レビュー
テレワーク向けホテルを「4泊5日19,800円~」で借りられる、宿泊予約サイト「Otell」を試してみた
2021年7月2日 07:00
テレワークが広く普及しつつある昨今だが、誰もが自宅作業を快適に行えるわけではない。家族が同居していて作業スペースが分離できず、集中できない場合もあれば、単純に部屋が狭すぎて作業に向いていない場合、また、壁が薄くテレビ会議などで声を出すのがためらわれる場合もあるだろう。
こうしたニーズを見込み、日中作業に対応したプランを多くのホテルが用意しつつあるなか登場したのが、今回紹介する「Otell」だ。これは月~金曜の4泊5日プランに限定し、提携するホテルを割安で予約できるサービスだ。言うなれば「テレワーク向け宿泊予約サイト」ということになる。
この3月にサービスインしたばかりということで、提携ホテルの数はまだ数十軒程度だが、ビジネスホテルだけでなく温泉宿などもあり、ワーケーション利用を含めた多彩な用途に対応する。今回、実際に試してみたので、サービスの要点をチェックしつつ、レポートをお届けしたい。
なお、今回の宿泊は、3回目の緊急事態宣言よりも前の4月上旬に行っており、現在はサービス内容が若干変更になっている可能性もある。文中では具体的な施設名も出てくるが、記事を参考に予約をする場合は、あらかじめ確認するようにしてほしい。
「ホテル公式サイトにない独自情報」が強み。デスクの幅×奥行、チェア単体の写真、Wi-Fi実測値なども
テレワークでホテルを予約するにあたり、重視すべき点は何だろうか。筆者はこの十数年余、ホテルに宿泊して作業を行う機会が多いのだが、「作業」と「宿泊」を切り離して考えた場合、前者で最も重要なのは「PCを広げても余裕のあるサイズのデスク」および「長時間座っても疲れないチェア」の2つということになる。
一般的な宿泊予約サイトでは、このデスク&チェアの情報が不十分で、現地に足を運んでみるとデスクの横幅が足りなかったり、チェアに背もたれがなかったりと、長時間の作業に耐えうる設備でなく、がっかりさせられるケースも少なくない。不満があったからといって、現地で買い足せるものではないからだ。
しかしこのOtellは、一般的なホテルの施設情報に加え、デスクの横幅や奥行などの情報が掲載されており、作業に向いているかどうか判断しやすい。なかには実寸ではなく写真だけの場合もあるが、周囲の調度品からおおよその幅と奥行を把握できるので、十分に役に立つ。これだけでも、このサイトを利用する価値は高い。
一方のチェアについてはまだ情報量は不十分なのだが、ホテルの公式サイトや宿泊予約サイトでは掲載例の少ないチェア単体の写真を載せている施設もあり、テレワーク向きなのか否かを判断しやすい。チェアはデスクと違って寸法よりも形状のほうが重要なので、足元のキャスターの有無まで含めた写真があるのはありがたい。
このほか施設によっては、Wi-Fiの速度やコンセントの数、さらにはフロントで貸出が可能なPC周りのデバイスなどの情報が記載されている場合もある。このうちWi-Fiは、設備の有無だけならホテル公式サイトや宿泊予約サイトでも確認できるだけに、実測値が記載されているのはプラスだ。ちなみに、Otellを運営する株式会社ガイアックスによると、掲載ホテルは全て「25Mbps、4K動画視聴可能」という同社独自の基準速度をクリアしているとのことだ。
今のところ、こうした情報は宿泊施設によってかなりバラつきがあるのだが、ホテルの公式サイトや宿泊予約サイトではデスク周りの情報はないに等しいため、繰り返し利用する場合、どうしても過去に宿泊して「当たり」だった施設を再度予約する羽目になる。本サイトならば、事前に一定の情報が得られるため安心感があり、さまざまな施設を試してみようという気にもなる。
6月末には、「Otell Select」というページも開設した。仕事に集中するための“より厳しい基準で厳選した部屋”を掲載している。具体的には――
- デスクは幅77cm×奥行65cm以上
- チェアは背もたれ付き・クッション付きのビジネスチェア
- Wi-Fiは25Mbps以上
- モニターの貸し出しあり
- 昼白色のデスクライト完備
という条件を設定し、Otellで環境を整備。現在、5つの宿泊施設で各1部屋ずつ用意している。さらに、条件を満たさないところにはOtellが設備投資を行い、順次、環境を充実させていく予定だという。
「昼はテレワーク、夜は温泉」に対応する施設を一発検索
もう1つ、テレワーク作業とは直接関係しない、宿泊を中心とした機能および付帯設備についてはどうだろうか。これらは人によって求めるものが大きく違うはずで、一概には言えないところがある。
例えばある人は、ワーケーションに近いスタイルを望んでいて、露天風呂がある宿泊施設を希望するかもしれない。今回のOtellも、温泉または大浴場があるホテルに絞って検索を行う機能があるなど、こうしたニーズに対応している。
また、これとは逆に、昼夜を問わず自分のペースで作業を行いたいので、付帯設備うんぬんよりも、清掃のために部屋を空けることが求められる日中の時間帯も引き続き利用できるといった、ホテル側の対応のほうがむしろ重要という人もいるだろう。筆者はどちらかと言うとこちらのタイプにあたる。
今回、筆者が宿泊した施設(後述)では、月~金までの宿泊のうちシーツ交換は中間にあたる水曜日に1回のみ、また、アメニティはドアノブにかけて交換というスタイルだったので、こうしたニーズに合致していたのだが、このあたりは検索条件として指定するのではなく、施設情報に書かれた条件をもとに、個別に判断および交渉することになる。
あとは料金面だろうか。Otellは、月~金までの平日4泊5日のプランが基本となり、その分、宿泊料金が通常より割り引かれたかたちになっている。現時点では料金プランは、以下の3段階に分かれているようだ。ちなみに土曜チェックアウト・日曜チェックインのオプションが用意されている場合もある。
- 1万9800円(税込2万1780円)
- 2万4800円(税込2万7280円)
- 2万9800円(税込3万2780円)
これらは4泊分の料金なので、1泊あたりに直すと「約5000~7500円」ということになる。これが安いか高いかはそれぞれの宿泊施設によっても異なるので個別に確認していただきたいが、筆者がざっと見た限りでは、十分にお得な料金設定のように感じられる。
ただしこれは宿泊を伴う場合の話で、デイユースとして借りて夜は自宅に戻る利用スタイルならば、このOtellよりもリーズナブルなプランはあるはずで、宿泊込みでこの価格であることが、Otellのメリットということになる。そうした事情も踏まえ、温泉または大浴場がある施設を狙い、ワーケーションも兼ねてしまうというのは、考え方としてありだろう。
実際に利用してみた印象は?
