週刊Slack情報局

NTTドコモがSlackを導入した結果――その効果を表す「4つのキーワード」とは

「メールを置き換えただけ」でも大幅な生産性アップ

 Slackによる働き方改革をテーマにしたカンファレンス「Slack Workstyle Innovation Day Online」が6月下旬にオンラインで開催された。今回は、「組織のニューノーマルとは? 先進企業が実践するカルチャー変革」と題した3社によるユーザー事例セッションの中から、株式会社NTTドコモの中村拓哉氏(イノベーション統括部クラウドソリューション担当)の講演を紹介する。中村氏は、大企業での障壁をどう越えてきたかといったSlack導入の過程と、導入することで得られた効果について語った。

株式会社NTTドコモの中村拓哉氏(イノベーション統括部クラウドソリューション担当)

その「社外システム」が本当に必要か? Slack導入には大企業ゆえの障壁も

 中村氏はNTTドコモでのSlack導入について、1チーム(イノベーション統括部)から広がっていったと説明した。最初のきっかけは、2017年のSlack社イベント「Slack Frontiers」にチームのメンバーが参加し、「Enterprise Grid」が発表され、Slackがエンタープライズにやってくるという感触を得たことだという。このチームは内製開発を行うチームだったため、Slackについては、チャットツールの中でほかのサービスとの連携が充実していることから選んだという。

Slack導入のきっかけ

 導入にあたっては、NTTドコモ固有の障壁があった。まずは社内規定で、社外サービスを勝手に業務利用できないこと。業務システムは社内で内製しているため、本当に社外システムが必要か聞かれるという。これは、パートナーとのやり取りに必要であることなどを理由にクリアした。

 次の障壁はセキュリティポリシーで、これはEnterprise Gridでクリアした。

導入の障壁:社内規定
導入の障壁:セキュリティポリシー

 こうしてイノベーション統括部が導入したSlackが、共通基盤として全社に普及した。そのポイントとしては、イノベーション統括部が全社でまとめてライセンスし、利用したい各組織へワークスペースを払い出すようにした。費用は、組織ごとに分量に合わせて負担する。一元的に管理することでガバナンスが保たれる。

 その結果、6月上旬での週間アクティブユーザーが8965人、ワークスペースが227に上る。特に、2月中旬に在宅勤務になり、4月には社外システム利用を社内に広く周知した結果、爆発的に増えたという。

共通基盤として全社に普及
現在の利用状況

キーワードは「生産性」「オープン」「フランク」「フラット」

 こうして広く使われるようになって得られた効果について、中村氏は解説した。

 1つめのキーワードは、やはり「生産性」だ。メールと比べて、メッセージが自動的にチャンネルに分類され、あいさつが不要で、リアクションも簡単と、時間短縮になったという。社内アンケートの結果、メールを置き換えただけでも大幅な生産性アップとなったことが分かったと中村氏は説明した。

キーワード①:生産性
社内アンケートから見た生産性アップの効果

 2つめのキーワードは「オープン」だ。情報はできるだけパブリックチャンネルに流し、情報をオープンにするようにしたという。その結果、チーム内でも情報がやり取りしやすくなって、情報の透明性が向上した。アンケートの結果では、マネジャーの満足度90%だったという。

 さらに、全てのワークスペースに共有できるOrGチャンネルを設けた。全員が自動参加される「#docomo」や雑談チャンネル「#docomo-random」、任意参加のチャンネルなどを運営側で作成。コミュニティや業務などの有志が作成するチャンネルも作られている。

 こうしたコミュニティによって、例えばKurbernetesの情報交換や、新サービスのPoC、社内アンケートなど、チーム横断コラボレーションが活発になっているという。

 雑談チャンネルでも、Slackの使い方の話、社長講話を見ながらのディスカッション、在宅勤務や印鑑のあり方など、さまざまなコミュニケーションがなされている。

キーワード②:オープン
社内アンケートから見たオープンの効果
Orgチャンネルを設けた
チーム横断コラボレーション
雑談チャンネルの内容の例

 3つめのキーワードは「フランク」だ。絵文字によるリアクションが発言の障壁を下げ、上下の差を意識させない組織風土づくりにつながっているという。なお、絵文字記号はドコモのiモードが発祥だと中村氏はコメントした。

 こうして、10人に1人はOrGチャンネルでリアクションしているという、アクティブ率の高さが実現されている。

キーワード③:フランク
アクティブ率の高さが実現

 4つめのキーワードは「フラット」だ。社内アンケートでは、55%の人がコミュニケーションのハードルが下がったと答えたという。

キーワード④:フラット

今後、最も期待するのは「オープンコミュニケーション」

 この「オープン」「フランク」「フラット」を組み合わせて、各部門の事例を紹介する「Slack事例共有会」も中村氏は開催した。声をかけたらみな快く参加してくれ、組織長も巻き込んだという。

 Slack事例共有会でのアンケート結果では、Slackでこれまで最も効果があったこととして、多拠点連携やリモートが挙げられた。一方、今後、最も期待することとしては「オープンコミュニケーション」が挙げられた。

 最後に中村氏は、ドコモの企業理念として「新しいコミュニケーション文化の世界の創造」を紹介し、「社内も変革しているところだ」と語った。

各部門の事例を紹介するSlack事例共有会を開催
これまで最も効果があったことと、今後、最も期待すること

 今回のユーザー事例セッションでは、NTTドコモのほか、リクルートと、「おにぎりせんべい」で知られるマスヤグループの事例が紹介された。

一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能やアップデート内容、企業における導入事例、イベントレポートなど、Slackに関する情報をお届けする。