テレワークグッズ・ミニレビュー

第102回

PCやiPhoneの画面を無線でテレビに飛ばせる「Compact Mate2 C1+R1」は低遅延で仕事でも快適!

「Compact Mate2 C1+R1」を使って、iPad Airの映像をテレビに映したところ

 今年は梅雨らしい梅雨もなく、蒸し暑い日が続いている。そんな中書斎に閉じこもっての作業を続けていると、なんだか気が滅入ってくる。たまにはリビングのソファーで足を投げ出して、大画面のテレビに映像を映し“ながら”作業をするのも悪くない。

 そんな時に便利なテクニックが、いわゆる「ミラーリング」や「キャスト」だ。スマホやPCの映像を、テレビなどの大型のディスプレイに表示することができて、迫力のある映像を楽しんだり、家族や友達など複数でコンテンツを楽しんだりもできる。もちろん仕事の資料をテレビに映すことも可能だ。

 そのための手段はいろいろあるが、今回はスマホやPCのUSB Type-Cポートに接続し、無線でディスプレイやテレビのHDMIポートに映像を転送できるマトリックスコミュニケーションズの「Compact Mate2 C1+R1」というモデルを使ってみた。

 なにしろ無線で接続できるから、ケーブルが邪魔にならないうえに、好きな距離で楽しめる。また、デバイス自体がコンパクトなので、仕事でプレゼン用などに持ち歩くのにも便利そうだ。Wi-Fi接続が不要なため、外でのセットアップも簡単。といわけで、さまざまなデバイス・コンテンツの映像を大型テレビで楽しんでみた。

Compact Mate2 C1+R1。受信機「R1」と送信機「C1」のセットで使う

送信機・受信機の2つがセット

 Compact Mate2 C1+R1は、USB Type-Cコネクタが付いた送信機と、HDMIコネクタが付いた受信機から構成されている。要は、できることはUSB Type-CからHDMIに接続する映像用ケーブルと全く同じで、その中間が無線になっているもの、と捉えればいい。1080P Full HD/60fpsの伝送に対応している。

 送信機側はUSB Type-Cで接続したスマホやPCから直接電源が供給されるが、受信機側は、電源供給用のUSB Type-Aコネクタが付いている。最近のテレビには、メディアドライブ用途などでUSB Type-Aポートが用意されているモデルも多いが、そのUSBポートに接続すれば、電源(5V/1Aで動作可能)を確保できる。

 送信機ー受信機間は、Wi-Fiにも使われる5GHz帯(W52)を使っているが、Wi-Fi環境やWi-Fiへの接続設定などは一切不要だ。そのため、直接転送だからこその良好なレスポンスが期待でき、外出先などでも面倒なセッティングを必要とせず、とにかく接続して電源さえ入れれば利用できるという安心感がある。

 通信できる距離は、最大で約20mとされる。注意点として、W52帯を使っているので屋外では使用できないのだが、活用シーンを考えると、あまり問題にならないだろう。

 価格は、Amazon.co.jpで1万4080円で販売されている。同様の機能を持つHDMIエクステンダーでは、送信機と受信機のセットで数万円のものもあるが、比較的安価だといえる。

 ちなみに、テレビがスマート機能を持っていたり、Fire TV Stickなどのキャスト用機器を接続してたりすれば、無線で画面をテレビに飛ばして利用することはできる。ただし、これらの機能の場合、映像に2~3秒ほどの遅延が生じるため、細かい操作をするにはまったく向かない。あくまでもストリーミングコンテンツを手軽に手元のスマホからテレビに再生指示を与えるのに適している機能になる。本製品はそれらと比べてずっと低遅延で利用できることも、後ほど紹介する。

こういったUSB Type-CーHDMIのケーブルの代わりに、無線で転送するアイテムになる
簡単だが、日本語の説明書が添付されている
送信機「C1」。スマホやPCのUSB Type-Cポートに接続して使う
テレビのHDMI入力に接続する受信機「R1」。USB Type-Aコネクタは電源供給用。見た目はUSB Type-AーHDMIのケーブルのように見えるが、USB側とHDMI側でデータの伝送は行わない

特別な設定は必要なし、接続すればすぐ楽しめる!

