イベントレポート
Slack Frontiers
Slackの新機能、Rimeto由来の「モダン・カンパニー・ディレクトリ」による社員名簿連携、「Slackコネクト DM」など解説
2020年10月9日 11:17
コラボレーションツール「Slack」を展開する米Slack Technologiesは、同社の年次イベント「Slack Frontiers 2020」を、米国時間の10月7日~8日(日本時間の10月8日~9日)に開催している。例年は米国のサンフランシスコで行なわれ、その後、他の地域でも開催されるというリアルイベントとして開催されていたFrontiersだが、今年はオンラインで開催されることになり、米国時間で最初に行なわれたあと、豪州時間や欧州時間といった他のタイムゾーンでも開催するスケジュールになっている(なお、多くの講演やセッションは、1日後などにオンデマンドでも公開される予定だ)。
米国時間7日9時からは、同社の創始者でCEOのスチュワート・バターフィールド氏による基調講演が行なわれた(その模様は10月8日付関連記事『Slackは「イベント・ドリブン・エンタープライズの基盤となる」バターフィールドCEOが開発方針を表明』参照)が、そのあとには、より詳細な機能やプログラミングなどについて紹介・解説する分科会が行なわれた。
本記事では、バターフィールド氏の基調講演の後半に登壇したSlack TechnologiesのCPO(最高製品責任者)タマル・イェホシュア氏の講演や、分科会「Slack's vision for the event-driven enterprise」で説明されたSlackの新機能について紹介していきたい(なお、Slack Frontiers 2020で発表された新機能の概要は、11月7日付関連記事『Slack、「従業員の頑張りを見える化」できる新機能などを発表』でも紹介しているので参考にしていただきたい)。
Slack導入でメールは45%削減、物理的なミーティングは21%削減、生産性は31%向上
イェホシュア氏は、Slackの置かれている現状と新機能に関しての説明を行なった。
イェホシュア氏によれば「COVID-19の感染拡大の影響もあり、Slackのチャンネル数は増えている。それにあわせて我々も新しい機能のリリースを加速している。我々の顧客を調べたところ、Slackを導入することで電子メールは45%削減し、物理的なミーティングが21%減っている。それにより生産性が31%向上している」と述べ、チャンネルベースのコミュニケーションとなるSlackが、現在のリモートワーク/テレワークが必要される状況の中で、企業のビジネス持続性や生産性の向上に大きく貢献しているとアピールした。
その具体例として、あるFortune 100にも選ばれているような小売業の企業の例として、6万人の従業員のうち1万人に導入したところ、チャンネルで飛び交うメッセージが他のコラボレーションツールと比較して200倍にもなったという。その具体的な事例としてクラウド会計のサービスを提供するintuit、OTA(オンライン旅行会社)大手のExpedia Groupなどのコメントなどを紹介した。
イェホシュア氏はそうしたSlackの生産性を向上させる新機能の1つとして「モダン・カンパニー・ディレクトリ(The modern company directory)」を紹介した。これは今年6月にSlackが買収することを発表したRimetoがベースになって開発された機能で、社員名簿をSlack上で効率よく閲覧する機能。特にリモートワーク/テレワーク環境では、新入社員がオンサイトの勤務経験が無くリモートで作業することになるため、社内にどんなスキルがある社員がいるのかを効率よく見ることができるのは重要になりつつある。そうしたニーズに応えるためにRimetoを買収したのだとイェホシュア氏は説明した。
また、そのほかの新機能としては、アナリティックスAPIやワークフロー・アナリティクスなどのSlackによるコラボレーションがどう使われているのかを分析することができる「アナリティクス機能」の導入、業務の自動化をコーディングなしに実現するワークフロービルダーをサードパーティのアプリや企業の内製アプリにまで拡張する「アプリからのワークフロービルダーステップ機能」などに関しての説明を行なった。
イェホシュア氏は、「IDCの調査によれば、そうした、Slackの導入により、セールス部門では13%、エンジニアリング部門では24%、マーケティング部門では16%、人事部門では24%の生産性向上が実現できている」と述べ、その効果は小さくないと強調した。
