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2022年(令和4年分)年末調整の書き方<3> ~記入例のまとめ&提出期限に間に合わなかった場合の対処法~
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の変更点と記入手順
2022年11月9日 06:00
この記事は、2022年(令和4年)の年末調整について説明したものです。
2023年(令和5年)の年末調整については、以下の最新記事をご参照ください。
- 2023年(令和5年分)の年末調整の書き方~3枚の申告書の記入例まとめ
今年の変更点は? そもそも年末調整とは? - 年末調整の「基礎控除申告書で収入金額や給与所得がわからない」を解決! 超時短な計算方法も伝授!
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「令和6年 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記入手順を図解
「年末調整」がそろそろ盛り上がる時期だ。お勤めの会社によって年末調整の提出日は早い人は10月下旬、遅めの人は12月上旬、最も多いのが11月中旬、今まさに提出期限が迫っている人がいるだろう。
第1回は「令和4年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の書き方、第2回は「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」の書き方を紹介した。今回は最後の1枚 「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」 の書き方を紹介しよう。
2022年(令和4年分)年末調整の書き方[目次]
「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、来年1月以降の給与から天引きされる所得税の税額を決めるための申告書だ。扶養家族などの申告に漏れがあると、毎月の所得税が増えるので漏れなく記入したい。
申告書のフォーマットが変更された
「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」はフォーマットが変更されているが、該当する人は少なめな印象だ。変更点は2つ。
- 非居住者(国外居住親族)の扶養控除の見直し
- 「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」の記入欄が新設
簡単に説明しておこう。まず、1つめの非居住者(国外居住親族)の扶養控除の見直しについて。これまでは所得要件が国内所得のみで判定されるために、国外で一定以上の所得がある国外居住親族でも扶養控除の対象になっていた。これに対応し来年令和5年から、扶養親族のうち、30歳以上70歳未満の非居住者は控除対象から外れる。ただし以下の条件に該当する場合はこれまでどおり控除対象となる。
- 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者
- 障害者
- 扶養控除の適用を受けようとする居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている者
ザックリいうと、30歳以上の子が海外で生活していて一定の収入がある場合、国内所得がなくても扶養控除の対象外になる。ただし留学生、障害者、38万円以上の仕送りをしている場合はこれまでどおり控除対象(証明する資料を提出)。ちなみに国内に「住所」がある、または1年以上「居所」を有する人を「居住者」、それ以外の人を「非居住者」と規定されているらしい。
2つめの「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」の記入欄は、所得税と住民税で、退職所得の扱いが異なるために新設されたらしい。疑問なのは平成4年のこの時期に、定年退職以外で親族が平成5年に退職することを予測して記入するのは難しいように思えるが、実際に運用が始まると記入するケースが明確になるかもしれない。
変更・新設箇所のどちらも該当する人は少ない印象だ。
毎月天引きされる所得税はどうやって決まる?
