MS、大学ICT推進協議会、商工会議所が被災企業にPC4千台を寄贈するプロジェクト


左から、日本マイクロソフト株式会社 執行役カスタマーサービス&サポート ゼネラルマネージャー 佐々木順子氏、東北六県商工会議所連合会 仙台商工会議所 専務理事 間庭 洋氏、九州大学 安浦寛人副学長

 東日本大震災からちょうど10カ月経った1月11日、大学ICT推進協議会、東北六県商工会議所連合会、日本商工会議所、および日本マイクロソフト株式会社は、都内で発表会を開催。東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県で事業再開に取り組む商工会議所会員企業に再生PC4000台を無償提供する「東日本大震災 被災中小企業復興支援 再生PC寄贈プロジェクト」を開始すると発表した。

 寄贈されるPCは、現在大学ICT協議会に加入している46大学で不要となったPCを拠出。マイクロソフトは4000台分のOSとOfficeソフトを提供する。1月11日から九州大学構内にてPC再生の取り組みを開始し、2月10日には募集要項を決定、被災地の商工会議所を通じて案内を行う。

 具体的には、各大学で運用ルールに従って廃棄される不要PCを、大学と日本マイクロソフトのサポート部門が連携して、(1)フォーマット、(2)OSの再インストール、(3)Officeソフトのインストールを行なった後、日本商工会議所に発送。日本商工会議所はPCを受け入れる一時保管倉庫を用意し、倉庫代とPCの配送料を負担する。受け入れたPCは、日本商工会議所および東北六県商工会議所連合会が、必要とする被災企業に順次届ける。

 大学ICT推進協議会では、1月11日から九州大学が先行して取り組みを開始。マイクロソフトが大量導入顧客などに提供している、複数台のPCにWindowsとOfficeを同時にインストール可能なサーバー環境を大学へ提供することで、大学側で行うPC再生の負担をできるだけ減らす形とする。またマイクロソフトでは再生作業にカンしてリモートでの技術サポートを行う。

 実際に提供されるPCは、たとえば大学のルールに従って購入から4年間を経過した後、とくに利用希望がなければ処分されるはずのPCだ。このため、スペック的には現在のPCから数世代前のものとなるため、基準としてCPUはクロック500MHz以上、HDDは容量500MB以上のPCを対象とする。OSとOfficeソフトは、Windows XPとOffice 2007、Windows 7とOffice2010を用意、再生PCのスペックにより、Windows XPとWindows 7のどちらが適切かを判断して設定を行う。

 先行して取り組む九州大学の安浦寛人副学長は、まず九州大学でPC再生システムを導入し、その結果得られたノウハウを踏まえて、他の大学にもPC再生システムを導入、拡大していくと説明した。大学ICT推進協議会に加盟する46大学が順次不要なPCを拠出する。安浦学長は、大学ICT推進協議会に加入していない大学についても「協力したい」という声があれば、積極的に対応したいと述べた。

事業の目的と概要再生PC寄贈の流れ役割分担

 日本マイクロソフト株式会社 執行役カスタマーサービス&サポート ゼネラルマネージャー 佐々木順子氏は、クラウドサービスWindows Azureの無償提供や「Windows PC 自動節電プログラム」の無償公開、東北3県における就労支援プロジェクト「東北UPプロジェクト」の実施など、震災以後マイクロソフトが取り組んできた支援活動を紹介。

 こうした支援活動を通じて「とくに小規模事業者について、事業再開にあたってPCが必要になってくるということがわかった。被災企業の業務再開にあたっては、生産に必要な機械などがまず必要になるが、その次に業務管理などでPCが必要になってくる」と述べ、そうした企業を支援するために4000台分のOSとOfficeソフトを無償提供することになったという。佐々木氏は、「次に何が必要かを積極的にお聞きして、ITの力、ソフトウェアの力で、今後も東北復興のために全力を挙げて支援させていただきたい」、と述べた。

日本マイクロソフトの復興支援活動の取り組み
日本マイクロソフトの役割今後の予定

 また、東北六県商工会議所連合会 仙台商工会議所 専務理事 間庭 洋氏は、「被災地も復興の真っ最中で、状況に合わせて息の長いプロジェクトとして、継続的にご支援いただければありがたい。被災地では非常に復興の意欲が強く、なんとかこの地で再び事業展開できるようにがんばろうとしている。仮設工場、仮設商店街などができてきて、パソコンによる業務が必要となっている事業者も増えてきた。ただし、事業者により進み具合はまちまちで、まだ被災した事業所の跡は水浸しで地域の復興計画が決まらない段階では建設制限がかかっている場合もある。事業の再開にはまず事業所の確保、製造機器の導入などが必要になるが、その次の段階としてPCが必要になってくる」と現地の状況を説明。

 「再生PCを順次ご提供いただくことで、事業者の状況に合わせて提供していきたいと考えている」と述べた。また、「被災地では、被災地の外ではすでに“終わったこと”と思われているのではないか。もう関心が薄れ、被災地は忘れられているのではないか、という危機感が非常に強い」として、そういう意味で、震災からすでに10カ月が経過したいま、こうしたご支援をいただけるのは非常にありがたい。被災地の復興は、土地の利用制限がかかっているところも多くあり、まだまだ時間がかかると考えている。できれば1年だけではなく、息の長いご支援をいただければありがたい」として、感謝を示すとともに、息の長い支援を呼びかけた。

被災地の中小企業支援の現況「機械無償マッチング支援プロジェクト」スキーム図被災地の現状(写真は気仙沼)



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(工藤 ひろえ)

2012/1/12 06:00