インタビュー

新スパコン「理究」が本格稼働へ。「ROQUO」で量子HPC連携も加速――理研が手掛ける計算基盤の最前線

CEATECのブース展示・講演で紹介~「AI for Science」の先にある「AI for Industry」も見えてくる

 国立研究開発法人理化学研究所(理研)計算科学研究センター(R-CCS)が、10月13日~16日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催される「CEATEC 2026」に出展する。R-CCSとしての出展は3年連続となり、今年は「X(Transformation)パーク」エリア内にブースを構える(ホール6 ブース番号6H101)。

 X(Transformation)パークでは、社会と産業の変革を多角的に捉え、8つのテーマを掲げている。そのなかでR-CCSは「R&D/戦略」の観点から展示を行う。また、展示と連動するコンファレンスや、展示ホール内に設置したステージでの講演を通じて、「AI for Science(科学のためのAI)」を加速する科学研究環境や計算環境の構築、産業イノベーションに向けた研究開発の最前線を示すことになる。

 日本政府は、AI for Scienceを国家戦略の1つに位置付け、日本が世界トップレベルの科学技術立国であり続けるためには、計画的・集中的に、この取り組みを推進していくことが不可欠であるとしている。R-CCSの展示やコンファレンスを通じて、日本におけるAI for Scienceの最前線の取り組みを知ることができるだろう。

「AI for Science」の推進は国家戦略の中核。さらに学術分野から「AI for Industry」として民間企業・産業領域にも

 AI for Scienceは、「科学の再興を具現化する研究システム刷新の中核的手段」と位置付けられている。

 日本政府が打ち出した「第7期科学技術・イノベーション基本計画」では、国家として科学を再興し、科学技術・イノベーション力を抜本的に強化しなければ、日本は浮上の機会を失いかねないとの強い危機意識を示しながら、今後の科学技術やイノベーションを巡る取り組みの1つとして、「AIと科学の融合による研究開発パラダイムの転換」の重要性を指摘。それに向けて「AI for Scienceによる科学研究の革新」を掲げるとともに、 AIを「国家戦略技術領域」に定義している。

 また、文部科学省は今年3月、「AI for Scienceの推進に向けた基本的な戦略方針」を発表。そのなかで「AI for Scienceの推進は、研究手法の高度化にとどまらず、科学技術政策、産業政策、安全保障政策を横断する複合的な政策である。個別分野や単独施策の枠を超え、国家戦略の中核として政策横断的に推進すべき基盤領域になる」と提言している。

 R-CCSの太田良隆氏(高度研究支援専門職)は、「CEATEC 2026の出展内容は、AI for Scienceの取り組みを前面に打ち出したものになる」と前置きし、「これまでのAI for Scienceは、研究における1つの潮流という捉え方だったが、日本の科学技術基盤や産業競争力の向上、社会課題の解決、国際連携の強化にも関わる重要な戦略と位置付けられるようになった。CEATEC 2026のR-CCSブースでは、この動きを明確化するとともに、国の施策と連動しながら、R-CCSが推進しているAI for Scienceに向けた計算基盤環境の整備、AI for Scienceによる科学研究プロセスの変革、産業イノベーションに向けた研究開発の最前線を、展示およびコンファレンス、講演を通じて伝えていく」と語る。

「AI for Science」とは

 R-CCSでは、2023年ごろからAI for Scienceへの取り組みを前面に打ち出し、2024年4月にはR-CCS内に「AI for Scienceプラットフォーム部門」を発足させるなど、計算環境の構築・運用・高度化、高度な学習・推論のためのソフトウェア開発などに取り組んできた経緯がある。

 また、理研の五神真理事長は「科学知創出」という言葉を用いて、科学的な知見に対する重要性が高まっていることを指摘。政策判断や産業変革、社会課題解決にも科学的知見を取り入れる重要性を示してきた。

 CEATEC 2026では、こうした観点からも、「AI for Science」が果たす役割や、「AI for Industry」につながる取り組みを紹介することになる。

 さらに、米国では、AI for Scienceを中核に据え、国家規模で最先端の計算基盤を整備する「Genesis Mission」を推進しており、日本は世界初の国際パートナーとして、このプロジェクトに参画している。

 R-CCSの太田氏は、「米国が、日本の科学技術力に期待していることの証であり、理研が有している幅広い研究データ、計算資源の整備、実験の自動化などの先進的な取り組みに対しても高い関心を寄せている。理研が持つ成果は、AI for Scienceにおける世界的な動きのなかで、日本が強みを発揮でき、日本の研究開発における主権確立に向けたアプローチにもつながると考えている」とする。

