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ソニー、視覚補助カメラ、読み上げ機能つきテレビなどアクセシビリティに絞った展示で注目を集める
テーマは「誰もが自分らしく、感動を分かち合える未来のために。」
2023年10月17日 12:45
CEATEC 2023のソニーブースのテーマは、「誰もが自分らしく、感動を分かち合える未来のために。」だ。アクセシビリティに配慮した製品、サービスのほか、インクルーシブデザインについて展示を行った。昨年は、サステナビリティにテーマを絞り込んだ展示を行ったが、今年もアクセシビリティにテーマを絞り込んだ「尖った」展示が注目を集めそうだ。CEATEC 2023のソニーブースの展示を見てみよう。
網膜投影カメラキット「DSC-HX99 RNV kit」は、ロービジョンの人たちに撮影する楽しさを届けたいという思いから生まれた製品だ。
ソニーのデジタルカメラのサイバーショットと、瞳のピント調整機能に影響を受けにくいレーザー網膜投影方式を利用して、ピントがあった画像を網膜の周辺部にまで投影することで、視力に依存しない見え方を実現。世界に2億5000万人いると言われるロービジョン者をサポートできるという。また、眼鏡をしている人は、メガネを取った状態でもクリアに見え、来場者はそれを体験できる。
「ロービジョン者の『見えづらい』を、『見える』に変えることかできる」(ソニーグループ サステナビリティ推進部アクセシビリティ&インクルージョングループ ゼネラルマネジャーの西川 文氏)としている。レーザー網膜投影方式はQDレーザーが開発している。
デジタル一眼カメラ「α」のアクセシビリティ機能についても展示している。メニューや操作画面を音声で読み上げる機能を搭載。さらに、画面を拡大表示できる機能も搭載した。αを通じて全てのユーザーに快適な撮影体験を提供することを目的に、視覚に障がいを持っているカメラ好きの社員と、何度も議論を重ねて実現した機能だという。
「老眼の影響で、カメラの画面が見づらくなってきたという人にも使ってもらえる機能である」とした。この機能を搭載したフルサイズミラーレス一眼カメラ「α7C II」を展示している。
4K液晶テレビ「ブラビア」でも、アクセシビリティ機能を搭載している。
番組や設定メニュー項目など、画面に表示される文字情報を読み上げるほか、リモコンのショートカット機能により、読み上げ機能のオン/オフを簡単に行えるようにした。
「視覚に障がいがある人とない人が、1台のテレビを共有する場合に、自分だけでテレビを見るときに、読み上げ機能のオン/オフの切り替えが面倒であるという声があった。リモコンで簡単に操作できるようにした」という。
音声読み上げの速度は9段階で設定が可能であり、慣れや用途に応じて選択できるようにしている。
PlayStation 5では、本体、ゲームタイトル、周辺機器の3点からアクセシビリティに取り組んでいる。本体では、視覚や聴覚に障害がある人に最適な機能を、アップデートを通じて、随時追加している。
ゲームタイトルでは、10月20日に発売される「Marvel's Spider-Man 2」でアクセシビリティ機能がふんだんに搭載されるなど、障がい者でもプレイしやすいタイトルが数多く用意されていることを強調した。今回のソニーブースでは、PlayStation 5の新たな周辺機器として、12月に発売されるAccess コントローラーをいち早く展示。身体機能に障がいがあり、従来のコントローラーでは操作が難しいというプレイヤーにも、ゲームを楽しんでもらうことを目標に、5年の歳月をかけて完成させたという。
におい提示装置「NOS-DX1000」は、ソニーが持つ脱臭機能の技術を活用し、においを出す一方で、すぐににおいを消し、40種類のにおいを手軽に素早く提示できるのが特徴だ。
ソニー独自のカートリッジ構造と、本体に内蔵した脱臭機能により、におい汚染を抑制。専用アプリの操作によって、簡単に結果の記録や閲覧を可能にし、データ転送も簡単に行える。
認知症の前触れのひとつとして、嗅覚の低下があげられており、認知症の早期発見に有効なのが、嗅覚測定だという。におい提示装置では、嗅覚測定を手軽に行えるようにしたという。数十人の医師からヒアリングし、被験者が安心感を持てるデザインにしている点も特徴だ。また、食品の品質管理の現場担当者の嗅覚トレーニングにも活用できると想定している。
XRキャッチボールは、「息子とキャッチボールがしたい」という視覚障がい者の一言から誕生したという。
仮想のボールを使ったバーチャルキャッチボールができるもので、音にあわせてボールをキャッチ。視覚や体力に依らず、遠く離れた人とのキャッチボールが可能になる。音を頼りにした新たな遊びを生み出すことができたとしている。すでに、老人ホームでも利用されているという。
ブースでは、ソニーからスピンアウトしたMUSVIが持つテレプレゼンスシステム「窓」を活用し、東京・銀座のソニーストア銀座に設置されるサテライト会場と、キャッチボールができるようにしている。
ウルトラライトサックスは、鼻歌を歌うだけで、サックスの音色を奏でることができるユニークな楽器だ。誰もが気軽に楽器を演奏できたり、みんなとすぐに合奏できるようになり、音楽をもっと身近なものにするという。
世界ゆるミュージック協会が推進する「全ての人に、楽器を演奏する喜びを提供する」ためのプロジェクトに、ソニーミュージックが参画。半導体をはじめとするソニーグループの技術を横断的に活用して実現したという。
インクルーシブデザインでは、Xperiaのフォト撮影機能である「Photography Pro(フォトグラフィー プロ)」を使用する際に、水平が保たれているかどうかを音で通知する「水準器」の機能や、設定ボタンの色が反転し、設定の変更をわかりやすく表示する機能などを紹介した。
全社員の約6割が障がいを持つ社員で構成するソニー・太陽と、Xperiaの開発チームが共同で開発したものだという。
スマートグラスによる会話支援プロジェクトの参考展示も行った。
スマートグラスを装着することで、会話する相手の顔を見ながら、スマートグラス上にリアルタイムで表示された会話の内容を見ることができる。
音声会話技術の進化により、音声をリアルタイムでテキスト変換する技術は広がっているが、スマホやPCの画面を見る必要があるため、目の前にいる人の顔を見ながら会話をすることが難しいという課題があった。
ソニーが持つ樹脂導光板技術により、安全で、軽量化を実現するフレームレス構造によるデザインを実現しており、視界を遮らずに自然にコミュニケーションができるという。
「翻訳機能も搭載できるため、外国人とフェース・トゥ・フェースで話す際にも、相手の顔と、表示された翻訳結果を見ながら会話ができる」とした。
外出時歩行支援プロジェクトの取り組みについても参考展示した。
白杖を使用している視覚障がい者は、白杖が障害物に当たることで、そこに危険物があることを認識する。言い換えれば、白杖が障害物に当たらない限り検知できない状況にある。
同プロジェクトでは、白杖に小型軽量のデバイスを搭載して周囲をセンシングし、そこに物体があると、それが何かを検知し、音や振動で通知する。ソニーが持つ小型・軽量・低電力の近距離センシングと、音響・振動技術を組み合わせることで実現した。これにより、視覚障がい者が、一人で安心して目的地に到着することを支援できるという。プロジェクトでは、視覚障がい者とともに研究開発を進めており、年内には動作プロトタイプが完成するという。
「近距離センシングと音響・振動技術については、白杖での利用以外にもアイデアをもらいたい」としている。