テレワークグッズ・ミニレビュー

第115回

「ド近眼」+「老眼」にオートフォーカスは効くのか? 「ViXion01」で視力が激ワルの筆者でもメチャよく見える!!!

ViXion(ヴィクシオン)の「ViXion01(右)」と「ViXion01S(左)」

ひどい視力を少しでもなんとかしたい!!

 筆者は小学生の頃から超のつくド近眼で視力は両眼とも0.1以下、さらに乱視もかなり酷くてメガネでの矯正は限界なほどという、恐ろしい極悪視力だったりする。

 さらに老眼も歳相応にあって、コンタクトレンズは遠近両用を使用中。加えて最近では、加齢に伴った白内障の症状もあって、徐々に視力が落ちてきてしまっている。特に左目の視力低下が大きく、使っているメガネやコンタクトレンズがしょっちゅう合わなくなっては作り直しを繰り返しているというのが現状だ。

 こんな酷い視力という状況もあって、さまざまな作業に支障が出てきてしまっている。長年眼科で定期的に検査はしているので心配していただく必要はないのだが、いかんせん作業はしにくいし、とにかく目が疲れやすい。目が疲れた時はデスクトップの設定で拡大率を上げたり、フォントサイズを上げたりして対応するのだが、当然作業エリアは狭くなり効率は落ちる。なんとかしたい。

 そこで目に入ったのが、ViXion(ヴィクシオン)という国内のスタートアップ企業が作った「ViXion01」という製品で、レンズ自体の厚みを変化させることによるオートフォーカス(AF)機能を持ったアイウェアとのこと。視野がかなり狭そうではあるが、とにかくどの程度PC作業に使えるのか、この手のモノは実際に長く使ってみなければ分からないことが多いので、実際に買ってテレワークに使ってみることにした。

 購入した「ViXion01(以下01)」は2023年にクラウドファンディングから始まり、その後も販売が続いている。現在では改良型の「ViXion01S(以下01S)」が加わっていて、2024年11月までクラウドファンディングが行われていた。今後は販売も予定されているようなので、いずれこちらもラインアップされるようになるだろう。今回は、この新しい01Sも、メーカーからお借りできたので、双方の使い勝手を比べてみたい。

まだまだ研究途上の製品、だが使い方次第では十分有用

「ViXion01」(左)と新しく加わった「ViXion01S」(右)

 01は見た目はかなりサイバーな感じだが、テレワーク中の自宅内でしか使わないので、見た目の問題は特に気にしないことにして選択した。個人的にはちょっとサイバーちっくな感じのデザインの方が好みである。01Sは一見普通に見えるが、やはり中心には小さなレンズが瞳孔を塞いでいて、メガネの位置的にもずれているので、はたから見ればどっちにしても違和感はある。

 どちらも内蔵バッテリーで動作する。ツルの部分を広げると電源がオンになる仕組みになっていて、01で最大約10時間、01Sは最大約15時間ほど連続使用ができる。USB Type-Cケーブルを接続して充電するが、充電しながらの使用には対応しない。

 手に取ってみると、ARグラスのようにも見えてしまうが、そういうたぐいのガジェットではない。見る機能はすべてアナログで、センサーによるAFでレンズの厚みを変えてピントを合わせ続けるためにバッテリーが搭載されている。スマホとBluetoothで接続できるが、目の前に何か情報が表示されたりすることはない。

 これら製品にはちょっとした注意点がある。まず、製品自体が万人に向けた完成型でないことをメーカー自身も発信していることだ。

 現状の段階ではまだレンズのサイズが小さくなっていて、視野がとても狭い。それは承知の上で使ってみることになる。ユーザーからのフィードバックを受けながら、研究を進め発展させていき完成に近づけていきたいとしている。つまり、まだ多くの人が満足できる水準ではないとメーカーも考えているのだろう。そうは言っても、ViXionにはレンズメーカーのHOYAや千住製薬も出資しているなど、近い将来に完成度の高いものに仕上がる可能性が十分感じられるし、現状でも使い方によってはとっても有用な製品だ。

 また、自動車や自転車などの運転、スポーツなど動きのある動作、水をかぶる可能性のある場所での動作には使えないので注意が必要だ。早い動きをすると、ピントが外れてぼやけることもある。近眼が強い自分には、視野が狭く歩くこともままならないほど。座ったままの作業に限定するのがいいだろう。まさにテレワークにピッタリなガジェットといえる。