第1回でも触れたが、サラリーマンは毎月の給与明細に天引きされた所得税の金額が記載されている。今年2022年(令和4年)の所得税は「給与所得の源泉徴収税額表(令和4年分)」によりその月の給与の額から算出され、“みなし金額”がその月に納税されている。
例えば「給与所得の源泉徴収税額表(令和4年分)」の「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」の299,000円以上302,000円未満の部分を見ると、「扶養親族等の数」が0人:8,420円、1人:6,740円、2人:5,130円、3人:3,510円……と、7人まで納税額(その月に天引きされる額)が記載されている。
そもそも「扶養親族等の数」は誰をカウントするのか。表の最後のページの注意書きには「扶養親族等とは源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族をいいます」と記載されている。これを翻訳しよう。まず「源泉控除対象配偶者」の「配偶者」は旦那さんから見た奥さん、奥さんから見た旦那さん。「源泉控除対象」の条件は以下のとおり。
① 自分の合計所得金額が900万円(年収1095万円)以下
② 配偶者の所得が95万円(年収150万円)以下
多くのサラリーマンは年収1095万円以下なので①の条件はクリア。配偶者がパート/アルバイトで年収150万円以下であれば②の条件もクリアとなる。配偶者が正社員として働いている場合は年収150万円を超えると思われるので人数にカウントされない。
「控除対象扶養親族」は所得48万円以下の16歳以上の子や親が対象となる。仮に旦那さんが働いていて奥さんが専業主婦、高校生の子が1人なら扶養親族等の数は2人となる。
この扶養親族等の人数を確認するための申告書が「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」だ。奥さん(または旦那さん)、子どもを書き忘れることはないと思うが、別居の親などを書き忘れると毎月の納税額が増えることとなる。来年の年末調整でリカバリーはできるが、おそらくこの申告書に書き忘れる人は、そのまま何年も控除を受けることなく納税額が増えたままとなる可能性が高いので注意しよう。
住民票と居住地が異なる人は住所の記入に注意が必要
この申告書はフォーマット変更で前年より1つブロックが増え、7つのブロックに分かれている。多くの人が該当するのは最上段の自分の情報、Aブロック:配偶者の情報、Bブロック:扶養親族(16歳以上)の情報、Eブロック:16歳未満の扶養親族の情報だ。ここではこの4つのブロックを順番に見ていこう。
最上段は自分の氏名、個人番号(マイナンバー)、生年月日、世帯主の氏名と続柄、住所、配偶者の有無を記入する。個人番号の記入は会社のルール(過去に報告していれば記入不要など)に沿って、必要があれば記入する。世帯主の氏名欄は、自分が世帯主の場合は自分の名前を記入し、続柄は本人。父親が世帯主の場合は父親の氏名を記入し、続柄は父または親と記入する。
自身の住所に関する注意点は、居住地と住民登録の住所が同じなら住んでいる住所を書けばよいが、独身の人で住民票は居住地ではなく実家という場合は会社のルールを確認しよう。この申告書の情報をもとに市区町村にデータが送られ住民税が課税されるが、その際、住民登録がないと役所から会社に確認が行われる。なので基本は住民票の住所を書くと思われる。
会社側は実際に住んでいる住所も住民票のある住所も把握しておきたいと考えられる。会社のルールが住民票の住所を記載となっていれば実家の住所を記入。欄外に現住所を記載し、住所欄は住民票の住所(あるいはその逆)を記載というルールならそれに従って記入する。独身で親を扶養していない人は、この欄を記入したらこの申告書の記入は完了だ。
おそらく、左側の給与の支払者の名称(=会社名)、法人番号、住所などは会社が記入するので自分で記入する必要はない。左端の所轄税務署も会社が記入。その下の市区町村は、居住地に住民票があればその市区町村を記入。現住所と住民票が異なる場合、納税先となる住民票が置かれた自治体が基本だが、念のため会社のルールを確認しよう。
「源泉控除対象配偶者」の記入
ここからがこの申告書の重要ポイント。配偶者、子ども、親など扶養する親族を漏れなく記載しよう。最初はAブロック:配偶者の情報。配偶者とは旦那さんから見た奥さん、奥さんから見た旦那さんで、家庭によってどちらも配偶者となりえるが、ここでは配偶者控除の対象を奥さんとして説明しよう。
