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Microsoftが「Teams」の強化を発表、外部の組織とチャネルを共有できる「Teams Connect」など

RPAツール「Power Automate Desktop for Windows 10」無償版の提供開始も

「Teams Connect」により「シェアードチャネル」に外部組織のユーザーが参加しているところ(出典:Microsoft)

 米Microsoftは、米国太平洋時間の2日(日本時間の3日未明)に開始される同社のプライベートイベント「Microsoft Ignite 2021」で発表するTeamsの新機能などに関して報道発表を行なった。このあと日本時間3日午前1時30分より、同社CEOのサティヤ・ナデラ氏による基調講演が行われる予定になっている。

 この中でMicrosoftは、Teamsの新機能として外部組織のユーザーと自組織のユーザーとがチャネルを共有できる「シェアードチャネル」を実現する「Teams Connect」のプライベートテストを本日より開始し、今年末までにより大規模な展開を行なうことを明らかにした。これにより、他組織のユーザーが自分の組織でチャネルに参加し、組織内のユーザーとチャネル上でやりとりをしたり、Teamsのアプリ内でドキュメントの編集を共同で行なったりというTeamsの機能を活用することができる。

 このほかにもPowerPointを利用してTeamsでのプレゼンテーションをより効果的に行なう「Microsoft PowerPoint Live in Microsoft Teams」、会議室で同時に複数人がTeamsの電話会議に参加するときに人を判別することができる「Intelligent Speakers」、RPAの機能をWindows 10で実現する「Power Automate Desktop for Windows 10」の無償版の提供開始、さらにはAzure ADを利用した企業/学校アカウントのログインのパスワードレス機能の一般提供開始などが発表された。

他組織のユーザーがシェアードチャネルに参加できる「Teams Connect」

「シェアードチャネル」を作成するには、チャネルの種類で外部組織の関係者も参加できるタイプを選ぶ(出典:Microsoft)

 「Teams Connect」は、異なる組織同士のユーザーがTeamsのチャネルを共有することができる仕組みだ。共有されたチャネルは「シェアードチャネル」と呼ばれ、自組織のユーザーだけでなく、他組織のユーザーを参加させ、チャットしたり、ファイルを共有したり、ファイルの共同編集することすることなど、これまで自組織のユーザー同士がチャネルでできていたことが他組織のユーザーと行なうことが可能になる。ただし、他組織のユーザーにどこまでのアクセスを許可するのかは、組織の管理者が設定することが可能だ。

 例えば、自動車メーカーのように、1社だけでなく複数の組織が関わって1つの製品を作っていく産業などの場合、自動車メーカーがティアワンの部品メーカー、ティアツーになる半導体メーカー、ティアスリーになる素材メーカーなど、製造に関わる企業を自社のシェアードチャネルに参加させれば、川上から川下まで生産に関わる組織と円滑なやりとりが可能になる。

外部のユーザーを「シェアードチャネル」に招待できる(出典:Microsoft)

 自組織のユーザーだけでなく、他組織のユーザーともやりとりできるようにする仕組みは、Teamsの競合と目されているSlackでも「Slack Connect」として始まっている。Slack ConnectはSlackの有料プランのみのサポートとなるが、TeamsではMicrosoft 365の一部として提供されていることもあり、特に追加料金は必要にならないところは強みとなるだろう。

外部ユーザー(MK)がWordの文書を共同編集しているところ(出典:Microsoft)

 Teams Connectは本日からプライベートプレビューが開始されており、年内にはより広範囲な展開が行なわれる計画になっている。

プレゼン時の表示をよりリッチにする「Microsoft PowerPoint Live in Microsoft Teams」

「Presenter mode」の表示(出典:Microsoft)

 Microsoftは、自社の強みである生産性向上ツールであるOfficeの機能を積極的にTeamsに取り込んでおり、今回のIgniteでも、プレゼンターがより効果的に顧客にアピールする仕組み「Microsoft PowerPoint Live in Microsoft Teams」という新しい機能を発表した。PowerPoint Liveを利用すると、プレゼンターは、プレゼンしている相手が分からないように、ノート、スライド、ミーティングチャット、そして参加者の様子などを1つのビューで確認することができる。それと同時にプレゼンされている相手も、自分のペースでプレゼンを受けることができるように、コンテンツの表示方法などを調節することが可能。PowerPoint Liveの機能は発表と同時に利用可能になる予定だ。

「Presenter mode」でチャットを開始した画面。上のビューでは参加者は右に表示されていたが、チャットを開始してからは上部に移動している(出典:Microsoft)

 新しく導入される「Presenter mode」では、プレゼンターが自分のビデオ表示やコンテンツの見え方をカスタマイズすることができる。最初に提供される「Standout」では、共有したスライドの前に自分のビデオ表示をさせることができる。2つめに提供される「Reporter」では、ニュース映像のようにプレゼンターのビデオ表示の肩の上にスライドを表示できる。3つめの「Side-by-side」では、プレゼンターのビデオ表示の横にスライドを表示させることができる。Standoutは3月に、それ以外は間もなく導入される計画だとMicrosoftは説明している。

 また、「Dynamic view」は、ミーティング時の見え方を動的に調整するモードだ。ビデオ表示を開始したとき、話始めたとき、プレゼンテーションを開始したときなど、シーンに応じてTeamsアプリが動的に表示を調整していく。すでにTeamsは参加者を自動的に最上段に表示する仕組みを導入済みだが、Dynamic viewはそれに続く表示の動的な調整機能になる。Dynamic viewは3月から一般展開が開始される予定だ。

