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IPv6デフォルト化が進展するも、トラフィックのほとんどがGoogle(動画)、次なるステップは国内コンテンツ/サービス側の対応
2016年11月28日 19:26
IPv6普及・高度化推進協議会は28日、日本国内にけるIPv6対応状況を発表し、NTT東西の「フレッツ光 ネクスト」におけるIPv6化率が9月時点で20.5%に達したことを明らかにした。協議会によれば、フレッツ光 ネクストは全FTTHサービスの約3分の2の1800万を超えるユーザーを抱える国内最大規模のFTTHサービス。協議会の専務理事を務める東京大学大学院教授の江崎浩氏は、「IPv6 Summit in TOKYO 2016」カンファレンスに合わせて28日に行われた記者説明会で、「我が国におけるIPv6の普及期に向けた大きなマイルストーンを超えた」と語った。NTT東西以外のFTTHでは、KDDIの「auひかり」がすでに2014年12月の時点でIPv6化率が100%。また、中部テレコミュニケーション(CTC)の「コミュファ光」は、2016年9月時点で88%になった。
記者説明会には、KDDI株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)、BBIX株式会社から担当者が出席。それぞれ提供する通信サービスのIPv6化の状況などを説明した。
KDDIによれば、auひかりにおけるIPv6のトラフィックは「数百Gbpsの規模感」にまで拡大。IPv6接続先のウェブサイトとしてこれを牽引しているのはGoogleであり、約9割を占める。KDDIでは、Google以外のコンテンツプロバイダーにもIPv6が普及することを期待しているという。
また、接続先サービスの種類としては、動画のトラフィックが77%を占めており、そのほかはSNSが8%、ソフトウェアアップデートが5%など。ほとんどが動画であり、一般的なサービスにおけるIPv6移行はあまり進んでいないという。一方、IPv6での接続デバイスは、PCが53.2%、モバイル端末が25.0%だが、テレビも3.5%存在。特定メーカーのネットワーク対応テレビ(ドングルを含む)がIPv6を使用するようになっているとした。
KDDIではこれまで固定網のFTTHを中心にIPv6デフォルト化を推進してきたが、今後はモバイル網でもIPv6のデフォルト化を推進。多様なアプリケーションやIoTでのIPv6利用拡大に期待するとしている。
NTT Comでは、ユーザー宅に設置するNTT東西のホームゲートウェイ(ひかり電話ルーター)へのIPv6接続機能の一体化提供について紹介。それまで外付けのIPv6アダプターや設定作業が必要だったフレッツ光 ネクストにおけるIPv6接続サービスの利用について、ホームゲートウェイに対して機器交換不要でIPv6 PPPoE接続機能を内蔵するとともに、IPv6接続設定を自動化した取り組みを紹介した。これは、一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)加盟のISPが2012年にNTT東西と協議を開始し、2014年7月からISP各社で順次提供が開始されたもの。NTT Comでは、同社も加盟するJAIPAによってISPにおけるIPv6デフォルト化に貢献した事例として紹介した。
BBIXでは、2012年に「Yahoo! BB 光 with フレッツ」において、IPoE方式によるIPv6接続およびIPv6上でのIPv4接続(IPv4 over IPv6)を提供するハイブリッドサービス「IPv6高速ハイブリッド」を提供開始。現在は「SoftBank 光」を中心にユーザーを拡大している。BBIXによれば、IPoE方式の同サービスでは、従来のPPoE方式と比較し、1ユーザーあたりのトラフィックが大きいという。予想を超えてトラフィックが増加しているため、2014年からNTT東西のNGNとの相互接続を急ピッチで増強していることを明らかにした。
江崎氏は、固定網についてはこのように、多くのネットワークプロバイダーでIPv6デフォルト化が進んでおり、ユーザーが特に意識することなくIPv6でインターネットを利用する環境が普及してきていると説明。また、記者説明会の後に開催されたIPv6 Summit in TOKYO 2016では、携帯キャリア3社が登壇する「携帯キャリアにおけるIPv6対応最新状況」と題したセッションにおいて、モバイル網においても同様に、ユーザーが意識することなくIPv6接続となる「IPv6ディフォルトサービス」を発表し、2017年に開始予定であることも発表された(11月29日付記事『国内スマホユーザーを“IPv6デフォルト化”する計画が明らかに、携帯キャリア大手3社が2017年夏ごろ対応開始』参照)。
その一方で、ウェブサイト/サービス側については、政府サイトのIPv6化は順調に進んでいるが、国内コンテンツプロバイダーのIPv6対応が次なるステップだと指摘。江崎氏によれば、IPv6化はコンテンツプロバイダー側にとっても、NATを組むことなくネットワークをシンプルにできるという点で大きなメリットがあるとしており、それはすでに実践した米Facebookなどによっても証明されているとした。
また、協議会では「ユーザーのIPv6利用が本格化するにあたって、各種ウェブサービスやセキュリティサービスも、IPv6対応が正確かつ十分に施されるよう急ぐ必要がある。特に、急激に高まるサイバー脅威への備えとして、個人ユーザーばかりでなく、企業ユーザーでもLANなどでのIPv6対応整備の必要性が高まっている」として、全インターネットユーザーに対してIPv6対応を急ぐよう呼び掛けている。
記者説明会では、協議会の会長を務める慶應義塾大学教授の村井純氏のコメントも紹介された。
「IPv6は、IoT時代の到来を意識して、1992年から研究開発に着手した。2000年ごろから、普及に向けた取り組みを本格化し、世界のプレーヤーや日本政府と連携しながら普及活動を展開してきた。20%を超えたことは、今後のIPv6の普及を加速することになるとともに、IoT時代の情報通信インフラの整備にとって、非常に大きな意味を持っている。」