「Slackコネクト」のユーザーは5万2000社に、「Slackコネクト DM」などの新機能を導入
また、イェホシュア氏は、同社が6月に正式に導入を発表した「Slackコネクト」(6月25日付関連記事『「Slackコネクト」正式発表、外部組織とのやり取りを可能に』参照)に関しても説明した。
従来のSlack(例えば大企業向けの「Enterprise Grid」プランなど)は、基本的には組織や企業の部や課などを「チャンネル」という一種のディレクトリに置き換えてコラボレーションするためのツールで、外部のユーザーを自組織のSlackに招待してやり取りはできるが、異なる組織同士がSlackでやり取りすることはできなかった。
それに対してSlackコネクトでは、組織と組織がつながって、お互いの組織に所属しているユーザーが相手の組織のSlackチャンネルに参加したりすることが可能になる。このため、本当の意味での電子メールの代わりとしてSlackを使うことが可能になる。ただ、現時点では相互に接続できる組織数は最大20になっており、電子メールのようにどこの組織とのやり取りにも使うことができるわけではないが、その替わり電子メールにはない安全で素早いコラボレーションが可能になるというメリットがある。
例えば、自動車メーカー、ティアワンの部品メーカー、ティアツーの部品メーカー……というように製造業の川上から川下に至るまでの企業がSlackコネクトで繋がってコラボレーションをしながら1台の車を作り上げていく、そうした使い方が可能になるのがSlackコネクトだ。
イェホシュア氏によれば、このSlackコネクトは6月の正式サービスイン以来、利用する企業・組織は増え続けており、現在では約5万2000社が利用。組織間で共有されているチャンネルは10万を超えているという。
このSlackコネクト向けには、「Slackコネクト DM」(異なる組織に所属するユーザー同士でダイレクトメッセージを送受信できる機能)、「認証済みオーガナイゼーション機能」(Slackが企業・組織を認証する機能。例えば、その企業がインプレスであれば、インプレスであると証明するマークを付与すること)、「承認済み共有機能」(管理者があらかじめ承認を与えておくことで、対象となる企業・組織とのチャンネル開設をユーザーが容易に行なうことができるようになる機能)などが発表された。
「イベント・ドリブン・エンタープライズ」を実現するために、サードパーティアプリの開発を促す
分科会の「Slack's vision for the event-driven enterprise」では、今回発表されたSlackの機能に関しての概要が説明された。それに関してはすでに別記事で紹介済みなので、ここではその記事では触れられなかった内容に関して紹介していきたい。
この分科会では主にSlackのサードパーティアプリケーションの開発に関しての説明が行なわれた。基調講演で同社CEOのスチュワート・バターフィールド氏が述べたように、Slackは「イベント・ドリブン・エンタープライズ」という言葉に象徴されるように、企業が利用するさまざまなITアプリケーション同士を接続するプラットフォームとして動作することを目指しており、Slackにプラグインとして追加できるサードパーティアプリケーションの開発を重視している。
今回のFrontiersでは、そうした開発者向けの新しい発表として「アプリからのワークフロービルダーステップ機能」「ソケットモード」「オーガナイゼーション全体へのアプリデプロイ機能」などが用意されており、それらがこの分科会で紹介された。
Slackのパートナー企業でもある豪Atlassianは、Slackのアカウントを利用して「アトラシアン」にもログインできる機能を紹介した。Slackとアトラシアンを同時に利用するユーザーは少なくないと考えられるため、このSlackアカウントでのアトラシアンへのサインイン機能はうれしいと言えるだろう。
また、Slack Technologiesディベロッパーリレーション担当ディレクターのビアー・ダグラス氏は、Slack向けアプリの開発者認定制度となる「Slack Certified」を紹介し、Frontiers参加者だけが対象のセミナーや試験が半額になるコードなどを紹介した。興味がある方は、Frontiersに登録して同イベントに参加し、「Slack's vision for the event-driven enterprise」をご覧いただきたい(Slack Certifiedについては11月7日付関連記事『Slack、「従業員の頑張りを見える化」できる新機能などを発表』参照).