インタビュー

CEATEC会場を「共創のプロ」と一緒にツアーできる!140以上のブースから、スタートアップ・大学・研究機関をリアルに探せる「ウォーキングブレスト」とは?

アビームコンサルティングの出展内容と狙いを聞く

 10月17日~20日に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される「CEATEC 2023」。

 CEATEC 2023のパートナーズパークにおいて、昨年に引き続き出展するのが、アビームコンサルティングである。

 だが、今年のアビームコンサルティングのブースは、昨年の出展とは、企画内容や狙いが大きく異なる。むしろその展示内容は、「共創」を重要なテーマのひとつに掲げるCEATEC 2023において、出展企業の新たな姿を示すものだといえる。

同社の「ウォーキングブレスト」の舞台となるCEATECのスタートアップ&ユニバーシティエリア。今年は140を超えるブースが並ぶ。

 今回の同社の出展では、ブース展示、ピッチイベント、パネルディスカッション、トークイベントに加えて「ウォーキングブレスト」という新しい取り組みを行うという。

 この取り組みは、「CEATEC 2023のスタートアップ&ユニバーシティエリア(出展者数140社/団体以上)を同社のコンサルタントと一緒にブースを回りつつ、その場で適宜ミーティングを実施、共創の形を一緒に模索する」というもの。

 申し込みは必要だが、費用は無料。参加対象は「スタートアップ企業・大学・研究機関との共創に興味のある企業・個人、金融機関、自治体、支援機関等」とされている。所要時間は30分程度とされている。

 これは、CEATEC初の取り組みで、「共創」を模索するためにCEATEC 2023に来場する企業や政府、自治体関係者にとって、アビームコンサルティングのブースは避けては通れない展示内容となりそうだ。

 そうした施策を実施する同社に、出展の狙いとポイントを聞いた。

幅広い業界をサポートするコンサルティングファーム

 アビームコンサルティングは、1981年に設立した日本発の総合マネジメントコンサルティングファームで、アジアを中心に全世界28拠点で展開。約7500人のプロフェッショナルが在籍する。

 自動車・製造、素材・化学、金融、流通、インフラ、公共といった業界ごとにサポートする組織体制を敷く一方で、これらの業界を横断する2つの組織を有しているのが同社のユニークな点だ。具体的には、人的資本経営をはじめとする経営戦略に関わる支援を行う戦略ビジネスユニットと、デジタル技術とデジタルデータを活用し、イノベーションによって価値を創出することを支援するDXIビジネスユニットである。

 これらの組織のなかで、今回のCEATEC 2023に出展するのは、DXIビジネスユニットとなる。

 DXIは、「デジタル×イノベーション」を意味しており、同社が持つあらゆる産業のプロジェクト実績をもとに、マルチインダストリーの観点から、技術や知見を組み合わせるとともに、グローバルネットワークや社外組織との共創を通じて、新たな企業変革の実現を支援する役割を担う。

 DXIビジネスユニットの前身となっているのは、2015年に設置した「ABeam Digital」だ。企業のDXを推進するコンサルタントを集結し、IoTやBI、AIなどのデジタル技術を活用し、ビジネスモデル変革を支援してきた。また、スタートアップ企業が持つテクノロジーを活用するといった動きが加速するのにあわせて、国内外のスタートアップ企業とのマッチングなどにも事業を拡大。2021年からDXIセクターとして、あらゆるプロジェクトに関わる横断型組織として展開することになった。2023年からは事業部門としてビジネスユニットに昇格。2023年4月からスタートした山田貴博CEOによる新体制において、目玉になる取り組みのひとつだといえよう。

 DXIビジネスユニットは、異なる業界をまたいだDXの実績を持つとともに、クラウドやIoT、ロボティクス、ブロックチェーン、AIなどの最先端デジタル技術を活用。世界各国におけるプロジェクトの推進に加えて、様々な企業が持つサービスやソリューションの活用、外郭団体や産学官との連携、国内外のスタートアップ企業の育成を通じた新規事業や共創ビジネスの創出などにも取り組んでいる。同社が「Vision2030」で掲げる「社会変革アクセラレーター」を具現化する組織だ。

アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル DXIビジネスユニット長の橘知志氏

 そして、様々な経験を持った人材の広さもDXIビジネスユニットの特徴のひとつだ。情報処理技術関連やプロジェクトマネジメント関連、データサイエンティストをはじめとする分析・統計関連といった各種資格取得者のほか、マイクロソフトやAWS、Google、Oracle、Salesforce、SAPといった主要IT企業の各種資格を持った人材はもとより、製造業や金融の現場に必要とされる資格や、ビジネス関連資格を有する人材を数多く揃えている。たとえば、スマートシティの案件において、再生可能エネルギーを活用する場合にも、電気に関する専門資格と知識を持った社員が直接設計を行うことができる。

 アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル DXIビジネスユニット長の橘知志氏は、「DXIビジネスユニットの社員の半分以上は事業会社出身者であり、それぞれに高い専門知識を持つ。アビームコンサルティングのなかでも、異質な人材で構成された組織」と位置づけ、「知の変革を支援するために、経営層と現場層の両サイドから、壁打ちができる共創パートナーを目指している」と語る。

CEATEC 2023出展の狙いは「共創型アプローチ」

 DXIビジネスユニットの活動の根幹にあるのは「共創」で、これは、CEATEC 2023の重要なテーマでもある。また、CEATEC 2023のパートナーズパークでは、政府が推進するデジタル田園都市国家構想の観点から、22のテーマを設けているが、スマートシティプロジェクトや地方創生、スマートファクトリーで実績を持つDXIビジネスユニットにとって、デジタル田園都市国家構想は主要な取り組みのひとつとなっている。

 このように、CEATEC 2023の開催趣旨と、DXIビジネスユニットの日々の活動とがリンクしていることが、今回の出展の背景にある。

 一方で、橘氏は、日本には、ひとつの課題があると指摘する。

 「日本では、『政府、自治体』が主導となってルールや規約が定められ、社会課題解決や環境課題への対応が図られている。そして、これを受けて、『企業』が、個別にこれらのテーマに取り組んでいるのが実態だ。課題といえるのは、その中間にあたる『産業』として、ルールを決めたり、実装したり、産業全体の事例として成果を上げている例が日本にはないという点である。日本は、あらゆる産業が存在するという強みがある国であるにも関わらず、それができていない。産業としてどう発展するのか、業界団体が中心になってどう実装していくかといった取り組みを進める必要がある」と提言する。

 日本発のコンサルティングファームとして、欧州におけるデータ連携基盤のGAIA-Xや自動車産業を対象としたデータ連携であるCatena-Xのような産業レイヤーの動きを加速させるための仕掛けづくりを進める必要性を訴える。

 実は、ここにもCEATEC 2023への出展の狙いがある。

 「今後は、生活者の未来とともに、未来の産業をどうするのかという観点から共創型アプローチを進めていく必要がある。CEATEC 2023の展示を通じて、そうした考え方も示していきたい」とする。

 アビームコンサルティングは、CEATEC 2023の出展において、5つの企画を用意し、産官学や企業間、スタートアップとの連携を通じた共創機会の創出と、共創事例やソリューションの発信を行うことになる。

ブース展示は『知の変革』がテーマ

 ひとつめが、ブース展示である。

 ここでは、Co-Creationプラットフォームとして、産業振興と共創、テクノロジーの組み合わせによって新たな価値を生み出す「デジタル時代の伴走型事業創造サービス」、業務改革や新ビジネスの創出を促進するサービスである「Meta-Business X」、産業主体のビジネスデザインにより、持続可能なスマートシティの実現を支援する「Industry Driven Smart City」を展示する。

 また、Well-Being&Sustainabilityをテーマにした展示では、GX (グリーントランスフォーメーション)マネジメント支援サービスの「Cyanoba」や、継続的な価値創造マネジメントにおいて生成AIを活用したソリューション、ブロックチェーンを活用した脱炭素と商取引のスマート化を実現するソリューションを予定している。

 「今回の展示では、デジタル田園都市国家構想で示された『知の変革』をテーマにしている。産業構造の理解や生活者の理解を通じて、デジタル時代ならではの発想方法や思考法を駆使して、あらゆる人の『知』を組み合わせて新たな価値を創出していくことを目指す。展示を通じて、未来産業のモデリングと、生活へのインパクトを見せることができる」とする。

 パネル展示に留まらず、アイデア創出の流れが体感できるデモや、IoTデバイスの実物展示を触りながらの対話も行う予定だ。

スタートアップ支援団体とコラボするピッチイベント

 2つめは、ピッチイベント。

 スタートアップ支援団体とのコラボレーションにより、スタートアップ企業が持つ技術やソリューションの発信と、アクセラレーションの出口支援を行う。具体的には、スタートアップ&ユニバーシティエリアに出展する企業をピッチイベントで紹介したり、アビームコンサルティングの社員がメンターとなり、登壇企業へのオープンメンタリングを実施したりといった企画のほか、けいはんな学研都市や各自治体が支援する海外スタートアップの紹介、ASCII主催の「IoT H/W BIZ DAY2023」に出展するスタートアップ企業の紹介などが行われる。

パネルディスカッションやトークイベントも

 3つめが、パネルディスカッションだ。

 「島国日本が直面する海の課題と可能性~共創∞サーキュラーエコノミー~」と題して、アビームコンサルティングの橘氏のほか、一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブの廣中龍蔵事務局長、対馬市しまづくり推進部SDGs推進課の前田剛副参事兼係長、Plug and Play JapanのPartner Success Managerである長谷川泰斗氏が登壇して、海洋サーキュラーエコノミーとデジタルの掛け合わせによって実現する可能性について議論する。パネルディスカッションは、幕張メッセ コンベンションホールAで開催する。

