ニュース
KDDIと京セラ、ミリ波エリアを拡大する無線中継技術の開発に成功、世界初
自律的なエリア形成により、実験では道路カバー率を33%→99%に拡大
2024年12月17日 06:55
KDDI株式会社と京セラ株式会社は12月16日、ミリ波(28GHz帯)通信エリアを効率的に拡張する無線中継技術の開発に、世界で初めて成功したと発表した。本技術を実装した中継機を東京都の西新宿ビル街に展開した結果、道路のミリ波カバー率を33%から99%に拡大できることを確認したという。
5Gの高度化/6G時代において、高速通信が可能なミリ波の活用は、必要不可欠とされている。しかし、ミリ波は直進性が強く、ビルや樹木などの影響を受けやすい性質を持つため、連続・緻密な展開には多くの基地局投資が必要となる。また、バックホールとなる光ファイバー回線の敷設およびその運用コストも課題となっている。
今回開発された無線中継技術においては、中継機同士が相互に連携してメッシュ状につながり、自律的に中継網を形成することで、ミリ波エリアを効率的に拡張できるという。また、中継機装置は電源供給だけで動作し、バックホール回線が必要ないため、設置だけでなくオペレーションにかかるコストも削減できるとしている。
受信/送信の役割を固定せず、自律的にエリアを形成
今回開発された中継機における最大の特徴は、アンテナごとの役割を固定せず、自律的なエリアの形成を行う点にある。
従来の無線中継技術においては、アンテナごとに、基地局から受信するドナー面、増幅して送信するサービス面と役割が固定され、エリアの形成にあたっては、基地局に対して各アンテナの役割と指向方向を調整する必要があった。しかし、今回開発された中継機では、各アンテナがドナー面とサービス面の両機能を備え、役割を動的に切り替えられる。これにより中継機同士がメッシュ状につながり、自律的にミリ波エリアを形成可能になった。
このことにより、アンテナの指向方向の調整が不要になったため、中継機の設置場所の自由度が高まり、設置にかかるコストの削減を実現した。
また、自律的に中継ルートの最適化が行われることも特徴の1つ。中継機は、複数の方向から受信するミリ波電波のうち、最も無線品質の良い中継ルートを選択し、メッシュ状のエリアを形成する。受信した信号の劣化を検知した場合や、建物建設や樹木などの環境変化により中継ルートが遮蔽された場合には、最適な中継ルートを計算し、瞬時に切り替えを行う。
加えて、小型軽量化も実現している。サイズが約216×216×246mm、重量は約4.9kgで、一般的なミリ波用の基地局に比べて大きさと重さを約7割削減したという。これにより、街路灯などへの設置も可能になった。
2024年10月から、実際に西新宿ビル街の街路灯および地下出入口などに合計22台の中継機を設置し、フィールドでの性能確認試験が実施された。結果、西新宿地区の約600㎡範囲において、道路のミリ波カバー率が33%から99%に拡大されたことを確認したという。また、本中継機から送信した電波は、同一基地局から送信される電波とは干渉しないことも確認されたとしている。