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TeamViewerが見る日本の中小企業の可能性、DX支援するソリューション拡充に注力

MicrosoftのHololens 2をかぶって、TeamViewer Frontlineを利用する7度のF1ワールドチャンピオン ルイス・ハミルトン選手

 独TeamViewerの日本法人TeamViewerジャパン株式会社(以下、両社併せてTeamViewer)は、3月17日に記者会見を行い、2022年の事業戦略などについて説明した。TeamViewerは元々PC向けのリモートアクセスソフトを提供する企業としてスタートし、現在もそうしたソフトウェアの提供は続いているものの、徐々にエンタープライズ向けの各種リモート管理ツールなどを提供するソフトウェアベンダーへの転換を遂げている。

 会見では、日本の中小企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、大企業ほどは進展していないという調査結果が明らかにされ、その理由として専任のIT担当者がいないことや、コスト面での問題などが挙げられた。

 TeamViewerジャパン株式会社 カントリー・マネージャー 西尾則子氏は「弊社の製品は元々中小企業向けとして発展してきた。そうした中小企業向けのソリューションを拡充することで、中小企業のDXを支援したい」と述べ、中小企業に向けたコンサルサービスなども拡充していきながら、中小企業に向けソリューションを充実させていきたいと説明した。

二桁成長するTeamViewerのAPACビジネス、そのうち3分の1は日本市場

TeamViewer APAC(アジア太平洋地域)/日本セールス担当副社長 ソージュン・リー氏、コロナ禍で入国制限が続いていることもあり、シンガポールからビデオ参加

 TeamViewer APAC(アジア太平洋地域)/日本セールス担当副社長 ソージュン・リー氏は、「TeamViewerはPCやスマートフォンを利用したリモートアクセスだけでなく、サーバー、IoT、ロボットなどさまざまなデバイスをリモートで接続することを可能にしていく。グローバルに30%の組織が新規雇用に苦労しており、新しいワークフローやリモートトレーニングなどの導入を望んでいて、TeamViewerはARソリューションによりさまざまな産業のDXを助けることができる」と述べ、TeamViewerのアジア太平洋地域のビジネスにはまだまだ成長の可能性があるとの考えを示した。

APACの拠点概要
APACでの2021年度の事業総括

 例えば、APACの2021年の通期売上高は6360万ユーロに達しており、これは前年比13%増になる。リー氏によれば日本市場はこのうち3分の1を占めており、TeamViewerにとって重要な市場に成長しているという。

2022年度の戦略とアプローチ

 リー氏は「今後APACのチームを強化し、最適化やローカライゼーションなどの製品の強化、エンタープライズビジネスへの投資を行っていく他、OT(Operational Technology、運用・制御技術)ソリューションなどを充実していくことで、ビジネスの成長を目指してきたいと説明した。

大企業に比べると中小企業のDXは進んでいない、中小企業向けのソリューションを拡充する

TeamViewerジャパン株式会社 カントリー・マネージャー 西尾則子氏

 TeamViewerジャパンの西尾氏は日本市場でのTeamViewerの取り組みに関して説明した。西尾氏は「2021年にはSB C&S、ダイワボウ情報システムなどの新しいパートナーを獲得した他、グローバルにはメルセデスAMG F1チームとの提携や、国内ではTVコマーシャルなどを行って、お客様やパートナーから好反応を得た。例えば、パートナープログラムに登録していただいた企業は56社から144社に、パートナー販売成長率は45%に、売り上げ成長率は55%、新規事例獲得数は2社から6社に、そして認知度は28%から51%にと大幅にアップした」と述べ、TeamViewerの2021年は二桁台の成長を見せ、パートナーや新規事例の獲得などでも大きく躍進した年になったと説明した。

2021年度日本でのビジネスの振り返り

 そして「2021年はOT製品の取り組みを開始した年で、DXに力を入れてきた。2022年もIT製品、OT製品の両方の取り組みを強化していく」と述べ、2022年も企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していくような、IT、OT両分野の製品に注力していくことを強調した。

 西尾氏は「そもそもDXとは何かと言えば、経済産業省のガイドラインに定義されている。それによればデータやデジタルの利活用による業務効率化、付加価値の向上、事業構造変革を実現し、競争上の優位性を獲得することと定義されている。その観点で言えば、大企業ではデジタル化では約65%、事業康応変革は約48%が既に実現されている。それに対して中小企業ではデジタル化が済んでいるのはわずかに約27%、事業構造変革では約18%となっている。そうした中小企業では、デジタル化を進める人材の不足や、コストの問題などから取り組みに二の足を踏んでいる例が多い」と述べ、同社が1月下旬に行った調査結果などを示しながら、DXを着実に進めている大企業に対し、中小企業は取り残されてしまっている現状を説明した。

 西尾氏は「元々TeamViewerのツールは中小企業に導入してきた歴史がある。そうした中小企業が必要とする、IT製品やOT製品を利用してDX化の支援をしていきたい」と述べ、日本市場でSMB向けの対応を強化していくと強調した。

