第319回:NTTのNGNサービス「フレッツ 光ネクスト」を導入
地上デジタルも視聴できるフレッツ・テレビが便利



 NTT東西のNGNを用いた光ファイバ接続サービス「フレッツ光ネクスト」のエリアが拡大されている。筆者宅も10月にようやく対応エリアとなったので、早速従来のBフレッツから変更した。





 2008年3月のサービス開始以来、一部エリアから徐々に対応が進められてきたNTT東西の次世代ネットワークサービス「フレッツ 光ネクスト」が、ようやく広い範囲で使えるようになった。

 まだ対応予定となっているエリアも少なからず存在し、全域展開というわけにはいかないが、2008年度中には主要都市への本格展開が予定されており、もう少しすればエリアを気にせず加入できるようになりそうだ。

 東京都下の筆者宅もサービス開始以来、まだかまだかと対応エリアとなるのを待ち望んでいたが、今年の10月にようやく対応エリアに組み込まれ、早速、現状のBフレッツ ニューファミリータイプからの移行を申し込んだ。

 フレッツ光ネクストのサービス開始当初は、Bフレッツからの移行に際してひかり電話の同番移行が一部できない場合があるといったことも報告されていたが、どうやらこの問題も解消されたようで、筆者宅ではアナログ時代から利用していた電話番号に加えて、ひかり電話サービス開始時に取得した電話番号(ひかり電話用市外局番の「03-6808」の番号)も含めて、問題なく同番移行できた。

 移行に際しては、もちろん工事も行なわれるのだが、光ファイバーに関しては従来のBフレッツのものをそのまま利用できるため、工事内容としてはONUの交換(詳しくは後述するがルータ一体型)だけで、1時間もあれば終わる簡単なものだった。

 現状、Bフレッツからフレッツ光ネクストへの移行ニーズがどれほどあるのかはわからないが、少なくとも移行に際しての障壁などがなくなり、スムーズにフレッツ 光ネクストを利用できるようなったと言えるのではないだろうか。





フレッツ 光ネクストの魅力とは

 というわけで、Bフレッツからフレッツ 光ネクストに移行してみたのだが、正直な感想としては新鮮味はない。

 もちろん、回線サービスなので安定してインターネットや電話が使えるだけで十分なのだが、速度に関しては上限100Mbpsで従来の変わりないこともあり、RBB TODAYによる計測で下り79Mbps、上り17Mbps(上りが遅いのはPCやOSであるVistaの関係)と、従来のBフレッツとさほど大きな違いはない。


フレッツ 光ネクストの速度測定結果

 普段のWebブラウズやメール送受信といった利用でも、レスポンスに大きな違いがあるわけでもなく、混雑している時間帯やサイトはサーバー側がボトルネックになり、回線に関係なく重くなるのも相変わらずだ。

 現状、フレッツ 光ネクストでしか利用できないサービスとしては、広帯域のテレビ電話や電話会議(MEETING BOX)、さらにはひかりTVでの地上デジタル放送のIP再送信であり、通常のインターネットの利用環境が大きく変わるというわけではない。

 速度も同じ、値段も同じなので、これから加入するならフレッツ 光ネクストを選ぶことになると思われるが、現状のBフレッツからフレッツ光ネクストへの移行は、工事費や移行手数料などもかかる場合があるだけに急いで進めるほどのものではないだろう。





CATVキラーとなり得るフレッツ・テレビ

 では、なぜBフレッツからフレッツ光ネクストに移行したのかというと、実は「フレッツ・テレビ」導入のついでだったというのが理由だ。。

 筆者宅は、これまでCATVを利用して地上アナログ、地上デジタル、BS、CSなどを視聴していたのだが、専門チャンネルを見る機会はほとんどなく、CATV提供の映像配信サービスなどもテストで数回見た限りで、CATVはほぼ地上波専用で利用していた。

 CATV事業者に地上波の再送のみを低価格で提供してくれるサービスがあれば、それを利用しただろうが、残念ながら筆者宅の地域で提供されている事業者にはそういったサービスはなく(難視聴対策などでは存在する)、STBのレンタルを含めて毎月6000円ほどを支払わなければならなかった。

 さすがに、地上波のためにだけに毎月6000円は無駄なので、そろそろアンテナでも立てようかと考えていたのだが、フレッツ・テレビなら現状の回線費用に+682.5円で地デジ対応できる。というわけで、CATVからフレッツ・テレビに乗り換えたわけだ。

 もちろん、フレッツ・テレビは従来のBフレッツでも利用できるサービスとなっているため、回線サービスを移行する必要はないのだが、どうせ工事をするなら一緒にということで、フレッツ光ネクストへと移行したわけだ。

 なお、移行に際してCATVに解約の申し込みの電話をしたのだが、その再、担当者が解約の理由の例として真っ先に「フレッツ・テレビへの移行」を挙げており、CATVの撤去工事に訪れた業者も光への移行ということをとても気にしていた。テレビサービスをきっかけとしたCATVから光への移行というのは、実は徐々に増えているのではないかと想像できる。

 このあたりは、今後、オプティキャスト(フレッツ・テレビの提供事業者)の加入者数とCATVの加入者数を比較すれば明らかになりそうだが、もしも、このままCATV事業者が、地デジのみの利用というユーザーニーズに応えるメニューを用意しなかったとしたら、ネットサービスのシェア低下やオンデマンドビデオ配信によるコンテンツ販売の機会までもCATV事業者は失うようなことにもなりそうだ。

 現状は戸建て住宅がメインだと思われるが、フレッツ・テレビがマンションの共同視聴サービスなどにも浸透していけば、本当の意味でCATVキラーとなり得る可能性は高いだろう。





