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Zoomがメール/カレンダーサービス提供開始へ。「Zoom Mail/Calendar」発表
AIによるミーティング後の“まとめ”自動作成など、新機能の拡張計画も
2022年11月9日 02:00
米Zoom Video Communicationsが11月8日・9日、同社の年次プライベートイベント「Zoomtopia 2022」を米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるSJCC(San Jose Convention Center)において開催。同社CEOのエリック・ユアン氏のほか、同社幹部らが講演し、今後提供する新しいサービスなどについて説明している。
その中でZoomは、「Zoom Mail」「Zoom Calendar」という新しいサービスおよびクライアント機能のベータ提供を開始することを明らかにした。これはウェブサービスとしての「Zoom Mail および Calendar サービス(ベータ)」と、クライアント向け機能(同社のクライアントアプリで利用できる機能)としての「Zoom Mail および Calendar クライアント連携(ベータ)」という2つのサービス・機能から構成されており、メール/カレンダーとビデオ会議機能との連携性を高めることでユーザーの生産性向上を実現する狙いがある。
Zoomの有料プランである「Zoom One」の各プランを契約しているユーザーは追加料金なく利用することが可能。今四半期中に英語リージョンでベータ版の提供が開始される予定で、徐々に他の言語にも適用していく計画だ。
「Zoom Mail/Calendar」ベータ版を11月から提供、Microsoft 365やGmail/Googleカレンダーとの連携機能も
現在Zoomが開催中の「Zoomtopia 2022」は、同社のフラッグシップ年次イベントだ。コロナ禍ではオンラインのみで開催されてきたが、米国ではすでにアフターコロナと言うべき復興モードに入っているという社会情勢を受け、今回は対面とオンラインのハイブリッド形式に変更されて開催されている。同社本社があるシリコンバレー・サンノゼ市のSJCCにおいて11月8日朝(日本時間11月9日未明)から基調講演などが行なわれている。
Zoomはそれに先だって記者発表を行ない、同イベントで発表する新しいサービスや機能の概要を明らかにした。その中で最も注目を集めたのは「Zoom Mail」「Zoom Calendar」というサービスおよび機能だ。まずは11月からベータ版として提供が開始される。
サービスとしての「Zoom Mail および Calendar サービス(ベータ)」は、「Zmail.com」のドメインでクラウドベースで提供される電子メールやカレンダーのサービスだ。GoogleのGmailやMicrosoftのOutlook.comと同じような、クラウドベースの電子メールおよびカレンダーのサービスとなる。
Zoomの有料プランである「Zoom One」のビジネスプランないしはビジネスプラスプランを契約しているユーザーであれば、カスタムドメイン(ユーザーが所有している自社ドメインなど)を設定可能になっている(標準のドメインは、前述の通り「Zmail.com」となる)。保存できるデータの容量はプランによって異なり、プロプランは15GB、ビジネスプラン以上は100GBとなっている。
ライセンス | Zoom Mailサービス | Zmail.com | カスタムドメイン | 電子メール容量 | ターゲットユーザー |
Zoom One Pro/United Pro | ○ | ○ | - | 15GB | シングルユーザー/最大10ユーザーのSMB |
Zoom One Business/Business Plus | ○ | ○ | ○ | 100GB | 最大50ユーザーのSMB |
Zoomのクライアントアプリ向けの機能としての「Zoom Mail および Calendar クライアント連携(ベータ)」では、Zoomアプリ(Windows/macOS/Android/iOS)から、前述の「Zoom Mail および Calendar サービス(ベータ)」へアクセスする機能が用意されるほか、Azure AD(Microsoft 365の企業/学校向けアカウント)、Gmail/Googleカレンダーアカウントの電子メール/カレンダーへ、Zoomアプリからアクセスできる機能が追加される。
これにより、Zoom Mail/Calenderだけでなく、Microsoft 365(企業向け)およびGmail/GoogleカレンダーにZoomアプリからアクセスし、Zoomの他の機能(ミーティングやチャット、電話機能など)を統合的に利用することが可能になり、利便性が大きく向上する。こちらの機能は、イメージとしてはMicrosoftのデスクトップアプリの“Outlook+Teams”のような機能をZoomデスクトップアプリで提供するかたちと考えると分かりやすいだろう。
