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世界初、標準外径で115.2THz/484Tbpsの超広帯域光ファイバー伝送実験に成功

KDDI、住友電工、古河電工ら

 KDDI株式会社、KDDI総合研究所、住友電気工業株式会社、古河電気工業株式会社、および米OFS Laboratoriesは、115.2THzの超広帯域光ファイバー伝送実験に成功したことを発表した。標準的な外径の光ファイバーを使用した実験としては世界初だという。

 今回の実験の成功により、光ファイバー1本あたりの通信容量を大幅に拡大できたことから、より少ないファイバー心線数で同じ通信容量を確保することができることが実証され、通常の管路や設備などを省スペースで活用することが期待される。

 実験では、標準的な光ファイバーと同じ250μmの太さのマルチコア光ファイバーを用い、O帯コヒーレントDWDM伝送技術、O帯ビスマス添加光ファイバー増幅器(BDFA)を組み合わせた。O帯は、商用化されている波長帯であるC帯と比較し、波長分散の影響が小さく、波長分散を補償するための信号処理負荷を軽減できる。その一方で、非線形光学効果により光信号の品質が劣化しやすいという難点があり、通信大容量化には不向きとされていた。

 各社の役割分担は次のとおり。KDDIおよびKDDI総合研究所は、O帯コヒーレントDWDM伝送技術を開発。これにより、光信号の送信パワーを最適化することで非線形光学効果を抑圧できたという。

双方向O帯コヒーレントDWDM伝送技術

 古河電工とOFSは、O帯ビスマス添加光ファイバー増幅器(BDFA)を開発。C帯とL帯(C帯に次いで品質の劣化が少ない帯域。現状、C帯とL帯の2帯域が商用化されている)を合わせた帯域よりも広いO帯の全域にわたって光信号を増幅できる。この実験で、O帯のうち9.6THzにわたってコヒーレントDWDM信号を増幅したことにより、C+L帯に匹敵する超広帯域を実現した。

O帯ビスマス添加光ファイバー増幅器(BDFA)

 住友電工はマルチコア光ファイバーを開発。これを使用することで、ファイバー1本あたりの通信容量を拡大できた。

高密度非結合12コア光ファイバー

 以上により、9.6THz×12コアで115.2THz、伝送容量484Tbps、伝送距離31㎞と、従来のC帯に比べて約24倍の超広帯域伝送実験に成功した。

 今後は、超広帯域O帯コヒーレントDWDM伝送システムの実用化に向けて、送受信機や光ファイバー増幅器、ならびにデジタル信号処理アルゴリズムの研究開発を進め、データセンター間通信の大容量化を目指していくとしている。

 今回の成果は、2023年10月1日~5日に開催された光通信技術に関する世界最大規模の国際学術会議ECOC2023のポストデッドライン論文として報告された。なお、研究開発の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務として受託しているプロジェクト(JPNP20017)の結果、得られたものだとしている。