インタビュー

持続可能な回転寿司のある未来へ。「水中空間のデータ化」で海洋産業をDX、「海洋STEAM教材」で若き担い手の育成も

スシロー、富士通、海洋研究開発機構らが異業種連携。CEATECで詳細を明らかに

富士通株式会社の山田亜紀子氏(中)と権藤陽介氏(左)、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の市原盛雄氏(右)に、「CEATEC 2026」の「海洋デジタル社会パビリオン」へ出展するに至った背景や、近く立ち上げ予定の「オーシャンテックコンソーシアム」について聞いた
(JAMSTEC横浜研究所にある地球情報館の映像展示室にて)

 10月13日~16日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催される「CEATEC 2026」では、主催者企画として「海洋デジタル社会パビリオン」が設置される。海洋産業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が実現する未来を、14社・団体の展示を通じて発信するエリアになる。

富士通株式会社の「海洋デジタルツイン」

 そのなかでも注目されるのが、富士通株式会社が出展する「海洋デジタルツイン」だ。水中空間のデータ化によって“見えない海”を“見える化”することで、海洋産業を大きく変革するための基盤を整備することになる。

JAMSTECの「海洋STEAM教材」

 また、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、日本の課題となっている次世代海洋人材の育成に向けた展示を行い、学校現場で利用する「海洋STEAM教材」などを紹介。海洋産業の未来につながる活動として関心が集まりそうだ。

「オーシャンテックコンソーシアム」立ち上げには、テック企業だけなく、回転寿司チェーンや水産会社大手も名を連ねる

 さらに、会期中に行われるコンファレンスでは、2027年4月の発足を目指す「オーシャンテックコンソーシアム」の概要が発表されることが明らかになっている。海洋分野におけるデジタル化の進展において、CEATEC 2026が大きな節目になることは間違いなさそうだ。

海洋は、デジタル化における「最後の砦」海洋DXに挑む企業・団体が集結「海洋デジタル社会パビリオン」に集結

 「海洋デジタル社会パビリオン」は、今年新設される「宇宙共創パビリオン」とともに、「X(Transformation)パーク」エリアにブースを構成(ホール5 ブース番号5H210)。「産官学一体の共創の場」と位置付けている。

CEATEC 2026の主催者企画として「海洋デジタル社会パビリオン」「宇宙共創パビリオン」が設置される(ホール5 ブース番号5H210)

 海洋デジタル社会パビリオンでは、海洋産業へのデジタル技術の活用や、次世代人材の育成の取り組みを発信する予定であり、食の安全保障を支えるためのスマート水産やスマート養殖のほか、環境モニタリング、再生可能エネルギー、水中ロボットなどの海洋ビジネスの最新動向を見ることができる。

 海洋は地球の表面積のうち約7割を占めるが、デジタル化においては「最後の砦」とも言われており、これから注目を集める領域でもある。特に日本は四方を海に囲まれており、海洋は重要な産業領域の1つ。日本がデジタル化をリードすることが期待されている分野だ。

 CEATECの主催団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)では、「海洋産業の発展を後押し、次世代人材の育成や新たな組織の参画促進に向け共創企画を始動させる」と、今回の海洋デジタル社会パビリオンの狙いを語る。

 海洋デジタル社会パビリオンの出展企業・団体は以下の通り。このほか、後援として、内閣府総合海洋政策推進事務局、国土交通省総合政策局経済安全保障・海洋政策課、水産庁が参画する。

「海洋デジタル社会パビリオン」出展企業・団体

株式会社アートチューンズ、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、株式会社アイエスイー、アビームコンサルティング株式会社、ALANコンソーシアム、株式会社UMIAILE、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、株式会社スペースワン、一般社団法人日本水中ドローン協会、Nōka.AI、富士通株式会社、株式会社ポテンシャライト、一般財団法人マリンオープンイノベーション機構/静岡市、株式会社ロボティクスセーリングラボ

(上段・左から)UMIAILE、スペースワン、ALANコンソーシアム、(中段・左から)ロボティクスセーリングラボ、Nōka.AI、NEDO、(下段・左から)アイエスイー、マリンオープンイノベーション機構/静岡市、ポテンシャライト

