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レノボ、ハイブリットワーク支援サービス「DWS」提供。中堅中小企業も対象にIT部門の業務を支援

発表会に登壇した、レノボ・ジャパン執行役員サービスセールス事業部長の上村省吾氏(左)、サービスセールス事業部マネージャーの八木下敦氏(右)

 レノボ・ジャパン合同会社は9月26日、ハイブリッドワーク支援ソリューション「レノボ デジタル・ワークプレイス・ソリューション(DWS)」を発表した。

 ハイブリッドワークの実現に必要な各種支援サービスを、パッケージとして提供する点が特徴。運用コストの最適化や、従業員体験と生産性の向上を実現するほか、IT部門のさまざまな業務をレノボが代行することで、デジタル変革業務や経営課題の解決に集中できるようになるとしている。

生産性向上やサポート、セキュリティなど6つの柱からなるパッケージを提供

レノボ・ジャパン執行役員サービスセールス事業部長の上村省吾氏

 まずは、従業員が業務に使用するPCに関連するサービスを提供するが、今後、対象をサーバー領域にも広げる考えを示した。

 レノボ・ジャパン執行役員サービスセールス事業部長の上村省吾氏は、「ワークプレイス領域の運用フェーズを、お客様に代わってワンストップで対応するサービスがDWSである」と、同サービスの位置付けを説明した。「これにより、IT部門が本来時間を割きたい優先的な業務にフォーカスできると考えており、領域横断で最適化された体験と、本質的な価値創造にフォーカスしてもらうことになる。あらゆるビジネスに、テクノロジーの力で違いをもたらしていく」。

 サービスの対象として想定するのは、大企業から中堅中小企業までと幅広い。特に、パッケージ化したことで、中堅中小企業への提案を強化するという。SIパートナーを通じた販売も行う。

 レノボ・ジャパンでは、2020年にNECパーソナルコンピュータ群馬事業場に、顧客の個別要件に対応するレノボカスタマー・フルフィルメント・サービスを開設した。

 そして、2022年にはPCのライフサイクルマネジメントサービス(PCLCM)を国内市場向けに本格展開。さらに、ソリューションアーキテクトや、デリバリー専任チームの設置などを通じて、サポート体制を大幅に拡充してきた経緯がある。

レノボ・ジャパンのソリューション&サービス事業の歩み

 今回のDWSは、PCLCMの拡充策のひとつに位置づけている。

 上村氏は、「他社では、サービスのパッケージ化に熱心ではない。レノボは、これまでの経験をもとに、パッケージしやすい領域だけでなく、難しいサービス領域においてもパッケージ化に挑戦した。これにより、ハイブリッドワークを実現するためのハードルを低くし、課題を解決できる」と、自社サービスの優位性を説明した。

 DWSは、働き方や環境に合わせカスタマイズ可能な、次の6つを柱としたパッケージとして提供される。

  • アドバイザリーサービス:最適なIT機器とソフトウェアを組み合わせたアーキテクチャーのアセスメントを提供
  • ペルソナベースコンフィグレーションサービス:ペルソナ分析をもとに、ユーザーごとに必要なアプリケーションやサービスを構成し、IT機器に導入する
  • コラボレーションと生産性:コラボレーションを加速させるさまざまなサービスの運用をパッケージ化して提供する
  • 統合エンドポイント管理:レノボブランド以外の製品も対象に、各種IT機器の運用段階で必要となるデバイスおよびソフトウェアの管理をマネージドサービスとして提供する
  • サービスデスク:IT管理部門に代わり、従業員からの問い合わせやトラブルに対応する
  • セキュリティオペレーション:Security Operation Center(SOC)などをマネージドサービスとして提供することで、脅威に対する適切な対応を支援する
6つのパッケージの柱

中堅中小企業でも使いやすいメニューで提供

レノボ・ジャパン サービスセールス事業部マネージャーの八木下敦氏

 具体的には、2023年9月26日から、3つのサービスパッケージを提供開始した。

 1つは、顧客に代わってオンプレミス環境からMicrosoft 365への移行作業を実施する「Microsoft 365マイグレーション・サービス」だ。IT管理部門のリソース不足による懸念や、ビジネス停滞リスクなどの課題に対して、移行プロセスを計画し、ダウンタイムを最小限に抑えながら、効率的な環境移行を実現する。

 レノボ・ジャパン サービスセールス事業部マネージャーの八木下敦氏は、Microsoft 365マイグレーション・サービスがハイブリッドワークを支援するとして、次のように説明した。「Microsoft 365に移行する際の費用が不明瞭であり、踏み出すことが難しいという企業の声がある。また、移行に際してIT部門のリソースを割きたくないという声もある。これまでは個別案件として対応してきたが、この経験をベースにパッケージ化して提供することになる。クラウドを活用した柔軟な働き方をスタートすることができる」。

 スタンダード、アドバンスト、プロフェッショナルの3つのプランを提供。中堅中小企業でも使いやすいメニューとしており、Microsoft 365を熟知した専門のスタッフによる既存環境の事前アセスメント、セキュリティ設定の移行、シームレスなデータ移行などを行う。

