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「ウイルスバスター」最新版発売、ランサムウェアの先回り機能を搭載、LINEメッセージ内の危ないURL対策も

トレンドマイクロ株式会社の大三川彰彦取締役副社長(8月31日に行われた記者発表会で)

 トレンドマイクロ株式会社は1日、セキュリティソフト「ウイルスバスター」シリーズの最新版を発売した。Windows版、Mac版、Android版、iOS版、Fireタブレット版のセキュリティソフト/アプリが提供されるが、主にWindows版とAndroid版で新機能の追加や機能強化が行われている。

Windows版では、ランサムウェア対策を強化

 Windows版では、PC内のファイルを勝手に暗号化して利用できないようにした上で、その身代金を要求してくる不正プログラム“ランサムウエア(身代金要求ウイルス)”への対策機能を強化した。

 まず、「不正暗号化監視」機能の検出ロジックを強化するとともに、ファイルの「自動バックアップ」機能を実装した。万一、未知のランサムウェアがPCに侵入してしまった場合でも、ファイルを暗号化・変更しようとする不審な動作を検知した時点で、ウイルスバスターがそれらのファイルを自動的にバックアップ。暗号化されてしまった後でも、バックアップからファイルを復元するという。これまでウイルスバスターの企業向け製品で提供していた機能を、コンシューマー向け製品にも実装したかたちだ。

 さらにコンシューマー向け製品独自の新機能として「フォルダシールド」を搭載。ユーザーがあらかじめ指定した「ドキュメント」などのフォルダーに対して、ホワイトリストに登録されている正規プログラム以外のプログラムがアクセスするのをブロックする。不正プログラムが正規ブログラムに偽装する手口について検知できる機能も搭載しているという。

「フォルダシールド」の設定画面
「フォルダシールド」のブロック画面

 このほか、Acrobat ReaderとJavaが脆弱性のある古いバージョンだった場合に、ポップアップで最新バージョンへの更新を促す機能を搭載した。インストールされているソフトが脆弱性のある古いバージョンのままになっていないかチェックする機能は従来より搭載しており、ウェブブラウザーやOSとともに配布されるFlash PlayerやSilverlightのようなソフトについては古いバージョンだった場合に修正ボタンで更新できるようにしていたが、Acrobat ReaderとJavaには対応していなかったのだという。

Android版では、LINEメッセージ内の危ないURLを検知可能に

 Android版の新機能としては「メッセンジャーセキュリティ」がある。これは、メッセンジャーアプリ上でやり取りされるURLからフィッシングサイトや不正アプリダウンロードサイトなどの不正サイトに誘導されるのを防ぐ機能。不正URLと判定された場合に、「安全でない可能性のあるリンクが検出されました」「このWebサイトにアクセスしたり、他の人に共有したりしないでください」といった警告を表示する。現時点では、LINEとWhatsAppに対応している。

 トレンドマイクロによると、TwitterやFacebookなどでやり取りされるURLについては従来より、そのリンクを開こうとしてURL情報がブラウザーアプリに渡される段階でウイルスバスターがチェックし、不正URLの判定・警告を行っていたという。しかし、LINEなどではアプリ内にブラウザー機能があるため、ウイルスバスター側からURLをチェックできなかったという。それを今回、テキストの音声読み上げなどを行うために用意されているAndroid OSのアクセシビリティ機能のAPIを介して、LINEアプリ上に表示されているURLの情報をウイルスバスターが取得する手法を導入。アプリ内ブラウザー型のメッセンジャーアプリに対しても、不正URLの検知に対応できたとしている。

 Android版においても、イントールされているアプリの脆弱性をチェックする機能を新たに搭載した。ただし、こちらは脆弱性のある古いバージョンかどうかをチェックするというものではなく、アプリの設計・実装(コーディング)に脆弱な部分がないかをチェックするものだ。

 例えば、アプリがHTTPSで暗号化通信をすべきところを、SSL接続のエラーを無視して平文で通信するような実装をしている場合などに、「セキュアなプロトコルが使用されていないため、プライバシーの侵害やデータの不整合が発生する可能性があります」(安全でない通信)と指摘して注意を促す。

 このほか、「権限許諾の表示が十分でないため、一部の内部情報が意図せず使用される可能性があります」(権限許諾の不備)、「アクセスが容易な場所にデータが保存されるため、意図しないデータアクセスの可能性があります」(データの公開範囲設定不備)といったパターンもある。

「メッセンジャーセキュリティ」の警告画面
アプリの脆弱性チェック機能

24時間365日のサポートサービスをバンドルしたパッケージもラインアップ

 ウイルスバスター最新版は、「トレンドマイクロ・オンラインショップ」でのダウンロード販売が9月1日にスタートした。追って8日より、店頭でのパッケージ版・POSA版の販売を開始する。また、ウイルスバスターの既存ユーザーでライセンス期間内であれば、新規購入することなく最新版にアップデートできる。

 マルチデバイス対応の「ウイルスバスター クラウド」は、Windows/Mac/Android/iOS/Fireタブレットの端末3台までで使用可能。価格は、1年版のダウンロード版が5380円(税込)、同パッケージ版がオープン価格。

 PC/スマートフォンやインターネットの接続トラブルなどの問い合わせに24時間365日対応するサポートサービスをバンドルした「ウイルスバスター クラウド+デジタルライフサポート プレミアム」もラインアップしている。価格は、1年版のダウンロード版が7980円(税込)、同POSA版がオープン価格。サポートサービスの対応時間が従来の9~24時から、最新版では24時間へと拡張された。また、PCの機種やOSの種類、利用しているソフト、PCの画面など、問い合わせを行ったユーザーのPCで何が起きているかをサポート担当者が把握するためのサポートツールについて、従来より提供しているWindows版に加えて、Mac版も提供を開始した。

 このほか、スマートフォン/タブレット用のウイルスバスターについては、「ウイルスバスター モバイル」としての単体販売もある。価格は、1年版のダウンロード版が3065円(税込)、同POSA版がオープン価格。Android/iOS/Fireタブレットの端末1台で使用できる。Android版とiOS版については、トレンドマイクロ・オンラインショップのほか、それぞれGoogle Play(1年版3065円、月額版300円など)、App Store(1年版3000円、月額版360円など)でも購入できる。

「ウイルスバスター クラウド」
「ウイルスバスター クラウド+デジタルライフサポート プレミアム」
「ウイルスバスター モバイル」