インタビュー

「テレワークにオススメの液晶ディスプレイ」はこれだ! マウスコンピューターに聞いてみた

iiyamaこだわりの「多機能スタンド」で、作業効率アップ&体の負担軽減も

テレワーク時代の外付け液晶ディスプレイのトレンド
USB Type-C接続のモバイルディスプレイ 「ProLite X1670HC」(上)と、3440×1440ピクセルのウルトラワイドディスプレイ「ProLite XUB3493WQSU」(下)

 この1年ほどで、在宅勤務が一気に広まった。そして、自宅の作業空間や、コンピューター、ネットワーク環境などを快適にするべく、各自が工夫している。

 液晶ディスプレイも、自宅で快適に作業をするのに重要な要素だ。自宅でコンピューターに向かう時間が大きく増えたうえに、ウェブ会議など今までリアルでやっていたこともコンピューターの画面の中に入ってきたからだ。

 在宅勤務が急激に増えた中で、どのようなディスプレイに人気があるのか? メーカーとしてどのようなディスプレイを提案したいのか? 「iiyama」ブランドで液晶ディスプレイを展開する株式会社マウスコンピューターの柳良寛氏(マーケティング本部 マーケティング部 iiyamaブランド担当)に話を聞いた。

[目次]

  1. 在宅勤務だからこそ「大画面ディスプレイ」を!
  2. 欧州で売れている「ゲーミングディスプレイ」
  3. ディスプレイの“前後置き”でテレワークが捗る!「多機能スタンド」に注目
  4. 外付け液晶ディスプレイのトレンドは……
    - 映像も電源も「USB Type-Cケーブル1本」のモバイルディスプレイ
    - デュアルディスプレイよりシンプルな「ウルトラワイドディスプレイ」
  5. 外付け液晶ディスプレイの選び方、「用途別のオススメ」はこれだ!
    - 設置スペースを気にするなら
    - とにかくコンパクトにするなら
    - 設置スペースに少し余裕があって、プライベートでも活用したいなら
    - 仕事と趣味で使いたいなら
    - 4K動画を見るなら
    - 動画を編集するなら
  6. オフィスの共用ディスプレイにも「多機能スタンド」推し!

在宅勤務だからこそ「大画面ディスプレイ」を!

株式会社マウスコンピューターの柳良寛氏(マーケティング本部 マーケティング部 iiyamaブランド担当)

 iiyamaは、CRT(ブラウン管)ディスプレイの時代から、現在の液晶ディスプレイまで、48年近く続いているブランドだ。現在はマウスコンピューターの中のiiyamaブランドとなっており、主に日本と欧州の2つの市場で展開している。

 「ほかのメーカーと同様に海外で生産していますが、長野県飯山市にあるiiyama事業部が製品の品質管理や開発管理を行いながら、品質を重視して生産しています」と柳氏。「われわれはパネルメーカーではないので、最新技術を追いかけるというよりも、品質を重視した安定した製品をお客様にお使いいただける取り組みを基本概念としています。」

 そのようなiiyamaから見て、2020年度はコロナ禍による在宅勤務の増加で、売れ筋に変化が見られた。

 顕著なところでは、大画面ディスプレイ、つまりオフィスで使っていたより大きめのサイズの売り上げが伸びていると柳氏は言う。同社のデータによると、2020年上期において、21.5型は前年と大きな違いはなかったが、23~25型は前年比で約115%(約1.15倍)、27~31.5型の大型のディスプレイも約135%(約1.35倍)と、好調だった。

 大画面の販売が伸びている理由としては、やはり表示領域が広がることで作業効率が上がることがある。それだけでなく、体への負担も関係していると柳氏は指摘する。

 「例えば営業で外回りをしている方は、可搬性を重視して小さめのノートPCを使っている方が多い。しかし、コロナ禍によりビデオ会議で商談することが増えました。すると、小さい画面では前かがみになって覗き込むようなかたちになります。それにより、肩が凝ったり、疲れやすくなったり、呼吸が浅くなって集中力が切れてしまったり、ということがあります。大画面を使って姿勢を正すことで、体にも負担が少なくなると思います。」(柳氏)

