レビュー
Wi-Fi 6と3コアCPUで高速かつ広範囲につながる! テレワークにも最適なTP-Link「Archer AX10」
7千円台で最新規格に対応、設定や管理もスマホアプリで簡単
2020年7月30日 10:00
在宅勤務の強い味方、Wi-Fi 6ルーターが実売7千円台!
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、在宅でのテレワークが普及している。自宅でビデオ会議をしようとして、書斎でWi-Fiの電波の入りが悪いことに気付いたり、家族が動画を視聴し始めて通信が途切れたりして、Wi-Fiルーターの買い換えを考えている人も多いだろう。
TP-LinkのWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応ルーター「Archer AX10」は、実売7千円台という、Wi-Fi 6対応ルーターとしては最も低価格な製品だ。
価格だけなら4~5千円ほどのWi-Fiルーターもあるが、こうした格安品はまず間違いなく旧世代のWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)までの対応だ。
Wi-Fi 5は、通信が安定しやすい5GHz帯が広く普及するきっかけとなったが、策定されてから既に6年。iPhone 11なども対応する最新規格「Wi-Fi 6」ことIEEE 802.11axの普及も始まっており、「いささか古い」と言わざるを得ない。
PCやスマートフォンでも対応機器が徐々に増えてきているので、そろそろWi-Fi 6の導入を考えたい人もいるはず。価格がこれだけ下がってくると、試してみたい気持ちも膨らんでくるだろう。
Wi-Fi 6の特性である「通信の安定性向上」や「通信速度の向上」がプラス数千円で手に入るArcher AX10の性能について、Wi-Fi 5との比較などを通じて検証してみよう。
テレワークにも最適、複数端末の同時通信に強いWi-Fi 6
テレワークが広まっている昨今では、両親がPCやスマートフォンを使ってテレワークを行いつつ、一方では子どもがオンライン授業またはNetflixを見ていて、さらにAmazon Echoも動作中……、なんてことも多くなっているはず。今後のことも考えると、最新規格でWi-Fi環境をでしっかり整備しておくのは悪くない投資だろう。
そうしたテレワーク環境へWi-Fi 6を導入するメリットとして、まず挙げられるのが“多数の機器が通信する際の通信の安定性向上”だ。
Wi-Fiでは、その規格の新旧に関わらず、データをやり取りするときに一定の通信帯域を占有する。ごく小さなデータを送るときにも一定の帯域を消費するため、ほかの機器が通信を待たされたり、広い帯域が使えずに速度が落ちたりする。
そこでWi-Fi 6で採用されたのが、通信帯域をより細かく分けられる「OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)」という技術。小さなデータを効率的に転送できることで、無駄が減って電波が混雑しにくくなる。これによる恩恵は、子機が増えれば増えるほど大きい。
さらに、Wi-Fi 5ではオプションの扱いで、少し前の製品や低価格な製品には搭載例の少ない「MU-MIMO」も、Wi-Fi 6では標準で対応している。これにより複数のWi-Fi子機が同時に通信可能となる。
こうした技術の恩恵で、通信の遅延や品質低下がさらに発生しにくくなる。これにより、テレワークや昨今の働き方改革で増えているオンライン会議で起こりがちな音声や動画の途切れが減り、スムーズにやり取りができるようになるわけだ。
また、最新規格であるWi-Fi 6では、当然ながら通信速度も向上する。ハイエンドモデルには“最大4804Mbps”をうたった製品もあるが、今回検証するArcher AX10における5GHz帯の最大通信速度は1201Mbpsだ。
ただ、Wi-Fi 6対応スマートフォンの多くは、2ストリーム80MHz幅での通信にしか対応せず、ルーター側がどんなに高性能でも、最大速度は1201Mbpsとなる。このため、Archer AX10でも十分な速度と言えるわけだ。
さらに、後述する検証結果を見ると、Wi-Fi 6であれば、ルーターからある程度距離が離れた電波環境の悪い場所で、通信速度の向上が確実に見込める点もメリットだ。
トリプルコアのCPUで高い処理能力を実現
Archer AX10は、手ごろな価格ながらWi-Fi 6に対応するだけではなく、ハードウェア面でも手抜きはない。まずポイントと言えるのが、Broadcom製で1.5GHz駆動のトリプルコアCPUを搭載している点だ。
ルーターというのは意外に忙しくデータを処理する製品で、CPU性能が見劣ると、すぐ通信の処理性能に跳ね返る。ここまで低価格な本製品が「低価格でも手抜きはない」と言える理由は、このCPUを採用していることにある。
また、有線ポートはいずれも1000BASE-Tに対応していて、WAN×1とLAN×4ポートを装備していて、最大4台の機器を接続できる。低価格なルーターには、LANポートの数が少なかったり、100BASE-TXまでにしか対応しないものもみられるが、本機にそうした心配は無用だ。
スマホアプリ「Tether」で簡単・便利に設定
本製品は、スマートフォン向けの「Tether」アプリで簡単に初期設定できる。
一般的なルーターによくある設定方法は、ブラウザーで「ルーターのIPアドレスを直接指定」して管理画面にアクセスするものだが、ネットワークに詳しくなければ、そもそも難しいため、最近ではルーターメーカー各社が専用ソフトなどを用意している。
TP-LinkのTetherアプリは、もちろん無料で利用できる。ルーター本体裏面のSSIDとパスワードで、まずスマートフォンをWi-Fi接続し、Tetherアプリを起動して設定を行う。
Tetherアプリは初期設定だけでなく、便利な機能も備えている。例えば、NURO光のホームゲートウェイを使用している筆者の環境で、スマートフォンからちょっとした操作で動作モードを「アクセスポイント」へ切り替えられた。
また、自宅を訪れた人にSSIDやパスワードを教えるときも、LINEなどであらかじめ伝えたり、QRコードを読み込んでもらったりするだけで済むので手間がない。
使っていて気になることがあれば、まずTetherアプリを起動すれば、たいていのことは片付けられる。ネットワークに詳しい人でも、動作モードをアクセスポイントへ変えた後などに「設定用のIPアドレスは何だろう?」と調べる必要もなく、アプリですぐにアクセスできるのは便利だ。
Wi-Fi 6は11acからでも速度が向上!
