テレワークグッズ・ミニレビュー
第101回
VAIOが本気で作ったモバイルディスプレイは、世界最軽量なだけじゃなく、使い勝手も便利すぎた
レビューで借りた「VAIO Vision+ 14」の重さを実測したらまさかの結果に!?
2024年7月5日 12:12
最近ではコロナ禍もだいぶ落ち着いた感があるものの、完全にコロナ禍前に戻ったかというと、今もミーティングはオンラインが多いし、仕事のやりとりもSlackやTrelloといったツールを使っている。
一方でリアルでの取材や出社の機会も増えてはきた。その結果、フリーアドレスになったオフィスは出社率も増えて、今では空いている席を探さなければいけないような状態だ。
我が社の場合、一部の席にはディスプレイが用意されている。筆者はモバイルディスプレイを持ってはいるのだが、ディスプレイのある席を使えば……、と思って持っていかないことが多い。モバイルディスプレイといってもそれなりには重いので、持って歩くには少し気合いがいる。取材用にカメラなども持っているときはなおさらだ。
ところがいざ出社するとディスプレイ席は満席で、やっぱりモバイルディスプレイを持ってくればよかったと後悔することも少なくないのだ。
そしてそんな悩みを解決できそうなモバイルディスプレイが、あのVAIOから登場した。7月1日に発売されたばかりだが、いち早くお借りして使わせてもらったのでその模様をお伝えしたい。
いつでもカバンに入れておける、超絶軽量なモバイルディスプレイ
その名も「VAIO Vision+ 14」(以下Vision+)。既報のとおり事前に触らせてもらえる機会があって、そこで触ってめっちゃ欲しくなってしまったのだ。
なにしろ軽い! しかも薄い!! これならいつもカバンに入れておこうと思えるサイズ感なのだ。
VAIOが今さらモバイルディスプレイを出したのもそこが理由のようだ。ディスプレイのサイズが仕事の効率に直結するのは分かっていても、いつでもカバンに入れておこうと思えるような軽いモバイルディスプレイがなかった。そこで世界一軽いモバイルディスプレイ(※14.0型ワイド以上のモバイルディスプレイとして。2024年6月14日時点 ステラアソシエ調べ)を作ったというわけだ。画面のサイズやスペックでそれほど差が見いだせないモバイルディスプレイにおいて、軽さと薄さを追求したというのは興味深い。
実際に手に持てばその軽さに驚かされるが、それもそのはずでフレームはカーボン製。従来のノートPCで使っていたカーボンとは違う新開発の「熱可塑性立体成型カーボン」というものを使っているらしい。カンタンに説明すると、特殊なカーボンシートを熱プレスすることで、ボスやリブも含めて一体で成型できるというもの。従来であれば複数のパーツを組み合わせていたものが一体化できるので、軽量と高剛性を両立できるというわけ。実際に手に取ってみても、すごい軽くて薄いのにしっかりと剛性感があって、まるでレーシングカーで使われるカーボンパーツのような質感だ。
というか、ノートPCにも採用されていない最新技術を突っ込んでくるとか、VAIOさん本気すぎる。実のところ今年はVAIO株式会社の設立10周年ということで、その取り組みの第1弾にあたるものらしい。だからこその気合いの入り方なのか。他社のモバイルディスプレイとの差は歴然だろう。
現場では塗装前のフレームも見せてもらったのだが、クルマ好きとしては塗装しないでカーボン地のままで良かった気がしている。
ちなみにVision+の販売価格は5万4800円(個人向け直販価格)。モバイルディスプレイとしてはもっと安いものがたくさんあるが、それでも1~2万円はする。中途半端なものを買ってあとで買い直すぐらいなら、最初からこれを買った方がいい。そう思える価格設定だ。
ということで、実際にお借りして使ってみたレビューをお届けしたい。
軽い! 薄い!! スタンドにもなるカバーがスゴい!!!