DXの定義
同社調査のDXの進展状況

 また、同社の製品を利用してDXを実現した日本の事例として、東京特殊車体、リコー、コニカミノルタの3社の事例を紹介した。

 東京特殊車体では、製造過程で設計の変更を行われないといけないので、設計者が工場に足を運ぶ必要があったそうだが、コロナ禍などでそれもままならない状況になっていたという。そこで、TeamViewerを導入することで遠隔から指示ができるようになり、設計担当者が在宅のままの製造が可能になったという。

 リコーの事例では、顧客のプリンターなどのメンテナンスやサポートに「TeamViewer Assist AR」という製品を利用している。熟練技術者が定年で引退などの時にノウハウの引き継ぎが問題になっていたが、コロナ禍の中でオンサイトでの引き継ぎが難しくなっているという。そこで、TeamViewer Assist ARを利用すると、サポートセンターにいる熟練の技術者がリモートにあるプリンターなどをカメラで投影して適切な指示を行うことが可能になったという。

 コニカミノルタの事例では、同社が製造して提供している画像診断装置にエージェントを組み込んで出荷しており、リモートでサポートを可能にしているという。これにより、障害が発生したときに、日本だけでなくグローバルで同じツールを利用してリモートサポートが可能になったという。

日本の事例

 西尾氏は2022年のビジネス的な取り組みに関して、中小企業、プロフェッショナルサービス、ビジネスパートナーの拡充、製造業への働きかけを挙げた。例えば昨年出展した名古屋でのオートモーティブワールドでは、中京地区の製造業(主に自動車関連だと思われる)から多くの問い合わせがあったといい、「名古屋オフィスを新設して、SEや営業を現地に置いて現場重視のビジネス構築をしていきたい」として、日本最大の製造業と言える自動車産業の企業が集中している中京地区でのビジネスを強化していく考えを示した。

2022年の取り組み

フロントラインワーカー向けのTeamViewer FrontlineがメルセデスF1などに採用される、今年は日本に展開も

TeamViewerジャパン株式会社 ビジネス開発部 部長 小宮崇博氏

 TeamViewerジャパン株式会社 ビジネス開発部 部長 小宮崇博氏は、同社の製品ロードマップや製品群などに関する説明を行った。

2020年当時のロードマップ
現在提供している製品
さまざまなユースケースをカバーできる

 小宮氏は2020年当時の製品ロードマップを示しつつ「実現できているものとそうでないところがある」として、現在TeamViewerが提供している製品群に関して説明した。

 ITサポートでは社名の由来になっているリモートアクセスツールのTeamViewerやTeamViewer Remote Managementがあり、WebカスタマーエンゲージではTeamViewer Engage/Classroom、OTサポートではTeamViewer Internet of Things、TeamViewer Assist AR、TeamViewer Frontlineなどの製品があると説明。

 このうちTeamViewer Engage/Classroomはグローバルでは提供が始まっているが、日本では今年から提供開始予定とのこと。そしてこれらの製品を利用することで、設計、開発から、製造、営業、サービス、流通といった企業のビジネスの各段階を同社の製品でカバーできると説明した。

 2022年に関しては「そうした製品を利用してどのように使えるのか、そうしたユースケースに焦点を当て取り組んで行きたい」(小宮氏)と述べ、企業に採用してもらえるように事例を増やすのと同時に、同社も導入時に協力してコンサルティングサービスに近いようなサービスも提供していきたいと説明した。

 グローバルの事例としてはメルセデスAMG F1チームの事例が紹介された。同社はメルセデスAMG F1チームのパートナーになっており、メルセデスAMG F1チームの車両には同社のロゴが描かれている。今回の会見で紹介されたビデオでは、7度のF1チャンピオンに輝いたルイス・ハミルトン選手が、MicrosoftのHoloLens2をかぶり、ARとして表示されているF1車両を見ながら車両の出来具合をチェックするという様子が公開された。

デジタル化のユースケース、メルセデスAMG F1チームの事例
Assist ARを利用して設計段階の実際にはない車両をARで確認できる

 また、Formula Eに参加しているメルセデスAMG Formula Eチームの事例では、SAPのフィールドマネージメントサービスとTeamViewerが連携しており、ファクトリーにいるエンジニアがフィールドエンジニアに対して指示を出してレーシングカーをメンテナンスする様子が公開された。さらに、TeamViewer Engage/Classroomのデモではリモートから契約書の書き方を指示して署名までしてもらうという契約書作成をリモートで行う様子などが公開された。

メルセデスAMG Formula Eチームの事例
SAPと連携して、ARグラスで指示をみながらメンテナンス
TeamViewer Engage/Classroom

 そして、2022年以降の製品ロードマップについて触れ、2022年にはイメージ認識と3Dワークフローを実現し、将来はAI Studioと呼ばれるAIを活用したサポート製品などが計画されていると説明した。また、TeamViewer Frontlineの拡張として、SAP製品との提携が現状ではFSMとの連携になっているが、将来はEWM(倉庫管理)やSAM(サービス管理)などの連携が可能になる計画だと説明した。

ロードマップ

 また、日本独自の取り組みとしては、SB C&S社と提携したドローン・ロボットへの適用、将来的には通信の進化への対応やウェアラブルコンピューティングへの取り組みなどを行っていくと説明した。

日本独自の取り組み