レビュー

スマートな会計を実現する無料レジアプリはどれだ? コーヒースタンドのオーナーが実際に試してみて分かった使い勝手の違い

コーヒースタンド「シロクマトーキョー」は、東急田園都市線・三軒茶屋駅から徒歩5分のところ(東京都世田谷区太子堂2-6-1)に立地。テークアウトをメインとした店作りで、イートインはテーブル4席、カウンター3席

 はじめまして、長谷川昭と申します。自身がコーヒースタンドを開き、レジアプリを導入するのにあたり、実際に使用してみた上で感じたことなどをお伝えしたいと思います。


 お客様と金銭をやり取りするリアルビジネスにおいて、会計という作業はとても重要です。会計のシステムの完成度は、営業効率にも大きく影響する上、また金額や釣り銭の間違いなどは経理ロスに直結するだけでなく、顧客からの信頼を失うことにも繋がりかねません。そのため、可能な限り精度の高い会計を実現する必要があります。

 規模の大きなビジネスでは、POSシステムが企業全体で整備されている場合が多いですが、小規模なビジネスでは、レジスターマシンを設置するか、八百屋や魚屋でかつてはよく見られたザルや引き出しをレジ代わりにするくらいしか方法がありませんでした。そのような、小さなリアルビジネスの会計シーンにおいて、ここ数年で大きく勢力を拡大しつつあるのが、スマートフォンやタブレットを使用したレジアプリによる会計システムです。

 レジアプリというのは、簡単に説明すると、iPadなどのタブレット端末にインストールされたアプリによりレジ会計作業を行うシステムで、いくつものサービスが各社より提供されています。レジアプリは、サービスごとに使い勝手や料金体系などに異なる点も多いほか、それぞれに特徴や得意不得意があります。導入にあたっては、業態に最適なシステムを選びたいところです。

シングルオリジンのスペシャルティコーヒーを1杯ずつ抽出して提供。コーヒー以外のメニューや、コーヒーを使ったカクテルなども

検討したのは「Airレジ」「ユビレジ」「Squareレジ」の3つ

 コーヒースタンド「シロクマトーキョー」は、4坪に満たないスペースに店舗を構えており、狭い店内を有効に使う必要がありました。そのため、多くのスペースを必要とするレジスターの設置は難しく、また、レジスター本体が予想外に高額であったこと、ペーパーレスかつクラウドでの売上データの管理も検討していたため、まさに「使わずにはいられない!」のがレジアプリだったのです。しかし、いざ導入するとなると、どのアプリが用途に適しているかが分かりにくく、結果として、複数のアプリをインストールして、それぞれの使い勝手を試した上で選定することにしました。

店内の会計周り。カウンタースペースが少なく、大型のレジスターの設置は困難

 アプリ選びで重視したポイントは、シンプルでスマートな操作性、動作の快適さ、売上ログの管理のしやすさ、コストパフォーマンス性などです。当店の場合は、顧客管理、座席管理、予約管理、などは不要だったため、純粋にレジ会計のツールとしての用途を重視しました。また、分からないことがあれば自分で調べる性格のため、サポートの充実度もあまり重要視しませんでした。コストに関しては、初期費用はさておき、毎月発生する固定費をなるべく抑えたかったため、有料サービスは対象から除外しました。

 その結果、株式会社リクルートライフスタイルが提供する「Airレジ」、株式会社ユビレジの「ユビレジ」、米Squareの「Squareレジ」という3アプリを候補として選定しました。端末は、個人的に所有していた初代iPad miniを使用しました。パフォーマンス面では最新モデルに劣るため、旧モデルでも問題なく使えるアプリであるかどうかも判定基準として考慮しました。

※以下、各アプリの機能や使用感などは、開業準備段階だった2016年1月初旬に比較・検討した際のものです。その後、アプリのアップデートなどにより仕様が変わっている可能性もあることにご留意ください。