なお、パビリオン内には株式会社ポテンシャライトが「スナック浪漫」を開設(写真下段・右)。“海と宇宙をテーマにしたドリンク”とともに、関連する技術・企業など出展者に関する情報を提供する仕掛けを用意するという。

“見えない海”を“見える化”する、富士通の「海洋デジタルツイン」そのルーツは「体操競技の採点支援システム」の骨格認識AIだった

 海洋デジタル社会パビリオンで注目を集めそうな展示の1つが富士通である。同社では「“見えない海”を“見える化”する海洋デジタルツイン」をテーマに展示を行う。

 富士通の研究開発部門である富士通研究所では、数年前から海洋デジタルツインに取り組んできた経緯がある。富士通研究所の研究者が提案したボトムアップ型プロジェクトとしてスタートしたものだ。

 じつは、このプロジェクトは意外な技術からスタートしている。

 富士通の山田亜紀子氏(富士通研究所 プリンシパルリサーチディレクター リサーチエバンジェリスト)は、「富士通では、骨格認識AIを活用した体操採点支援システムを開発し、すでに体操の国際大会でも使用されている。この技術を海洋分野に活かせないかという発想がきっかけになって開始したプロジェクトであり、水中ドローンに搭載したセンサーで収集したデータを分析する技術として活用。さらに、別のグループが蓄積してきたロボット関連技術を組み合わせている」と明かす。

富士通株式会社の山田亜紀子氏(富士通研究所 プリンシパルリサーチディレクター リサーチエバンジェリスト)

 富士通研究所独自の「自動制御・海洋計測技術」「映像AI・3D空間把握技術」「施策実施前の検証技術」により、海のデジタルツインを実現し、高効率および高品質で海を可視化し、海洋環境の再生や変化への対応施策の立案を支援および実行することができる。水中ドローンの自動航行制御によって、位置誤差±50cmという高い精度で海藻や海草の被度を認識できるようにし、海洋データの自動計測およびデジタル化を実現する一方、藻場創出シミュレーションにより、複数の生態種について日単位で変化を確認できる海洋生態成長モデルを実現。さまざまな海域や、それぞれの保全施策を対象にした多面的なシミュレーションを行うことができ、ブルーカーボン生態系の保全につなげることができるという。

 すでに、石垣、宇和島、函館、スペインのバルセロナなどで実証実験を行っている。

富士通株式会社の権藤陽介氏(富士通研究所 セキュリティサイエンス研究所 海洋デジタルツインコアプロジェクト シニアリサーチマネージャ)

 富士通の権藤陽介氏(富士通研究所 セキュリティサイエンス研究所 海洋デジタルツインコアプロジェクト シニアリサーチマネージャ)は、「海を丸ごとデジタル化することで、脱炭素や生物多様性保存の課題を、海から解決していくことを目指している」とし、「人が海中に潜らずに、水中ドローンを使い、海藻や海草の種類を90%という高い認識精度で識別することができる。また、1haあたり2日かかっていた計測時間を30分に大幅短縮するとともに、コストを200分の1にまで削減できる」と語る。

 一般社団法人宇和海環境生物研究所、愛媛県漁業協同組合吉田支所、愛媛県宇和島市とともに、宇和海においてブルーカーボンの定量化を実践。その成果をジャパンブルーエコノミー技術研究組合に申請したところ、95%という高い認定率で「Jブルークレジット」認証を獲得。技術の有効性を確認することができたという。

水中ドローンの映像からノイズ・揺れを低減し、可視光3D空間を構築高精細な3Dモデルで、水中インフラの点検も可能に

 海洋デジタルツインの取り組みは、昨年のCEATEC 2025でも展示していたが、山田氏は「これまでの取り組みを発展させるためには、富士通研究所だけの活動にとどめず、これらの技術をベースにユースケースやビジネスを一緒に検討することができるパートナーと共創するきっかけをつくりたい。また、来場した企業や学生にも、富士通が海洋産業分野に対しても取り組んでいることを知ってもらうきっかけにしたい」と、今年の出展の狙いを語る。