申告書には「A 源泉控除対象配偶者(注1)」と書かれていて、やや右下の注1には、源泉控除対象配偶者の説明が記載されている。その内容は以下のとおり。
① 自分の来年(令和5年)の合計所得金額が900万円(年収1095万円)以下
② 配偶者の来年の所得が95万円(年収150万円)以下
青色事業専従者、白色事業専従者など意味不明な記述もあるが、概ね①②をクリアしていれば源泉控除対象配偶者だ。自分が年収1095万円以下(=ほとんどのサラリーマン)で、パートの奥さんの年収が103万円以下、あるいは住民税が非課税となる93万円~100万円以下(地域による)を続けているなら、深く考えずに記入しよう。
記入欄の「令和5年中の所得の見積額」は、推定される年収から55万円を引いた額を記入する。年収100万円なら所得は45万円、年収150万円なら所得は95万円といった感じだ。奥さんが正社員でバリバリ働いていて、年収が350万円であれば控除の対象とならない。
「控除対象扶養親族(16歳以上)」の記入
Bブロック:扶養親族(16歳以上)の情報は、控除対象となる扶養親族(子や親)を記入する。ここは年齢により控除額が異なるため、昭和29年・平成13年など生年月日に関する細かな記述があり少々複雑だ。まずは所得と年齢の条件を確認していこう。
控除対象の年齢は来年(令和5年)の年末時点で16歳以上(平成20年1月1日以前生まれ)で、ほぼ来春に高校1年生になる子から上の年齢が対象だ。ただし、早生まれの高校1年生(平成20年1月2日~平成20年4月1日生まれ)は年末時点で15歳のため控除対象外(=税金が高くなる)となる。個人所得税は年(1月1日~12月31日)を期間としているため、学年や年度とズレがあり、早生まれの子(推定4人に1人)を持つ親は不利となるアホな仕組みが長年続いているが、改善される見込みはない。
年齢の条件に加え所得48万円以下という条件もある。例えば子どもがアルバイトをしている場合は、年収で103万円以下であれば、55万円を引くと所得は48万円以下となり控除対象となる。仮にバイト代が毎月6万円なら年収は6×12=72万円。72万円-55万円(55万円=令和2年以降の給与所得控除)=17万円が所得となり、控除対象となる。子に関して言えば、高校生、大学生といった制限はないので、就職浪人やリストラなどで所得が48万円以下(年収103万円以下)であれば25歳でも控除の対象だ。また、親が年金受給前に退職し所得が48万円以下なら控除対象となる。
親が公的年金を受給している場合は年齢により控除額が異なる。65歳未満の公的年金控除額は60万円、65歳以上の公的年金控除額は110万円。よって公的年金のほかに給与所得などがない場合は、65歳未満なら公的年金が108万円以下であれば所得が48万円以下となり控除対象、65歳以上なら公的年金が158万円以下であれば所得が48万円以下となり控除対象だ。
母親が遺族年金を受給している場合は注意したい。遺族年金は課税対象とならないので、サラリーマンだった父親が亡くなって母親が遺族年金を受給している場合は、158万円を超えても扶養控除の対象となる。
記入欄の真ん中あたりに「□ 同居老親等」「□ その他」「□ 特定扶養親族」と書かれたチェック欄がある。その上の項目欄には「老人扶養親族(昭29.1.1以前生)」「特定扶養親族(平13.1.2生~平17.1.1生)」と生年月日の縛りが記載されている。ここは重要だ。
扶養親族には控除額の優遇が受けられる年齢がある。来年、令和5年の年末時点で昭和29年1月1日以前に生まれた人は70歳以上、平成13年1月2日から平成17年1月1日に生まれた人は19歳から22歳だ。この2つの年齢の扶養親族は控除額が増える(=税金が減る)。図を見ていただこう。
一般の扶養親族の控除額は38万円。70歳以上は老人扶養親族で、同居の場合は58万円、それ以外は48万円と控除額の加算がある。特定扶養親族の対象となる19歳から22歳はほぼ大学生の年齢で、控除額が25万円加算され63万円となっている。これらの年齢の扶養親族がいると控除額がグッと増え、納税額が減るということだ。
特定扶養親族は「大学生の子がいるとお金がかかるから税金を安くしましょう」という趣旨だが、年齢が条件なので特定扶養親族は大学生である必要はない。浪人生でもフリーターでも、生計を一として、年間の所得が48万円以下(年収103万円以下)であれば特定扶養親族となる。来春から子どもが大学生だ、という人で注意したいのは、前述のとおり早生まれ(平成17年1月2日~4月1日生まれ)の子だ。令和5年の年末は18歳なので優遇を受けることはできない。
