DTCP-IP、PC、Huluと多彩なメディアを再生可能
ウェスタンデジタルの「WD TV Live」


 ウェスタンデジタルジャパンから、ネットワーク対応のメディアプレーヤー「WD TV Live」が登場した(6月1日発売)。家庭用テレビに接続して、映像や写真、音楽を楽しめるメディアプレーヤーだが、対応するメディアやサービスが豊富なのが特長だ。実際に試してみた。

1台で何役にも使える

 ウェスタンデジタルジャパンから登場した「WD TV Live」は、これまでに発売されたメディアプレーヤーの「イイトコ取り」をしたような製品だ。

 家庭用のテレビにHDMIで接続することにより、ネットワーク経由で写真やビデオ、音楽などのコンテンツを再生することができるメディアプレーヤーは、これまでにも多数存在したが、その集大成と言って良いほど多彩な機能を搭載している。

ウェスタンデジタルの「WD TV Live」。さまざまなメディアを再生でき、USBキーボードやスマートフォン用リモコンなどを利用できるSTBだ。6月1日発売、店頭予想価格1万1800円。ビックカメラ、ソフマップ、ヨドバシカメラ、amazon.co.jpなどで販売する

 詳しくは後述するが、基本的には「写真」、「音楽」、「ビデオ」、「サービス」、「ゲーム」、「RSS」、「ファイル」という6つの機能で構成されている。「写真」、「音楽」、「ビデオ」は一般的なメディアサーバーと同様の機能だが、そのソースとしてローカルストレージ(HDDやUSBメモリ)、メディアサーバー(DLNAサーバー)、ネットワーク共有、オンラインサービス(Facebook/Picasa)を選択できるようになっている。

 一方、後半の機能は、サービスが「Hulu」や「YouTube」などのオンラインの配信サービスを利用するための機能、ゲームは「funspot」、「PlayJam」といったオンラインで提供されるカジュアルゲームを楽しめる機能、RSSはWebやブログなどのRSSを取得するための機能、ファイルは前述したメディアファイルをフォルダ単位で指定して再生するための機能となっている。

 最後のファイルはコンテンツの探し方を変えただけなので、機能に含めないとしても、1台で5役の機能を使えるわけだが、さらに多数のオンラインサービスに対応しているうえ、USB接続したストレージをネットワーク上で共有することも可能となっており、ファイルサーバーとしても利用可能となっている。非常に多機能で使い甲斐がある製品と言えるだろう。


簡単な設定ですぐに使い始めることが可能

 まずは、外観からチェックしていこう。本製品は以前本コラムでとも取り上げたNTT西日本の光BOX+、AppleのApple TVと似たようなサイズ感のコンパクトな製品だ(幅125×奥行き100×高さ30mm、190g)。

本体とリモコン。サイズとしてはApple TVや光BOX+と同程度
正面背面

 本体前面にはUSBポート(2.0)が1つ搭載されており、背面に電源ジャック、S/PDIFオーディオポート、100BASE-TX/10BASE-T対応のLANポート、HDMIポート、USBオート(2.0)、コンポジットジャックをが搭載されている。

 接続は簡単で、HDMIでテレビと接続し、電源をオンにしてから、言語やネットワーク接続を選択する。有線で接続する場合は特に設定は必要ないが、本製品にはIEEE802.11n/b/gの無線LANも搭載されており、ワイヤレスでも接続することが可能となる。手動設定に加えて、WPSによる設定にも対応しているので、特に迷うことなく接続できるだろう。

 なお、手動設定の場合、暗号キーの入力が必要になるが、これは画面上に表示されたキーボードを利用する。アルファベット順なので、若干使いにくいが、本製品はUSBキーボードにも対応している。リモコンでは日本語入力ができないため、基本的にはオンラインサービスで動画を検索したり、Facebookにメッセージを投稿する際に利用するためのものだが、暗号キーが長い場合などはキーボードを接続して設定するといいだろう。

有線、無線のどちらでも接続可能。無線LANはWPSでの設定もサポートされる

 この状態で、ネットワーク上のメディアが利用可能になる。たとえば、NASに保存されている写真を参照したければ、ホーム画面から「写真」を選択して、ローカルストレージ、メディアサーバー、もしくはネットワーク共有からNASにアクセスすればいい。ネットワーク共有の場合、ユーザーアカウントを指定することもできるので、アクセス制限されたフォルダも参照可能だ。

 なお、ネットワーク共有の場合、写真をスライドショーのように自動再生するには、フォルダを選択した状態でリモコンの再生ボタンを押せばいい。また、フォルダを指定してライブラリに登録しておくと、ライブラリからスライドショー表示も可能だ。このほか、ネットワーク共有では、写真を表示した状態で、リモコンのオプションボタンを押すと、写真の移動やコピー、削除、FacebookやPicasaへのアップロードなどが可能となる。簡単な整理くらいなら、ここから可能だ。