Zoomによれば、まもなくベータテストが開始されるが、当初は英語版のみの提供となり、徐々に他の言語にも広げていく計画。また、料金に関しては、すでにZoom One/Unitedの有料プラン(プロ、ビジネス、ビジネスプラスなど)を契約しているユーザーは追加料金なく利用できる予定(ただし、機能には違いがある)。
AIがミーティングの“まとめ”を自動作成、「スマートレコーディング」機能などの拡張計画も発表
このほかにもZoomはいくつかの新しい機能を発表している。一番大きな発表は、同社が有料プランとして提供しているZoom Oneの機能拡張だ。Zoom Meeting(ビデオ会議機能)、Zoom Team Chat(ZoomのIM機能)、Zoom Phone(Zoomアカウントを利用した音声通話機能)などでいくつかの拡張が加えられる。
例えばZoom Meetingでは、「スマートレコーディング」機能が追加される。録画データをAIが解析し、まとめやチャプター作成などが自動で行なわれ、あとから見直すときにより利便性が向上する。また、「ミーティングテンプレート」では、Zoomビデオ会議を作るときにいくつかのテンプレートが用意され、これまでよりも短時間でよりカスタマイズされたミーティングを作成することができる。
Microsoftも先日、「Teams Premium」において“まとめ機能”を実装することを明らかにしている(10月13日付関連記事『Microsoftが「Teams Premium」を発表、ミーティング後の“まとめ”をAIが自動作成してくれる機能など実装』参照)。Zoomにも同様の機能が実装されることが発表されたかたちだ。
また、アバター機能において、従来の動物のアバターだけでなく、人間のアバター、さらには自分を模して作ったメタアバターも選択することが可能になるほか、ビデオクリップ機能ではあらかじめ録画しておいたショートビデオを、Zoomを利用したビデオ会議時に、より簡単に流せるようになる。さらに、Zoom PhoneではPWAベースの電話クライアントの提供も計画されている。
「Zoom Spots」は2023年初頭に導入される新サービスで、同社が「バーチャルコワーキングスペース」と呼んでいる機能になる。コロナ前であればランチを一緒にしたり、廊下で立ち話したりという“無駄な時間”と思われていた時間に対面コミュニケーションをしており、それが円滑な人間関係につながっていたという事実が、コロナ禍になって対面で同僚に会えない時間が長くなったことで浮き彫りになってきた。Zoom Spotsはそうした一見無駄に見えていた“おしゃべり”をバーチャルに再現する機能で、形式が規定されていないビデオ優先の会話を同僚とオンラインで行なうことが可能になる。
「Zoom Virtual Agent」は、今年5月にZoomが買収を発表したSolvvyの技術が元になっている機能で、機械学習や自然言語などを利用して、対話型AIやチャットボットなどの機能を提供する。企業はCRMやZoom Contact Centerの機能としてZoom Virtual Agentを組み込んで、ユーザーサポートなどの自動化などを実現できる。
また、「Zoom IQ Virtual Coach」は、すでに提供されているZoom IQ for Salesの追加機能としてまもなく提供される機能で、現場のセールス担当者などにセールスの技を伝授するオンラインでのコーチングツールとして提供される。
ServiceNowとの連携を強化
Zoomは、クラウドベースのEMS(Enterprise Management Service)を提供するServiceNowとの連携機能をこれまでも提供してきたが、Zoomtopia 2022では、その連携を強化することを発表している。以前より行っているZoom Phone、Zoom Team Chat、Zoom Connector通知などの機能とServiceNowとの連携に加えて、新しいアプリの提供や統合を行なう予定であることが明らかにされた。
Zoom Contact Center for ServiceNow
Zoom Contact Centerは顧客や従業員の応対を実現するサービスで、そのZoom Contact CenterとServiceNowを接続するサービスとなる。
ServiceNow Employee Center for Zoom / ServiceNow Collaboration Services Zoom App
前者はServiceNowの従業員向けのサービスをZoomに、後者はServiceNowのチケットを利用したサービスをZoom上で展開するアプリとなる。