 正直なところ、当初の本命はAirレジでした。それなりによい評判を聞いていましたし、リクルートが本気で作った感触が伝わり、大いに期待していました。また、当選すれば、iPad本体のみならず、購入するとなると高額なキャッシュドロワーやレシートプリンターなど、周辺機器が無料でレンタルできるキャンペーンを定期的に開催しているのも魅力的でした。しかし、いざインストールし、試用してみたところ、アプリの読み込みの重さが気になりました。

 当店は開店当初、インターネット回線に固定網を敷設しておらず、モバイルネットワークを使用していました。そのためか、アプリの立ち上げやページの切り替えで、読み込み待ちが頻発しました。また、ネットワークが不安定だとすぐにオフラインモードに切り替わってしまい、回線への依存度が高いシステムのアプリであるという印象もありました。読み込み時間は、決して待てないというほどのものではありませんでしたが、使用時の効率を考えるとあまりありがたいことではなく、システムとしての機能は充実していたのですが、採用するには至りませんでした。

「Airレジ」のアプリ画面。UIはシンプル
店舗ごとのカスタムも可能

 次は、同業者での使用事例も多いユビレジです。実際にインストールして利用してみると、古い世代のiPadを利用しているのにもかかわらず、読み込みの遅さによるストレスなどはなく快適でした。

 イラストライクなUIが特徴的で、伝票の作成や管理などのジェスチャーに独自性があり、店舗によってはとても有益なように思えました。特に、複数の伝票を同時並行で管理するときに、iPadの画面を店内のスペースに見立てて配置でき、直感的に伝票を把握できるようになっている点が使いやすそうに感じられました。

 ただし、全機能を使うためには有料版であるプレミアムプランに登録する必要があり、無料版では直近3日間の売上データしか参照できないというのが当店では一番のネックとなり、採用には至りませんでした。

ジェスチャー動作で伝票を管理できる。複数の伝票を同時並列で管理する必要がある店舗に最適
バーコードスキャンに対応するなど拡張性も高い

 そして、最後はSquareレジです。「クレジット決済システムのおまけサービス」くらいにしか捉えていなかったのですが、Airレジ、ユビレジが導入に至らなかったことから、何か他のアプリを検討しなければならないと軽く焦りを抱きながらSquareレジをインストールし、起動しました。結論からいえば、その後、当店ではSquareレジを採用することになりました。

 起動して初めてUIを見た時点で、心の中では採用を決めていたと言っても過言ではないレベルで、競合アプリとは大きく違う印象を受けました。余計なものがないシンプルなデザインのUIで、直感的にサクサクと初期設定を進めることができ、また、回線や端末の状況にかかわらず、軽快に動作したのも好印象でした。

 取り扱い金額が少ないことや、営業時の事務作業の簡略化を狙うために、当店では当面はクレジットカード決済は採用しない方向で考えていました。そのため、クレジットカードの決済サービスという認識でSquareを捉えていたため、Squareを採用することになるとは考えてもいませんでした。しかし、レジアプリの全機能を無料で使えること、フラットでさっぱりとしたデザインとUI、軽快な動作、商品登録やレジ画面のカスタム性の良さなどの決め手となる要素が多く、採用することにしました。

「Squareレジ」。操作性・デザイン性ではダントツ
好みに合わせて画面をカスタマイズできる

クレジット決済の予定がなくても試す価値アリの「Squareレジ」

 当店では、レジアプリに多くの機能性を求めていなかったため、最終的にUIや操作性を基準に選択した結果となりました。それは、単純にデザインだけでなく、「見やすくシンプルで操作しやすい」という機能的な美しさに魅力を感じたところでもあります。機能面でも、欲しいと思うような機能はしっかりと一通りそろっており、ストレスなく活用できています。また、iPadなどのタブレット端末は、買い替えの頻度が遅い場合も多く、筆者のように手元にあった古い端末をレジに使う、というようなケースも多く考えられるため、世代の古い端末でもしっかりと動作するのは案外重要なことかもしれません。

 次回(6月21日付記事『無料レジアプリ「Squareレジ」の最大の特徴は“最高の普通”、コーヒースタンドのオーナーが実際に運用してみて分かったこと』)は、Squareレジを本格的に運用した際に気付いた点などをレポートします。

「Squareレジ」で実際に運用している