さて、「Wi-Fi 6ルーターを入れる」となったら気になるのが、「通信速度が、どれだけ速くなるのか?」だろう。
これについては、同じArcher AX10で、Wi-Fi 5とWi-Fi 6の速度差を比較してみた。Wi-Fi 6対応PCで、本機との接続をWi-Fi 6とWi-Fi 5に切り替え、それぞれiPerfによる速度計測を行った。
Wi-Fi 6 | Wi-Fi 5 | 速度比 | |
上り | 842.7 | 660.8 | 127.5% |
下り | 878.4 | 674.2 | 130.3% |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
まずは本機とPCがは1m程度の近距離での結果を見てみると、上り下りともに約3割の速度向上が確認できた。実測で900Mbpsを超える場合もあり、1000BASE-Tの有線LAN接続に匹敵する速度が出ている。大容量ファイルのダウンロードなどでは、Wi-Fi 5との違いが体感できるほど時短できるはずだ。
通信範囲の広さはWi-Fi 5にも効果あり
ほかにWi-Fi絡みで気になることと言えば、通信範囲だろう。いくらWi-Fi 6で高速になっても、離れた場所で電波が届かなかったり、速度が落ちたりしたら何の意味もない。特に本製品は手ごろな価格なだけに、不安に思うのは無理もない。
そこで今度は遠距離での通信を試してみた。筆者宅は3LDKのマンション。通路側の部屋にルーターを、ベランダ側の部屋の端にPCを置いて通信してみた。筆者が普段使っているNURO光のホームゲートウェイ「HG8045Q」では、この距離だとWi-Fiの接続が頻繁に途切れ、まともに計測できない状態になる。
こちらもWi-Fi 6とWi-Fi 5の両方でテストを行った。
Wi-Fi 6 | Wi-Fi 5 | 速度比 | |
下り | 76.52 | 46.35 | 165.1% |
上り | 11.83 | 9.499 | 124.5% |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
遠距離での通信は速度にムラが出やすいので、速度は参考程度に見ていただきたいが、Wi-Fi 6の方がおおむね高速に通信できているのは確かだ。とはいえWi-Fi 5でも接続が途切れるようなことはなく、テストには何ら問題はなかった。本機に搭載されている4本のアンテナは、伊達ではないと感じさせてくれる。
実際にウェブブラウジングなどを試してみても、若干遅いと感じることはあるものの、十分実用的な範囲。本機の公式サイトでWi-Fiの範囲を3LDKと記してあるとおり、設置場所を配慮すれば家中をカバーすることも可能だろう。
Wi-Fi 6対応デバイスを手に入れたら導入の検討を!
特にテレワークの影響で自宅での通信機器が増えている家庭では、Wi-Fi 6の効果は大きい。テレワークに合わせて新たに購入したPCがWi-Fi 6に対応していたという方も多いだろう。出費がかさむ中でルーターにまでお金をかけづらいという事情があっても、実売7千円台と低価格な本機でなら、Wi-Fi 6のメリットを気軽に享受できるはずだ。
もちろん安いだけではなく、専用アプリで使い勝手もいいし、通信範囲も広く、処理能力にも不満はない上に、有線接続にも十分対応できる。筆者のようにWi-Fiルーター一体型のホームゲートウェイがある家でも、本機を追加してWi-Fi環境をアップグレードできる。
現状のWi-Fi環境に不満があり、Wi-Fi 6に興味があるのなら、お試しのつもりで本機を導入してみてはいかがだろうか。Wi-Fi 6環境への刷新という目的を持って導入するなら、きっと本機のコストパフォーマンスの高さに驚き、満足のいく使用感が得られるはずだ。
おまけ:専用スマートフォンアプリ「Tether」の画面
低価格帯の製品なだけに、スマートフォンアプリの出来が気になる人も多いはず。そこで今回、初期設定を行った際のスクリーンショットを掲載する。気になる方は参考にして欲しい。
(協力:ティーピーリンクジャパン株式会社)