レビュー

10GbE&フルSSD NASを活用しよう! 1万円でもできる、予算別環境構築ガイド

10GbE&SSD NASでテレワークがはかどる!「AXELBOX」で実現(後編)

10GbE&SSDの高速NASの活用環境をどう作る?

 最近注目を集めている「フルSSDの高速NAS」を活用する上で重要なのが、高速なアクセス環境だ。

 一般的な有線LAN(1000BASE-T)の2.5倍速となる「2.5GbE」のUSBアダプターは今や4000円程度から購入できるが、「2.5GbEのハブはいくらぐらいだっけ?」「もっと速い速度が必要なら、いくら必要だっけ?」というと、すぐには出てこない人も多いだろう。

 そこで今回、テックウインドが発売する第2世代「AXELBOX」レビューの続編として、「高速NASのための環境整備ガイド」をお届けしたい。

第2世代「AXELBOX」はCPUにRyzen、SSDにWD Redを採用したフルSSDの高速NAS。ベースモデルはQNAP製で、2.5GbEを2ポート、10GbEを2ポート搭載する。容量は4~32TB(ベイ数4~8)で、価格は32万8900円からと、コストパフォーマンスの高さも特徴だ。詳細については、レビュー前編の活用レポートも参照のこと。

 周辺環境をどう改善していくのがベストなのか、今回は、環境構築に必要なアイテムをグレード・予算別に紹介するとともに、それぞれの実性能もチェックしていきたい。

Thunderbolt 3/4インターフェースで10GbE接続(予算:3万円~)

 まずは、「ノートPCで10GbEのフルスペックを生かしたい場合」だ。

 ノートPCで、10GbEの有線ポートを標準装備する製品は2021年10月現在でもほとんどなく、大型のゲーミングノートPCなどごくわずかが搭載するのみ。そのため、AXELBOXとの10GbE接続は、外付けのLANインターフェースを利用するのが一般的な方法となる。

 さらに、10GbEの最大10Gbpsという高速なデータ通信を損なうことなく利用するには、そのLANインターフェースとノートPC間の接続方法も限られる。

 例えば、USB 3.2 Gen.2は最大10Gbpsで、理論値で考えればちょうどマッチするように思えるが、USBインターフェースの「実転送速度」はそれより低いため、10GbEの性能をそのまま発揮することは不可能。これより高速なThunderbolt 3またはThunderbolt 4が必要だ。これらは最大40Gbpsなので、10GbE(10Gbps)を余裕でカバーできる。

今やThunderbolt 3もしくはThunderbolt 4(USB4)ポートを搭載するノートPCは珍しくなくなってきた
QNAPのThunderbolt 3対応LANインターフェース「QNA-T310G1T」

 Thunderbolt 3接続の10GbE対応LANインターフェースとしては、例えばQNAPの「QNA-T310G1T」がある。Windows、macOS、Linuxなどに対応し、QNAPのThunderbolt 3搭載NASでも利用できる製品となる。

 Windows/Linuxではドライバーを別途インストールする必要があるが(OSのバージョンにもよる)、macOSは付属のThunderboltケーブルとLANケーブルを接続するだけで、すぐに利用可能だ。

10GbEのほかに、従来の100Mbpsや1GbE、さらには5/2.5Gのマルチギガビットにも対応する

 価格は3万円台と決して安価ではない。が、脱着・持ち運びが比較的容易で、複数のPCで共用しやすいメリットもある。もちろん、Thunderbolt 3/4ポートを備えるデスクトップPCでも利用でき、100Mbpsや5/2.5/1GbEなどのマルチギガビットにも対応しているので、活躍の機会は多い。妥協のないパフォーマンスを狙うなら必携だろう。

 なお、10GbEに対応したスイッチングハブは、安いものなら5ポートで3万円台半ば程度から購入できるし、QNAPからも業務向けの製品が発売されている。

 AXELBOXはポート数が多いため、使い方によってはスイッチングハブが不要な場合もありそうだが、購入する場合は上記のような予算を見ておくといいだろう。

10GbEの拡張カードを使用して10GbE接続(予算:9000円~)

