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個人事業主の「会計ソフト非利用者」が間もなく半数を切る見通し~MM総研調査

インボイス制度、行政手続きのデジタル化……対応を迫られる

 株式会社MM総研は4月25日、「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2024年3月末)」の結果を発表した。個人事業主における会計ソフトの利用状況などを調査したもので、2023年(令和5年)分の確定申告を実施した個人事業主を対象に、3月15日夜~19日にウェブアンケートで実施した。

 調査した2万4878事業者のうち、「会計ソフトを利用している」と答えたのは40.2%(1万10事業者)。その利用形態の内訳は「クラウド会計ソフト」が33.7%、「PCインストール型会計ソフト」(会計データのみをクラウド上で保管するものを含む)が49.8%、「分からない」が16.5%だった。クラウド会計ソフト利用者は1年前の調査の31.0%から2.7ポイント増加しており、「引き続き拡大基調にある」としている。

 一方で「会計ソフトを利用していない」とした個人事業主は51.8%(1万2891事業者)と半数を占めている。会計ソフト非利用者が行っている方法としては、「市販の帳簿やノートなどへの手書き」が38.4%、「Excelなどの表計算ソフトに入力」が38.0%で多く、次いで「税理士や会計事務所への外部委託」が20.7%だった。

インボイス制度、行政手続きのデジタル化……全ての個人事業主が対応を迫られる大きなテーマに

 会計ソフト利用者に占めるクラウド利用率は、2016年調査の9.2%から年々上昇している。その市場拡大を後押ししているのが「政府による行政手続きのデジタル化」だという。

 「政府は2019年に成立した『デジタル手続法』に基づき、2024年度中に行政手続きの9割を電子化する方針を掲げ、様々な施策を打ち出している。税務面では青色申告特別控除の制度変更もその一環となっている。青色申告特別控除の金額は2021年の確定申告から、従来の紙をベースとした申告では65万円から55万円に減額されたが、インターネット経由で確定申告書を提出する(e-Tax利用)か、もしくは電子帳簿保存に対応したソフトを導入すれば65万円控除の優遇措置を引き続き受けられることとなった。この税制改正は個人事業主に対し、デジタル化のメリットをより明確にしたといえる。」(MM総研)

 こうしたメリットを会計ソフト事業者も積極的に訴求し、電子申告に対応したクラウド会計ソフトの拡販を強化した結果、クラウド利用率の拡大につながったとみている。

 併せて、2023年10月にスタートした「インボイス制度」も追い風になっているという。

 「大手取引先などから電子化されたインボイスでの交付を希望された場合、個人事業主側もその形式での発行・保存を検討することになるため、個人事業主側の日々の請求業務の電子化が進み(少なくとも手書きでは対応しきれなくなる)、ひいては会計業務や確定申告の電子化も進んだ。当初予定されていた制度内容よりは経過措置もとられ緩和されたが、クラウド会計を含む会計ソフト利用が進むプラス要因になっている。」(MM総研)

 しかし、それは同時に、行政手続きのデジタル化やインボイス制度などの法制度変更が「全ての個人事業主にとって対応を迫られる大きなテーマとなっている」とも指摘する。今回の調査結果では会計ソフトそのものを利用していない層がまだ半数を超えているが、その比率は毎年少しずつ低下しており、間もなく半分を切る見通しだとしている。

クラウド会計ソフト市場、ベンダーシェアに大きな変動なし。弥生、freee、マネーフォワードの3社による寡占状態が続く

 なお、クラウド会計ソフトを利用している個人事業主が実際に利用している製品の事業者別シェアは、弥生が53.6%。freeeが24.9%、マネーフォワードが15.2%の順で、これら3社の合計で9割以上を占める。個人事業主におけるクラウド会計ソフト市場は上位3社による寡占状態が続いているとしており、昨年10月のインボイス制度スタートも「シェア変動や乗り換えにはあまり影響しなかったとみられる」としている。