日本ペンクラブ、Google Book Searchの和解案に異議申し立て


日本ペンクラブの声明文

 日本ペンクラブは27日、「Google Book Search(Googleブック検索)」を巡る訴訟の和解案に対して、異議申し立てを米国ニューヨーク連邦地裁に行うと発表した。

 Google Book Searchでは、Googleが提携する図書館および出版社から提供された書籍をスキャンし、全文検索が行えるサービスを提供している。

 これに対して、米国の作家団体「Authors Guild」や米国出版社協会(AAP)などがGoogleを相手取って訴訟を起こしていたが、2008年10月に和解合意が成立。和解案では、図書館との提携によりスキャンした書籍のうち、絶版または市販されていない書籍については、著作権保護期間内であっても全文の閲覧が可能となり、権利者に対してはこれらの書籍の使用により得た収益の63%を支払うとしている。

 この和解案は、米国内のGoogle Book Searchサービスに対してのみ有効で、日本で提供されている「Googleブック検索」はこの和解案によるサービス内容の変更はない。ただし、和解案には「米国著作権を有するすべての人物が含まれる」とされており、著作権に関する国際条約の「ベルヌ条約」によって加盟国で出版された書籍は米国でも著作権が発生するため、日本など米国外の著作権者も和解案に同意するかどうかを求められていた。

 日本ペンクラブでは4月24日に、和解案については様々な問題点があり許容できない旨の声明を発表。その後、5月には米作家協会・米出版社協会との情報交換会に出席するなど、和解案について検討を行ってきたが、現状では和解案そのものに大きな問題があるとの結論に達し、日本ペンクラブの理事および言論表現委員会有志によって異議申し立てを行うことにしたという。

 和解案の問題点としては、1)日米間における法制度、法慣習の違いを顧慮することなく権利処理を行うことを提示している、2)日米間における出版慣行の違いについての無理解から生じる、日本の権利者にとっては理解不能な条項が数多くある、3)米国内に所蔵されている日本刊行物の権利者保護が十分ではなく、将来にわたって権利侵害を引き起こす可能性がある、4)出版流通の安定性と多様性の維持といった、本来の表現の自由の観点からして、今回の和解協定には疑義があり、米国修正憲法1条違反もしくはコピーライト条項の本来の趣旨に反する――の4点を指摘。また、手続き面においてもいくつかの重大な不備があるとしている。

 日本ペンクラブでは、公聴会での意見陳述などの機会があれば代表を派遣するなど、異議申し立て後の対応を支援していく予定。また、異議申し立ては個々の会員への和解案への対応を拘束するものではなく、デジタルアーカイブ構想そのものに反対するものでもないとしている。


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(三柳 英樹)

2009/8/28 13:30