テレワークグッズ・ミニレビュー
第6回
「今後10年使えるWi-Fiルーター」選びとは? やっぱり「Wi-Fi 6」じゃなきゃダメ?
2021年7月30日 12:30
新型コロナの影響で、テレワークを余儀なくされている読者も多いだろう。かく言うINTERNET Watch編集部でもそれは同じ。それぞれの住環境の中で、テレワーク環境をより改善すべく日々工夫を凝らしている。そこでこの連載では、そんなスタッフが実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズのレビューをリレー形式で紹介していく。
スマホやノートPC本体などと違って、Wi-Fiルーターなんて、そう頻繁に新機種に買い換えるものではない――。私自身、自宅で使用しているWi-Fiルーターといえば……恥ずかしながら、昨今の「Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)」どころか「Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)」でも「Wi-Fi 4(IEEE 802.11n)」でもなく、さらにその前の規格「IEEE 802.11g」時代の製品が現役。それで特に不満は感じなかったし、つい先日は、Web会議をしていた相手にこのことをカミングアウトしたら、映像も音声も安定していたのでビックリされたほどだ。
通信速度では今でも十分に通用しているわけだが、古い製品ではどうしても、セキュリティ規格なども古くなってしまう。在宅ワークで自宅Wi-Fiを仕事で使うようになったこともあり、通信速度だけでなくセキュリティ面のことも考え、イマドキのWi-Fiルーターに買い換えることにした。
購入したのは、バッファローの「WSR-1800AX4」という製品。以下、同製品に至った経緯と、実際に導入した効果をレポートしたい。
※筆者が購入したのは「WSR-1800AX4」(2020年6月発売)だが、すでに後継機種である「WSR-1800AX4S」(2021年4月発売)が発売されている。Wi-Fiなどのスペックは共通で、新たに「ネット脅威ブロッカー ベーシック」というセキュリティ機能(1年間無料ライセンス)が搭載されている点が違いだ(スペックなどの詳細は、本誌2021年4月7日付記事を参照)。これから購入するなら新しいほうの「WSR-1800AX4S」がオススメ。8月31日までクーポン割引き中。
みんな、安易に「売れ筋1位」製品を選んでない?
筆者宅は古い集合住宅の一室で、部屋の間仕切りを全部取っ払った、ほぼワンルーム。区切られた空間(ドアが閉まる空間)は風呂とトイレだけだし、そもそも全体で60平米弱と、Wi-Fiがカバーすべき面積は広くない。しかも、「フレッツ 光ネクスト」の集合住宅内の配線がVDSL方式なので、インターネット接続スピードも数十Mbps程度。たとえWi-Fi 6対応ルーターを導入しても、その売りである高速通信は生かし切れない環境だ。
そこで購入候補の筆頭として挙がったのが、バッファローの「WSR-1166DHPL2/N」という製品だった。その理由を正直に言うと、スペックなどいろいろ比較して考えるのがめんどくさいので、「Amazon ネット機器売れ筋ランキング」でいつも1位の製品だったから、である。
Wi-Fi規格としては、Wi-Fi 5ということになり、最大通信速度ではWi-Fi 6より劣る。しかし、前述のように自宅回線がVDSLで数十Mbpsということを考えると、最新規格のWi-Fi 6はオーバースペックと判断した。「WSR-1166DHPL2/N」はAmazon.co.jpでの販売価格が3480円とかなり手頃だし、なんと言ってもコンパクトなところが良い。INTERNET Watch編集部の1人としては、メーカー各社のフラグシップモデルといきたいところもあるが、こうしたハイエンドモデルは本体もけっこう大きい。その点、「WSR-1166DHPL2/N」なら本体が55×130×159mm(幅×高さ×奥行)ということなので、筆者宅の狭いWi-Fiルーター置き場にそのまま入る。
そのほかの条件としては、有線LAN/WANポートがギガビット対応であること、後日導入したい「IPv6 IPoE」へ対応していることなどがあるが、「WSR-1166DHPL2/N」はいずれも大丈夫だ。
そして何より、売れ筋ランキング1位がほぼずっと定位置ということもあり、「まあ、買って間違いないだろう」と考えたのだが……。
みんな、Wi-Fiルーター「買い換えなさすぎ」だろ! 15年以上使い続けている人も
ところが、この製品のチョイスについて、INTERNET Watch編集部のWi-Fiルーター担当であるIさんに話すと、真っ向から反対された。「スマホやノートPC本体などと違って、Wi-Fiルーターなんて、そう頻繁に新機種に買い換えるものではないから、今の時点で最新規格の製品を買っておくべきですよ」と。
言われてみれば、確かにその通り。実際、筆者宅で使っていたWi-Fiルーター自体そうなのだ。バッファローの「WHR-AM54G54」という製品なのだが、いったいいつから使っているのか覚えていないほど古い製品で、今回、「Broadband Watch」のバックナンバー記事を調べてみたところ、2005年11月に発売された製品だった。
当時この製品を選んだ理由は、「2.4GHz帯(IEEE 802.11g/b)と5GHz帯(IEEE 802.11a)の同時使用」ができるから。そのころにようやく一般化してきた仕様だったように記憶しており、そうした仕様の家庭向け製品が出たからこそ、発売からほどなくして飛び付いた記憶がある。もし、2.4GHz帯と5GHz帯の排他使用(どちらか一方だけに切り換えて使用)の製品を買っていたら、おそらく数年で買い換えることになっていたと思う。