 また、すでに導入されている「Teams Rooms」機能にも新しいギャラリービューモードが提供される。Together Mode(日本語では集合モード)、ラージギャラリーなどの通常のミーティングで使えるギャラリービューが今後順次追加される。

会議室で最大10人を判別、文字起こしも可能なデバイス「Intelligent Speakers」

Microsoft Teamsに対応したスピーカーやディスプレイなどを使っているところ(出典:Microsoft)

 Microsoftは、Teamsが使えるハードウェアの普及に力を入れており、PCが無くてもTeamsミーティングが可能なデバイスなどがすでに発売されている。

Intelligent Speakers(出典:Microsoft)

 今回のIgniteでは、それに加えて同社が「Intelligent Speakers」と呼ぶ新しいTeamsミーティング用のスピーカーが用意された。このインテリジェントスピーカーは、最大10人までの人々が話しているのを認識して、参加者を識別した文字起こしが可能になる(なお、現時点で文字起こしの機能が使えるのは英語版のみとなる)。現在のようにリモートワーク環境で自宅からTeamsのミーティングを行なうのであれば必要はないが、近い将来にコロナ禍が終息したあとなど、会議室で大人数が参加する会議などで必要になるデバイスと言えるだろう。

 また、Dellの新しいVideo Conferencing MonitorやPoly 21など、ディスプレイ、マイク、スピーカー、カメラ、そしてライトなどが標準で搭載されているTeams用のモニターも同時に発表されている。

 そのほかにも、Teamsのミーティングをさらにセキュアなものにする仕組みとして、Teamsの電話機能(Call)にE2EE(End-To-End Encryption、クライアント~クライアントの通信を暗号化する仕組み)が導入される。これにより、企業秘密などをVoIPで会話する場合でも1対1で暗号化されるのでセキュリティ性がより高まることになる。今年の前半に商用ユーザーに対してプレビュー版の提供が開始される計画だ。

「Viva Connections」のデスクトップアプリや、TeamsとDynamics 365との連携強化も

「Viva Connections」のデスクトップとモバイル表示

 このほかMicrosoftは、先月発表した従業員満足度を向上させるためのEXP(Employee Experience Platform:従業員体験プラットフォーム)となる「Microsoft Viva」に関する発表も行った(Microsoft Vivaの詳細については、2月4日付記事Bを参照)。

「Viva Connections」のTeamsデスクトップアプリでの表示

 その機能の1つとして紹介された「Viva Connections」のデスクトップアプリでの機能について、今回のIgniteで一般提供が開始されたことを明らかにした。Microsoft 365の契約者が、SharePointのライセンスの一部としてViva Connectionsを利用することが可能になる。また、Vivaの機能の1つである「Viva Insights」のパブリックプレビューの開始も発表された。Vivaには4つの機能(Viva Connections、Viva Insights、Viva Learning、Viva Topics)があるが、これで現在はプライベートプレビューされている「Viva Learning」を除く3つまでが正式提供かパブリックプレビューとして利用することができるようになったことになる。

 また、Microsoftは同社のERP/CRMとして提供されている「Dynamics 365」のTeamsへのより強力でシームレスな統合を行なっていくことを明らかにした。今回MicrosoftはDynamics 365の拡張を明らかにしたが、その中の1つとして紹介された。Teamsから、Dynamics 365のSales、Field Service、Customer Serviceといったサービスをシームレスに利用することができる。例えばDynamic 365 Salesとの連携では、Dynamics 365 Marketingから直接Teamsにホストされたイベントを宣伝したり、レポートを作ったりという機能が用意される。

RPAツール「Power Automate Desktop for Windows 10」は無償版を提供開始

 RPA(Robotic Process Automation)ツールのPower Platform関連では、「Power Automate Desktop for Windows 10」の無償版の提供開始が明らかにされた。Power Automate Desktop for Windows 10は、すでにPower Automateのライセンスを持つユーザーに対して提供されていたが、今回発表されたのはそれを全てのWindows 10ユーザーに対して無償で提供するということにある。Windows 10ユーザーであれば、Power Automate Desktop for Windows 10をダウンロードしてインストールすることで、Power Automate Desktop for Windows 10を利用して自動タスクを作成して実行することが可能になる。

Azure ADでのパスワードレスログインも一般提供開始

 また、セキュリティ機能の強化として、ビジネス向けMicrosoft 365で利用されているAzure AD(Azure Active Directory)のログインでパスワートレスのログイン機能の一般提供開始が発表された。この機能はすでにMicrosoftの個人向けアカウントで有効になっていたが、Microsoft 365 BusinessやMicrosoft 365 Enterpriseで利用されている「職場または学校アカウント」の認証に利用されているAzure ADではこれまで有効になっていなかった。

 組織の管理者がこの機能を有効にすると、Microsoft Authenticatorアプリや、FIDO2に対応したセキュリティキーなどとWindows Hello for Businessの生体認証を組み合わせることが可能になる。例えば、企業ユーザーがAzure ADのアカウントを利用してデバイスにログインする場合に、パスワードに替えてスマートフォンなどに導入しておいたMicrosoft Authenticatorアプリを利用して認証することでパスワードレスでログインできる。