携帯電話で翻訳できる時代も5年以内に、Googleが「検索の科学」

「Google TV」のデモも披露


(左から)Googleフェローのアミット・シングハル氏、エンジニアリングリサーチ上級副社長のアラン・ユースタス氏、プロダクトマネージメントのアダム・スミス氏

 Googleは8日、日本を含むアジア太平洋地域の記者を対象としたイベント「Science of Search - 検索の科学」を開催した。イベントでは、Googleのアジア太平洋地域における取り組みや、検索の将来像などに関する講演が行われたほか、秋に米国で発売を予定している「Google TV」のデモが披露された。

 エンジニアリングリサーチ上級副社長のアラン・ユースタス氏は、Webの登場により世界はこの15年間で抜本的に変化したとして、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」というGoogleのミッションを説明。Webページだけでなく、画像や動画、メール、ドキュメント、書籍といった様々な「情報」を整理するとともに、これを世界中のユーザーに届けるための翻訳も重要な技術になっているとした。

 翻訳技術の現状については、Googleでは統計的な手法を用いて翻訳を行っているが、「まだ人のレベルには達していないが、理解はできるレベル。やがては人に近づいていく」と説明。一方、同様に統計的手法を用いた音声認識技術はかなりのレベルに達しており、「携帯電話に英語で話すとそれが翻訳されるという時代が、5年以内には来るだろう。その姿がようやく見えてきた」と見通しを語った。

 Googleフェローのアミット・シングハル氏は、自身が検索に関する研究を始めた20年前の夢は、「テキスト以外の検索」「言語の壁を超えた検索」「テーラーメイドの検索(パーソナルサーチ)」といったものだったが、これらはいずれも実現していると説明。パーソナルサーチは、ユーザーの居住地や履歴を考慮するだけでなく、たとえば「iPad」で検索すると知人がiPadについて書いているコンテンツが検索結果として表示される「ソーシャル検索」も実現しており、こうした検索ができるようになったことは素晴らしい成果だとした。

 また、「リアルタイム検索」も20年前には夢でしかなかったが、今ではTwitterにつぶやいた内容が次の瞬間には検索できるようになったと説明。先日、カリフォルニアで発生した地震では、米国の地質学研究所よりも速く、地震発生から90秒後には「earthquake」で検索するとカリフォルニアの地震に関する情報が表示されたことを紹介。リアルタイム検索は「チャレンジが多いが、だからこそやりがいがある取り組みだ」と語った。

 そして、20年前からの最も大きな夢は「言葉の意味を理解してくれる検索」で、「GM car」ならGMは自動車会社のことだが、「GM food」なら遺伝子組み換え作物のことを意味するように、検索のエンジニアにとって単語の意味を理解するための技術は現在でも課題だと説明。さらに未来については、「今日のスケジュールから妻に何をプレゼントすればいいかまで、検索エンジンにすべて教えてほしい。私をサポートしてくれる検索エンジン」が現時点での夢だとして、「20年前にはSFでしかなかったことが実現できている。こうした夢もきっと実現できる」と語った。

SNSなどのソーシャル情報から知人の検索結果を表示地震発生から90秒後には情報の検索が可能に

 プロダクトマネージメントのアダム・スミス氏は、アジア太平洋地域における検索の課題とプロダクトを紹介した。言語的な課題としては、国や地域によっては母国語で書かれたコンテンツの量が少ないため、特に翻訳が重要になると説明。国によっては地図データが整備されていない場合もあり、こうした国ではユーザーが地図を作成できる「Googleマップメーカー」が大きな成果を挙げているとした。

 また、単語の入力もアジア地域では課題が多いとして、「Google日本語入力」のようなソフトだけでなく、広東語の場合には入力方法自体がわからないユーザーが多いという調査結果もあり、Googleサジェストのようなアシスト機能など、キーボード入力ではなくクリックで検索できる技術も重要だとした。

YouTubeの字幕も翻訳が可能広東語のサジェスト機能

米国で今秋発売の「Google TV」のデモも披露

会場では「Google TV」のデモも披露された

 会場では、米国で秋に発売を予定している「Google TV」のデモも披露された。「Google TV」はAndroidプラットフォームを基盤とするハードウェア製品で、Sonyが「Google TV」の機能を内蔵するテレビとBlu-rayレコーダー製品、Logitechがセットトップボックス型製品の発売を発表している。

 デモでは、テレビを視聴している状態で接続したキーボードを操作すると瞬時にテレビの画面上に検索画面がオーバーレイ表示される動作を紹介。リモコンで外部入力を切り替えるといった操作を必要とせず、テレビとWebをシームレスに利用できる製品になるとアピールした。

 検索ワードとして「cnn」と入力すれば、現在放送中の番組名や関連サイトが候補として表示され、チャンネルを替えることもできる。また、放送中の番組やレコーダーに録画してある番組、YouTubeの動画などをまとめてキーワード検索することも可能で、Webコンテンツをテレビに持ち込むとともに、テレビ自体の視聴体験も改良するとした。

 Google TVに搭載されるGoogle ChromeブラウザーにはFlash Player 10.1が統合され、各種のFlashコンテンツがテレビで利用できる。また、Androidアプリの動作にも対応するため、テレビがアプリケーションのプラットフォームとしても活用できる。他のAndroid端末との連携も可能で、携帯電話の音声入力機能を利用してテレビで検索したり、携帯電話で見ていたWebページをテレビに送信して大画面で見るといったデモも紹介した。


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(三柳 英樹)

2010/6/8 19:31