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NICTら世界記録更新、標準外径19コア光ファイバーで1.02Pbps、1808kmの伝送を実証

NICTが実施してきた標準外径光ファイバーによる長距離大容量伝送実証の成果

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と住友電気工業株式会社(住友電工)は4月24日、標準外径の19コア光ファイバーを使用し、毎秒1.02ペタビット(1.02Pbps)、1808 kmの伝送に成功したと発表した。

 1808kmは、およそ札幌-福岡間の距離に相当する。2023年3月20日に両者が当時の世界初として発表した、標準外径19コア光ファイバーによる1.7Pbps、63.5kmの伝送を距離の面で大幅に超えるもので、世界記録を更新となり、光通信インフラの通信容量拡大と長距離化の両面で大きな貢献が期待されるとしている。

 今回の更新のため、住友電工は光ファイバーの設計・製造を担当。コアの構造と配置の最適化により、複数の波長帯域(C帯、L帯)で損失低減を実現した、新たな標準外径の結合型19コア光ファイバーを開発した。

 一方、NICTは、住友電工が開発した光ファイバーに対応し、19コアの信号を同時に増幅する機能を有する伝送システムの開発と実証を担当した。

 実証実験では、送信系にてC、L帯における180波長の偏波多重16QAM信号を19コア多重して合計1.02Pbpsの光信号を生成し、1区間当たり86.1 kmの19コア光ファイバーを19回周回させた。周回伝送系は、19コア光ファイバーと合波器/分波器、光増幅器、周回制御スイッチから構成され、各コアの光信号に対応するように並列にした19台の光増幅器が使用される。

実証実験で使われた伝送システムの概略図
結合型19コア光ファイバーの伝送損失特性と、生成したC帯、L帯の光信号

 周回伝送後、受信系にて全コアの信号を一括で受信し、MIMOデジタル信号処理によってコア間の信号干渉を除去した後に各波長のデータレートを測定したところ、C帯では約4.5~6.7Tbps、L帯では約3.3~6.2Tbps、全波長帯の合計で1.02Pbpsの伝送が行われたことが確認された。

実証実験における伝送後の波長ごとの全コア合計データレポート

 本結果の論文は、米サンフランシスコにて開催された第48回光ファイバ通信国際会議(OFC 2025)で最優秀ホットトピック論文として採択され、現地時間4月3日に発表された。