週刊Slack情報局

Slack、「従業員の頑張りを見える化」できる新機能などを発表

年次イベント「Slack Frontiers 2020」、日本時間の明日10月8日から開催

Slackが発表した「Remote Employee Experience Index」

 コラボレーションサービスの「Slack」を提供する米Slack Technologiesは7日22時(日本時間)に報道発表を行ない、同社が10月8日~9日(米国時間の10月7日~8日)に開催する年次イベント「Slack Frontiers 2020」で発表する予定の新機能を明らかにした。Slack Frontiers 2020は、日本時間の10月8日午前1時からの同社CEOスチュワート・バターフィールド氏による基調講演で開幕する。

 これに先だって報道発表されたのは、「Remote Employee Experience Index」「Slackコネクト DM」「認証済みオーガナイゼーション機能の提供時期」「承認済み共有機能」「DocuSign アプリ」「アプリからのワークフロービルダーステップ」「ソケットモード」「オーガナイゼーション全体へのアプリデプロイ機能」「エンタープライズ対応アプリの認証」などだ。それぞれ今年中~来年初頭に提供開始が予定されている。

 これらの新機能などについて、Slackのエンタープライズプロダクト部門責任者であるイラン・フランク氏と、ディベロッパーリレーション担当ディレクターであるビアー・ダグラス氏にお話しを伺ってきたので、その模様をお伝えしていきたい。

「従業員の頑張りを見える化」する「Remote Employee Experience Index」

 フランク氏は、Slack(無償版/有償版/GRID版)や複数の企業間でSlack経由でのやり取りが可能になる「Slackコネクト」など、同社のサービスに今後実装される新機能を説明した。

米Slack Technologiesエンタープライズプロダクト部門責任者のイラン・フランク氏

 「今回のSlack Frontiers 2020は昨年の10倍の参加申し込みがあり、イベントとしての注目度も上がっている。Slack自体も、我々の調査によれば、電子メールやリアルなミーティングをするのに比べて、31%生産性が向上し、45%電子メールを減らすことができ、リアルなミーティングを21%減らすことができた」と述べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大などにより、リモートワーク/テレワークなどに注目が集まったこともあって、Slackのようなコミュニケーションツールの普及が進み、企業の生産性が拡大していると説明した。

 フランク氏によれば、Slackコネクトを契約したユーザーは6月の発表時点から倍の5万2000組織になっており、すでに10万のチャンネルが作成されるなど普及が進んでいるとのことだ。

 そのSlackが今回のSlack Frontiersにあわせて発表したのが「Remote Employee Experience Index」「Slackコネクト DM」「認証済みオーガナイゼーション機能の提供時期」「承認済み共有機能」「DocuSign アプリ」「アプリからのワークフロービルダーステップ」などになる。

 「Remote Employee Experience Index」は、四半期毎に組織の働き方をどうしていけばいいかのデータや分析を提供する仕組みだ。

 COVID-19感染拡大の影響で、グローバルには今でもリモートワーク/テレワークという企業は少なくない。そうした企業にとっての悩みは、従業員にルーティン作業(例えば勤怠管理など)を確実にやってもらったり、従業員により柔軟な時間の使い方をしてもらったり、Slackのようなツールを使って社員同士のつながりを確実に確保してもらうなどになる。

 そこで、こうした言ってみれば「自己評価ツール」を利用して、自分の働き方のパフォーマンスを客観的に把握してもらい、「ここは改善できる」とか「ここはもっと伸ばそう」といった「やる気」を従業員に出してもらうことが狙いになる。言ってみれば「社員の頑張り」を見える化するツールと言ってよい。

「Remote Employee Experience Index」

複数企業間でDMできる「Slackコネクト DM」

 「Slackコネクト DM」は、複数の企業間がSlackでつながる仕組みとして6月に発表された「Slackコネクト」(2020年6月25日付関連記事参照)の新しい機能で、異なる企業間のユーザー同士がSlackのダイレクトメッセージ(DM)機能を利用して直接やり取りが可能になる。

 従来のSlackコネクトでは、同じチャンネルに入っていればやり取りをすることが可能だったが、所属する企業や組織が異なる場合にはDMを送ることはできなかった。しかし、今後は異なる企業や組織に所属するユーザーであっても、Slackコネクトで企業/組織同士が相互に認証していればDMを送ることができるようになる。

 企業としても、LINEなど企業のITシステムから目が届かないところでDMされるよりは、Slackコネクト経由でDMが行なわれるほうが安全ということはできるので、企業にとってはうれしい拡張と言える。フランク氏によれば、2021年の初頭に導入される計画だ。

「Slackコネクト DM」

「ワークフロービルダー」をサードパーティも活用可能に

 「アプリからのワークフロービルダーステップ」は、従来はSlackの内部アプリケーションだけが利用できたワークフロービルダーステップを、サードパーティが提供するアプリにも拡張するものだ。

