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アトラシアン5製品をバンドルする「Atlassian Together」を1ユーザー月額11ドルで提供
製品の運用方法の紹介などが行われた「Atlassian TEAM TOUR Tokyo 2022」のアーカイブ配信を開始
2022年12月9日 07:00
アトラシアンの日本向けイベント「Atlassian TEAM TOUR Tokyo 2022」が11月17日に開催された。「業務が見える、つながる、動きだす」というテーマで、オフラインとオンラインのハイブリッド開催となった。それに先駆け、メディア・ラウンドテーブルが開催され、アトラシアンのこれまでの軌跡、現在、そしてこれからについて発表があった。今回はそのレポートを紹介しよう。
20年目のアトラシアン、プラットフォーマーへの大転換
アトラシアンは2002年、オーストラリアのシドニーで当時大学生だったマイク・キャノンブルックスとスコット・ファークァーによって設立された。そこから20年が経ち、会社は大きく成長した。従業員数は1万人を超えて、190カ国に25万以上もの顧客を抱えるまでになった。2013年には横浜にオフィスを開き、2015年にはNASDAQに上場。現在は、「Jira」「Confluence」「Trello」など、20を超える製品ポートフォリオを有している。
「2年前、新型コロナが蔓延した時、会社として前向きなアプローチを取りました。従業員は、我々の法人がある場所であればどこでも自由に選択して、そこで仕事ができるようにしたのです。もちろん在宅勤務も可能です。ただ、多くの社員は世界中にあるオフィスで仕事をしたいと希望しています。現在、私たちはオーストラリアのシドニーに、新しいアトラシアンのヘッドクオーターとして「Atlassian Central」というタワーを建設しています。このタワーの建設には日本の大林組のご協力をいただきました」とアトラシアン CRO(最高収益責任者)のキャメロン・ディーチ氏。
ディーチ氏が2012年に入社した時には、アトラシアンの収益は1億ドルで顧客は2万社だったが、そこから10年で収益は30億ドル、顧客は24万9000社を超えた。そこで、新たに今後数年で目指すゴールを設定した。それは「収益100億ドル」とのこと。
この目標を達成するために、これまで製品プロバイダーだったアトラシアンはプラットフォーマーに転換するという。
「ビジネスにおける全てのチームに対して、私たちは製品・サービスを提供していきたいと考えています。アトラシアンの製品は共通するエンタープライズクラスのクラウドプラットフォーム上で構築されているのがメリットです。チームのメンバーは、自分の作業に最適なツールを自由に選んで使えます。 私たちがつなげていくのは人だけではなく、ワークフローやアナリクティクス、自動化などを接続することで、生産性を高めて、事業の加速化を図ります。」(ディーチ氏)
アトラシアンは「フライホイール」というユニークなビジネスモデルを構築しており、他社と比べて営業やマーケティング部分を小さくして、より研究開発に力を入れているのが特徴だ。
顧客はアトラシアンの社員と接触することなく、全てオンラインでアプローチし、購入できるようになっている。コストを抑えつつも高い品質の製品を構築できるので、顧客を成功に導くことができ、その顧客の口コミが営業やマーケティングとしての力となるという。
中には複雑なニーズを持っている企業もいるので、そこにサービスをするため、世界中に700社以上の企業をパートナーとしている。アトラシアンにとってのパートナーはものを売るだけの代理店とは異なり、本当の意味でのパートナーだという。環境の立ち上げやクラウド化のマイグレーションなどを担ってもらう、ソリューションパートナーとのこと。
日本の企業に受け入れられるサービスに
2013年、会社の方針を大きく転換し、日本へ注力することにした。それは、当時まだ日本市場においてパートナーがおらず、ウェブサイトも日本語版が用意されていなかったためだった。支払いもクレジットカードの米ドル決済のみで、日本企業が手を出しにくい状況だったのだ。
そこで他の国とは異なるアプローチとして、日本には唯一、完全にローカライゼーションを行ったという。カスタマージャーニーを一新し、ウェブサイトからマーケティング、営業、パートナーとの関係までローカル化し、日本市場に投資を続けた。その結果、日本市場は他国を上回る勢いで成長し、今では十分な見返りがあるという。
日本において、生産性を大幅にアップさせた家族葬専門葬儀社である「つばさ公益社」の事例を紹介してくれた。
