レビュー

休日に職場からSOS!……どう対応すればいい? ~リモートデスクトップ活用事例その2~

「無人PCでWake-on-LAN」「激安ノートでもOfficeをフル活用!」

リモートデスクトップを活用すれば、低スペックなAtom搭載ノートでも、3Dモデルを使うような重い作業を行える。

 活用次第で様々な使い方ができるリモートデスクトップアプリだが、エンジニアなどにとってはなじみ深い反面、そうでない人にとっては、なかなか利用イメージがつかみにくいだろう。

 そこで、実際の利用シーンを想定して、そのポイントなどを解説していくのが当集中連載。今回お届けするのは「職場編その2」。「職場のPCに接続してスマホやタブレットで仕事」や「無人PCで作業」「格安PCで遠隔作業」の3題だ。

 利用するのは、「仕事向け」「家庭向け」の双方で定評があるリモートデスクトップアプリ「TeamViewer」。基本的な使い方や、日本での展開については、別途使い方レビューインタビューを掲載しているので、気になる方はそちらも参考にしてほしい。

【目次】

仕事編1
 ▼取引先の「ソフトの操作がわからない」、たった一つの(?)冴えた対応法
 ▼「資料を会社に忘れた!」、最終手段は?
 ▼自宅で!カフェで!リモートデスクトップでテレワーク!

【仕事編2】
 ▼休日に職場からSOS、それでもバッチリ仕事する方法
 ▼無人PCを置きっぱに、メンテは遠隔で
 ▼激安ノートでOfficeをフル活用してみた

家庭編
 ▼友達の「パソコン教えて」、電話で解決しようとしてません?
 ▼PCでしかできないノベルゲームやソシャゲを昼休みに遊びたい
 ▼スマホアプリの使い方を教えたいがチャットだけでは伝わらない
 ▼スマホのゲームをPCの大画面でプレイしたい

【インタビュー】
 ▼リモートデスクトップの雄「TeamViewer」が日本に本格上陸! その魅力と強みを聞いてみた

【レビュー】
 ▼働き方改革にはリモートデスクトップ?簡単接続&高機能な「TeamViewer」再入門

「休日に職場からSOS、それでもバッチリ仕事する方法」

 今日はせっかくの代休日。家族とのんびり過ごすか、1人で羽を伸ばすかボンヤリと思案していた遅い午前中、スマートフォンに会社から電話がかかってきた。悪い予感とは当たるもの。案の定、同僚からのヘルプコールだった。どうやら「急いでファイルのチェックと簡単な修正が必要」という話だが、会社から付与されたPCは職場のデスクに置きっぱなしである。

 しばし考えた末に選んだのが、TeamViewerを使ってタブレットから会社のPCにアクセスする方法だ。

 それ自体は外出先から何度か試したこともあるし、無線LAN経由なので電波状態が悪いこともあるLTE回線よりも安定して遠隔操作できるだろう。しかし、スマートフォンの小さな画面や、スマホのオンスクリーンキーボードで書類の修正を行うのは少々難儀だ。数字の修正程度ならどうにかなるものの、文章の修正となると骨が折れる。

スマホでPCに接続してみたが、オンスクリーンキーボード有効時は描画領域の問題でかなり厳しい
タブレットでも試してみたが、やはりオンスクリーンキーボードが邪魔で仕事がはかどらない

 そこで取り出したのがBluetoothキーボードだ。

 iOSはBluetoothキーボードを取り付けるとオンスクリーンキーボードが無効になるため、限られた描画領域を大きく扱える。さらにTeamViewerをタブレットで使用する際は、遠隔操作先となるPCのデスクトップ解像度を作業しやすいサイズ(筆者が試した際は1024×768ピクセル)に変更するため、必要であればそのまま作業を続行。PCのように全体を見渡したい場合は設定画面から「画面解像度」で変更すればよい。

Bluetoothキーボードを取り付けると、オンスクリーンキーボードも現れず快適に作業ができる
iOS側のIMEで文書入力が行えるため、文章修正も可能だ(解像度変更済み)

 これなら自宅にPC環境がなくても、十分仕事を完遂できる。さらに応用すれば「旅行中に」なんてこともできるだろう。もっとも休みの日まで仕事に追われたくないのだが(苦笑。見方を変えれば、外回りのときも「タブレットとBluetoothキーボードで仕事」なんてことができそうだ。