欧州で売れている「ゲーミングディスプレイ」。視野角が広いIPS液晶パネルの製品も検討中

 そのほかのトレンドとしては、ゲーミングディスプレイも好調に推移しているという。特に欧州ではよく売れていると柳氏は説明する。必ずしもゲームに限らず、趣味と仕事と両立できるものということだ。「一般にゲーミングディスプレイは高価格帯ですが、趣味で買い替えるときに、リフレッシュレートの高いもの、応答速度の速いもの、そして仕事でも使えるもの、ということで選ぶことが多い。日本もこれから増えるのではないでしょうか」(柳氏)。

 iiyamaのゲーミングディスプレイでは、現行製品では応答速度を重視してTN液晶パネルを採用している。柳氏によると、IPS液晶パネルのゲーミングディスプレイも考えているという。「視野角が広いIPSでも、リフレッシュレートが高く応答速度が速いものが技術的にできています。それによって、さらに市場が伸びる要素になるかと考えています」(柳氏)。

ディスプレイの“前後置き”でテレワークが捗る!iiyama独自の「多機能スタンド」に注目

 iiyama独自の「多機能スタンド」を搭載したモデルも売り上げを伸ばしていると柳氏は話す。

 多機能スタンドとは、「昇降(高さ)」「チルト(上下の傾き)」「スウィーベル(左右の首振り)」「ピボット(画面を回転して縦型などにできる)」という4つの調整機能を備えたディスプレイスタンドだ。

「多機能スタンド」の4つの調整機能

 この4つを使って調整することで、使い勝手が向上し、体への負担を減らすことができる。

 特に在宅勤務が始まったころには、自宅に個室がないという声がしばしば聞かれた。また、個室があっても、寝室と一緒だったりするとウェブ会議を含む仕事をするのに抵抗があるという人もいる。そのため、リビングやダイニングのテーブルで作業する人も多かった。

 リビングやダイニングのテーブルは、作業用に作られているわけではない。そこで「多機能スタンドの調整機能を使うことで、簡単に見やすい位置にセッティングできるということで好評いただいている」と柳氏は言う。

 また、Excelで縦に並んだデータを見ることが多い人は、ピボット機能で画面を縦にして一覧性を上げられるということでも好評だという。

ノートPCと大型液晶ディスプレイを組み合わせて使う“前後置き”の机上レイアウト例(ディスプレイは後述する34型ウルトラワイドディスプレイ「ProLite XUB3493WQSU」)
2019年から採用しているコンパクトなスタンドベース

 そのほか、ノートPCと大型の液晶ディスプレイを組み合わせて使う机上レイアウトも、しばしば見かける。液晶ディスプレイをスタンドの昇降機能で目いっぱい上げて、その下にノートPCを置いて使う方法だ。これにより、省スペースでマルチディスプレイを実現し、作業効率を上げるわけだ。「さらに、視線移動も上下になるので、左右に首を振るより楽になって、肩凝りなどの負担も減るのではないかと考えています」(柳氏)。

 スタンドについてはもう1つ、iiyamaでは2019年から、台座となるスタンドベースを正方形に近いコンパクトなものに変えている。これにより、机が広くなくてもディスプレイが置きやすい。「27型でも奥行が23cmで、他社と比較してかなり小さいほうに入ると思う」と柳氏は言う。

 こうしたスタンドの調整機能や設置性について、iiyamaは早い時期から訴求ポイントとしてきた。

 「当初は昇降スタンドと呼んでいましたが、今は多機能スタンドに発展しています。チルトぐらいの調整機能しかないディスプレイがオフィスに入っていることが多かったのですが、iiyamaでは5年前ごろから多機能スタンドを多くの製品に設定し、展開してきました。」(柳氏)

