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2018年にはモバイル広告が1兆円超えの予測、D2C・CCI・電通がネット広告費の共同調査

(左から)株式会社D2Cの中澤雅夫氏、株式会社サイバー・コミュニケーションズの小椋祐二氏、株式会社電通メディアイノベーションラボの北原利行氏

 株式会社D2C、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)、株式会社電通は28日、「2017年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」を発表した。同日には都内で記者説明会を開催。2017年の広告動向を振り返るとともに、2018年にはモバイル広告の媒体費が1兆円を超えるとの予測などが示された。

D2C、CCI、電通の3社共同調査が新たにスタート

 電通では毎年、日本国内の広告費を調査・推計した報告書「日本の広告費」を発行している。マスコミ4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)の広告、インターネット広告、プロモーションメディア(屋外看板や交通広告など)の動向を総合的に解説した構成となっている。今年2月に公開した最新版では、2017年1~12月の状況がまとめられている。

 この2017年版「日本の広告費」のうち、インターネット広告費についてより詳細に解説しているのが、今回発表されたレポート。3社共同体制では初の取り組みとなる。電通メディアイノベーションラボの研究主幹である北原利行氏は「インターネット広告について、より詳細に知りたいという問い合わせが非常に増えており、今回、グループ会社のD2C、CCIが調査した内容も統合して発表させていただいた」と説明。D2CとCCIが2015年から実施している「インターネット広告市場規模推計調査」の内容を盛り込むことで、分析精度のさらなる向上を図ったとしている。

株式会社電通メディアイノベーションラボ研究主幹の北原利行氏

 北原氏の発言を裏付けるように、国内の総広告費におけるインターネット広告費の存在感は年々大きくなっている。「日本の広告費」では、2017年の総広告費を6兆3907億円と推計。前年比では101.6%だった。このうちインターネット広告費は1兆5094億円で前年比115.2%。テレビ広告費が前年比99.1%とわずかながら前年割れする一方、インターネット広告費は4年連続で2桁成長を続けている。

 国際比較でも日本の広告市場は大きい。1位は米国で23兆5735億円と圧倒的だが、2位は中国で9兆5293億円、そして3位が日本の6兆3907億円となっている。また、2018年にはグローバル市場でデジタル広告費がテレビ広告費を追い抜くとの予測を電通イージス・ネットワーク社(英Dentsu Aegis Network)が発表している点にも北原氏は言及。広告業界全体でも、インターネット広告が台頭していることを伺わせた。

国内の媒体別広告費の遷移。インターネット広告の伸びが著しいことが分かる
日本の広告市場は世界第3位

ディスプレイ&リスティング広告は盤石も、ビデオ広告に勢い

 北原氏の全体解説に続いて、D2Cの中澤雅夫氏(営業本部総括部リサーチ担当エキスパート)が国内インターネット広告市場の動向を解説した。まず今回の調査対象となっているのは、広告費のうち、制作費を除いた媒体費(広告を掲載してもらうための料金)の部分で、2017年(1~12月)は1兆2206億円と推計されている。

株式会社D2Cの中澤雅夫氏(営業本部総括部リサーチ担当エキスパート)

 媒体費を広告種類別に分析した場合、その大半を占めるのがディスプレイ広告とリスティング広告である。バナーやテキスト(文字列)、タイアップ(記事風の広告)などに代表されるディスプレイ広告の媒体費は4988億円で、全体の40.9%。一方のリスティング広告は、検索キーワードやコンテンツに連動する広告で、こちらは4831億円、構成比は39.6%。この2つを合わせるとその構成比は8割に達する。

 この領域に食い込んできているのがビデオ(動画)広告で、金額は1155億円、構成比は9.5%となっている。ビデオ広告は2015年ごろからSNSでの広告メニュー化が本格的にスタートしており、順調な伸びを見せている。中澤氏も特に注目している部分という。

広告種類別の構成比

運用型広告、モバイル広告が主流に

 インターネット広告の分野では「運用型広告」と呼ばれる取引手法が広がっている。ディスプレイ広告・リスティング広告などを入札制で取引する仕組みのことで、広告媒体費総額の77.0%にあたる9400億円を占めている。これに対して、一定の広告枠を主に非入札(固定価格)で調達する「予約型広告」は14.4%の1758億円。アフィリエイトなどの「成果報酬型広告」は8.6%で1049億円。

取引手法別の構成比

 デバイス別では、モバイルの存在感が極めて大きい。広告媒体費総額に対して68.1%の8317億円で、これはデスクトップ広告(PCインターネット向け)の31.9%、3890億円をはるかに超える。

デバイス別の構成比

2018年にはモバイル広告だけで1兆円超え?

 インターネット広告媒体費は2014年以降、4年連続で110%台のプラス成長が続いている。この傾向は2018年も継続し、前年比117.9%の1兆4397億円に届くとの予測がなされている。

広告媒体費の推移と、2018年の予測

 そして今回の3社共同調査では、2018年のデバイス別広告媒体費についても推計している。2017年のモバイル広告媒体費は8317億円だったが、2018年には前年比125.3%の1兆417億円、つまり1兆円を超えると予測している。対する2018年のデスクトップ広告媒体費は前年比102.3%の3980億円。

モバイル向けが大きく伸びるとの予測

 ビデオ広告も大きく伸びると予測されているが、ここでもやはりモバイルの役割は大きい。2017年には891億円だったモバイル向け動画広告は、2018年には前年比148.8%の1326億円へと達するとの予測値が出ている。

ビデオ広告に関する予測

 なおインターネット広告は、内容の信頼性や、掲載先をより厳密に管理できる手法として、「プライベートマーケットプレイス(PMP)」「プライベートエクスチェンジ」といった参加者限定型の取引形態に注目が集まっている。調査の結果、2017年の段階でこれらの市場規模は100~120億円と推計されている。規模はまだ小さいながら、中澤氏は「『ブランドセーフティ』『アドフラウド』といった課題への対策として、今後成長する可能性もある」と指摘している。

株式会社サイバー・コミュニケーションズからは小椋祐二氏(取締役)が列席し、記者からの質問などに応じた