Microsoft 365マイグレーション・サービスが提供する価値
Microsoft 365マイグレーション・サービスのメニュー

 もう1つのサービスは、専門のサポートチームがMicrosoft 365の運用段階で技術サポートを提供する「Microsoft 365マネージド・サポート」。IT部門のなかにMicrosoft 365に関する専門知識を持った人材がいなかったり、ツールの使い方などの基本的な問い合わせ対応に追われたりといった課題を解決できるサービスだ。高度なトラブルシューティングにも対応するプロフェッショナルプランも用意されている。

 「Microsoft 365ライセンスの購入元を問わずに、サービスを提供することになる。問題解決までのエンドトゥエンドのサポートを提供することで、IT部門の負担を軽減することができる」と、八木下氏はサービスの特徴を説明した。

Microsoft 365マネージド・サポートが想定する課題
Microsoft 365マネージド・サポートのメニュー

 3つ目のサービスは、Microsoft 365環境の遠隔バックアップや、ワンクリックでの復元サービスを実現する「Microsoft 365マネージド・バックアップ」は、Microsoft 365の標準機能ではカバーが難しい包括的なバックアップをマネージドサービスとして提供する。1日最大6回までのバックアップが可能だ。

Microsoft 365マネージド・バックアップが提供する価値
Microsoft 365マネージド・バックアップのメニュー

 「日々の業務に追われ、重要なデータのバックアップを定期的に行うことが疎かになってしまったり、そもそもMicrosoft 365上に存在する重要情報を、どのようにバックアップを取るべきなのかが分からないといった企業もある。また、Microsoft 365の障害による潜在的なデータ消失リスクへの対応や、従業員退職後の予期せぬデータロスによるビジネス停滞も回避できる」と、八木下氏はサービスの利点を説明した。

 このほかに、2023年内の提供を目指している3つのサービスパッケージがあるという。

 そのうちの1つ、ベンダーを問わずにデバイスのポリシー準拠状況やアップデートの一元管理を提供する「統合エンドポイント管理(UEM)」は、レノボが日々の運用や管理を行うマネージドサービスで、パッチ管理、OS管理、リモートロック、暗号化などのサービスも用意される。Windows以外のOSも含めたデバイスを、ガバナンスを効かせて管理することが難しいという課題や、OSやアプリケーションへのタイムリーなパッチ適用が実現できていないという課題、クラウドを介した管理の経験がないといった課題を解決できるサービスとなる。

統合エンドポイント管理(UEM)の内容

 さまざまなデバイスに関する従業員からの問い合わせに対応する技術サポートヘルプデスクの運営を代行する「サービスデスク」では、レノボ以外の複数のPCベンダーのデバイスにも対応。電話によるサポートや、問い合わせ内容の蓄積や解決フローの最適化も実施する。

 「ヘルプデスク機能を代行することで、IT部門が本来業務に集中できるほか、過去の問い合わせ情報をナレッジベース化できずに、最適化されないままに業務が属人化してしまっているといった課題も解決できる」という。

サービスデスクの内容

 さらに、SOCの提供による脅威のモニタリングと、検出時の調査を行う「マネージド・ディテクション&レスポンス・サービス」においては、デバイス上で発生する脅威に対するセキュリティレベルの底上げを支援する。最新の脅威動向を捉えたり、セキュリティツールのチューニングなども提供する。「脅威に対して適切な対応が行えるセキュリティ人材が社内にいない、あるいは検知後の対応が適切に行えていないといった課題を解決できる」という。

 対応するエンドポイントセキュリティ製品は、Microsoft Defender for Endpointが中心となり、セキュリティアラート監視、セキュリティイベント処理、ポリシー管理支援を提供する。

マネージド・ディテクション&レスポンス・サービスの内容

「デジタルを活用した柔軟な働き方の実現は、いまだ道半ば」

 レノボ・ジャパンとアドビは、大都市圏の企業を対象に、「デジタルワークに関する調査」を共同で実施しており、これによると、テレワークを日常的に活用していない企業が74.4%、コロナ前と比較してペーパーレス化が進んでいないと回答した企業が62.3%、社外からコラボレーションインフラにまったくアクセスできないケースが38.7%に達しているがわかった。

7割以上の企業でテレワークが定着していないなどの調査結果

 レノボ・ジャパンの上村執行役員は、「デジタルを活用した柔軟な働き方の実現は、いまだ道半ばだというのが実態である。コロナ禍において、ビジネスを継続するためのツールとして、導入されたテレワークやペーパーレス化だが、柔軟な働き方、新たな働き方に向けて活用がされているとは言い難い。大都市圏でもこの水準に留まっている」と述べた。

 また、CIOを対象にした「レノボ グローバルCIO調査2023調査」では、CIOが課題と考えているのが、「セキュリティ/ランサムウェア対策」、「サステナビリティ目標の達成」、「人材の採用と離職防止」、「データプライバシーの確保」、「必要なIT投資のための予算確保」であり、いずれも半数近いCIOがあげていることにも触れ、CIOが抱える課題が山積していることを指摘。こうした課題解決にも、今回のDWSが利用できるとした。

日本のCIOが抱える数々の課題(チャレンジ)