イベントレポート
CEATEC 2025
人流データの活用や高精度な屋内測位など、LBMA Japan加盟企業がソリューションやサービスを展示
2025年10月20日 12:50
10月14日~17日に幕張メッセで開催された「CEATEC 2025」では、位置情報データを活用したビジネスに関連する110社が加盟する一般社団法人LBMA Japan(Location Business&Marketing Association Japan)が出展し、加盟企業26社が各社のソリューションやサービスを展示した。
入口には位置情報ビジネス業界の現在の状況がわかる「位置情報ビジネス&マーケティング カオスマップ2025」が掲示され、LBMA Japanスタッフが来場者のニーズを聞き最適な企業を案内するコンシェルジュサービスも提供された。
人流データの提供企業が多数参加
人流データの提供会社の中で注目されたのは、LBMA Japanブースへの出展が初となるマカグア株式会社。同社は世界約200カ国・総数10億を超えるスマートフォンから取得された人流データを収集・活用できるプラットフォーム「Azira(旧Near)」の製品およびサービスの日本総代理店で、移動データと過去の訪問履歴に基づいたターゲティング広告配信サービスや広告効果測定、企業が保有するCRMデータとの連携、人流データ分析などのソリューションを提供している。展示ブースでは2025大阪・関西万博の会場マップ上に来場者の位置情報を可視化した様子が表示されていた。
このほか人流データを提供する企業としては、ジオテクノロジーズ株式会社がポイ活アプリ「トリマ」からユーザーの許可を得て取得した人流データを地図上に表示するとともに、グループ会社の株式会社Geoloniaが提供する自治体向けの「地理空間データ連携基盤」でも人流データが活用されていることを紹介した。
位置情報を取得・活用できるスマートフォンアプリ機能拡張ツール「Profile Passport SDK」を提供する株式会社ブログウォッチャーは、位置情報広告配信サービス「Profile Passport AD」や、人流データをまちづくりや観光施策に活用する取り組みを紹介するとともに、カメラを使った人流解析のデモンストレーションも行った。このデモンストレーションでは、歩行者の人数をカウントするとともに、進行方向を判別して色分けすることもできる。
ブログウォッチャーと連携して、位置情報ビッグデータをもとに任意の高さに属するデータのみを抽出できる「高さ情報による階層分離」技術を9月に発表したMetCom株式会社は、3Dホログラムディスプレイ上に3D地図を表示し、そこに3次元人流データを可視化するデモンストレーションを行っていた。
GPSおよびビーコンデータにより屋内外の行動を把握できる人流データ「Beacon Bank」を提供する株式会社unerryのブースでは、同社の人流データがスマートシティ施策に活用できることをアピールし、2025年度は30都道府県において観光分析や交通最適化、脱炭素、オーバーツーリズム解消など、自治体や不動産、公共交通事業者によるまちづくりの支援を行った実績を掲示した。
日野コンピューターシステム株式会社は、日野自動車製トラックやバスから収集した車両位置や燃費、急加減速、ADAS(先進運転支援システム)作動情報などのコネクティッドデータを活用したサービスとして、道路事業による物流効率化や交通流の変化を定量的に評価するサービスや、水素ステーションの立地予測、高速道路におけるリアルタイムな交通流の可視化などのサービスを紹介した。道路事業評価サービスでは、大型・中型・小型トラックや観光バス、冷凍庫、ダンプなど車種や架装ごとに分類して分析できる。
位置情報を活用したサービスやソリューションも展示
位置情報とAIを組み合わせたサービスとして注目されたのがゼンリングループによる展示で、今回が初出展となる株式会社ゼンリンは、ゼンリンが保有する地理空間情報と対話型AIを組み合わせた不動産提案サービスを展示した。
