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家中すみずみまでWi-Fiがつながるメッシュネットワークに業界最大手のバッファローが参入

新ブランド「AirStation connect」で専用子機「WEM-1266」発売、既発売のWi-Fiルーター「WTR-M2133HP」を親機に

1台のWTR-M2133HPと2台のWEM-1266がセットのスターターキット「WTR-M2133HP/E2S」

 株式会社バッファローは3日、メッシュネットワークの新ブランド「AirStation connect」を発表した。1台では電波の死角があるような環境でも、複数台を組み合わせて、隅々まで電波を届かせることができるWi-Fi環境を構築できるメッシュネットワークの市場に、国内Wi-Fi市場最大手のバッファローが新たに参入したことになる。

専用子機「WEM-1266」を発売、メッシュ親機は1月発売のWi-Fiルーター「WTR-M2133HP」

 1月発売のWi-Fiルーター「WTR-M2133HP」を親機とする専用のメッシュ子機「WEM-1266」を発売した。価格は1万2000円。また、1台のWTR-M2133HPと2台のWEM-1266をセットにしたスターターキット「WTR-M2133HP/E2S」は4万7800円(価格はいずれも税込)。

 WTR-M2133HPは、トライバンドに対応し、W56専用の可動式アンテナと、W52/53用の内蔵アンテナを備えたWi-Fiルーター。円盤形状の本体が特徴的で、3日に提供を開始するファームアップデートにより、子機を用いたメッシュネットワークの構築が可能になる。スターターキットのターゲットは「2階建て100平米か、3階建て」(株式会社バッファローブロードバンドソリューションズ事業部事業部長の田村信弘氏)の一軒家だという。

 専用子機のWEM-1266は、背面にギガビット対応の有線LANポート×1を装備。単体では
5GHz帯×2、2.4GHz帯×2のアンテナを内蔵し、最大通信速度は5GHz帯接続時で866Mbps、2.4GHz帯接続時400Mbps。本体サイズは130×126×73mm(幅×奥行×高さ)、重量は約200g。

トライバンド対応メッシュのメリット、遠い3Fでも200Mbps超え

 AirStation connectシリーズの開発責任者である株式会社バッファローブロードバンドソリューションズ事業部開発課長の山田大輔氏は、「中継器を2段つないでも速度が落ちない」とメリットを紹介。同社が3階建ての一軒家で行った測定では、他社のデュアルバンド対応メッシュネットワーク製品との比較で、一番遠い3階においては、3回平均で他社の68Mbpsに対して215Mbpsの速度を記録した結果を紹介した。

 計測環境では、親機を1階に、中継器を2階と3階に設置しており、「直列に接続されるイメージ」。一般的には、中継器の段数が増えるほど性能は低下するが、80Mbpsの4K動画再生では比較対象での再生が遅延する一方、AirStation connectではスムーズな再生が可能だったという。

AirStation connectシリーズの開発責任者である株式会社バッファローブロードバンドソリューションズ事業部開発課長の山田大輔氏
3階戸建てでバッファローが実施した検証結果。他社の68Mbpsに対して215Mbpsの速度を記録した結果を紹介した。

スマホアプリのウィザードで、初期設定や子機の追加も簡単

 メッシュネットワーク製品では一般的な、スマートフォンアプリによるメッシュネットワークの設定に対応する。ウィザードにより、初期設定や子機の追加を簡単に行える点を紹介した。

 追加する子機の設置場所や通信経路は、Wi-Fiの空いている周波数帯やチャネルといった環境や、電波の受信感度を自動測定し、これを考慮の上、最適な場所を自動的にナビゲートする。中継器のAOSSボタンを押して待つだけで、最適な経路を用いた通信が可能になるという。

 アプリでは、親機からのトポロジーを視覚的に表示でき、各親機/子機への接続クライアント台数、家庭内のWi-Fi機器を一覧表示できる。親機の方が、機器から送信される情報を利用して、それがPCかスマホかを識別できる仕組みだという。さらに、各機器の通信バンドの確認と切り替えも行えるようになっており、各端末で優先したい帯域を設定することも可能だ。