 また、「Genesis Missionでは、研究課題に対する連携した取り組みだけでなく、計算資源の共有も検討されている。日本の共同研究者が、より多くの計算資源を活用した研究が行えるようになる」とも語る。

 そして、「学術分野の研究者たちは、AIの登場やAIの急激な進化に伴い、いままでのやり方を変え始めているところだ。CEATEC 2026という産業界の研究者・技術者が集まる場で、最先端の事例や現在進行している取り組みを紹介することで、民間企業においてもAI for Scienceに対する関心をより高めてもらいたい」とも語る。

AIは“質問に答える道具”ではなく、科学サイクルを高速に回すための“研究者のパートナー”

 R-CCSがCEATEC 2026の出展テーマに掲げたのが「AI時代に、日本の科学技術基盤をどう築くか―AI for Scienceによる科学知創出と次世代研究基盤―」である。

 展示ブースは、このテーマに則り、AI for Scienceの全体像を紹介する「主要メッセージゾーン」と「取り組み紹介ゾーン」で構成する。

「CEATEC 2026」に出展する国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究センター(R-CCS)の展示ブースイメージ(ホール6 ブース番号6H101)

 R-CCSの干場真弓氏(高度研究支援専門職)は、「主要メッセージゾーンでは、グラフィカルなパネル展示により、AI for Scienceの全体像を理解してもらい、取り組み紹介ゾーンでは、来場者がそれぞれに関心の高いところを個別に深掘りしてもらうという流れを作った」と、ブース構成の狙いについて語る。

 「主要メッセージゾーン」では、なぜいま、AI for Scienceが必要なのか、それによりどのような未来が想定されるのかを、分かりやすく解説する。「AI for Scienceに関して具体的なイメージを掴んでいる人はまだ少ないというのが実態である。R-CCSのブースではAI for Scienceの全体像を整理し、来場者が理解しやすい展示を行うことを心掛けた。AI for Scienceに関する疑問やコメントも、ぜひお寄せいただきたい」(干場氏)という。

 AI for Scienceの世界では、AIは、研究者の質問に答える道具ではなく、研究者とともに研究を進めるパートナーへと進化することを提示。研究者とAIが一緒になって科学的な問いを立て、仮説をもとに研究を推進。さらにAIが自動実験やシミュレーションを行い、結果を解析し、検証した内容を再び問い直すという「科学サイクル」を高速に回すことができるようになる。

 「この仕組みを構築するためには、大規模な計算基盤と、それらを連携させて効率的に利用できる技術が不可欠になる。主要メッセージゾーンでは、それに向けたR-CCSの取り組みを提示するほか、大規模シミュレーション、ビッグデータと、AIの連携による研究事例についても紹介する」(干場氏)としている。

 AI for Scienceにつながる具体的な事例として、AIを活用したシミュレーションによる巨大地震の被害予測、理研が持つ大型放射光施設「SPring-8」と連携したインフラ劣化診断、未解決の病に挑む創薬への取り組み、ものづくりや街の様子を仮想空間に再現するデジタルツインなどを紹介する。

「理究」「富岳NEXT」から「ROQUO」「ibm_kobe」「黎明」まで――理研が手掛けるAI for Scienceのための計算基盤を紹介

 一方、「取り組み紹介ゾーン」では、AI for Scienceに向けた具体的な取り組みを個別に紹介する。AI for Scienceを加速する研究環境の構築や、新たなスーパーコンピュータである「理究」、2030年度の稼働に向けて整備が進んでいるフラッグシップスーパーコンピュータ「富岳NEXT」、量子HPC連携プラットフォームなどの計算基盤構築に加えて、多くの研究者が活用している「富岳」による研究成果も紹介する。

「理究」が稼働開始、NVIDIA GB200 NVL4による400ノードのシステム構成

「理究」

 本格稼働に向けた整備が進むスーパーコンピュータ「理究」は、「AIによる科学研究の革新」を目的として設計。AI for Scienceを推進するための新たなスーパーコンピュータと位置付けている。

 兵庫県神戸市のR-CCS内に設置しており、NVIDIA GB200 NVL4搭載の400ノードのシステム構成とし、1600基のNVIDIA Blackwell GPUによる計算ノードを実現している。1ノードあたり4基のGPUと、2基のGrace CPUを搭載し、FP8(8ビット浮動小数点演算)で15.539EFLOPS(エクサフロップス)以上、FP64(倍精度浮動小数点演算)で64.16PFLOPS(ペタフロップス)以上という性能を持つ。