 こうした調整機構へのこだわりは、欧州で販売展開していることも関係していると柳氏は語る。「欧州、特にドイツなどは、姿勢や目に負担がかからないといった人間工学に基づいて製品が開発され販売されています。iiyamaとしては、日本でもそうした製品が主流になるだろうと考えて早めに設定した、ということがあります」(柳氏)。

外付け液晶ディスプレイのトレンドは、配線スッキリの「Type-C接続」と、意外に小さい「ウルトラワイド」

 iiyamaとして今打ち出していきたい、今後のトレンドになると考えている分野についても聞いた。

配線スッキリ! 映像も電源も「USB Type-Cケーブル1本」のモバイルディスプレイ

「ProLite X1670HC」

 まずは、USB Type-Cケーブル1本で映像と電源を受けるディスプレイだ。配線が1本だけで済むため、面倒なことなしにすぐに接続でき、見た目も乱雑にならない。特に、リビングで作業して、液晶ディスプレイを使い終わったら目立たない場所に寄せたり収納したりする場合などは、1本のケーブルをつなぐだけでいいシンプルさにメリットがある。モバイルディスプレイであればなおさらだ。

 現在、iiyamaでラインアップされているUSB Type-C接続のディスプレイは、4月に発売された15.6型モバイルディスプレイの「ProLite X1670HC」がある。

持ち運び時に収納可能な折りたたみ式のスタンド。画面チルト角度は15~35度の範囲で調整することが可能だ。
「ProLite X1670HC」紹介動画

自宅に置くと意外と小さい? デュアルディスプレイよりシンプルな「ウルトラワイドディスプレイ」

「ProLite XUB3493WQSU」

 もう1つの分野は、ウルトラワイドディスプレイだ。iiyamaの製品では、4月に発売された34インチディスプレイ「ProLite XUB3493WQSU」がある。横幅が81.7cmで、3440×1440ピクセル表示に対応した横長のモデルだ。スタンドベースの奥行が27型と同様の23cmとなっているため、34インチでありながらコンパクトに設置できる。

 「21.5~24型を2台並べたのと同じぐらいの画面表示スペースを1台でとれます。デュアルディスプレイだとHDMIケーブルや電源ケーブルが2組必要になってしまい煩雑です。特に、昨今のモダンPCは画像出力がHDMI端子1ポートだけのことも多いので、デュアルディスプレイにしようとすると、2つめの出力はUSB端子をHDMI端子に変換するなど面倒です。ウルトラワイドディスプレイであれば1本だけで済みます。」(柳氏)

 また、2台のディスプレイを横に並べると、間にどうしても切れ目とベゼル(枠)が入って邪魔になってしまう。ウルトラワイドディスプレイであれば切れ目がないので、例えばExcelで大きな表を見たり、動画編集で横に長いタイムラインを表示したりするのに便利だ。

 そのほか、2画面分割して同時に表示するPicture By Picture機能と、主画面と画面内の小画面に表示するPicture in Picture機能にも対応している。

 「ウルトラワイドディスプレイをこのタイミングで発売して、事務作業で使ってもらえるんじゃないかと思っています。在宅勤務でも、広い画面を使うのに、ディスプレイ2枚でなく1枚で使っていただけます」と柳氏。「34型がオフィスにあるとすごく大きく感じますが、不思議なことに家にあると意外と小さく見えます。家の中には大画面テレビなどが置いてあるため大きく感じないこと、34型は横に長く、奥行は27型と変わらないので圧迫感を感じにくいことから、家に置いてもさほど巨大には感じないのです」(柳氏)。

スタンドベースは奥行23cmのため、34インチでありながら27型のようにコンパクトに設置可能
「ProLite XUB3493WQSU B1」紹介動画

外付け液晶ディスプレイの選び方、「用途別のオススメ」はこれだ!

