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約400km離れた除雪車を遠隔操作、NTT ComとARAVが実証実験

仙台から、約400km離れた千葉県の除雪車を遠隔操作する実験のシステム構成と操作イメージ

 NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)と建設現場のDX化などを手掛けるARAV株式会社は11月22日、千葉県に設置した除雪車を、約400km離れた宮城県のコックピットから遠隔操作する実証実験を実施した。

 豪雪地域における除雪作業員の担い手不足は、少子高齢化が進む中での問題となっている。この解決に向けて、NTT Comは、2023年2月には福島県会津地方の昭和村が実施する「5Gを活用した除雪車両の自動運転に向けた実証事業」を受託し、村役場内の操縦室から付近の道路にある除雪車を遠隔操作する実証実験を行っていた。

 2月の実験では、除雪車両と村役場にある操縦室を、高速・低遅延の通信が可能な5G回線で接続。測位システム「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」により車両位置を把握し、車両に搭載した3台のカメラの映像をもとに、除雪車量と除雪区間の周囲にあるものとの位置関係を把握できる「VRガイダンス」を導入した。

 この実証事件の成功により、積雪による視界不良時でも遠隔操作によって現場での事故を防止できること、オペレーターの感覚に頼らない除雪作業が可能になり作業のムラを防げることなどが期待できるとしていた。

2023年2月の実証実験のイメージ
VRガイダンスの詳細画面。道路のセンター画面や路肩の位置、周辺の建物や消火栓などの存在を把握しながら操作を行える

制御にARAVの「Mode V」採用、自動運転に向け操作データを収集

 今回の実験では、千葉県の除雪車両と宮城県の操作室を接続し、2月の実験よりも遠く離れた、400kmの距離を隔てての遠隔操作を行った。測位システムは「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」を引き続き使用し、制御システムには、ARAVの建機遠隔操作システム「Model V」を採用している。

 「Model V」は、既存の建築機械にも後付け可能で、PCやスマートフォンによる遠隔操作を可能にするシステムで、長距離での遠隔操作向け「Long Range Ver.」では、1141kmを隔てた操作の実証実験(東京-佐賀間)にも成功しているという。

Model Vの紹介動画(ARAVが2021年6月に配信したMode V提供開始のプレスリリースより)

 映像伝送には株式会社ソリトンシステムズが開発・提供する映像伝送システム「Smart-telecaster Zao SDK」を採用。モバイル回線を使用するため、光回線が引けない無線環境においても低遅延での映像伝送を実現するという。

 ネットワークには、デバイスにできるだけ近い位置にサーバーを設置し、独自ネットワーク内で通信を行うことで、5Gのリアルタイム性とセキュリティ性を向上させる「docomo MEC」を使用。これにより、外部からの乗っ取り被害防止や、高精彩映像のリアルタイムな伝送が可能になったとしている。

 データ収集のために、IoT向けデバイス用のゲートウェイサービス「IoT Connect Gateway」と、IoTのデータ収集・可視化・分析などのためのプラットフォーム「Things Cloud」使用。除雪車両の位置情報や、操作データの蓄積および可視化を行った。これにより、操作のフィードバックによる操作性向上を図ることに加え、自動運転の実現に向けて必要となる、機械学習用のデータを収集している。

Things Cloudの画面イメージ

 NTT ComとARAVは今後も、除雪作業の自動運転実現に向け、除雪作業における必要な技術的要素や学習データなどをブラッシュアップしながら取り組んでいくという。また、建機遠隔操作システムに加えて、高精度な位置情報把握システムや低遅延での映像伝送などを組み合わせた実証を行うことで、除雪車の自動運転実現を目指すとしている。