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ハフィントン・ポスト日本版創刊、ネット上に「良質な言論空間」を
(2013/5/7 19:15)
米国で月間4600万人が訪問するニュースサイト「ザ・ハフィントン・ポスト」の日本版が7日、創刊した。日本版はブロガーによるブログ記事、ニュース記事、ソーシャルコメントの3つの要素で構成。当初は政治、経済、国際、社会の4つのテーマでスタートする。
ザ・ハフィントン・ポストはオバマ大統領や俳優のジョージ・クルーニー氏など、各界の専門家や政治家、セレブ、学生など約3万人のブロガーが寄稿。2012年4月にはソーシャルニュースサイトとして初めて、掲載記事がピューリッツァー賞を受賞した。
日本版に記事を投稿するブロガーは現時点で、ジャーナリストの佐々木俊尚さん、メディアアクティビストの津田大介さん、ライブドア元社長の堀江貴文さんら約70人を確保。今後は今までネットで情報発信してこなかった人も登場する予定だという。
7日には東京・六本木で記者会見が行われ、ザ・ハフィントン・ポスト・メディアグループのプレジデント兼編集長を務めるアリアナ・ハフィントン氏、日本版編集長の松浦茂樹氏、朝日新聞社代表取締役社長の木村伊量氏らが日本版ローンチの意義や豊富を語った。
日本人も対話に参加してほしい
ハフィントン・ポスト日本版についてアリアナ氏は、経済や政治、ビジネスといった話題だけでなく、ストレスの解消や睡眠の重要性といった「人間の健康面」もカバーしていきたいとコメント。
今後は日本版に記事を投稿してくれる一般のブロガーを募るとともに、記事へのコメント投稿を通じて「対話に参加してほしい」と強調。日本版に寄せられた声はグローバルに翻訳されるため、「異なった言語でも真の対話が生まれるはず」と力強く語った。
「日本人は意見を出さないという懸念もあると言われるが、意見だけを求めているのではない。みなさんが持つ自分のストーリーを語ってもらいたい。自分のブログでは届かない幅広い人にリーチできるのがハフィントン・ポストのプラットフォーム」。
なお、ブログ記事やコメントにはガイドラインが設けられ、人力およびツールによって誹謗中傷するようなコメントは排除される。記事やコメントに関する編集権は、親会社の朝日新聞社や米Huffington Postではなく、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンが持つ。
既存ニュースサイトの「残念」なコメント欄とは一線を画す
従来のニュースサイトとの違いは「ユーザーの声」と語るのは、日本版編集長の松浦氏。日本のニュースサイトについては「コメント欄が残念になることが多い」と見ており、ニュースサイトにコメント欄は不要ではないかと絶望していた時期もあったという。
しかし、月間800万件以上のコメントが投稿される米国版ハフィントン・ポストを見て、「ネガティブなコメントは淘汰され、前向きな意見が集約される」ことを実感。日本版でも同様のことを実現できると「未来を見出した」。
松浦氏は「日本では米国のような活発な議論が難しいと言われる」と前置きした上で、「『難しいからできない』ではそれまで。ユーザーのポジティブな意見を集めてみなさんに返していきたい」と意気込みを語った。
「特に団塊ジュニア世代に意見を発信してもらいたい。私自身も団塊ジュニア世代だが、日本の人口ピラミッドでは層が厚いにも関わらず、その声がなかなか聞こえてこない。応援の声も厳しい声もあるが、ポジティブに日本の未来を語る場として盛り上げていきたい。」
2年後にはトップ5のニュースメディアに
朝日新聞社の木村社長は、米国版ハフィントン・ポストについて「昨年はピューリッツァー賞を獲得するなど影響力を広げつつある」と評価。朝日新聞社としては、「ネット上で言論空間を作り上げる推進力に期待したい」と話した。
朝日新聞社デジタル事業本部長で、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン代表取締役を務める西村陽一氏は、「前向きな議論や実りのある対話、少数の異論も認め合うような建設的な議論の場をネット上に作りたい」と語った。
「朝日新聞社としては、ユーザーを巻き込んで議論を活発にしたり、ユーザーの動向分析、SEO対策、技術者と編集者が席を並べてフィードバックし合う仕組みをハフィントン・ポストから貪欲に学びたい。」(西村氏)
主な収益源は広告。日本版ではサイバー・コミュニケーションズ(CCI)と提携し、広告の独占販売や商品開発を行う。売り上げやユーザー数の目標は非公表だが、「2年後にトップ5のニュースメディアになる」(米Huffington Postのジミー・メイマンCEO)という。