 次はデスクトップPCの場合だ。

 最近のデスクトップPCなら、10GbEへの対応にそこまでコストはかからない。10GbE対応NIC(Network Interface Card)も1万円以下で手に入るので、手軽にPC側の環境が整えられる。

 注意しなければならないのは、「PCI Expressの拡張スロットを搭載しているかどうか」と「装着可能なスロットに空きがあるかどうか」だ。10GbE対応NICは、PCI Express x4またはx16に対応するものが多く、x1対応のスロットには装着できない。

 このx4またはx16のスロットは、多くの場合ビデオカードが使用するものでもあるため、NICを追加で差し込めるスロットが余っていない可能性もある。

10GbE対応NIC。実売価格は9000円~
デスクトップPCが備えるPCI Expressスロット。写真の銀色に見える長いx16(x4兼用)のスロットは、1~3つ備えるものが多い

 NICであればPC内部に格納できるので、設置スペースを余計に取らずに使えるが、スロットが占有されていて装着できなければ、デスクトップPCでもUSB接続などのLANインターフェースを使うことになる。今使っているPCがどういう状態なのか、事前に確かめてから選びたい。

USB LANインターフェースで5GbE接続(予算:1万2000円~)

 次は「できるだけコストは抑えつつ、パフォーマンスを上げたい場合」だ。

 1台や2台なら高価なLANインターフェイスを購入するのもいいと思うが、大量に導入すると驚くような価格になってしまうこともある。

 このため、「できるだけコストを抑えつつ、可能な限りのスピードアップを図りたい」というニーズが高まってきた。そこで近年注目を浴びているのが5GbEや2.5GbEといったマルチギガビットに対応するLANインターフェイスだ。

 それぞれの公称速度は5Gbpsと2.5Gbpsだが、最近は2.5GbE製品の価格低下が著しく、製品の性格に違いが出ている。

 USB接続のLANインターフェイスを例にすると、5GbE製品は「10Gbpsモデルが安くなったもの」(予算1万2000円程度~)で、2.5GbE製品は「普通の1000BASE-T対応モデルより“ちょっとだけ高い高級品”」(予算4000円程度~)といったイメージだ。

 まずは5GbEの例から紹介していこう。

QNAPのマルチギガビット対応USB LANインターフェース「QNA-UC5G1T」

 5GbE対応の外付けLANインターフェースとしては、同じくQNAPの「QNA-UC5G1T」などがある。先ほどの10GbEの製品と同様、対応OSはWindows、macOS、Linuxなど。接続インターフェースはUSB 3.2 Gen.1(USB 3.0)となるため、多くのPCで使いやすいのが利点だ。

 ただし、USB 3.2 Gen.1の理論最大速度はご存じの通り5Gbps。先ほどの10GbEに対するUSB 3.2 Gen.2(10Gbps)と同じく、実際の転送速度はどうしても5Gbpsより低くなってしまう。

仕様としてはUSB 3.2 Gen.1(USB 3.0)接続となるため、5GbE本来の速度を生かせないのがもったいないかも

価格と性能のバランスが取れた2.5GbE接続(予算:4000円~)

 そこで、「リーズナブルに高速NASを活用できる方法」として注目できるのが2.5GbE対応製品を使う方法だ。

 2.5GbEは、近年最も競争が激しくなっているカテゴリーだ。

 例えば、2.5GbE対応のUSB LANインターフェースやNICは、4000円前後と安価なものがいくつか見つかるし、2.5GbE対応ネットワークスイッチも1万円を切るなど、もはや普及価格帯に落ち着いてきている

2.5GbE対応のUSB LANインターフェース(左)とNIC(右)

 つまり、割と気軽に1GbEからアップグレードして、ネットワーク環境の改善を図れるのだ。当然ながら10GbEほどの性能は望めないにしても、少ない投資額で確実なパフォーマンスアップが期待できるという意味では、2.5GbEはバランスのいい選択肢と言える。

 また、「メインPCには10GbEのインターフェイスを、さほど使用頻度の高くないPCには2.5GbEを付けておく」というハイ・ローのミックス戦略もアリだと思う。いずれにせよ、「まずは2.5GbEで簡単・着実にインフラの底上げをしておく」というのは、コンセプトとしてお勧めしたい。

インターフェース別のデータ転送速度を計測!