同社は、分散された環境で企業文化を維持すること、従業員の仕事をリモート対応すること、紙ベースのビジネス、という3つの課題を抱えていたそう。そこで、紙ベースのプロセスを全て「Trello」に移行した。
その結果、従業員は葬儀セレモニーに関する最新情報をいつでもどこでもスマートフォンから確認できるようになった。高いレベルのサービスを顧客に提供でき、さらに生産性も大幅に改善した。同時に葬儀セレモニーの固定費を40%削減することもでき、新入社員のオンボーディングは従来よりも75%速くなった。
ワークフローのデジタル化に役立つ2つの新サービス
ここで、ディーチ氏より2つの新しいサービスが紹介された。
「全てのチームがワークフローのデジタル化という課題に直面しています。リモートワークであれハイブリッドワークであれ、チームの生産性を高め、維持し続けなければなりません。このような問題を解決するために、『Atlas』と『Atlassian Together』を紹介します。」(ディーチ氏)
「Atlas」はすでにローンチが始まっているサービス。チームワークのディレクトリで、チーム全体をつなぎ同期・非同期で状況を共有、連携することを可能にする。チームによっては多くのアプリケーションを使って業務を管理しているが、「Atlas」を使うことで、それぞれのチームがどんなメンバーでどんな作業をして、どんなゴールを達成しようとしているのかをチームやリーダー、エグゼクティブメンバーに対して見える化できるようになる。
「Atlassian Together」は「Trello」「Confluence」「Jira Work Management」「Atlas」「Atlassian Access」の製品をまとめて提供するサービスだ。価格は月額11ドル/ユーザーと安く、「他社なら1製品に相当するような価格帯」(ディーチ氏)で提供するという。
現在、「Atlassian Together」はβ版となっているが、2023年に正式リリースされる予定だ。
何ができる? 「Atlas」をデモンストレーション
続いて、アトラシアン株式会社ソリューションエンジニアの皆川宜宏氏により「Atlas」のデモも行われた。
架空の靴メーカーがスニーカーを作るプロジェクトを想定して、「Atlas」のさまざまな利用シーンを見せてくれた。例えば、新しいマネージャーが着任する際、従来であれば過去にやりとりした大量のメールを読み込んだり、メンバーにチャットで質問して情報収集し、ようやくプロジェクトの現状を把握していた。これが「Atlas」であれば、短時間に把握できるようになるという。
「全てのプロジェクトでは、何をするのか、なぜそれをするのか、誰がしているのか、今現在そのプロジェクトはどういう進捗なのか、という4つの構成要素は必ず見える化されるべきです。『Atlas』の『About』を開けば、そういった情報が簡単にわかるようになっています。」(皆川氏)
Googleスライドや動画、ホワイトボードなどを埋め込むことができ、他のツールで作成したデータやディスカッションした内容を「Atlas」に集約できる。画面を遷移せずにサードパーティーツールのデータを閲覧できるので、業務効率が高まる。
「具体的なプロジェクトの管理はほかのツールで行い、進捗報告などは『Atlas』上で統制的に行われるような形を目指しております。」(皆川氏)
「Atlas」のスタンダードエディションは無償提供となり、より高度な機能を利用する際は有償契約が必要になるとのこと。現時点ではメニューなどの日本語化はできていないが、入力などは日本語に対応していて、すでに使ってもらえるとのことだった。
アトラシアンのツールの使い方が学べる「Atlassian TEAM TOUR Tokyo 2022」
なお、取材日の午後に開催された「Atlassian TEAM TOUR Tokyo 2022」では、アトラシアンが提供する各種ソリューションの活用の仕方の紹介や、ディーチ氏の紹介にもあったつばさ公益社などの導入事例など、多くのセッションが開催された。
イベント自体はすでに終了しているものの、オンライン配信のセッションについては現在、アーカイブ配信が始まっている。また、会場で行われたオープニングキーノート、企業変革トラック、そしてクロージングキーノートについても、12月中旬に公開される予定とのこと。リモートワーク下などで使えるツールを探しているなら、ご覧になってみてはいかがだろうか。
【お詫びと訂正 2022年12月9日 23:45】
記事初出時、記事内容に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
誤:そこから10年で収益は30億ドル、顧客は25万社を超えた。
正:そこから10年で収益は30億ドル、顧客は24万9000社を超えた。