 展示ブースでは、科学技術振興機構(JST)の「AI for Science革新的研究推進事業(ARiSE)」に採択された「抗原特異的免疫デジタルツインによる生成免疫学の創成」および「AI for Materialsを実現するマテリアルAI基盤の構築」についても説明する予定だ。この採択内容を広く説明する機会は、今回が初めてとなる。

次世代スパコン「富岳NEXT」、アプリケーション性能は「富岳」の最大100倍

 「富岳NEXT」では、2030年度ごろの運用開始を見据えた開発・整備スケジュールを示すほか、情報産業における戦略的不可欠性の確保とグローバル市場への展開を目指す「Made with Japan」の意義、「富岳NEXT」のシステムアーキテクチャ、アプリケーション性能で「富岳」比最大100倍の向上を図るための高度化・高速化手法などについて説明する。

 「富岳NEXT」は、AIとHPCの融合時代における世界標準となる次世代計算基盤の構築を目指しており、富士通およびNVIDIAとの共同開発を推進。CPUについては富士通が開発する「FUJITSU-MONAKA-X」の仕様の検討を、加速部についてはNVIDIAが開発を進めているGPUをベースに、AI・HPCアプリケーションの加速に向けた仕様の検討を3者で進めている。また、NVIDIAの技術を基盤としたCPUとGPUの密結合により、高性能と高効率を高い次元で両立させることを目指す。

 現在、詳細設計のフェーズに入っており、各コンポーネントの設計や、今後設計するコンポーネントに対するパラメータの策定や仕様の具体化を進めているところだ。

 なお、「富岳NEXT」の開発においては、米国のGenesis Missionとの連携を強化するとともに、オープンソースソフトウェアベースの開発やAIOpsによるシステム運用管理、電力制約下での適応的なシステム運用に向けた取り組みも進めており、国内先端技術の新たな採用についても継続的に検討していくことになる。

「ROQUO」「ibm_kobe」「黎明」を高速ネットワーク接続する「JHPC-quantumプロジェクト」

 量子HPC連携プロジェクトに関する展示では、理研とソフトバンクが共同提案した「JHPC-quantumプロジェクト」を中心に紹介する。

 同プロジェクトでは、量子コンピュータとHPC(スーパーコンピュータ)を、学術情報ネットワークのSINETでつなぎ、量子とHPCがそれぞれ得意とする分野の計算を組み合わせて使うことができる研究基盤「量子HPC連携プラットフォーム」を構築。これにより、新しい薬や材料の開発、宇宙の謎の解明など、さまざまな科学研究の加速を目指す。

「ROQUO」

 理研では、量子HPC連携プラットフォーム向けスーパーコンピュータ「ROQUO(ろっこう)」を、今年6月から運用開始したところだ。「ROQUO」は、NVIDIA Blackwell GPUを540基搭載。NVIDIA Grace Blackwellスーパーチップ搭載ノード135台で構成しており、FP64で21PFLOPS 以上の性能を誇る。

 また、「ROQUO」は、「富岳」と同じ建屋内に設置しており、低遅延の高速ネットワークで密結合した計算環境を整備。さらに、超伝導型量子コンピュータである「ibm_kobe(IBM Quantum System Two)」や、埼玉県和光市の理研和光キャンパスに設置しているクオンティニュアム製イオントラップ型量子コンピュータ「黎明(れいめい)」とも高速ネットワークで接続し、量子HPC連携によるハイブリッド計算の実証を行うことができる環境を整えている。

量子HPC連携プラットフォーム「JHPC-quantumプロジェクト」

 「ibm_kobe」は、米国外で世界初導入となるIBMの次世代量子コンピュータ「IBM Quantum System Two」で、Heronチップを搭載している。一方、「黎明」は56量子ビットへのアップグレードを経て、11月から同プロジェクトでの利用を再開する予定で、HPCとの統合環境において、より大規模かつ高精度な量子計算が可能となる。

 展示ブースでは、量子コンピュータの特性を紹介するとともに、量子コンピュータとHPCを連携することで生まれるメリットなども紹介。さらに、JHPC-quantumプロジェクトの一環として実施しているテストユーザープログラムの成果についても公表する。同プログラムは、3回にわたる公募を通じて、材料や化学、ものづくり、情報通信、医療などのさまざまな分野において41件の採択があったという。