 ディスプレイのさまざまなトレンドについて話を聞いてきたが、では、自分の用途に合わせてどのように選んだらいいのか? 柳氏に聞いた。

設置スペースを気にするなら

 「設置スペースを考えると、スタンドベースがコンパクトなモデルが選択肢となると思います。また、ダイニングテーブルやリビングのテーブルで作業する場合は、画面の高さや角度を調整できる多機能スタンドも必須といえるでしょう。」(柳氏)

とにかくコンパクトにするなら

「ProLite X1670HC」

 「設置スペースが限られていて、とにかくコンパクトにしたいということなら、モバイルディスプレイをお勧めします。薄型で軽量なため、使用しないときは棚や机の引き出しに収納することができ、ディスプレイを机の上に置いておくことに抵抗がある方にもお勧めです。

 iiyamaのモバイルディスプレイ『ProLite X1670HC』は、15.6型です。14~15型のノートPCと組み合わせればマルチディスプレイ環境を構築できるので、作業効率もアップします。」(柳氏)

設置スペースに少し余裕があって、プライベートでも活用したいなら

 「設置スペースに少し余裕があって、プライベートでも活用したいという方なら、少し大きめの24(23.8)~27型の多機能スタンドモデルをお勧めします。『ProLite XUB2493HSU』(23.8型)や『ProLite XUB2792HSU-1D』(27型)が該当します。先ほど紹介したような、スタンドの昇降機能でディスプレイを上げて手前にPCを置いて使う、私が“前後置き”と呼んでいる使い方もできます。」(柳氏)

「ProLite XUB2493HSU」
「ProLite XUB2792HSU-1D」

仕事と趣味で使いたいなら

「G-MASTER GB2760QSU-1C」

 「ステイホームで時間が増えて、趣味、特に流行のe-Sportsをやってみたい、という方には、ゲーミングディスプレイをお勧めします。27型大画面液晶のG-MASTERシリーズ、27型『GB2760QSU-1C』が該当します。もちろん、普段のお仕事にもご利用いただけます。」(柳氏)

4K動画を見るなら

「ProLite XB3288UHSU」

 「最近では動画配信でも4Kコンテンツが配信されるようになりました。そうした動画を見る用途であれば、4KでHDR対応の機種をお勧めします。31.5型と大きくなってしまいますが、『ProLite XB3288UHSU』が該当します。」(柳氏)

動画を編集するなら

 「ステイホームで時間があるということで、今まで撮りためた旅の写真や動画、お子さんの成長記録などを編集したいという方もいると思います。動画編集でしたら、長いタイムラインを表示できるウルトラワイドディスプレイの『ProLite XUB3493WQSU』があります。また、写真を編集するには、これも4Kの『ProLite XB3288UHSU』であれば、約10.7億色表示に対応しているので豊かな色表現ができます。」(柳氏)

「ProLite XUB3493WQSU」
「ProLite XB3288UHSU」

オフィスの共用ディスプレイにも「多機能スタンド」推し!

 これからコロナ禍が収束していってステイホームが緩和されていくとしても、テレワークは一定の需要が続くだろう。また、テレワークでディスプレイを選択したあとで、オフィスなどのディスプレイを見直すケースも増えてくるかもしれない。

 「例えばシェアオフィスや、会社でもフリーアドレスの場合など、共用のディスプレイを複数人で使うケースでは、各自の見やすいように高さや角度を変更できる多機能スタンドが求められると思います。」(柳氏)

 さらに柳氏は「量販店でディスプレイが陳列されている中で、これまではデザインや色見などで選んでいたことが多かったと思いますが、今は機能面も見られる方が多くなってきていると感じています。そういったところをさらに推していきたいと思います」と語った。

 最後にiiyamaの今後の製品について尋ねると、柳氏は「今期のテーマはゲーミングです」と答えた。「リフレッシュレートが高く応答速度の速いゲーミングディスプレイを、より視野角のよいIPSで作って、ラインアップ数を増やしたいと思っています」(柳氏)。

 また、柳氏は「継続して多機能スタンドを推していきたい」と答えた。「作業効率が上がるという側面も大きいのですが、使用者の健康にも直接、響いてきます。健康に仕事をしてプライベートも充実していただく、ということをiiyamaで提案していきたいと思います」(柳氏)。