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その業務、出張しないとダメ? 実はオンラインで十分だったかも……コロナ禍明けの出張に対する意識調査の結果が発表される
一方で、出張先での「業務時間外の行動」にいろいろ可能性も~パーソル総研
2024年9月11日 17:47
株式会社パーソル総合研究所は、「最新データで読み解く コロナ禍明けの出張に対する意識と、出張・ワーケーションが地方創生に与える影響について」と題した報道関係者向けのオンライン勉強会を8月30日に開催し、先だって発表された「出張に関する定量調査」の結果などを紹介した。
2023年の国内出張者は892万人。主な出張業務の内容は?
勉強会では、同社上席主任研究員の井上亮太郎氏が登壇し、コロナ禍開けの出張の状況について報告した。
まず、観光庁が公表した「2023年年間集計(確報)」によると、2023年の国内出張者は892万人で、国内宿泊旅行者の12.7%に相当する。会社員が約52%を占めており、性別は男性が約7割・女性が約3割という結果だ。
井上氏は「金額ベースでは、ほぼほぼ回復している」としながらも、「人数ベースではいまだに(コロナ禍前の2019年レベルにまで)回復していると言い切れない」というのが現状だという。
続いて、パーソル総合研究所が実施した「出張に関する定量調査」の結果を紹介。同調査は今年4月3日~5日、直近3カ月以内に国内出張を経験した正社員、20~64歳の1834人を対象に、調査会社のモニターを用いたインターネット定量調査として行われた。
主な出張業務の内容について「打ち合わせ業務」「研修業務」「イベント業務」「通常業務」の4つに分類。
打ち合わせ業務は、「取引への表敬訪問(状況伺いなど)」が6.2%、「取引先への提案・交渉」が16.5%、「取引先との契約締結」が3.7%、「取引先との運用業務上の打ち合わせ」が7.3%、「自社の他拠点メンバーと打ち合わせ」が11.0%となっている。
研修業務は、「研修・セミナーの受講」が10.6%、「研修・セミナーの講師」が2.5%だ。
イベント業務としては、「イベントへの参加展示会(展示会、フォーラム、学会など)」が6.5%、「イベントの運営業務」が4.4%、「イベントでの登壇・発表」が1.3%だ。
通常業務は、「工事・点検・修理」が8.1%、「自社・取引先への業務支援」が7.5%、「調達業務(仕入れなど)」が2.7%となっている。
また、4分類以外の業務として「市場調査・現地視察(現物確認含む)」が5.6%、「その他」が6.1%となっている。
「出張肯定群」は出張前が75.8%、出張後に50.4%へと低下
出張の前後で、出張に対する意識が変わることもある。
出張前の意識として「今回の業務は、出張でないと遂行できないと考えていた」とする「出張肯定群」は75.8%(とてもあてはまる・あてはまる・ややああてはまるの合計)、「出張否定群」は12.6%(全くあてはまらない・あてまらならい・あまりあてはまらないの合計)だった。
一方、出張後の意識として「今回の業務は、出張以外の方法(オンライン等)で遂行してもよかったと思う」とする「出張否定群」は34.1%(とてもあてはまる・あてはまる・ややああてはまるの合計)、「出張肯定群」は50.4%(全くあてはまらない・あてまらならい・あまりあてはまらないの合計)だった。
すなわち、出張前に“出張を前向きにとらえている層”は75,8%だったのに対して、出張を終えたあとに“出張を前向きにとらえている層”は50.4%と低下したことになる。
出張先の業務時間外の行動で「新たな気づき」や「ビジネスの拡大」に
「出張時の業務時間外の過ごし方」について調査したところ、その行動は「巣籠もり群」「懇親群」「娯楽群」の3つに分類されるという。
巣籠もり群としては、「特に何も行っていない」が26.5%、「宿泊先等で仕事」が17.3%だ。
懇親群では、「出張業務の関係者(社内)との懇親」が28.5%、「出張業務の関係者(社外)との懇親」が22.0%、「出張業務以外の仕事関係者との懇親・交際」が8.5%となっている。
娯楽群では、「ご当地グルメを堪能する」が26.3%、「近郊の観光名所を訪れる」が13.2%、「滞在先付近の街を散策する」が13.1%、「ナイトクラブ(居酒屋・バーなど)を楽しむ」が10.3%、「滞在先にいる家族・友人に会いに行く」が8.9%など。
さらに、この業務時間外の過ごし方による「新たな気づき」「前向きな態度変容」「偶発的なビジネス拡大」の3つの出張機能の度合い(平均値/pt)を比較。「巣籠もり」で過ごしている人は、「新たな気づき」が3.74、「前向きな態度変容」が3.68、「偶発的なビジネス拡大」が3.49と低い値だという。