 なお、11月には米国シカゴにおいて、世界最大級のスーパーコンピューティング国際会議「SC26」が開催される予定だ。同会議ではコンピューティングに関する優れた成果を表彰するACMゴードン・ベル賞が発表されるが、理研が参画する国際共同研究プロジェクトが、賞の最終候補に選出されている。理研に設置している「富岳」とIBM製量子コンピュータなどを組み合わせて、過去最大規模となる大型タンパク質複合体の電子構造を計算し、モデル化するというもので、量子HPC連携が実際の科学計算に適用できる段階に近づいていることを示す成果といえる。

理研ブースは、高さ約3メートルの「富岳」オブジェが目印

 「富岳」を活用した研究成果の紹介コーナーでは、暮らしと産業を支える計算科学という観点から、8件の事例について紹介する。

「富岳」

 神戸市やNTTドコモとともに、神戸市内の街と人の動きを再現し、災害時の混雑や避難方法を比較する「神戸のまちを再現し安全な避難を考える」といった取り組みや、阪神高速道路が全長約2700メートルの長大橋全体と周囲の風を約2億要素に分けて「富岳」で計算することで、耐風設計に役立つ知見を獲得した「長大橋全体の風を計算し耐風設計に生かす」といった成果を紹介する。

 干場氏は「富岳がさまざまな領域において活用され、成果を挙げていることを見てもらえる」と述べている。

理研ブースの入り口には「富岳」の高さ約3メートルのオブジェ

 ちなみに、展示ブースの入り口には、高さ約3メートルとなる「富岳」のオブジェが展示される。「富岳」の実物は約2.2メートルであるため、それよりも大きなサイズだが、CEATEC 2026会場において撮影スポットの1つになりそうだ。

 また、「富岳」をモチーフにした重ね捺しスタンプを用意。浮世絵風のデザインとなっており、来場した記念にこのスタンプを入手するのもいいだろう。

若い研究者・学生たちに「AI for Scienceのその先」を感じとって欲しい。年間100名超のインターンシップなど、人材育成・人材交流の取り組みも展開

 「取り組み紹介ゾーン」では、R-CCSによる人材育成事業に関する展示も行う。「世界と戦える人材を育てる」ことを目標に、R-CCSが産学官と連携して推進している人材育成や人材交流への取り組みについて紹介する。

 ここでは、大学や高専の国内機関や海外から100人を超えるインターンシップを毎年受け入れていることや、学生や若手研究者などを対象に演習を行うスクールの開催、企業や研究機関の技術者および研究者向けに実施しているソフトウェア講習会の開催などの活動を紹介。さらには、学生向け計算科学分野国際コンペティション「2025 APAC HPC-AI Competition」の支援を行い、これを受けた参加8チームのうち4チームが入賞した成果を報告する。今年度もAPAC HPC-AI Competitionへの参加者の支援を進めている。

インターンシッププログラム受け入れ数の推移
「2025 APAC HPC-AI Competition」入賞者(写真提供:株式会社エリートネットワーク)

 太田氏は「R-CCSは、日本の計算科学の中核として、実践で培った技術と知見を活用し、産学官と連携して人材育成と交流を推進している」とし、「若い研究者や学生たちに最先端の研究成果を見てもらうだけでなく、AI for Scienceのその先を感じとってもらい、自らがAI for Scienceに対して、どう関わることができるのかといったヒントを見つけてほしい」と呼び掛ける。

「AI時代に、日本の科学技術基盤をどう築くか」コンファレンスや講演も充実「AIとCAEの共進化」、自動車設計における「AIの創造性の制御」など、産業領域での応用もテーマに

 注目されるのが、会期3日目となる10月15日13時から国際会議場2FのコンベンションホールBで行われるコンファレンスである。「AI時代に、日本の科学技術基盤をどう築くか-AI for Scienceによる科学知創出と次世代研究基盤-」をテーマに、AI for Scienceの現状と未来を解説する内容となっている。

 文部科学省の栗原潔氏(研究振興局 計算科学技術推進室 室長)による「AI for Scienceをめぐる政策動向と日本の研究基盤戦略」、理研の泰地真弘人氏(最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部 科学研究基盤モデル開発プログラム(AGIS)・プログラムディレクター)による「理研AGISが目指すAI for Scienceと科学知創出」、秋山泰氏(東京科学大学 情報理工学院情報工学系 教授/R-CCS 客員主管研究員)による「AI for Scienceを実装する研究基盤・研究現場」の3つの講演が行われる。

