「Winny」開発者・金子勇氏、逆転無罪、大阪高裁で控訴審判決


公判後に会見を行った金子勇氏(中央)と弁護団

 ファイル共有ソフト「Winny」を開発・公開したことが著作権法違反幇助の罪に問われた金子勇氏に対する控訴審判決公判が8日、大阪高等裁判所で開かれた。小倉正三裁判長は一審判決を破棄し、金子氏に対して無罪の判決を言い渡した。

 この裁判は、2003年11月に著作権法違反で逮捕されたWinnyユーザー2人について、Winnyを開発した金子氏がその幇助の罪にあたるとされ、起訴されたもの。一審の京都地裁は2006年12月、金子氏に対して罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決を下した。これに対して、弁護側は無罪を訴え、検察側は量刑が軽すぎるとして、それぞれ控訴していた。

【追記 12:40】

大阪高等裁判所

 冒頭で裁判長が「一審判決を破棄、被告人は無罪」と述べると、傍聴席からはどよめきの声があがり、金子氏は安堵の表情を浮かべた。弁護団からは笑みがこぼれ、判決言い渡し中には、壇俊光弁護士がハンカチで涙を拭う姿も見られた。

 控訴審判決では、弁護側が問題としていた告訴状の有効性についてや、正犯者を特定した手法の問題点については、一審判決をそのまま認めた。また、金子氏の調書については、参考人として取り調べた際の調書を証拠としたことは違法だとしたが、判決全体に影響を及ぼすものではないとして、当該調書が証拠から排除されるだけにとどまった。

 一審判決では、Winnyは価値中立なソフトだと認めた上で、価値中立なソフトの開発・公開が著作権侵害の幇助に問われるかどうかについては、慎重な判断が必要だと指摘。判断基準として、1)実際のソフトウェアの利用状況、2)それに対する開発者の認識、3)開発者の主観的対応――の3点を示し、金子氏はWinnyが違法に使われていることを知った上で開発・公開を行っていたとして、金子氏に罰金刑を言い渡していた。

 一方、控訴審判決では、ソフト提供者が著作権侵害の幇助と認められるためには、利用状況を認識しているだけでは条件として足りず、ソフトを違法行為の用途のみ、または主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めてソフトを提供している必要があると説明。金子氏はこの条件に該当しないとして、一審判決を破棄し、無罪を言い渡した。


ファイル共有ソフト「Winny」開発者の金子勇氏金子氏の弁護団で事務局長を務める壇俊光弁護士

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(三柳 英樹)

2009/10/8 10:14