ViXion01はサイバー感あふれるデザイン
持ち運びに便利な上品なケースが付属する
中央にフォーカス用のセンサーがある
初期状態のピントを合わせるダイヤルは右のみ
鼻当ては動かして調節できる

 01Sは、普通のメガネっぽいデザインになり、ここに別途補助のレンズを入れることも可能。なので、必要に応じて乱視補正や手元の近距離用レンズを入れれば、より使い勝手がよくなるだろう。ほかにも、初期設定のピント調節ダイヤルが左右別々に付き、瞳孔間距離が1.5倍ほど拡大して、補正のスライダーの動きがスムーズになっていたり、操作音が鳴るようになったりしている。また、近接センサーと加速度・ジャイロセンサーが搭載され、Bluetoothが5.4になり、バッテリー持ちが良くなるなど、細かな改良が多岐にわたっている。ただし、レンズの大きさ(レンズ枠は薄くなっている)やAF機能など、いわゆる「見る」部分の基本機能は01と同じである。

ViXion01Sは普通のメガネのようなデザインになった
初期設定のピント調節ダイヤルが左右別々に付くようになった
瞳孔間距離補正のスライダーの動きが軽くなっている。レンズ枠も薄くなった
鼻当て部分もフィットしやすく、動かしやすい
アウターフレームは簡単に外すことが可能だ

スゴイ! 画面がめちゃくちゃよく見える!! が……視野は狭い

 細かな設定をするためにBluetooth接続で使うスマホアプリが用意されているのだが、アプリを使わなくても使うことは可能だ。

 使い始めは、片目ごとにピントの初期値を1m程度の前方に合わせればいいだけだ。ドキドキしつつ01をかけてみて、両目のピントを合わせてみると、そのクリアな世界に驚いた。視力がいい人には常にこれが見えているのかとちょっと悲しくもなるのだが、とにかくものスゴくよく見える。AFの速度は、個人的にはまったく気にならなかった。近くも遠くも、ピントを合わせているような挙動もなく、視線を合わせるとそこにピントが合っているという感覚で見える。

 乱視がどう影響するのかが心配だったが、幸い筆者の場合はまったく気にならなかった。理由はよく分からないが、自分の場合、乱視補正のないメガネだと3重くらいにダブって見えるはずなのだが、特にダブりは感じずにスッキリ見える。

ViXion01を使用中の様子。これくらいの距離感で画面全体を見渡すことができる
こちらはViXion01S。普通のメガネっぽいデザインではあるが、パッと見で違和感があるのは変わらない
ちょっと離れたテレビもよく見える。ViXion01Sのアウターフレームを外している
視野のイメージ。だいたいこんな感じで見えている。レンズ内はもっとキレイな見え方なので、あくまで参考までにして欲しい

 ただしやはり視野は恐ろしく狭い。14インチのノートPCに向き合って座った状態で、デスクトップ全体がかろうじて見える、といった感覚だ。キーボードなどの手元を同時に見ることはできず、少し顔の向きを動かす必要がある。筆者はタッチタイピングができるので問題はないが、キートップを見ながら打つ人はちょっと大変そうだ。

 近視が筆者ほど酷くない(裸眼で手元がそれなりに見える)人であれば、小さなレンズの外側にキーボードなど手元が見えているはずなので、恐らく問題ない。筆者の場合、裸眼では何も判別できないので、レンズ以外の周囲はボケボケな状態である。着用したまま歩くことも困難だ。こういった場合、01Sであればアウターフレームに弱めのレンズを入れて、サポートするという使い方ができるだろう。

 もっとも快適なのは、2~3m先にあるテレビを見た時だ。42~50インチのテレビ画面とその周囲がわずかに見えるという感じで視聴することができる。手元でノートPCを使いながら、たまに遠くのテレビに視線を移してチラ見するというようなシーンで両方がシッカリ見えるのは、個人的には感動的な出来事だった。そして、窓の景色で遠くを見たり、手元のスマホをチェックしてもちゃんとピントが合って見える。

 見え方で少し気になるのは、レンズ中央に少しだけ周囲より暗くなっている部分があることだ。よく見ると中央部分に薄っすらと黒丸が見えるような感じで見える。最初は気がつかないレベルなのだが、作業に集中しているとどうしても気になってきてしまう。これは恐らくレンズの厚みを変化させるという構造的な要因だと思われるので、今後の進化に期待したい。