前置きが長くなったが、筆者がこのOtell経由で利用した施設の感想を、簡単にレポートしておこう。今回、筆者が宿泊したのは、JR関内駅から5分程度の立地にある「コンフォートホテル横浜関内」(横浜市中区)だ。コンフォートホテルは全国に複数のホテルがあるが、他のホテルチェーンと違う大きな特徴として、調度品の種類が統一されていることが挙げられる。
もちろん細かい部分では違いがあるのだが、テーブルやベッドサイドの照明、コンセントの数などは概ね共通しており、各地を移動しながら作業する場合に、コンフォートホテルを選んでおけばまず失敗はないという安心感がある。今回、Otell経由で利用できる施設の中からコンフォートホテルを選択したのも、そうした事情が大きい。
また、Otellから宿泊予約が可能なホテルをざっと眺めた限り、コンフォートホテルは、こうした仕事周りの環境についての情報量が多い。前項で紹介した、デスクにメジャーを当てた状態の写真は、別のコンフォートホテルの紹介ページに掲載されているものだし、今回のコンフォートホテル横浜関内も、デスクの幅と奥行が十分に把握できる写真が用意されている。
そのため、手持ちの機材が使えないかもしれないという不安もなく、ノートPCとサブディスプレイ、キーボード、およびこれらを接続するドッキングステーション類を持ち込むことができた。事前情報がないと、なかなかここまではできない。
チェアについても、一定のクッション性を備えつつ、厚みのある背もたれを備えたものが用意されている。さすがにビジネス向けの本格的なチェアではないものの、一般的なホテルによく見られる、背もたれすらないチェアとは比べ物にならない。これも事前に写真を確認できたので、安心して利用できた。
ちなみに宿泊施設ビルトインのWi-Fiは今回利用していない。筆者は通常、アクセスポイントを持ち込んで有線LANに接続し、そこに各デバイスからWi-Fiで接続する方法を取っており、今回もそれを踏襲したからだ。仕事利用ともなるとスマホ1台だけではなく複数のデバイスを接続するため、個別設定が必要なWi-Fiはどうしても優先度が下がる。少なくとも有線LANについては利用に問題がなかったことを付記しておく。
もっとも、全てが順風満帆だったわけではない。筆者が利用したのは4月上旬だったのだが、企業の新入社員研修で宿泊している団体客とたまたまフロアがバッティングし、彼らが部屋を相互に行き来したり、なかには廊下で大声で話し込むことまであった。筆者としては静かに作業がしたい時間帯も始終この状態だったので、これではたまらない。
結局、遅い時間になっても改善が見込まれなかったので、ホテル側から注意をしてもらう一方、翌日以降を考慮して別のフロアの部屋へ移動させてもらったのだが、連泊するとなるとこうしたリスクは避けられない。ホテル全体をテレワーク用に借り上げているわけではないからだ。これはホテル側やOtell側の非というわけではないだろう。
筆者は通常、団体客が多いシーズンは宿泊を避けたり、また、初めて宿泊するホテルは原則として連泊せずに複数のホテルを渡り歩くことで、こうしたリスクを回避しているのだが、このあたりはOtellを使う使わないを問わず、実に難しい問題だ。限度を超えた場合の対応はホテル側にお願いしつつも、どうしてもという場合は夜だけ自宅に戻るなどの選択肢も踏まえつつ、プランを立てたほうがよいのかもしれない。
提携施設も徐々に増え、ワーケーション利用も視野に
テレワークの導入が進むなか、カフェやコワーキングスペースでのテレワークの実施は、セキュリティの観点でNGとなっている企業も多いと聞く。
こうした場合にプライベートな空間が確保されるホテルでの作業は、会社からも(比較的)承認を得られやすいだろうし、また、現在の新型コロナウイルス禍では、マスクを着用しなくて済む利点もある。そうした宿を探す場合の助けとなるこのOtellは、有望なサービスと言っていいだろう。
筆者が利用した4月時点では、宿泊施設の所在地はほぼ首都圏に限定されていたが、本稿を執筆している6月時点では、西は大阪、北は福島まで広がっており、ワーケーション的な用途でも便利になりつつある。また、宿泊施設の設備情報も、以前はなかったものが追加されるなど、徐々に充実していっているようだ。まずはどのような宿泊施設があるか、顔ぶれからチェックしてみてはいかがだろうか。