これに対して「懇親&娯楽」の両方を楽しむ人は、「新たな気づき」が3.96、「前向きな態度変容」が3.94、「偶発的なビジネス拡大」が3.81で、ほかの過ごし方をした人よりも値が高くなっている。
出張先の地域に愛着を持ち、地域貢献意識が高まる傾向
「出張先地域に対する愛着」が高まるとの結果もある。「その地域は私にとって大切である」との項目で27.9%、「その地域とのつながりを持ち続けたい」では28.3%、「その地域に行けなくなったらかなしい」では32.6%が、出張先地域に対する愛着が高まったと回答した。
このような愛着により「地域での消費意向やふるさと納税では5倍程度の差がついてくるという傾向が見られた」という。
その地域の消費に貢献したい気持ちが高まったという「地域消費意向」の項目で27.2%、「ふるさと納税意向」では25.6%、その地域のボランティア活動やイベントに参加したい気持ちが高まる「イベント参加意向」では23.9%が、地域貢献意識が高まったと回答した。
出張の業務時間外に「街に出たくなるきっかけ」を
また、「出張先での地域住民との交流機会」を尋ねると、「簡単な挨拶」が61.1%、「軽い会話」が57.3%、「対話・議論」が50.1%、「連絡先交換」が41.5%となっている(いずれも機会あり・多くの機会ありの合計)。
出張先での交流機会別の地域愛着(平均値/pt)を調査すると、「簡単な挨拶の機会」について「機会なし」では3.99、「機会あり」では4.21、「多くの機会あり」では4.59だ。「軽い会話の機会あり」について「機会なし」では4.02、「機会あり」では4.21、「多くの機会あり」では4.60となっている。「対話・議論の機会」について「機会なし」では4.04、「機会あり」では4.28、「多くの機会あり」では4.61だ。「連絡先交換の機会」について「機会なし」では4.10、「機会あり」では4.23、「多くの機会あり」では4.65だ。
簡単な挨拶や軽い会話でも、地域住民との交流機会が多いほど地域愛着は高い傾向が見られるとしている。
井上氏は「出張に行った人たちがホテルに籠るだけではなく、業務終了後に街に出るきっかけを作るにはどうしたらいいか考えている」という。
その1つとして「気軽に立ち寄れるようなワーキングスペース」という考えを挙げている。ワーキングスペースは各地に設置されているが、主な目的は1人で集中して仕事をする場だ。このワーキングスペースに出張者同士や地元の企業を引き合わせる交流の場という機能を持たせるというものだ。
テレワークの継続希望意向・実施率は、ほぼ横ばい
次に「ワーケーションを通じた地域貢献と、はたらく well being」と題して、長野和洋氏(パーソルプロセス&テクノロジー株式会社、パーソルワークスデザイン株式会社 事業開発部/地方創生ワーケーション事業 部長)が登壇。「コロナ禍も終わりテレワークもなくなるといったようなことも言われているので、改めてどういう状況か」として、テレワークの現状を報告した。
パーソル総合研究所の調査による「テレワーク実施者のテレワーク継続希望意向の推移」では、2020年11月~2023年7月はほぼ横ばいだ。
具体的には、2020年4月(n=500)は53.2%だったが、2020年5月(n=5131)には69.4%、2020年11月(n=4923)には78.6%に上昇。ここからほぼ横ばいで、2021年7月(n=5632)は78.6%、2022年2月(n=5884)は80.2%、2022年7月(n=5136)は80.9%、2023年7月(n=5477)は81.9%となっている。
また、転職サイト「DODA」の検索キーワードランキング(2024年7月更新)で、「在宅勤務」「フルリモート」「リモート」「在宅」といったキーワードがランクインしていることを紹介。テレワークでの仕事を望んでいる人が多いと考えられる。
全国におけるテレワークの実施率は、公益財団法人NIRA総合研究開発機構が実施した「第10回テレワークに関する就業者実態調査(速報)」によると、2020年1月は6%だったテレワークの実施率は、2020年3月には17%に、2021年4月~5月は25%に上昇したものの、2021年6月は一気に17%に下がり、さらに2023年3月に13%にまで下がったあとは、ほぼ横ばいだ。このテレワーク実施率について「また下がることは非常に考えにくい」としている。このほかにも、東京圏のデータがあり、数字自体は総じて全国よりも10ポイント前後高いレベルだが、全国と同じような動きで推移している。
企業に向けては「はたらく場所の自由度は、企業選びの最重要ポイント」になると指摘、地域に向けては「ワーケーションも含めた、テレワーク者にとっての街づくりが重要」だとしている。