基本的な見え方は変わらないが、使い勝手がよくなった01S

 01Sと01の、視野の広さや見え方に関してはまったく同じだ。01Sはセンサーが増えているので、AFの精度が上がっているのかも知れないが、体感としてはあまり差は感じられなかった。

 ただ使い勝手はだいぶ違っている。01Sは全体的にコンパクトになり、だいぶ軽くなっている。01は右のツルが太くなっていて、ここに装置が内蔵されていて左右で非対称の形状をしているのだが、01Sにはこれがない。それだけでかなり軽く感じられ、頭を動かして視線を移動させるのも快適だ。長い時間かけ続けていると、この差は大きく感じる。

 また、01の太いフレームが、顔に近づけ過ぎるとまぶたに当たることもある。顔が大きめな人はキツく感じることもありそうだ。これが01Sでは薄く広めになっていて、かなり普通のメガネに近づいている。

 01Sではアウターフレームを外して使うこともでき、もっと軽くすることもできる。アウターフレームを外した状態で、大きめのゴーグルやサングラスを装着することもできそうなコンパクトさなのだが、AFのセンサーが中央部分にあるので、ここを塞ぐとピントが合わなくなる。意地悪をして、この中央のセンサー前に指を持ってくると、とたんにピントが大きく外れる。

 また、左右レンズは使い始めにピントを手動で合わせる必要があるのだが、01は、右にあるボリュームと左にあるボタンで左右を切り替えながら操作するのに対し、01Sは左右に独立したシーソースイッチ式のボリュームが付いていて左右それぞれで調整できる。これは直感的に分かりやすくなったと感じる。ただ、この操作のたびに01Sでは「ピピッ……」という音が出るようになった。分かりやすいのだが、ちょっとやかましくもある。ピント調整の操作自体は01の回すタイプのボリュームの方が素早く操作ができ、個人的にはこちらが好みだ。

 ほかにも、瞳孔間距離調整も01Sの方がスムーズな動きになった。瞳孔間距離は人によって異なるほか、使ってないと分かりにくいかも知れないが、近距離ではじゃっかん寄り目になるので随時変化する。それをレンズ位置を手動で動かして微調整するものだ。01はスライドがやや固めに感じていたところだ。

 鼻当て部も変わった。01も特に不満はなく調整できたが、01Sではより大胆な向き調整もできるようになっていて、パッドもすべりにくいモノになっている。小さいレンズはピッタリの位置に合わせるには、鼻当てをしっかりフィットさせることが重要になるので、ここは重要なアップデートだと思う。

正面から見たViXion01S(左)とViXion01(右)
重さも違うが、形状が異なりViXion01S(下)の方が顔に当たりにくい
よく見るとレンズを保持する枠の厚みが薄くなっているのが分かる
ツルを折りたたんだ時の大きさも異なる
アプリでBluetoothで接続すると、現在の状態が詳細に確認でき、度数の初期値を保存する

 個人的には01を購入したので、そのまま使うことになるが、総じて見比べると、これから導入するのなら01Sを選択することをお勧めしておく。ただ、価格的に01の方が安く入手できるようであれば、それも悪くはない選択だと思う。見た目に関しては、01Sのアウターフレームを外してしまうのが、一番シンプルでイイ感じなのではないかなと感じる。

 01Sは初代01をユーザーの要望を踏まえ使い勝手を正常進化させたモデルとなっている。ただ、視野が少しでも広がるような、見え方が劇的に変わるような進歩は、もう少し先になるのだろう。

 いずれにしても、今回テレワークに01を導入した効果は絶大だった。視力でそれほど困っていない人には、ちょっと高価に感じるかも知れないが、個人的にはこれまでメガネを何本も作り替えたり、疲れ目の軽減にいろいろとお金を使っていたことを考えると、まったく不満はない。後は次バージョンでは、とにかくレンズが拡大して視野が少しでも広がることを期待しておきたい。現状でも、とりあえずテレワークの効率アップ、疲労感減少には大いに貢献してくれている。

 今後どのように進化するかは分からないが、近い将来に起こる、人の能力をテクノロジーで拡張する「ヒューマンオーグメンテーション」な未来にワクワクがとまらない。レンズ視野が広がって、視野の横にスマホの通知なんかもチラ見できたりしたら、最高のアイウェアになると思う。

INTERNET Watch編集部員やライター陣が、実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズをリレー形式で紹介していく「テレワークグッズ・ミニレビュー」。もし今テレワークに困りごとを抱えているなら、解決するグッズが見つかるかも!? バックナンバーもぜひお楽しみください。