 音楽についても同様だが、音楽の場合、再生を開始するとバックグラウンドで再生が続けられる。写真のスライドショーと組み合わせて、音楽プレーヤーとして利用することもできるだろう。

WD TV Liveのホーム画面。大きなアイコンのシンプルな画面で操作しやすいメディアは、マイメディアライブラリ(よく使うアクセス先を登録して統合)、ローカルストレージ、メディアサーバー(DLNA)、ネットワーク共有、オンラインサービスから選択可能


写真をサムネイルで表示。フォルダを指定して再生すればスライドショーも可能ネットワーク共有にアクセスした際は移動や削除などの操作も可能


音楽も同様に再生可能。バックグラウンドでも再生することができる


DTCP-IPに対応?

 ビデオについても、操作としては写真や音楽と同じとなるのだが、興味深いのはレコーダーなどで録画した映像も再生できる点だ。

 Webページの製品情報や取扱説明書などには記載がないものの、スペック情報には明記されていないものの、どうやらDTCP-IPにも対応しているようで、試しにPanasonicのブルーレイレコーダー「DIGA DMR-BZT810」、アイ・オー・データ機器のLANDISK AV(レグザで録画した映像をムーブしたもの)に接続してみたところ、あっさりと録画した番組を再生することができた。

ネットワーク上のDLNAサーバーにアクセス可能PanasonicのDIGAにアクセスしたところ。DTCP-IP対応と公表されていないが、問題なく、録画した番組を再生することができた

 海外メーカーの製品の場合、ややこしい日本の著作権保護技術に対応する製品はあまりないのだが、本製品では珍しく対応しているようだ。早送りなどのトリックプレイにも対応しているので、この点は、他のSTBと比較した際の大きなアドバンテージと言えそうだ。

 もちろん、通常のDLNAサーバーやWindows 7のメディア共有機能にも対応しているうえ、再生できるフォーマットもAVI(Xvid、AVC、MPEG1/2/4)、MPG/MPEG、VOB/ISO、MKV(h.264、x.264、AVC、MPEG1/2/4)、TS/TP/M2T(MPEG1/2/4、AVC、VC-1)、MP4/MOV(MPEG4、h.264)、M2TS、WMV9(VC-1)と幅広い。

 ネットワーク機能を搭載していない液晶テレビやPC用の液晶ディスプレイを映像再生用のクライアントとして利用するのに便利だろう。


わずか3ステップでHuluを起動

 続いて、サービスについて見ていこう。WD TV Liveでは、以下のような多彩なオンラインサービスに対応している。SpotifyやHulu Plus、Pandoraなど、日本でサービスが開始されていないものがあったり、サービスを利用できても、日本の情報がうまく表示できないもの(AccuWeather.com)などもあるが、HuluやFacebookなどの利用が可能だ。

多数のサービスを利用可能。ただし、日本では使えないサービスもある

 Hulu用のSTBとしては、現状、NTT西日本の光BOX+の完成度が高いが、このWD TV Liveもかなり使いやすい。STB自体の操作感やレスポンスは光BOX+の方が上だが、WD TV Liveには、iPhoneやAndroid端末向けのリモコンアプリが提供されており、これを利用することで、素早くHuluにアクセスすることが可能となる。

 iPhoneやAndoroidなどのスマートフォンで「WD TV Live Remote」をダウンロード後、WD TV Liveと同じネットワークに接続して、アプリを起動すると、自動的にネットワーク上のWD TV Liveが検出され、画面上のボタンを使って操作することが可能になる。

リモコンアプリの「WD TV Live Remote」ボタンもしくはジェスチャーで画面操作可能左側のタブを引き出すと、サービスのアイコンが表示され、一発でサービスにアクセスできる

 これは、Apple TVで言うところのREMOTEと同じものと考えて差し支えない。画面上のボタンをタップする以外に、表示をジェスチャーに切り替えることで、フリックしてメニューを切り替えたり、タップして機能を選択したり、二本指の操作で前の画面に戻ったりすることが可能となる。また、本製品ではリモコンによる日本語入力がサポートされないため、このWD TV Live Remote経由で検索時に日本語入力することなども可能だ。

 注目は、左側のタブをフリックすることで表示されるサービスのメニューだ。ここにHuluなど、サービスのアイコンが登録されているため、わざわざテレビの画面を見ながら操作しなくても、一発でHuluを起動することができる。