 4つめがトークステージでの講演となる。タイトルは「持続可能な未来に向けた「知の変革」~共創とデジタルの力による価値創造~」で、持続可能な未来に向けた「知の変革」をテーマに、デジタル時代の価値創造のための発想方法を、共創事例とともに紹介する内容だ。アビームコンサルティングの橘氏が講演し、「来場者に対して、新たな共創アプローチの方法を体系的に伝える」という。

CEATECの広大な「スタートアップ&ユニバーシティエリア」を「共創のプロ」と一緒にツアー「ウォーキングブレスト」を実施

 そして今回の出展で、同社の新たな取り組みとして注目を集めそうなのが、ウォーキングブレストである。

 これは、一言でいうと「CEATECのスタートアップ&ユニバーシティエリアを、アビームコンサルティングのコンサルタントと一緒に回り、新たなアイデアをブレストする」というもの。

 「来場した大企業や自治体関係者と、出展しているスタートアップ企業との情報交換の場を提供し、その場でコラボレーションのための具体的なディスカッションをサポートする。大手企業や政府、自治体の来場者とスタートアップ企業の橋渡しを行い、同時にそこに伴走し、支援する役割を担いたい」とする。

CEATEC 2022でのスタートアップ&ユニバーシティエリア。毎年、非常に多くのブースが並んでおり、ポイントを把握して回るだけでもなかなか大変だ。「ウォーキングブレスト」では、アビームコンサルティングのコンサルタントと一緒にこのブースを回り、出展者とのコラボレーションをサポートしてもらえる

 希望する来場者は、専用の申し込みページ、または専用カウンターで申し込み、アビームコンサルティングのコンサルタントによる事前ヒアリングに基づいて、ピックアップしたスタートアップ企業のブースへアテンド。

 コンサルタントと一緒にブースを回りながら、その場でミーティングを実施し、共創の形を一緒に模索することになる。ウォーキングブレストの共創先として対象になるのは、スタートアップ&ユニバーシティエリアに出展している140社/団体以上の国内外のスタートアップ企業や大学、研究機関。そして、スタートアップ&ユニバーシティエリアは、ちょうどアビームコンサルティングが出展するブースに隣接している

 所要時間は30分程度で、料金は無料。参加対象は「スタートアップ企業・大学・研究機関との共創に興味のある企業・個人、金融機関、自治体、支援機関等」とされている。

 このウォーキングブレストは、同社がこれまでに培ってきたスタートアップ企業との共創ノウハウを生かした取り組みといえる。

 「これまでの経験から、スタートアップ企業は、事業会社の色がつくのは迷惑であると考えていたり、技術を切り売りするような相手とは組みたくないと思っていたりすることを理解している。また、社会実装することにも飢えている。一方で、大手企業は、真剣に新規事業創出に向き合えていない課題もある」と前置きしながら、「これまでにも、クライアントとともに、スタートアップ企業を訪問するといったことはあったが、140社以上のスタートアップ企業が集う場所を利用して、ツアーファシリテーションを実施するのは初めてとなる。共創のきっかけづくりだけでなく、ここでプロジェクトがスタートするといった成果につながることにも期待したい」と語る。

ウォーキングブレストの申し込みページ。既に申し込みが開始されている。

「共創のきっかけを提案できる」

 昨年の出展では、アビームコンサルティングの取り組みを紹介し、新たなクライアントの獲得につなげるという狙いが前面に出ていたが、今年の出展では、共創を後押しするための仕掛けが前面に出ている。

 「新規事業の創出といった大きな動きではなくても、既存サービスを少し改善したいと考えている人たち、改善の活動をしていながらも、なにかピースが足りないと感じている人たちには、ぜひ、アビームコンサルティングのブースを訪れてほしい。民間企業や自治体関係者、スタートアップ企業とそれを支援する団体の人たちにも、共創のきっかけを提案できるだろう」と自信をみせる。

 CEATECは、商談を中心にした売り込み型展示会からの脱却を狙っている。

 事業共創によって生まれる新たな次の一手を探している来場者のための展示会が、CEATEC 2023の目指す姿である。

 アビームコンサルティングのブースでは、そうした来場者を強力にアシストし、次の一手の羅針盤を示すことができる企画が用意されているといえる。それは、これまでにスタートアップ企業を含む多くの企業と共創型ビジネスを推進してきた同社だからこそ実現できる企画内容だ。

 そうした意味でも、共創を求めてCEATEC 2023に来場する人たちにとって、アビームコンサルティングのブースは必見だといえる。