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「天草・島原の乱」激戦の城跡で海を眺めながらリモートワークしよう

熊本県苓北町、お城の櫓をコワーキングスペースに

空から眺めた富岡城。雲仙天草国立公園の中にあり、山と海が近い

 熊本県の西北部、天草諸島にある人口7000人弱の町、苓北町(れいほくまち)。天草・島原の乱の舞台となった「富岡城」跡地の公園がこの町の観光スポットの1つだ。この“城内”に5月1日、コワーキングスペースがオープンした。

国立公園の中にある富岡城

 富岡城のある富岡半島は、天草諸島で一番大きな下島の西北にある。海流に乗った砂や石が堆積してつながった陸繋島(りくけいとう)で、巴崎と呼ばれる砂嘴(さし)が延びて湾を形作る独特の地形をしている。

 東シナ海や天草灘を臨む半島の北に立つ富岡城は、関ヶ原合戦後の1602年から本格的な築城が始まった山城である。1637年の天草・島原の乱では1万もの一揆軍の総攻撃を耐え抜いたという歴史があり、撤退した一揆軍は、この苓北町から船で島原に渡ったという。

 2005年、乱後に修復・拡張された城の絵図をもとに苓北町が城を復元し、富岡城公園として整備した。ワーキングスペースは、二の丸にあるの東角櫓(ひがしすみやぐら)を活用してオープン。その名も「ワーキングスペース 富岡城東角櫓」という。

二の丸駐車場から石垣を見ながら階段を上る
富岡城二の丸から見た景色。二の丸駐車場から急な坂を歩いて上るとこの風景が広がる
二の丸にある東角櫓

窓に映る絶景を見ながらの仕事は気持ちいい

 東角櫓は一棟建てで面積は50,45㎡(15.3坪)。入り口に「コワーキングスペース」という張り紙があるのが目印だ。扉を開けて中に入ると、窓に映るのは巴湾の砂嘴の景色。

 中央に置かれたメインデスクはフリーアドレスの6人掛け。隣に4人掛けの木のテーブルが1台ある。このほかプリンター/スキャナー機能を備えた複合機、ロッカー、トイレ、キッチンがあり、冷蔵庫や電子レンジを自由に使えるようになっている。公衆無線LAN環境はWEP2対応で、一般的なコワーキングスペースの機能は備えている。利用時間は9時から17時まで。

メインデスクで仕事
メインデスク越しの窓
オープン日の5月1日は快晴で、海の眺望をときどき楽しみながら、気持ちよく作業することができた

 料金は、1人1時間以内で300円、その後1時間ごとに100円が加算される、1日の上限は500円となっている。個人またはグループでの貸し切りも可能で、1時間内であれば2000円、1時間ごとに500円加算されるが、1日最大3000円で利用できる。1連続利用は7日間まで。

 利用方法は、苓北町のウェブサイトから「利用許可申請書」をダウンロードし、5日前までにFAXまたはメールで苓北町商工観光課に申請する。その後、利用許可書が交付され、当日、敷地内にある「苓北町歴史資料館」で鍵の受け渡しや支払いをする流れだ。予約システムについては今後検討していきたいとしている。

木のテーブル
複合機
キッチン
鍵の受け渡しや支払いをする「苓北町歴史資料館」

レンタカーの助成金も準備

 苓北町役場商工観光課の担当者によると、この角櫓は、これまで写真展などイベントに活用されていた。しかし新型コロナウイルス感染症拡大後の働き方の見直しや地方でのリモートワークの気運を背景に、ワーケーションの需要を見込み、環境省の助成金を得て今回オープンすることになったという。

 オープン日のお披露目会に登場した山崎秀典町長は、「お城の敷地内でワーキングという特異なスペースができたと思う。この海、島、山の素晴らしい眺望に加え、イルカウオッチングやサンセットクルージングなど自然体験型のアクティビティが苓北町にはたくさんある。都市部の企業で働く人は、ぜひ苓北町に来てワーケーションに活用してほしい」と呼び掛けた。

苓北町の山崎秀典町長

 富岡城は天草空港から車で約30分。苓北町では、ワーキングスペース富岡城東角櫓を利用し、町の魅力を発信してくれる町外の法人や個人事業主を対象に、利用日のレンタカー費用を助成する制度も発表している。詳細は商工観光課に確認してほしい。

天守閣のない本丸を復元した施設は「富岡ビジターセンター」。館内には天草海中体験シアターがあり、天草の海の生物などを紹介している
本丸下櫓
二の丸西角櫓
二の丸には、天草に滞在し『泊天草洋』(天草洋に泊す)という漢詩を詠んだことで知られる江戸後期の漢詩人の頼山陽や、勝海舟の銅像もある