 つまり、スマートフォンを利用すれば、画面上で電源ボタンを押してスイッチを入れ、左からメニューをフリックして表示し、Huluをタップするという、わずか3ステップでサービスを起動することができるわけだ。

 STBの場合、上下左右にリモコンのボタンを押して、画面上のアイコンやボタンを選ぶという操作が多くなりがちで、これが操作の煩雑さに繋がっているが、本製品ではショートカット的なメニューを用意することで、この問題を見事に回避している。これはSTBのUI設計という意味でも非常に画期的な発想だ。

 個人的には、もう一歩進んで、たとえばHuluのマイリストに直接飛べるようになるとか、複数の動画配信サービスの視聴可能作品やマイリストをたばねて表示できるようになってくれると、さらにうれしいところだ。

 今後、テレビ向けのSTBやサービスが増えてくると、必ずUIや操作性が問題になってくる。こういったスマートフォンを使ったスマートリモコンによるUIの工夫は、今後、さらに大きな役割を果たすことになることだろう。


NASとしても利用可能

 このように、ウェスタンデジタルの「WD TV Live」は、家庭内やオンラインに存在する写真や音楽、ビデオを再生するのに適した製品となっているが、自らにデータを蓄えるネットワークストレージとして利用することも可能となっている。

 前面、もしくは背面に用意されているUSBポートに、USBメモリやUSB HDDを接続すると、自動的に共有フォルダが設定され、ネットワーク上のPCからアクセスすることが可能になる。

 パフォーマンスは10MB/sを下回る程度とあまり速い方ではないので、ルーターなどに搭載されている簡易ファイル共有と同等と考えるといいだろう。家庭内であれば、日常的にファイルを共有することも不可能ではないが、基本的には一時的にPC間でファイルをやり取りしたり、WD TV Liveで再生したいファイルをコピーするといった使い方になるだろう。

4GBのUSBメモリを接続した際のCrystalDiskMark3.0.1の結果。HDDやSSDを接続すればライトが10MB/sを超えるが、基本的には10MB/s前後の速度となる

 今回、国内で発売されるモデルはHDDを内蔵していないが、海外向けには1TBのHDDを搭載したモデルも提供されている。NAS的な使い方をするのであれば、1TBモデルの方が便利なうえ、DLNAサーバー機能やスマートフォンで撮影した写真をインターネット経由で保存できる機能なども提供されるので、より便利に使えそうだ。当面、国内への導入はない模様だが、ぜひ導入を検討してほしいところだ。

 なお、USBポートにはiPhoneなどの機器も接続可能となっており、PCからiPhoneで撮影した写真を参照することもできる。アクセスできるデータは限られるうえ、表示に若干時間がかかるが、スマートフォンのデータコピー用として使うのも1つの手だ。

 このほか、Web UIも備えており、ブラウザに表示されたリモコンを使って本体を操作したり、設定などを変更することもできる。

PCから通常の共有フォルダと同様にアクセス可能。iPhoneをUSBポートに接続すれば、「USB PTP Class Camera」から撮影した写真を参照できるWebUIも搭載。画面リモコンによる操作やRSSの登録、各種設定などが可能


メディアビューワーとしてあると便利

 以上、ウェスタンデジタルのメディアプレーヤー「WD TV Live」を実際に試してみたが、DTCP-IPに対応していたり、スマートフォン用のリモコンアプリが便利だったり、NASとしても使えたりと、これまでのSTBにプラスアルファの魅力が搭載された多機能な製品と言える。

 特にスマートフォン向けのリモコンアプリはなかなか便利だ。ジェスチャーによる操作は慣れが必要な部分もあるが、とにかくショートカットで使いたい機能を一発で呼び出せるのはありがたい。スマートフォンでもSTBでも、テレビでも、PCでも、操作は少なければ少ない方が快適なので、こういった工夫がきちんとなされているあたりは評価したいところだ。

 また、今回はメーカーからお借りした製品を使ったため試すことはできなかったが、海外ではユーザーが独自に拡張したファームウェアを書き込んで、機能を拡張するといった使い方もなされている。このあたりはLinuxベースのSTBらしいところなので、標準機能で満足できないユーザーにとっては面白い存在になりそうだ。

 ただし、この分野は先行するAppleのApple TVが存在するうえ、Androidベースの光BOX+のような新興勢力も登場するなど、複数のプラットフォームによる競争が進むことが予想される。価格的にも他製品が8800円となるところ、本製品は1万円を超えてしまう。

 確かに機能的には、現状、それなりのアドバンテージはあるが、今後、どこまで他製品と差異化していけるかがポイントになりそうだ。操作性や機能、アプリやサービスの拡張性などを、さらに磨き上げていければ面白い存在になりそうだ。



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2012/5/29 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。