10年使うと思ったら、「ACアダプター」の細かいところまで気になってくる
結局、「Wi-Fiルーターは、そう頻繁に新機種に買い換えるものではない」という実体験も踏まえ、代わりにIさんがいくつかオススメしてくれた製品の中から「WSR-1800AX4」を購入した。同じくバッファロー製で、同社のラインアップの中では「Wi-Fi 6対応のエントリーモデル」という位置付けになる。Amazon.co.jpでの購入価格は8100円。「WSR-1166DHPL2/N」とは倍以上の価格差があったが、仮に今後10年使うとすれば、躊躇するような価格差ではない。
「WSR-1800AX4」は、本体サイズが36.5×160×160mm(幅×高さ×奥行)。筐体のデザインのせいか、メーカーの製品写真で見ると「WSR-1166DHPL2/N」よりも大柄に見えたが、数字上はそれほど違いがない。さすがにこれまで使っていた「WHR-AM54G54」と比べれば大きいが、古風な外付けアンテナがない分、スッキリしたし、筆者宅のWi-Fiルーター置き場にも問題なく収まった。
一方、少し気になったのが、電源のACアダプターだ。これまでのものより体積は若干大きくなる程度だが、プラグの付いている位置やコードが出ている方向などが異なる。壁面の電源コンセントに挿すと、そのすぐ横にある宅内有線LANのポートが塞いでしまった。これは後日、電源延長コードかテーブルタップを使って回避する予定だが、なるべくスッキリ収めたいところだけに残念である。
「Wi-Fiルーター替えただけ」でインターネットが3倍速! トイレも快適に!
「WSR-1800AX4」に入れ替えた後、家の中でWi-Fiのリンク速度を確認してみた。残念ながらWi-Fi 6に対応した端末が筆者宅にはまだないため、Wi-Fi 5対応のAndroidスマホからのリンク速度となる。
まず、Wi-Fiルーターから比較的近い(5mほど)在宅ワークスペースは、これまでは54Mbps(要するにIEEE 802.11a/gの規格値)だったのが、400Mbps台前半へと約8倍に。また、Wi-Fiルーターから最も遠い対角線の位置にある窓際でも、10Mbps未満→200Mbps超えに、トイレの中も、20Mbps未満→300Mbps超えに、それぞれ大幅に向上した。
やはり、Wi-FiがIEEE 802.11acの最大866Mbpsになったことに加え、アンテナの設計が進化したことや、昔のWi-Fiルーターには搭載されていなかった「ビームフォーミング」などの技術も相まって、通信速度・品質が向上しているのだろう。
一方で、インターネット接続速度だが、筆者宅の光回線は前述したようにVDSL方式ということで、従来は20~25Mbps程度。せっかくWi-Fiが高速になっても、この部分がボトルネックとなってこれ以上は速くならないだろう……と思っていたのだが、なんと、70Mbps前後にまでスピードアップ! ボトルネックになっていたのはVDSL区間ではなく、Wi-Fi区間だったのだ。
※通信速度は、あくまでも筆者宅の環境において、7月下旬の平日14~15時の時間帯に計測した数字です。なお、新旧Wi-Fiルーターともに、ルーター機能はオフにし、Wi-Fiアクセスポイントとして使用して計測しています(ルーター機能は「フレッツ 光ネクスト」のVDSLモデム/ひかり電話ルーター側の機能を使用)
この15年で進歩したのは、通信速度だけじゃない
せっかくなので、筆者宅の新旧Wi-Fiルーターの比較表を作成してみた。Wi-Fiルーターを選ぶにあたって何の参考にもならないだろうが、通信速度だけでなく、無線LANセキュリティ(認証方式)やファームウェア自動更新機能など、セキュリティ面でもWi-Fiルーターが進歩したことが分かると思う。
製品名(型番) | WHR-AM54G54 | WSR-1800AX4 |
無線LAN規格 | IEEE 802.11g/a/b | IEEE 802.11ax/ac/n/g/a/b |
無線LAN通信速度 | 54Mbps(5GHz帯、2.4GHz帯) | 1201Mbps(5GHz帯)、573Mbps(2.4GHz帯) |
無線LANセキュリティ | WEP、WPA | WPA、WPA2、WPA3 |
有線LAN/WANポート | 100Mbps | 1Gbps |
IPv6 IPoE | × | ○ |
ファームウェア自動更新 | × | ○ |
発売時期 | 2005年11月 | 2020年6月 |
価格(製品発表時) | 1万9740円 | 9000円 |
本当に今後10年使えるのか?
以上、筆者が約15年ぶりにWi-Fiルーターを新調した話を紹介した。まとめると、この製品を選んだ理由は、1)現時点でのWi-Fi最新規格であるWi-Fi 6に対応していること(現状、生かし切れてないが)、2)本体がコンパクトであること、3)今後導入する予定のIPv6 IPoEに対応していること――などが挙げられるが、そのような製品はほかのメーカーからも複数発売されている。実は決め手となったのは、4)「WHR-AM54G54」と同じメーカーだったから――なのかもしれない。これまで15年以上も故障もトラブルもなく稼働し続けた「WHR-AM54G54」のように、今後10年、故障もトラブルもなく「WSR-1800AX4」が稼働してくれることを期待してのチョイスである。それが果たして本当に10年使えたかどうか? その結果も追ってレポートできればと考えている。