 まずは、受信機(R1)をテレビのHDMI入力に接続して、USB Type-Aもテレビに用意されているポートに接続する。背面にUSB Type-Aが無い場合には、別途USB Type-Aポートを持つ充電器などが必要だ。受信機に電源を供給した状態でテレビをHDMI入力に切り替えると、専用画面が表示され、画面に「×」マークがあるのを確認できる。これで、受信機側の準備は完了だ。

テレビの空いているHDMI入力に接続。電源のUSB Type-A側は、テレビのUSBポートに接続した
送信機側が動いていない場合、テレビの画面には、このような表示となる。1080PのFullHDで入力されていることが判別できる

 送信機側(C1)は、映像出力機能が利用できるUSB Type-Cポートに接続する。もう少し細かく言うとUSB Type-Cで、DisplayPort Alternate(DP Alt)モード、もしくはThunderbolt 3/4に対応している必要がある。

 スマホやタブレットでは、USB Type-CポートのiPhoneやiPadなら簡単に利用できる。AndroidではDP Altモードでの出力に対応しているかどうか確認する必要がある。対応機種は意外と限定され、現状ではGoogle Pixel 8なども対応していないが、マトリックスコミュニケーションズのウェブサイトでも動作確認機種を公開しているので、参考にしてほしい。PCはWindows 10/11、macOS、Chromebookであれば、多くのモデルで問題なく利用できる。

 接続すると送信機LEDが点滅し始め、無線接続が完了すると点灯に切り替わる。このときにテレビの画面では「×」マークがチェックマークに変わる。しばらくすると映像が表示されるはずだ。ここでチェックマークに切り替わっても映像が表示されずQRコードが大写しになる場合には、USB Type-Cポートが映像出力に対応しているのか確認してほしい。接続した機器がスリープして画面出力がなくなっても、この画面が表示される。

送信機側はiPad AirのUSB Type-Cに接続してみた
もちろんPCに接続してもOK
インジケーターが点滅から点灯に変わると、チェックマークが入って接続したことが分かる
映像信号が途切れるとこのような画面になる。この場合は映像が出力されていない。スリープでもこの表示になる

 今回は主にiPad Air(M2)を使って操作感を試してみたが、想像通りにケーブル接続に近い感覚で映像を映すことができた。完全に遅延がないとまでは言えないが、特に操作に支障は感じられないレベルだった。

 このiPad Airは、外部にディスプレイとキーボード+マウスを接続するとステージマネージャが使えるようになり、ミラーリングだけでなく、外部拡張ディスプレイとして使えるのだが([※])、ウィンドウ操作やアイコンのタップ、テキスト入力といった操作で、違和感を覚えるような遅延は確認できなかった。

 ちょっと離れて大画面PCモニターのようにも利用でき、PCを接続しても同じような操作感だ。iPadのようなタブレットに限らず、手元画面ばかり見続けていると疲れるが、ある程度距離感をもって大きな画面で操作すると、目が疲れにくく感じられる。リラックスした姿勢もとりやすくなるのもウレシイ。

[※]……外部ディスプレイを「拡張モード」で使い、ステージマネージャが有効になるiPadは限定されているので注意。詳しくはAppleのサポートページを参照してほしい。それ以外のiPadやiPhoneではミラーリングでの表示になり、画面比率が合わない部分には黒い表示が残る

iPad Airでは出力するとステージマネージャが利用でき、テレビは外部拡張モニターとして全画面フルでアプリを切り替えながら使えて便利だ
iPad Air側で拡張モニターとして使う設定ができる。[ディスプレイをミラーリング]をオンにするとミラーリングになる
拡張モニターとして使うには、モニター側を操作できるように外部キーボードとマウス(タッチパッド)を接続する必要がある
拡張モニター(テレビ)側のスクリーンショット。[…]から全画面にしたり、iPad側画面に移動したりできる

ゲームや動画視聴も大きな遅延なく楽しめる

 大画面を使っての快適な作業に気をよくしたので、仕事以外にも使ってみたくなり、軽くゲームを遊んでみた。このiPad Airは13インチモデルなので迫力がないわけでもないが、やはりゲームは大画面で楽しむと臨場感が違う。

