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緊急事態宣言→解除→2度目の発令で、テレワーク実施率はどう変わる?

緊急事態宣言中のテレワークを認める企業は7割に上るが……

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による緊急事態宣言の発令→解除→2度目の発令で、企業におけるテレワーク実施率はどう変わるのか? 株式会社パーソル総合研究所(パーソル総研)が過去に行ったアンケート調査の結果から、その推移などを報告している。

テレワーク実施率の推移

正社員の25%程度は、緊急事態や感染拡大に関わらずテレワーク実施

 パーソル総研では、新型コロナウイルス感染症の拡大状況と、それに対する政府の対策などを節目として、2020年3月・4月・5月・11月の4回にわたって「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」を実施。勤務先の従業員が10人以上で、主に正社員を対象に約2万人に、テレワークの実施率などについてアンケート調査をしている。

 3月2日には政府が全国の学校に対して一斉休校を要請したが、この時期にテレワークを実施しているのは正社員のうち13.2%(3月9日~15日の第1回調査)に過ぎなかった。

 しかし、4月7日に7都府県を対象に緊急事態宣言が発令されると、27.9%(4月10日~12日の第2回調査)に増加。その後、4月16日には対象が全都道府県に拡大され、5月25日に解除された後のテレワーク実施率は25.7%(5月29日~6月2日の第3回調査)で、解除前と比べて大きな減少は見られなかった。

 さらに第3波の感染拡大が始まった11月時点では24.7%(11月18日~23日に実施した第4回調査)。このことから、正社員のうち25%程度は、緊急事態宣言や感染拡大に関わらずテレワークを実施していると考えられる。

 パーソル総研上席主任研究員の小林祐児氏は、「1都3県におけるテレワーク実施率の推移を見ると、2020年3月から4月にかけて急激に上昇した後、4月の緊急事態宣言期間中をピークに下がっている」という過去のデータを挙げ、「再び緊急事態宣言の対象となれば、4月のテレワーク実施率と同程度まで上昇すると推測される」としている。しかし、「4月のピーク時でも、1都3県で43.5%、東京で49.1%と5割に満たない」という状況だ。

近畿のテレワーク実施率は首都圏よりも低い

 また、第4回調査では、地域を絞ったテレワーク実施率も公表している。

 それによると、首都圏の1都3県では、正社員のテレワーク実施率が3月は19.6%、4月は43.5%、5月は41.1%、11月は38.5%となっている。これに対して京都府・大阪府・兵庫県では、3月は12.0%、4月は26.6%、5月は24.6%、11月は22.1%となり、1都3県よりも低い結果となった。

地域別のテレワーク実施率

 この地域差について小林氏は「東京都のように大手企業や情報通信産業などの割合が高いところに比べると、近畿ではテレワークしづらい企業が多い傾向にある」としながらも、「新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、企業としてはできるだけ出社率を下げるよう尽力すべきだ」としている。

「企業はテレワークを認めるだけではなく、推奨など明確な意思表示を」

 企業がテレワークを認めるかどうかといった方針については、「人材マネジメントにおけるデジタル活用に関する調査2020」の結果を紹介している。

 従業員数が100名以上で、人事・総務・経営企画担当など自社のデジタル活用の動向を把握している800人を対象に2020年7月28日~30日に実施した同調査によると、「緊急事態宣言発令時」には「原則テレワーク/テレワーク推奨」が43.6%、「希望に応じてテレワーク可」が27.5%で、合計71.1%だったという。

 一方、「緊急事態宣言は出ていないが、新型コロナウイルス感染症の感染リスクがある時期」では「原則テレワーク/テレワーク推奨」が23.5%、「希望に応じてテレワーク可」が36.6%で、合計60.1%だった。

 このことから、2度目の緊急事態宣言が発令される前の1月はじめの時点で、企業の少なくとも6割超はテレワークを認めていると考えられるが、このうち「原則テレワーク/テレワーク推奨」という積極的な意思を表明している企業は2割強に過ぎないとしている。

 また、前述の「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」において、テレワークの企業方針について「特に案内がない」という回答が57.1%だったことから、「勤務先から明確に意思表示されない傾向が見受けられた」ことにも言及。パーソル総研研究員の砂川和泉氏は「企業が希望に応じてテレワークを認めるだけではなく、経営としてはっきり推奨する、繰り返し伝えるなど、明確な意思表示が求められる」と指摘している。

 なお、「新型コロナウイルス収束後」の方針については「原則テレワーク/テレワーク推奨」が11.9%、「希望に応じてテレワーク可」が32.9%で、合計44.8%だった。

企業におけるテレワーク方針