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スタートアップ企業向きの賃貸オフィスとは?

新宿駅から徒歩1分、まるで図工室のようなオフィス/レンタルスペース「KICHI by WARP」開設

 新宿駅から徒歩1分にあるビルのワンフロアをリノベーションし、内装付き賃貸オフィスとレンタルスペースの複合施設「KICHI by WARP」が6月にオープンした。運営するのは株式会社ヒトカラメディア。主に都内のベンチャー/スタートアップ企業に対し、物件の選定から内装のプランニングまで一気通貫でオフィス移転のプロデュースを行っている会社だ。KICHI by WARPでは、同社がこれまで手掛けてきた500社以上のオフィスづくりの知見を生かし、特に初期のスタートアップ企業が入居することを想定した内装/レイアウトを意識したという。敷金・礼金なし、連帯保証人・保証会社加入は不要といった料金・契約体系も特徴だ。

「KICHI by WARP」の302号室(内装付き賃貸オフィス)のイメージ

 KICHI by WARPがあるのは、新宿駅南口を出て甲州街道を西へすぐの交差点の角、1階に吉野家が入居している「新宿南口ビル」。昭和30年代末(1964年)に建てられた築55年の地上4階・地下1階建てのビルのうち、3階がリノベーションされ、レンタルスペース1つと、内装付き賃貸オフィススペース2つに生まれ変わった。

こんな場所にベンチャー/スタートアップ向けの賃貸オフィスが?と思ってしまう駅前の雑居ビルの入り口に「KICHI by WARP」のロゴ
ビルの中に入ると、階段や廊下は昭和の雰囲気。エレベーターがなくバリアフリーではないこと、廊下の突き当たりにある共同トイレも昭和の雰囲気であることなど、古いビルゆえのネックもあるが……

 昭和の雰囲気が漂う三角らせん階段を上り、3階のいちばん手前にある301号室が、セミナーや会議などに最適なレンタルスペース。広さは10.83坪で、収容人数は着席で最大約20名ほど。24時間利用可能で、料金(税別)は4000円/時間(平日)から。

ビルの外観からは想像もできない賃貸オフィス/レンタルスペースにリノベーションされた「KICHI by WARP」の301号室(レンタルスペース)

 その隣の302号室は、従業員10人程度を想定した広さ12.10坪の内装付き賃貸オフィス。入ってまず目に飛び込むのが、まるで学校の図工室を思わせる大きな作り付けデスクだ。部屋の中央、幅1.2m×長さ6.4mのデスクが、入り口のすぐ前から奥の窓際近くまで伸びている。そのほかは、壁面に簡易的な棚やハンガーフックが作り付けとなっているのみ。備え付けの椅子(計16脚)と鍵付きのキャビネットもあるが、極めてシンプルなレイアウトだ。ヒトカラメディアが過去のオフィス移転/プランニング事例で実感していた、ベンチャー企業のオフィスにおける“余白”へのニーズを反映しているという。

 これは、機能を特定しない、空間プランニング上の余白をあえて残しておくという意味のようだ。スタートアップ企業は最初から大規模なオフィスに入居できるわけではないため、会議室や収納スペースといった専用の空間をレイアウトするのは難しい。そこで、内装によって個々の機能に特化した空間に分けてしまうのではなく、そうした余白が、例えば、エンジニアなどが集中して作業を行う目的にも、打ち合わせなどが行えるオープンな場所としても、緩やかに切り替わるように目論んでいる。

 前述の大きなデスクは、一見すると一枚天板に見えるが、手前から1.8mのところにスリットがあり、天井からブラインドを床まで下ろして仕切れるようになっている。普段は一続きの空間として使用し、来客や打ち合わせのときだけ、入り口側を緩やかに仕切るといったことが想定される。逆に、打ち合わせスペース側を、エンジニア席として多くの機材を設置するスペースとして活用することも可能だ。

計14脚の椅子が用意されているが、特に1脚(1人)あたりの空間を設定しているわけではない。従業員がまだ少ない段階であれば隣席との間を大きくとって使用し、従業員が増えるしたがって1人分のスペースを調整していくといった使い方が可能だ。着席する人の区画幅を自由に決められるよう、デスクの下も中途半端な位置に脚を付けず、一続きの空間となっている(両端およびスリット部分の前後以外)
部屋の奥、甲州街道の大きな交差点を見下ろす窓の下にはカウンターテーブルが作り付けられている
休憩・食事スペースはもとより、逆に一人で集中して作業できる空間としても利用できそうだ

