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NTTら、400km離れたイチゴ農園で高精度の収穫を実現する制御技術を実証

エッジコンピューティングの品質制御による遠隔収穫ロボット操作に成功

遠隔収穫システムの構成図

 日本電信電話株式会社(NTT)、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社NTTアグリテクノロジーは5月12日、ネットワーク越しに約400km離れた遠隔地の圃場にある収穫ロボットを操作してイチゴを収穫する実証実験で、エッジコンピューティングの品質制御により、ネットワークの遅延が大きくなった場合でも高い操作性を維持できたことを発表した。

 本実証は、同社が従来開発していた「ネットワークコンピュート高速クローズドループ制御技術」を、2つのポイントから高度化している。同技術は、遠隔操作時の通信品質に応じて処理を切り替えるもので、遅延時間を常に把握し、エンドツーエンドの遅延時間が性能要件を満たさなくなる場合には、別のネットワーク経路や別のサーバーによる処理に即座に切り替えることで、安定・低遅延サービスを提供可能にする。

 ポイントの1点目は、アプリ外のサーバのみで処理時間計測を行えるようにした点にある。従来は画像処理アプリに独自の機能を追加して画像処理に要する時間の計測を行っていたが、サーバーのみで時間を計測できることで、画像処理アプリに手を加える必要がなくなったとしており、従来よりも汎用性が高まったとみられる。

アプリ外からの処理時間計測のイメージ図

 2点目は、通信品質の状態をもとにした制御を、遠隔収穫システム側で行うようにした点にある。従来は通信品質に応じて、別のネットワーク経路やサーバ処理に切り替える制御を行っていたが、今回は、通信品質が低速である時には、ロボットアームを低速にするといった速度制御を行うことで、エンドツーエンドでの遅延時間が長くなる環境でも、アームの誤差を低減することができる。また、遅延状況を画面上で操作者に知らせるようにもしており、遅延時間の大きさを把握することで、操作上のストレスを低減できるとしている。

通信品質に応じた3段階のアーム速度と画面表示

 実証実験において、ネットワークの遅延が変動する環境では、イチゴの位置にロボットアームを1回の操作で正確に移動できた割合(成功率)が約50%であったが、この機能を活用することで成功率は約80%に向上した。さらに、被験者の5名全員がこの機能による操作性の改善を実感したと評価したという。

 NTTらはこの技術の実用化・汎用化を推進し、場所にとらわれない新たな働き方・労働生産性向上を具現化し、産業界の社会的課題解決を目指すとしている。

 この技術については5月15日、16日に開催される「つくばフォーラム2025」にて展示予定となっている。