届いたVision+を見ていこう。
事前に借りた品なので説明書などは付属していなかったが、本体とカバースタンド、そしてUSB Type-Cケーブルが付属する。
まずは軽さだが公称値で325g。そしてとにかく薄い。イメージとしてはプラスチック製のクリップボードを手にしたような感じだ。下側4分の1ぐらいは厚さがあるが、それでも実測で9.5mmほどで、折りたたんだスタンドを含めても12.4mmほど。薄い方は実測で3.7mmだった。液晶面に対して、フレームの出っ張りも0.4mmほどでほぼフラットだ。しかも薄いのに剛性感があって、華奢な感じがない。
ただ、これだと持ち運び時に液晶部分が傷だらけになってしまう。そこも考えられていて、専用のカバーが付く。
そしてこのカバーがよくできていて、折り紙のように組み立ててスタンドにすることができるのだ。
本体裏側にも折りたたみ式の足があるので、カバースタンドを使わずに立てることもできるのだが、組み立てたカバースタンドに本体の足を差し込むことで、高い位置に画面を持ってくることができる。この高さが、ちょうど14インチや15インチのノートPCの画面の上にくる高さにできるので、画面を上下に2つ並べたようなレイアウトで使うことができるのだ。
さっきも書いたが、出社率が増えたことで、たとえばカウンターの様な席も満席で、デスクのスペースに余裕がないことがある。そうしたときにこの置き方ができると、横幅を増やさずにディスプレイを増設できる。加えて画面が高い位置にくることで姿勢もよくなって、長時間の作業もラクになる。
さらに、この使い方だと画面の角度も変えることができるのだ。画面の位置が高くなると、画面は垂直、あるいはやや下向きにしたほうが見やすい状況もある。そうしたときにも角度が変えられるので、妥協することなく作業しやすいスタイルにすることができるのだ。
普段は本体を保護し、さらにスタンドにもなるというカバーは秀逸だが、このカバーの使い方は実はもう1パターンある。個人的にはこっちのほうがありがたいのだが、なんと縦位置でも置くことができるのだ。
Webサイトを開く、あるいは原稿を書くときなどは、横位置より縦位置のほうがやりやすい。ただ、縦位置で置けるモバイルディスプレイというのがこれまであまり無かった。
実はこの原稿も縦位置に置いたこのVision+で執筆していたりするのだが、めちゃくちゃ作業しやすい。最近は仕事のコミュニケーションにSlackを常駐させているが、Slackの表示も縦位置のほうが勝手がいい。逆にこうしたツールを常駐させておくためにもマルチディスプレイが必要になるので、縦位置で使える価値は大きい。
インターフェースはUSB Type-Cポートが2つのみなので、DP Alt Mode(DisplayPort Alternate Mode)対応のUSB Type-Cポートを持つPCが必要。HDMIでの接続はできないが、その割り切りがあったこその軽さと薄さだろう。
PCとケーブル1本でつないだ場合は、その1本でPCから給電しつつ映像も出力できる。さらにもう1つのUSB Type-CポートにUSB充電器をつないだ場合は、そちらからからディスプレイの電源を賄うこともできる。ディスプレイに必要なのは10W以上の充電器になるが、さらに大容量のPD充電器をつないだ場合、PDパススルーにも対応していて、PCに対しても給電することができる。ノートPCによってはUSB Type-Cポートが1つしかないモデルもあるが、これならPCを充電しながら使うことが可能だ。
他に本体にあるのは上下ボタンのみで、これは画面の輝度を調整するもの。カラー調整やコントラストの調整などはできないが、実際に使ってみるとこれだけでまったく不満はない。
測ってみたらなんと公称値より10gも軽いっ!!
