かつてP2Pで広く使用されていたモジュールの脆弱性が問題になったこともあり、筆者としては必要のない外部アクセスはなるべく無効にしておくというスタンスだ。

 機能面で注目なのは、RTMPがサポートされている点だ。これにより、カメラの映像をYouTube Liveで配信することもできる。標準では、シークレットキーの設定項目が表示されないが、「rtmp://x.rtmp.youtube.com/live2/xxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxx」のようにシークレットキーを「/」に続けて入力すれば、配信が可能となる。

RTMPをサポートしており、YouTube Liveなどへ配信可能

目立つのはメリットかデメリットか

 以上、筆者宅の監視カメラをH.VIEWのHV-WF500G2V5に置き換えた顛末を紹介した。

 管理者アカウントの設定など、いくつか注意したい点はあるものの、この解像度と夜間の鮮明さで7999円というのは破格の安さと言える。

 筆者宅での運用を開始して、まだ数日しか経っていないため、安定性や耐久性については未知の部分もあるが、機能的にも充実しており、非常に満足度の高い製品と言っていい。

 唯一の欠点は、サイズがそこそこ大きいことで、玄関先に設置するとかなり目立つ。もちろん、監視カメラという用途を考えると目立つこともメリットではあるのだが、ご近所の目が気になるところではある。

 画質が高いので、NASとの組み合わせで使わないと容量面でも厳しいと思われるが、Synologyとの相性も抜群で使いやすい。個人的には、非常に満足度の高い買い物となった。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。