 リアルタイムでの反応が求められるアクションゲームだと厳しいが、それ以外なら、おおむね快適に楽しめるだろう。戦闘シーンに格闘アニメーションのあるRPG「崩壊:スターレイル」をプレイしてみたのだが(こちらはミラーリングで操作している)、全く問題なく楽しめた。

 このゲームの戦闘はコマンド選択式で、コマンド実行時に美麗な格闘シーンのアニメーションが入るのが売りだ。シビアなアクション要素はなく、アニメーションを大画面に映せば迫力が増す。仮想パッドの操作も、テレビ画面を見ながら違和感なく行える。

 もちろん動画のストリーミングサービスは、何ら問題なく再生できる。大画面のテレビで動画を流しておき、手元のiPadではブラウザーで情報検索したり、SNSを見たりと平行した画面表示が、少し離れた位置からリラックスした体制でできるのは便利だ。本記事の掲載写真では、分かりやすいようにデバイスを近くに置いて撮影しているが、実際には数m程度離れて視聴している。

iPad側にウェブブラウザーを表示させ、テレビに動画を再生といった使い方が便利。無線ならソファーに寝転びスタイルもOK
ゲームをプレイしてみた。シビアなアクションゲームだと厳しいかもしれないが、そうでなければ問題なく楽しめる。ただし、動きの激しい戦闘シーンなので、よく見ると少し遅延があることが分かる(画面は「崩壊:スターレイル」の戦闘シーン)

 伝送可能な最大距離である20mまで離れて使うシチュエーションはなかなかないだろうが、一般的な家屋の中で距離の限界を感じることはないだろうし、少し大きめのホールや、学校の体育館などで使っても問題ないだろう。

 使っていて気になった点といえば、けっこう発熱があることだ。送信機側はスマホやタブレットで使っていると手に触れることも多いが、不意に触れるとちょっと驚くと思うので(やけどまではしないだろうが)、注意してほしい。

 当然、バッテリーの減りも多めになる。電源用の接続が別にあるPCでは問題無いが、スマホやタブレットでは送信機と充電ケーブルと同時に接続できないだろう。特にスマホで長時間使いたいときは、バッテリー残量に気をつけたい。

HDMIやLightningからの変換も試してみた

 ちなみに、今回、サンワサプライのHDMIーUSB Type-C変換アダプター「AD-HD26TC」を使って、PCのHDMIポートからも使ってみたが、何も問題なく表示された。この製品に、さらにAppleの「Lightning - Digital AVアダプタ」を接続すると、LightningポートのiPhoneの映像も伝送できた。

HDMIーUSB Type-Cの変換アダプター「AD-HD26TC」(サンワサプライ)
LightningのiPhoneから、Lightning - Digital AVアダプタとAD-HD26TCを経由して、映像を送信。このとき、AD-HD26TCを動作させるために、別途同製品に対して給電が必要になる(写真中の黄色いケーブル)

出張・旅行先でも便利に使えるだろう

 この手の無線伝送アイテムはさまざまなメーカーから発売されているが、ECサイトなどでちゃんと調べずに製品を選ぶと、いわゆる技適マーク(技術基準適合証明等を受けた機器を該証明等する表示)が付いておらず、実は日本国内で使用できない、と判明することもある。その点、当然ながらCompact Mate2 C1+R1は技適も取得しているので、安心してほしい(念のため、技適番号を検索してみたが、登録されている正規のものであることも確認できた)。

 今回はもっぱら自宅内で試したが、出張や旅行に持っていけば、無線かつ設定不要ということで、客先のプレゼンをスマートに行えるだろうし、ホテルのテレビにPCやスマホの画面を映して資料をチェックもできそうだ。家族旅行であれば、その日に撮った写真や動画をみんなで見たり、ゲームなどを楽しんだり、ということもできるだろう。そもそもがニッチな用途向けではあるが、かゆいところに手が届き、ニッチな要望をしっかりと満たしてくれるガジェットだといえそうだ。

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