 また、権藤氏は「海洋デジタルツインは今後、事業化に向けたフェーズへと入ることになる。水中の状況把握、可視化などに課題を持つ海洋インフラ事業者、水域の利活用を促進したい自治体や企業のほか、さまざまな専門的知見を持つ企業との共創により、新たなビジネスを創出したり、社会実装につなげたりしたい」とする。

 富士通の展示エリアでは、海の生態系を守りながら産業としても発展しつづける「生物多様性保全」、海洋ファシリティの維持管理や水中土木工事を支援する「海洋インフラ運用」を紹介。具体的には、3D空間把握技術により、水中ドローンで撮影した映像から可視光3D空間を構築し、映像の揺れがなく、任意の角度から水中を確認可能にするのに加え、複数視点映像から高精細な3Dモデルを生成し、水中映像に含まれるノイズや光学影響を低減。現場をリアルなデジタル空間として再現することができる。これらの技術を広く公開するのは、CEATEC 2026の展示が初めてとなる。

 権藤氏は、「展示では、藻場の現状を可視化するだけでなく、今後の保全に向けたシミュレーション効果の検証にも有効であることを伝えるほか、3Dデータを活用することで、港湾設備や洋上風力発電装置の海中インフラ点検などにも活用できることを提案する。海中でのひび割れや劣化などの確認は、専門知識を持ったダイバーが必要だったが、こうした分野にも活用できることを示し、社会実装を加速したい」と意気込む。

 展示エリアには、大型の水槽を用意し、水中のカメラ映像から3Dデータを生成する様子をデモンストレーションする予定だ。

深刻な人材不足の解消へ「若い人たちに海洋産業の可能性に気付いてほしい」「海洋STEAM教材」で、JAMSTECの55年の研究・知見を学校現場に展開

 一方、JAMSTECでは「次世代の海洋人材育成」をテーマに展示を行う。海洋デジタル社会パビリオン全体では、海洋産業の未来を発信するとともに、海洋産業における次世代人材の育成や、組織の参画促進を目的に掲げており、JAMSTECの展示内容は、同パビリオンの重要な柱の1つになる。

 JAMSTECは、次世代の海洋人材育成を目的に「海洋STEAM教育」を推進。2023年度からは、JAMSTECの研究成果を活用した「海洋STEAM教材」を学校向けに制作。全国の学校現場での利用を促進するための普及啓発活動を行っているところだ。

JAMSTECのウェブサイトで「海洋STEAM教材ライブラリー」を公開している

 JAMSTECの展示エリアでは、海洋STEAM教材の内容や活用方法について紹介。また、海洋STEAM教育の取り組みについても説明する。

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の市原盛雄氏(企画部門 事業推進部 海洋STEAM推進課長/科学技術教育アドバイザー)

 JAMSTECの市原盛雄氏(企画部門 事業推進部 海洋STEAM推進課長/科学技術教育アドバイザー)は、「JAMSTECは、55年にわたり海洋研究に携わってきた実績がある。さまざまな資料や研究データ、研究者のノウハウを蓄積しており、それらをベースに研究機関ならではの教育コンテンツを開発してきた。学校での授業に教材として活用してもらうための活動を進めており、すでに一部の自治体が採用している」と語る。

 海洋STEAM教材は、小学校高学年から中学生、高校生までを対象としており、「海の生き物と環境の変化」や「深海探査の探究」など、6つのテーマを用意。教員のための指導書や朱書編、カリキュラムスケジュール、学習指導要領対応マップも提供しており、授業を実践しやすいように事例も公開している。

 「海洋デジタル社会パビリオン全体の展示を通じて、若い人たちに海洋産業の可能性に気付いてもらい、関心を持ってもらいたい。また、海洋に関する教育を広げるには、教える人たちを増やす必要がある。海洋STEAM教材を、より広く活用してもらえるように訴求したい」とする。

「海洋STEAM教材ライブラリー」では現在、6つのテーマの教材を提供中
教材の例。教員のための「朱書編」なども用意されている

食、環境、海底資源、海運……次世代に、どのような海を手渡すのか?学生たちがコンテスト通じて提言、「海洋×アート」作品としてCEATECに展示

 JAMSTECの展示エリアでは、学生企画「Blue-Shrimp Summit.2026」についても紹介する。これは、東京藝術大学発のスタートアップ企業である株式会社アートチューンズ(artTunes)が主催・運営する「海の未来を考える次世代サミット型コンペティション」であり、JAMSTECは共創パートナーとして参画している。