 ワークフロービルダーとは、例えば人事部に書類を提出するプロセスをSlackに置き換えて簡単にすることなどができる仕組みだ。Googleフォームのような機能だと考えれば分かりやすいだろう。そのワークフロービルダーはこれまでSlackの標準機能などからしか使えなかったが、今回、サードパーティにも公開され、サードパーティがワークフロービルダー向けのプラグインツールを作ることで、ワークフロービルダーが利用できる。

 すでに、Zapier、Datadog、PollyといったSlack向けのアプリを提供するサードパーティベンダーが対応を明らかにしている。この機能は、すでに本日より利用することが可能になっている。

「アプリからのワークフロービルダーステップ」

認証バッジ「認証済みオーガナイゼーション機能」を2021年初頭から導入

 また、6月に発表されたSlackコネクト向けの「認証済みオーガナイゼーション機能」(企業/組織の認証バッジのこと)の提供開始時期が決定し、こちらも2021年の初頭から導入が開始される。

 このほか、企業/組織のIT管理者が信頼できる企業/組織との新しいチャンネル開設にプレ認証を与える仕組みの「承認済み共有機能」も2021年初頭から提供開始、SlackアプリからDocuSignのデジタル認証を使えるようにする「DocuSign アプリ」が、本日より提供開始になったことも明らかにされている。

「認証済みオーガナイゼーション機能」

ファイアウォール内のオンプレアプリとSlack APIがやり取りできる「ソケットモード」

 ダグラス氏は、開発者向けの新しい機能の説明を行なった。

米Slack Technologiesディベロッパーリレーション担当ディレクターのビアー・ダグラス氏

 今回新しくSlackが発表した「ソケットモード」は、クラウド側にあるSlackのインフラと、ファイアウォールの内側にある企業独自のアプリケーションなどが、通信をするための仕組みだ。

 従来、こうしたアプリケーションを利用するにはファイアウォールの一部ポートを開ける必要があった。しかし、ファイアウォールのポートを開けるということは、企業内ネットワークのセキュリティ性を下げることにつながり好ましくない。

 そこで、「WebSocketの仕組みを利用することで、SlackのAPIと接続できるようにする。それによりファイアウォールの内側で動作しているアプリもSlackのAPIから通知やデータを受け取ることが可能になる」(ダグラス氏)。こうした仕組みを導入することで、ファイアウォールの内側で動作している企業独自のアプリも、クラウド上にあるSlack用のサードパーティアプリと同じように動かすことが可能になる。

 特に日本では企業のITシステムがクラウドではなくオンプレミス(企業独自のデータセンターやサーバールームなどにサーバーが置かれること)ということがまだまだ多いため、このソケットモードの導入は大きな意味があるだろう。なお、ソケットモードの導入は今年中とアナウンスされている。

ソケットモード

 このほかにも、企業の管理者があらかじめ企業内のSlackのユーザー向けに必要なツールの導入をしておき、ユーザーは数回のクリックで簡単に利用できるようになる「オーガナイゼーション全体へのアプリデプロイ機能」、企業内で使って良いアプリの承認を管理者が行なっておく「エンタープライズ対応アプリの認証」も導入される。いずれも今年中に導入が計画されている。

「オーガナイゼーション全体へのアプリデプロイ機能」

開発者認定制度「Slack Certified」のオンライン版を提供開始

 なお、今回の発表ではないが、Slack向けアプリを開発する開発者向けの認定制度となる「Slack Certified」に関してもダグラス氏は説明した。「Slackの開発者からは認定試験のような仕組みが必要だという声が上がっていた。そのため、昨年11月からこの制度を始めたが、2週間前からオンライン版の提供を開始した」と述べ、オンラインでSlack Certifiedの認定試験の制度を開始したことを紹介した。

「Slack Certified」のウェブサイト

 ダグラス氏によれば、Slack Certifiedで認定されるのは「Slack Certified Admin(Slack認定管理者)」と「Slack Certified Developer(Slack認定開発者)」の2つ。いずれも認定を獲得するにはトレーニングコース(150ドル)と試験(150ドル)の両方、もしくは試験を受けて合格すると認定されるという。

 こうした認定制度は、Microsoftの「MCP(マイクロソフト認定資格プログラム)」やAWSの「AWS認定」など、ソフトウェアベンダーやサービスプロバイダーなどが技術者向けに提供しているもので、技術者にとっては転職時に資格の1つとしてアピールポイントになるものとして知られている。Slack Certifiedも今後そうした認定資格の1つとなっていく可能性があり、Slack向けのアプリケーションを開発している開発者にとっては要注目と言える。

一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能やアップデート内容、企業における導入事例、イベントレポートなど、Slackに関する情報をお届けする。