 302号室の賃料は月額44万7700万円。このほか、光熱費が月額1万5000円、ネットワーク費(フレッツ光)が月額6500円の固定料金となっている(価格はいずれも税別)。

 坪あたりの賃料は4万円弱となる。家具・内装付きということもあって、付近の同規模の物件の相場(坪あたり2万円台後半~3万円台)からすると割高だというが、これは逆に、スタートアップにとって入居しやすいよう配慮した結果だとしている。

 ヒトカラメディアによると、スタートアップ企業は通常、使える資金があるならば、プロダクト開発や営業、人件費に投入したいものであり、オフィスの内装費や移転時に必要な初期費用などはできるだけ圧縮したいと考えている。また、従業員の増加ペースも速いスタートアップは、オフィス移転を頻繁に繰り返す場合もある。

 そこでKICHI by WARPでは、内装・家具付きとすることで内装工事のコストや入居できるまでの期間を圧縮するとともに、敷金・礼金を不要とした。退去時には現状回復の義務はなく、坪あたり1万円のクリーニング費用を払うだけでよいため、入居・退去に関わる工数を大幅に減らせる。

 また、連帯保証人や保証会社との契約は不要とし、その代わりに、入居審査の重視するのが「事業のビジョンと経営者の想い」だとしている。もちろん、審査時には財務状況などの資料も提出してもらうが、入居する会社の経営者との面談を通じ、チャレンジを後押ししたいという気持ちや信頼関係を確立できることが、いわば入居の条件だとしている。

 契約期間についても、こうしたスタートアップ企業による短期の定期借家契約を想定しているため、原則として1年未満としている。再契約の相談にも応じるが、従業員規模が変動する場合などはヒトカラメディアが仲介する他の賃貸オフィスや家具・内装付き賃貸オフィスを紹介することも可能だ。

 実はヒトカラメディアではこのほかにも、同じく新宿駅から徒歩10分の場所に賃貸オフィス/キッチン付きレンタルスペースの「新宿ワープ」を運営している。新たに開設したKICHI by WARPの最も広い25.00坪の303号室は、すでにアプリ開発を手掛けるベンチャーが入居しているが、実はこれまで新宿ワープに入居していた企業が従業員規模の拡大に伴い移転してきたのだという。

新宿駅から徒歩10分の場所にある賃貸オフィス/キッチン付きレンタルスペース「新宿ワープ」
「新宿ワープ」の屋上は、スノーピーク製のアウトドア用品を導入したレンタルスペースとして提供している。“キャンピングオフィス事業”を手掛ける株式会社スノーピークビジネスソリューションズとのパートナー契約によるものだ

 なお、KICHI by WARPは、建物の老朽化により期間限定の運用となっているが、「その限られた時間の中で、未来を企てる拠点したいというコンセプトから『基地』という名称を付けた」(ヒトカラメディア)としている。また、こうした古いビルは借り手を確保するのに苦労するものだが、KICHI by WARPのように、逆に契約期間が比較的短いスタートアップをターゲットとし、内装付きオフィスとしてリノベーションすることで、オーナーにとっても資産を最大限に活用できメリットがあると、ヒトカラメディアでは説明している。

 KICHI by WARPに続き7月には、品川駅西口近くに、京浜急行電鉄株式会社および株式会社サムライインキュベートとともに「AND ON SHINAGAWA」を3社で立ち上げた。MaaSなどの“デジタル時代のモビリティ×ライフスタイル”に特化したオープンイノベーション拠点として開設したもので、ここにも内装付きのワークスペースがあるほか、最大50人を収容できるイベントスペースとしても使える。同領域に関連するスタートアップや大手企業がワークスペースを利用可能で、ここに集うプレーヤーによってデジタルテクノロジーを活用した次世代の交通インフラの構築と、その周辺サービスの創出を図るのが狙いだ。

“モビリティ変革”“MaaS”といいた領域に特化したオープンイノベーション拠点「AND ON SHINAGAWA」