 「次世代に、どのような海を手渡すのか」をテーマに掲げ、高校生・高専生・大学生たちが3人1組となり、「次世代人材×海洋×アート」というユニークな切り口から、食・環境・海底資源・海運などを題材に、海の未来の創造および海の課題解決を図る。

 5チーム15人が参加し、JAMSTECの研究者や専門家と対話をしながら、共同提言「Ocean Statement 2026」を導き出すとともに、これを起点にした5つのアート作品を制作して、「海洋デジタル社会パビリオン」に展示することになる。

 市原氏は「アートチューンズが掲げる『全ての人類の才能が花開く藝術的な社会を』というビジョンと、JAMSTECが推進する『STEAM教育を通じて海洋の未来を担う人材を育てる』という方向性が合致したことで実施した企画である。学生たちの柔軟な発想で、海の未来を考えてもらった。『海の甲子園』とも言える取り組みに位置付け、今後も継続的な開催を進めたい」と述べた。

 海洋産業における人材不足は深刻だ。

 水産・海洋高校は全国46校あり、約7000人の生徒が在籍するが、全高校生の0.2%にとどまっているという。一方で、日本の貿易の99.6%(重量換算)が海運によるものであり、船員不足は国民の生活インフラを維持するうえで深刻な課題になっている。日本は、政府が戦略17分野の1つに「海洋」を掲げており、海洋立国と言われながらも、海洋産業を支える次世代人材の育成には大きな課題があるというわけだ。

 市原氏は「海洋を学びたいと思ってもらうことが必要であり、そのためには、海洋産業の未来が明るいことを示さなくてはならない」と前置きし、「JAMSTECの展示を通じて、多くの来場者に次世代の海洋産業に関心を持ってもらいたい。海洋産業に関連する企業だけでなく、これまでは海洋産業とは関わりがなかった企業とも対話をして、海洋産業におけるビジネスチャンスを模索してもらいたい」と語る。

コンファレンス「日本の海に、ブルーシリコンバレーは作れるのか?」に注目スシローや水産大手も集結する、異業種連携コンソーシアムの詳細が明らかに

 CEATEC 2026では、海洋デジタル社会パビリオンに関連したコンファレンスとして、3つのセッションを用意している。

 産官学金による海洋産業創出について議論する「日本の海に、ブルーシリコンバレーは作れるのか?」、海の未来を担う次世代リーダーたちが登壇する「次世代の才能が、海の未来を担う~Blue-Shrimp Summit」、新たな海洋産業の創出のモデルケースを発信する「海を守ることが、地域の稼ぎになるか? ― 地域沿岸スマート環境・水産バレー構想」である。

 また、海洋デジタル社会パビリオンのブース内には、「STEAMラボ」の名称でピッチステージが設置され、会期中、出展者が毎日登壇する。来場者は海洋産業に関する学びを得ることができる。

 なかでも注目したいのが、10月15日16時30分から国際会議場2FコンベンションホールBで開催される「日本の海に、ブルーシリコンバレーは作れるのか?」である。

 富士通や高知銀行のほか、回転寿司チェーン「スシロー」などの事業を展開する株式会社FOOD & LIFE COMPANIES、水産会社である株式会社極洋の関係者が登壇。このセッションのなかで、海洋分野の産業横断型共創プラットフォームの確立を目指す「オーシャンテックコンソーシアム」について紹介される予定だ。

「持続可能な海の豊かさ」次世代へ引き継ぐ。海の可視化。産業の自動化……業界を越えた「海洋DX」の横串を通す

 「オーシャンテックコンソーシアム」は、JEITAが立ち上げ準備を進めているもので、2027年4月に正式な設立を予定している。

 デジタルによる「海の可視化」と「産業の自動化」を実現し、持続可能な海の豊かさを次世代へ引き継ぐために、海洋・水産事業者、IT・エレクトロニクス企業、スタートアップ企業、アカデミアおよび研究機関、自治体などが共創する新たな枠組みの構築を目指しており、海洋産業における課題を起点にした共創とともに、オーシャンテックを訴求することで、より多くのユーザー認知と理解を促進し、海洋産業の発展に貢献することが目的だ。