「無人PC」を置きっぱに、メンテは遠隔で

TeamViewerでWindows Serverにアクセスすれば、遠隔でメンテナンスも行える

 「無人のPC」をメンテナンスしたい、というニーズは業務内容によって、しばしば発生するものだ。

 たとえば、システム管理部門に属する人間なら、トラブル発生時、データセンターに設置したオンプレミスサーバーまで出向いて保守作業をしたことがあるだろうし、最近は「デジタルサイネージを制御しているPC」が遠隔地のショップに置いてある、なんてことも多いだろう。また、客先の事務所にサーバーそのものが置いてあり、「管理できる人がいない」といった場合も、「実質的に無人で管理しないといけない」ことになるだろう。

 PCの設置場所と担当者のお宅の位置関係にもよるが、こうした場合、無駄の最たるものは移動時間と移動に費やす労力である。普段着からスーツなどに着替え、日中であれば交通機関、夜半ならばタクシーに乗り込まなければならず、その疲労度も半端なものではないだろう。そこで、リモートデスクトップの出番となる。

 遠隔操作の有用性は改めて述べるまでもないが、問題は「OSが正常動作していなければ、リモートデスクトップが使えない」という点。しかし、今回例とするTeamViewerではWake-on-LAN機能を活用して、電源が切れているPCを操作できる。

 Wake-on-LAN機能は、端的に説明するとネットワーク経由でPCの電源を入れる機能だが、利用するには事前にBIOS/UEFI上でWake-on-LANを有効にしてから、LANカードのプロパティダイアログで同機能を有効にする。

LANカードのプロパティダイアログを開き、「電源管理」タブの「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」を有効にする
お使いのLANカードによっては「電源管理」タブの構成が、ベンダー独自の項目になっている。また、「詳細設定」タブでの設定が必要な場合もあるので注意が必要だ

 また、TeamViewer側でもWake-on-LANに関する設定も必要だ。サーバーの起動を自分自身に限定するため、TeamViewerアカウントに割り当て、LANもしくはパブリックアドレス経由の起動方法を選択する。前者は起動元となるPCのTeamViewer IDを入力し、後者の場合はIPアドレスやDDNSサーバー名を登録すればよい。

オプションの「全般」にある「Wake-on-LAN」の「設定」ボタンをクリックし、「アカウントに割り当て」ボタンから自身のTeamViewerアカウントを指定する
再び「設定」ボタンをクリックし、LAN経由の場合は「ローカルネットワーク内の他のTeamViewer」、インターネット経由は「パブリックアドレス」を選択する

 あとはUDPポート9(もしくは7)経由でWake-on-LANパケットを受信したサーバーを起動できる。Wake-on-LANの有効化は複雑なので、TeamViewerのドキュメントを参照してほしい(ただし、このドキュメントはバージョン9を対象にしているため、若干手順は異なる)

「コンピューター&パートナーリスト」のオフラインリストを展開し、対象となるサーバーを選択してから「起動」ボタンをクリックする


激安ノートでもOfficeをフル活用!

 最近のアプリは動作が重い。また、特に日々進歩するOffice 365は機能拡張に伴い、古いPCや低スペックのPCでは厳しい場面も出始めた。仕事に使うPCは、充分パワフルなものが望ましいが、状況によってはその全てをハイスペックにすることが難しいこともあるだろう。

 もちろん使い方によっては数世代前のPCも現役だが、TeamViewerによるリモートデスクトップが可能であれば、ローカルPCのパワーを使わずに会社のデスクトップPCを利用するシンクライアント的な利用方法もあるはずだ。

 言葉で利便性を述べるよりも一例を見せた方がいいだろう。

 手元の激安ノートPC(Atom x5搭載)とデスクトップPCのExcelでマクロを実行した結果をご覧いただきたい。ご覧のとおりAtom搭載の激安ノートPCは1分18秒。Intel Core i7-6700を搭載したデスクトップPCでは36秒。ほぼ2倍の差が生じた。

約8000行のセルを書き換えるマクロを準備
激安ノートPCでの実行に要した時間は1分強だった
TeamViewer経由でデスクトップPCのExcelでマクロを実行。ご覧のとおり2分の1程度に短縮した。
最近のOffice 365でサポートされた3Dモデルもリモートデスクトップであれば気軽に扱える

 このようにオフィスに設置した高性能のデスクトップPCにOffice 365やCADに代表される動作が重いアプリをインストールし、自宅や外出先で操作が必要になった場合はTeamViewer+激安ノートPCを活用すれば、業務遂行も容易になるだろう。

(協力:チームビューワージャパン)