従来の不動産検索は駅からの距離や家賃など画一的な条件での検索が中心だったが、今回展示した新たな不動産提案サービスは、周辺施設やクチコミ、行政サービスなどを統合管理して高速に検索・分析できる基盤を構築することにより、自然言語で入力されたユーザーの要望をもとに最適な物件を提案できる。ゼンリンのブースではこのほかに、物流向けの配車計画の評価提案サービスや、点群データを提供するためのプラットフォームを展示した。
ゼンリンデータコムのブースでは、AIと対話することでオリジナル地図を簡単に作成できるサービスや、生成AIにより音声やテキストによる指示で地図の表示や検索、混雑情報などを調べられる「時空間マップAI」を展示した。AIとの対話により商圏分析や需要予測、防災計画の立案、イベント候補地などさまざまな分析を行える。
位置情報を活用したサービスとしてこのほか注目されたのが、企業や自治体からのインフラ情報収集の依頼をクエストとしてユーザーに提供できるアプリ「ぴよクエ!」を提供する株式会社データインサイト。ぴよクエ!では、地域住民が公園の遊具や道路のひび割れ、公衆トイレの不具合などのインフラ設備の不具合を撮影・送信し、情報収集を依頼した企業は地図上で投稿された情報を管理できる。
3DCG技術を活用した映像やVRコンテンツ、シミュレーションなどの制作を手がける株式会社キャドセンターのブースでは、CEATEC会場を3Dスキャンで撮影・モデル化し、地震や火災、水害などさまざまな災害シナリオを体験できるコンテンツを表示したほか、PLATEAUの3D都市モデルを活用して板橋区の街並みを再現した水害避難シミュレーションや、空中散歩の感覚で都市景観と物件を把握できるVR物件ツアーのコンテンツなども展示した。
地図ソフト「スーパーマップル・デジタル」を提供する株式会社マップルのブースでは、地理空間情報に関する悩みにチャート式で活用方法のアイデアを紹介する「何をしてみたい? 地点情報活用のお悩み サクッ!と解決チャート」のポスターを掲示した。例えばオンラインの地図機能を必要としている場合で、手持ちのシステムに組み込みたい場合は同社の「ベクトルタイル地図」、業務用カーナビ機能が欲しい場合は「ルートナビゲータープラス」など最適な製品やサービスがわかる。
高精度の屋内測位をプラレールでアピール
屋内測位ソリューションでは、超音波センサーを活用したcmレベルの高精度な屋内測位システム「Zerokey」を提供する株式会社ネクスティエレクトロニクスが出展した。
精度の高さを示すために、昨年は玩具のプラレールに測位デバイスを取り付けて走行させ、リアルタイムに軌跡を表示するデモンストレーションを行っていたが、今年はプラレールのレールを2層にして、高さも高精度に測位できることをアピールした。
川崎重工業株式会社は同社が提供する屋内位置情報サービス「mapxus Driven by Kawasaki」を展示した。同サービスではネクスティエレクトロニクスのZerokeyとも連携し、Zerokeyデバイスの位置情報を統合表示することができる。これにより複数の屋内測位技術を使い分けることが可能となり、工場内を移動する人やロボットなどの位置の可視化が可能となる。
屋内測位関連としてはこのほかに、マルティスープ株式会社が産業向けの位置情報活用プラットフォーム「iField」を展示。同プラットフォームは工場や物流センター、建設現場などにおける位置情報を起点とした現場情報の集約・分析プラットフォームで、屋外だけでなく屋内にも対応する。屋内測位方式としてはBLE AoAにも対応しており、電波の角度をもとに従来よりも高精度な屋内測位が可能となる。
このほか、パーソナルデータの利活用の際に懸念されるリスクおよび対策を支援するサービスとして、株式会社プライバシーテックがアジャイル監査AIエージェント「GRoW-VA QuickCheck(グローバクイックチェック)」を展示した。同サービスは、企業がデータ活用やAI開発・導入において、企業のルールや経験値をもとに事業の炎上リスクをAIが自動評価するサービスで、面倒なチェックリストの記入や担当部門との煩雑なやり取りなどの手間を減らし、リスクチェックにかかる時間を大幅に削減できる。