 オーシャンテックコンソーシアム準備会のリーダーを務める富士通の山田氏は「昨年のCEATEC 2025の会場で行われた海洋イノベーションに関するパネルディスカッションに登壇した際に実感したのは、それぞれの取り組みが個別のものになっており、このままでは広がりや継続性に限界が生じるという点だった。ほかのパネリストも同様のことを感じていたようだ。そこで、それぞれ立場や業界を越えて、海洋に携わる人たちが共創できる場を作ることが日本の海洋産業の発展につながると考えた」と振り返る。

 2025年末からJEITAが中心となって、発足準備に向けた議論をスタート。複数企業への呼び掛けを行い、2026年3月に準備会を発足。現在、2027年4月のコンソーシアム設立に向けて活動を進めているところだ。

 ちなみに、「オーシャンテック」という名称は、山田氏の発案だという。「フィッシュテックやシーテックなどの候補もあった。また、一般的にはマリンテックと呼ばれることもある。だが、海洋産業を広く捉えたいという狙いから、名称をオーシャンテックに決めた」と語る。海洋産業に関わる幅広い企業・団体に参加を呼び掛けていく考えだ。

 山田氏によると、オーシャンテックコンソーシアム準備会では「漁業に携わる人口が減少し、海の環境を守られないと、将来、魚を食べることができなくなる時代が訪れる。漁村が活性化し、若い人たちにとって魅力的に感じてもらえる産業にするにはどうしたらいいか、テクノロジーによって漁村をどう活性化するか、海を守り、海洋産業をどう発展させていくか。あるいは、洋上風力発電といったインフラの稼働が海にどう影響するのかといった環境の領域までをカバーしながら議論を進めている」という。

 オーシャンテックコンソーシアム発足の正式発表は、CEATEC 2026会期初日の10月13日の予定。コンソーシアムの会長には、FOOD & LIFE COMPANIES上席執行役員の荒谷和男氏が就任し、副会長は富士通、極洋、古野電気から選出。約15社が設立メンバーとなる見込みだ。

 また、コンソーシアムには4つのワーキンググループ(WG)を設置する計画であり、漁業の高度化やスマート養殖による新たな「価値創出」、設備保全や異常検知、環境負荷の低減などによる「ファシリティおよび環境価値の向上」、観測やセンシングなどによって収集したデータの共有化や標準化に取り組む「データ利活用」、ビジネスモデルの構築や人材育成、普及活動、政策連携などを行う「経済・社会実装」をテーマに設定。それぞれ「海を活かす」「海を守る」「海を知る」「海でめぐる」という観点で活動することになる。

 例えば「データの利活用」においては、海洋データの相互連携と価値創出を推進する「海洋データエコシステム」の実現を目指すことになる。ここでは、海上保安庁が運営している海洋状況表示システム「海しる」との連携や、富士通が取り組んできた海洋デジタルツインの活用も想定できそうだ。また、海洋人材の育成においては、JAMSTECが取り組んできた海洋STEAM教育のコンテンツをベースに、小・中・高校・大学の探究学習へと拡張。海洋産業に関連した新たなテーマの教材開発も視野に、より具体的な海洋人材の育成につなげる。

 オーシャンテックコンソーシアム準備会でWG4リーダー候補となっているJAMSTECの市原氏は、「海洋分野における教育という点でも、多くの機関が取り組み、成果が挙がっている。これを個別の取り組みに終わらせず、横串を通し、体系的な教育ができるようにしたい。そこに、海洋STEAM教育の成果を役立たせたい」とする。

 オーシャンテックコンソーシアムの活動を通じて、海洋STEAM教育の教材ではカバーしていないスマート養殖に関する教材を開発するなど、新たなコンテンツをそろえることもできそうだ。

 オーシャンテックコンソーシアムが、日本の海洋産業の発展にどう貢献するのか。また、人材育成にどう貢献するのか。そして、異業種連携を通じて、どんな新事業やユースケースを創出できるのか。海洋産業を魅力的なものに進化させ、次世代の海洋産業を発展させるための一歩として、オーシャンテックコンソーシアムの取り組みに期待がかかる。