 また、3氏が登壇し、「AI for Scienceによる科学知創出基盤を、日本の科学技術・産業競争力にどうつなげるか」と題したパネルディスカッションも行われる。モデレーターは「マイナビニュース TECH+」編集長の小林行雄氏が務める。

 R-CCSの太田氏は「このコンファレンスでは、AI for Scienceに関する大きな方針や、方向性を示すことになる。また、AI for Scienceに関する国の施策や、R-CCSの取り組みなどについて説明する。R-CCSのコンファレンスには、研究者だけでなく、経営層、政府関係者などの聴講が多い傾向がある。研究者だけでなく、意思決定者をはじめとして多くの人に参加してもらいたい」としている。

 また、展示ホールのX(Transformation)パーク内に設置される「Xステージ」(ホール5)では、10月16日14時15分から16時30分まで、4つの講演が連続して行われる。

 「スパコン・AI・量子計算、その先へ―産業イノベーションを加速する次世代計算技術―」を統一テーマとし、次世代計算技術を用いた産業イノベーションを加速する最先端の4つの研究開発事例を、研究者たちがそれぞれに解説する。

 講演は、佐藤三久氏(R-CCS 量子HPC連携プラットフォーム部門 部門長)による「量子・スパコンハイブリッド計算による量子優位性・有用性の実証を目指すJHPC-quantumプラットフォーム」、西口浩司氏(名古屋大学 大学院工学研究科 准教授/Katachi Dynamics株式会社 代表取締役社長/R-CCS AI for Scienceプラットフォーム部門上級研究員)による「AIとCAEはどう共進化するのか:3D生成AIとマルチフィデリティCAEが拓く設計探索の未来」、坪倉誠氏(R-CCS 複雑現象統一的解法研究チーム チームプリンシパル)による「AIとものづくりが出合うとき ~AIの創造性を制御せよ。自動車空力設計を例に~」、芳賀臣紀氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究開発部門 主任研究開発員)による「スーパーコンピュータ富岳を活用した液体ロケットエンジン燃焼器の大規模シミュレーション」が行われる。

 R-CCSの太田氏は「産業領域での応用にフォーカスした内容としている。HPCとの連携により、量子コンピュータが実際の科学計算に適用できる段階に近づいていることを示すほか、製造現場を中心にした3D生成AIの産業利用が進み、AI CAEの民主化が推進されていること、自動車設計においては人の感性との融合にも踏み込んでいること、JAXAでのH3ロケットの試験用モデルの複雑な大規模シミュレーションを富岳で行えるようになったことを紹介する」という。

 R-CCSでは「自動車用次世代CAEコンソーシアム」を設置し、国内の主要な自動車メーカーをはじめとした14社の企業と、大学や研究機関として11組織が参加しているという。また、「燃焼システム用次世代CAEコンソーシアム」では、重工業メーカーや電力会社、航空エンジンメーカーなど13社が参加し、大学およびJAXAをはじめとする研究機関が14組織参加しているという。こうしたコンソーシアム活動を通じた産業利用の成果も紹介することになる。

 講演を通じて、AI for Scienceの先にある「AI for Industry」の具体的な事例を示すことができそうだ。

 太田氏は、「CEATECは、IT関連の展示会としては国内最大級のイベントであるとともに、さまざまな業界から来場者が訪れる。また、今年は『Japan Mobility Show bizweek 2026』との併催により、自動車産業からも多くの来場者が見込まれる。政府、自治体、研究機関、学生などからも幅広い来場が期待できる」とし、「社会課題への対応や、産業および社会構造の変革に向けて、いまの最先端技術への取り組みを示すだけでなく、将来の技術を提示する場にもなる。だが、今年は、主に現場に近いテーマを取りそろえ、民間企業が関わっている取り組みも積極的に紹介する。AI for Scienceが、学術利用だけでなく、日本の産業競争力の強化に向けて大きな影響を持った取り組みであることを理解してもらうきっかけにしたい。そして、AI for Scienceに向けた理研の取り組みにも注目してもらいたい」と語った。

 AIの利活用が急速に広がるなかで、産業界においても、AI for Scienceは重要なテーマだ。その全体像を、理解するきっかけとして、R-CCSによる展示とコンファレンス、講演は、最適なものになりそうだ。

CEATEC 2026見どころガイド