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スマホ・ネット依存、ゲーム行動症の改善へ「サイバー精神医学講座」開設

KDDI、KDDI総合研究所、東京医科歯科大学の3者が実態解明・治療の実用化を目指す

 KDDI株式会社、株式会社KDDI総合研究所、国立大学法人東京医科歯科大学は10月1日、スマホ・ネット依存やゲーム行動症の改善のための講座「サイバー精神医学講座」を開設した。症状についての実態解明のほか、診断や治療を支援するシステム(プログラム医療機器:診断や治療を目的としたソフトウェア)の実証を行い、実用化を目指す。

 KDDIとKDDI総合研究所は、ゲーム行動症とネット依存ついて2021年に調査した結果を発表している。この際には、コロナ禍の影響により、ゲーム行動症やネット依存の傾向を示す割合が従来の1.5倍以上に増加したことが分かったとしていた。

 スマホ・ネット依存は疾患としては登録されていないが、ゲーム行動症は2022年1月にWHO(世界保健機関)が発行した「ICD-11(国際疾病分類の第11回改訂版)」に新しい疾患として正式採用された。スマホ・ネット依存、ゲーム行動症は、どれも有効な治療法が確立されておらず、また、近年、診断や治療などをデジタル化するプログラム医療機器の実用化が期待されていることから、講座の開設に至ったという。

 講座では、スマホ・ネット依存、ゲーム行動症などの行動嗜癖を対象にスマートフォンアプリを用いたシステムのプログラム医療機器申請に関わる臨床研究を実施する。具体的には、研究に同意した通院患者の行動情報を収集し、行動ログを医療情報と比較することで、行動嗜癖(こうどうしへき、行為への依存)に関する病態を解明するとともに、診断および治療支援に用いることでシステムが治療に関連するアウトカム指標(有効性を評価する指標)の改善に寄与することを検証する。

 本講座を担当する東京医科歯科大学精神科の髙橋英彦教授は、開設にあたり、ゲーム行動症は社会から十分理解されず、本人や家族も自覚していない場合が多く、また、単に禁止することも現実的でないことを踏まえ、「客観的な診断法や科学的で有効な治療法の開発が、疾病の理解、予防、啓蒙にも立ち返って有益になるものと期待している」と述べている。

髙橋英彦氏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科精神行動医科学 教授)

 KDDIとKDDI総合研究所は、2016年からスマホ依存に関する調査や研究を行ってきており、スマホ依存を防ぐアプリ開発のほか、自治体と協力して中高生のスマホ依存に関する悩みを解決する住民参加型の実証実験などを進めてきた。

 また、東京医科歯科大学は2019年度にネット依存の専門外来を開設し、診療に取り組んできた。3者は共同研究を2020年に開始し、スマホ・ネット依存、ゲーム行動症の解明などを目標に臨床研究などを進めてきている。