 ペアレンタルコントロールや有害サイトブロックといった機能もアプリから設定可能。ユーザーごとにグループ、接続機器を紐づけて一括管理可能とするアップデートも年内に提供予定とのことだ。

独自のアルゴリズムで最適な通信経路を自動選択

 メッシュネットワークでは一般的と言える、経路の自動構成、障害発生時の自己修復、親機子機への設定の自動反映の3つの技術に加え、独自のアルゴリズムによりメッシュ性能をさらに追及しているという。

 山田氏は、国内ならではの状況として光回線の高い普及率を挙げたほか、「例えば、2.4GHz帯と5GHz帯の両方に対応した中継器で、上流と下流で同じバンドを使うと性能が激減するが、海外発のメッシュ製品では、電波強度で経路選択するだけでは、こうした特性が考慮されず、パフォーマンスが良くないケースがある。(AirStation connectでは)これを加味した経路推定を行っている」と述べた。

 具体的には、「チャネル折り返しに対するインパクトや、経路、バンド、アンテナ本数や電波混雑状況によりリスト化し、最適なものを選択できるというアルゴリズムになっている」という。

親機「WTR-M2133HP」のW56専用ハイパワーアンテナ

 山田氏は、親機であるWTR-M2133HPの特徴も紹介。指向性のあるハイパワーアンテナは、電波法に定められた法規上限値がW52/W53と比べて高いW56専用となっており、6.9dBiの利得によって、30dBmと高いアンテナゲインを実現。そして、「W52/53とW56は回路的にも分離しており、他社製品に比べ非常に高いパフォーマンスを実現している」とのことだ。

 このハイパワーアンテナは例えば「異なるフロアの4K動画視聴の場合にアンテナを向ければ、遅延なく動画を再生可能」だという。なお、単体でIPoE IPv6のDS-LiteとMAP-Eの各方式に対応しているが、これはメッシュネットワーク構築時も同様だという。

「AirStation connect」開発の背景

 株式会社バッファロー取締役の石丸正弥氏は、無線LAN製品を手掛け始めて20年経つが、当時はここまで広がるとは思っていなかった」とした一方で、「もっと簡単快適に使ってもらえる無線LANが必要じゃないか?」との考えが、今回の製品につながったと述べた。

 そして、株式会社バッファローブロードバンドソリューションズ事業部マーケティング課長の下村洋平氏は、世界初の家庭用Wi-Fiアクセスポイントを発売した1999年から、2003年に提供開始した「AOSS」、2006年のIEEE 802.11n対応製品発売、IEEE 802.11ac対応製品を投入した2013年と、同社Wi-Fi製品の歴史を紹介。2013年には「スマホ、タブレットが普及し、屋内ではギガを減らさないようWi-Fi接続が一般化した」とし、AirStationシリーズ全体で累計4800万台を出荷している現状を紹介した。

株式会社バッファロー取締役の石丸正弥氏
株式会社バッファローブロードバンドソリューションズ事業部マーケティング課長の下村洋平氏

 さらに家庭内の端末についても、「PC、ゲーム、プリンター程度だった2009年と比べ、今では1人1台のスマートフォンに、PCやタブレット、スマートスピーカーやスマート家電など数多くの機器がある。一方で動画配信サービスが広まっている」として、こうした状況を受け、「ルーター1台だけでカバーできない場所で使いたいというライフスタイルの変化」により、中継器の販売が増加しているという。

 ただ、中継器は、「設置場所の選定や通信経路などの面から、家中すみずみまで電波が届くように設置するには、ある程度の知識が求められる」ことを指摘。こうした状況を受け、「これからの時代に求められるものを念頭に、今あらためて日本の家族にとっていちばんのWi-FIを作ろうと考えた」のが、AirStation Connectシリーズの開発につながったとした。

 株式会社バッファローブロードバンドソリューションズ事業部事業部長の田村信弘氏は、「安定通信の実現のために、今後、接続端末の互換性検証が重要なファクターとなる」とし、白物を中心とする家電メーカーや、住宅メーカーと協業し、実証実験を開始していることも紹介した。

株式会社バッファローブロードバンドソリューションズ事業部事業部長の田村信弘氏