ということでカバンに入れて会社に持ち出してみた。カバーをつけるとせっかくの薄さの魅力が薄れるが、それでも一番厚みのあるところで18mmほどで、カバンのPCを入れるスペースにノートPCと重ねて入れることができた。
サイズも14インチなので、ノートPCが入れられるタイプのバッグであれば、よほどノートPCが分厚いということがなければだいたい収まると思う。
重さについては「まったく気にならない」、などと言うことはなかった。確かに本体はめちゃくちゃ軽いのだが、カバーも合わせるとそれなりに重さがある。
気になったので実測してみると、公称325gの本体は、実測でなんと315gしかなかった! 確かに資料だと325gはあくまで「平均値」となっているので、誤差はあると思うが、まさか10g軽いとは。
そしてカバースタンドだが、こちらは436g! なんと本体より重い。なので、合わせて751gとなって、まぁ持っているのを忘れるぐらい軽い! などということはない。ただスタンドも一緒と思えば十二分に軽いだろう。
置き方が選べるからシチュエーションを選ばず使える!
出社してみるとこの日も席はかなり埋まっていて、両隣の席には人がいる状態。弊社の場合はそれでもモバイルディスプレイを横に並べるぐらいのスペースはあるが、それなりに気は使う感じだ。
その点、上下2画面になるレイアウトにすれば、必要な幅はほぼ半分になる。これならかなり狭いスペースでも置けないことはないだろう。
さらに、画面を縦位置にした場合も、上下2画面のときほどではないものの、幅が狭くなる上に、ケーブルも上に向かって伸びるので、横幅的にはけっこう削減できる。
ちなみに写真を見れば分かるとおり、筆者の使っているのはThinkPadのT14だ。VAIO製のモバイルディスプレイだが、他社のPCでも使うことはできる。
T14の場合、USB Type-Cポートは2つあるので必要ないのだが、あえてモバイルディスプレイからPCに給電する形にしてみたところ、こちらもまったく問題なく動いたし、給電もされた。PDパススルーを使う場合はPD65W以上の充電器が推奨とのこと。試しに100WのPD充電器をつなぐと、PCには60Wの出力で接続された。そこで65WのPD充電器をつないでみると57Wで接続された。
ここから先は実験として、60W出力が可能なモバイルバッテリーをつないでみたところ、なぜかPCは充電されず。60Wだとダメなのかとも思ったが、どうもモバイルバッテリーがPD出力をしていない印象だ。
そこで最大40W出力のPD充電器をつないでみたところ、今度はPCに32Wで接続された。もちろん32Wで充電できるか否かはPCにもよるが、見たところパススルー充電の出力は入力から8W引いた分をPCに供給できる(ただし出力できる上限は60W)ということのようだ。モバイルバッテリーがうまく動かなかった理由は不明だが、おそらく相性の問題だろう。
やっぱりモバイルディスプレイがあるのとないのでは大違い
この日はオンライン会議があったのだが、こうしたWeb会議でも、やっぱり2画面あることのメリットが大きいと実感する。
Web会議ツールはノートPCサイズの画面だと1画面まるごと占有してしまうし、そうしたときにもう1画面あるのとないのでは、仕事のやりやすさが大違いだ。
会議中の話題をネットですぐに調べるときも、Web会議アプリを開いたまま検索できるし、会議のメモを取るのも容易。また、会議の途中でSlackに通知が来たときなんかもすぐに確認できる。今の時代の働き方では、ディスプレイ2画面は必要不可欠だと思う。
できることであれば、会社でこのモバイルディスプレイをまとめ買いしてもらって、貸し出しするようにしてほしいところだ。
実は弊社にはディスプレイの貸し出しがあるのだが、モバイルじゃないディスプレイをデスクまで運ぶのは大変で使う気にならない。その点このVision+なら、持ち運びがカンタンなのはもちろん、保管するときもカバーに挟んで重ねておいたり、本棚などに入れることもできて場所もとらない。それでいてカバー自体がスタンドになるので、縦位置などいろいろなニーズにも応えることができる。
もちろん1人1台もらえたらうれしいが、オフィスで貸し出してくれるのならそもそも持って歩く必要もない。フリーアドレスにしたけど出社率が増えてきている企業の次なる手は、モバイルディスプレイの貸し出しだと思う。
いや、マジでうちの会社で導入してくれないかなー。
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