 ここまでに紹介した中で、最も高速なのは10GbEであることは間違いないだろう。ただ、コストなどの都合から5GbEや2.5GbEなどのマルチギガビット環境を選んだときに、どれほど効果があるのかも気になるところだ。

 そこで、1GbEやWi-Fi 6、Wi-Fi 5といったほかの接続環境も含め、AXELBOXとの間のデータ転送速度をチェックしてみた。

 テスト方法は、AXELBOX上の共有フォルダーにSMB接続できるよう設定し、シーケンシャルの読み書き速度を想定したテストを行った。WindowsのデスクトップPCからは「NAS performance tester」を利用したが、一部macOSでの計測が必要なものについては「Blackmagic Disk Speed Test」を用いている。

 予想通り10GbEが最も高速だが、実速度で読み込みが1GB/sを超えてきているのはかなりのインパクト。AXELBOXの搭載SSDはSATA接続(最大6Gbps)なので、ストレージ1台のみだと速度はそこまで出ないはずだが、今回試したのが「AXEL-473A」というストレージ4台のRAID 6構成であることが、さらなるパフォーマンスアップにつながっているようだ。

 次に高速なのは5GbE接続(5Gbps)だが、2.5GbEと比べて大きな差にはなっていない。先述のとおり、ここは最大5GbpsというUSB 3.2 Gen.1のインターフェース上のボトルネックの影響が大きいのだろう。2.5GbEの約3倍ものコストがかかる5GbEだが、その分に相当する効果までは期待しない方がよさそうだ。

 それに対して2.5GbEの健闘っぷりはなかなかのもの。2.5Gbpsというスペック通り、読み書きともに1GbEのほぼ2.5倍という、規格上の転送速度に近い値を叩き出している。周辺機器が安価なことを考えれば、コストパフォーマンスの高さは群を抜いている。

 一方、Wi-Fi 6(リンク速度2402Mbps)も、ワイヤレスとはいえ1GbEを優に超えるスピードを見せた。スマートフォンのようにWi-Fiが基本となる端末からAXELBOXにアクセスするような場合でも、快適な速度で活用できるわけだ。

接続方法・通信帯域の違いによるデータ転送速度の比較

コストを抑えるなら「10GbE+2.5GbE」のミックスもアリ

 それなりのコストはかかってしまうが、10GbE LANでアクセスできるオールSSD NASのAXELBOXのパフォーマンスは、まさに圧巻の一言。
 まるでローカルドライブのような速度で読み書きできるため、これなら頻繁にアクセスする大容量ファイルをネットワーク上に置いておいてもストレスを感じず、生産性高く作業できるだろう。

 もし、設備的な問題からネットワークやパソコンの10GbE化が難しい場合、あるいはコストをあまりかけられない場合、せめて2.5GbE化するだけでも効果は間違いなくある。AXELBOXを導入したからといって、必ずしも「10GbEでなければ意味がない」というわけではない。

 特に、先ほど書いたように「速度が必要なPCは10GbE」、「そこまで速度が要らないPCは2.5GbE」と組み合わせて使えば、最小限のコストで最大限の効率向上が得られる。

 こうした使い方をすると、AXELBOXの「高速な有線ポートが多い」という特徴もフルに生きる。台数によっては高価な10GbEスイッチを購入せずとも、十分に活用できることもあるだろう。

 Wi-Fi 6でもそこそこの効果は得られるけれど、仕組み上、ワイヤレス通信は安定性の面がネックになる。ぜひとも2.5GbE以上のネットワークでAXELBOXの性能を体感して欲しい。

(協力:テックウインド株式会社)