光分波、ONU、ルータを1台に集約

 フレッツ・テレビは、以前に本コラムでも紹介した「スカパー!光」と同じ仕組みを利用したサービスで、1本の光ファイバにインターネット用の信号とテレビ用の信号を多重化することで配信するサービスとなっている。

 以前にスカパー!光を導入していたときは、外から引き込まれた光ファイバを分波用の終端装置へと接続し、そこでテレビ信号は同軸へ、ネット側はONUへとさらに接続するという方式が採られていたが、今回のサービスではこれらの機器が1台にまとめられている。

 工事の際に設置されたのは、「PR-S300SE/GV-ONU」という装置で、ルータ+ひかり電話+ONU+終端装置が一体化されている。NTT西日本ではルータ単体の「PR-S200SE」がレンタルなどで提供されている場合があるようだが、これにONUやフレッツ・テレビ用の終端装置を内蔵した製品というわけだ。


今回レンタルで提供された「PR-S300SE/GV-ONU」。ONU一体型のルータで、ひかり電話、フレッツ・テレビに対応する
市販のルータと比較。ONU内蔵の分だけ大きい
上部のスロットにレンタルの無線LANカード(SC-32SE)を装着すると無線LANルータとして利用できる

 このため、接続は非常に単純になった。光ファイバーは工事の際にPR-S300SE/GV-ONUに接続されるので、あとはテレビ用の同軸ケーブル、そしてPC接続用のLANケーブルを接続するだけで良い。

 なお、電源はONUとルータ部分で共通になっているため、電源が切れるとネットだけでなく、テレビも視聴できなくなるが、ルータ部分のソフトウェアは独立した動作になっているため、たとえば設定画面から再起動などを実行してもテレビ側には影響はないように設計されている。


背面の接続の様子。上からLANポート×4、ひかり電話(アナログ)×2、フレッツ・テレビ用RF、電源、光ファイバとすべてが統合される
カバーを開けたところ。一番下に光ファイバが接続され、上部のLANポートでルータ部分と接続されている。電源は共有されるが、内部的な動作はルータ部分とONU部分で個別となる




家庭内の配線方法によってはブースターの利用も検討を

 今回、筆者宅での導入においては、フレッツ・テレビの配線工事は依頼しなかった。標準工事の料金はテレビ1台の場合で8925円、複数台接続の場合で1万5750円と決して安くはない。また、テレビの工事は回線とは別の事業者によって行なわれるため、工事の手間や時間節約を図りたかったというのもその理由の1つだ。

 筆者宅の場合、家の外側の壁にCATVで利用していた同軸の引き込み口があるので、仕事部屋に設置したPR-S300SE/GV-ONUの同軸ケーブルをエアコンの穴を使って外へと引き出し、そこから外の壁の引き込み口へと接続した。

 この引き込み口からのケーブルは家の中を通って、浴室天井の分配機へとつながり、そこからさらに各部屋へと配線されているので、これで部屋中のアンテナ端子でテレビが視聴できるというわけだ。


光ファイバは1階の仕事部屋にエアコンの穴から引き込まれている。この穴を利用してPR-300SE/GV-ONUに接続したテレビ用の同軸をもう一度引き出す
テレビのアンテナケーブルは、2階のベランダ脇から家庭内に引き込まれているので、ここまでケーブルを伸ばす

浴室天井裏で分岐されているテレビ用配線にブースターを接続。これで外周りに長く配線して減衰した信号を増幅

 もちろん、部屋から同軸ケーブルを引き出して外につなぐのは手間がかかるうえ、長い同軸ケーブルも必要になる。

 よって、場合によってはPR-S200SE/GV-ONUからの同軸ケーブルを一旦分配し、一方はその部屋でのテレビ視聴用に利用し、もう一方をその部屋の壁などのアンテナ端子へと接続。さらに浴室天井裏などの分配機で、その部屋への配線をOUT側からIN側へと変更するという手もある。

 ただし、筆者宅では長い同軸ケーブルを利用して、一体外へと配線したため、地上デジタル放送は問題なかったものの、信号の減衰によってBSデジタルの放送がうまく映らなくなってしまった。

 このため、浴室天井の分配機の手間に市販のブースター(今回は日本アンテナの「VB-33CW」を利用)を設置し、信号を増幅してから各部屋へと配線することにした。


テレビの信号強度チェック画面(ブースター設置後)。地上デジタルは信号が強めなのかブースター無しでも視聴できるが、BSは弱めのため、配線によってはブースターがないと厳しいかもしれない

 このように、工事自体は自分でも十分に可能だが、最終的に考えると長いケーブルやブースターを用意する必要があったり、配線に時間も手間もかかるので、環境によっては工事を依頼してしまった方が話が早いかもしれない。このあたりは、よく検討して工事の依頼を決めると良いだろう。

 なお、テレビの状況はきわめて安定しており、今のところ視聴には一切問題は発生していない。長期的に見ればアンテナを設置してしまった方がコスト的には安いが、周辺環境や気象状況などに影響されずに安定してテレビを見られるのは大きなメリットだ。

 もちろん、地上デジタル放送などに加えて、スカパー!光の専門チャンネルなどを別途契約することもできるので、すでにフレッツ光を導入しているのであれば、十分に検討する価値はある。

 テレビサービスについては、いわゆるIPTVのひかりTVによるIP再送信という選択肢もあるが、IP再送信は現状同時視聴が2台までと制限されており、録画などを考えてもあまり使い勝手は良くない。個人的には、今のところはフレッツ・テレビで十分ではないかと感じている。


関連情報

2008/11/18 10:58


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。