70歳以上の親を扶養している場合、同居なら「同居老親等」に、離れた実家に仕送りしていたり老人ホームに住んでいるなど別居であれば「その他」にチェックを付ける。同じく19歳から22歳の「特定扶養親族」にあたる子がいる場合は該当する欄にチェックを忘れないようにしたい。
「16歳未満の扶養親族」の記入
下段のEブロック:16歳未満の扶養親族の情報は、住民税のための事項だ。16歳未満の子どもは、控除の対象から外されているが、住民税の非課税の判定に影響するので、令和5年の年末に16歳未満=平成20年1月2日以後に生まれた子どもがいる人はこのブロックに記入しよう。中学生以下が対象となるが、来春高校1年になる子のうち、早生まれの子も含まれる。
「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記入はこれで完了だ。第1回掲載の「令和4年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」や第2回掲載の「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」より面倒な計算がないので、この申告書の記入は難易度が低いと思われる。全体の記入例を掲載しておこう。この記事をPCで閲覧している人は各画像をクリックすると拡大画像が開く。さらに左上の+マークをクリックするとより高解像度な元画像を表示することができる。
ほとんどの人はこれで年末調整の3枚の申告書の記入は終了となる。「書き方が分からん」という読者の手助けとなれば幸いだ。繰り返しとなるが、家族構成はほぼ毎年同じなので、記入が終わった申告書のコピー、写真、PDFなどを保存しておくと翌年は楽に記入ができる。
提出期限を過ぎてしまったら……自分で確定申告するしかない?
「令和4年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の裏面には“令和4年の最後に給与の支払を受ける日の前日までに、給与の支払者に提出してください”、今回の「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の裏面には“令和5年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに、給与の支払者に提出してください”と書かれている。給料日が毎月25日なら、それぞれ12月24日、来年1月24日までが正式な提出日となるが、現実は10月下旬~12月上旬に提出している人が大半だろう。
仮に従業員1000人の会社で全員が12月24日に提出し、それから確認、間違いの修正、納税額の確定、給与システムに入力、振込手続きをしていたら、給与は正しく振り込みできないことが想像される。社員数が多いほど管理部門の作業が増えるため早めの提出が求められる。年賀状は12月25日までに……と似ていて、多くの人が25日までに投函していれば、少し遅れて投函しても元旦に届くことはある。
業務が多忙で、一身上の都合で、単にズボラで、会社が定めた提出期限を過ぎたらどうするか? 少人数の遅延であれば期限を過ぎてもリカバリーは可能と思われるので、1日でも早く担当の人に頭を下げて受け取ってもらおう。優先順位は「令和4年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 ……」と「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」。この2枚がないと納税額が確定しない。「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は来年の給与から源泉徴収する額を決めるための申告書なので、12月の給料日を過ぎても大丈夫と考えられるが、また頭を下げに行くのも辛いし、誠意が感じられないので3枚セットにして提出したい。もちろん「本当のタイムリミットはずっと先でしょ」などと、口が裂けても言ってはいけない。
確定申告をすればよい、と安易に先送りをしないこと。初めて確定申告をする人は、その方法を調べる時間で年末調整は書ける。サラリーマン時代の筆者は「年末調整ってなに?」「面倒くさい」と思っていた。起業して自分で確定申告をするようになり「年末調整は楽だった」と実感している。年末調整はかなり「面倒くさい」作業だが、30分~1時間くらいで終わるだろう。これに対し、(サラリーマンと個人事業主では内容が異なるが)確定申告は数日の作業が強いられる。加えて、この記事が理解できている以上の税の知識も必要となる。税理士に依頼すると費用が発生する。
会社では労力や税の知識の大半は総務や人事など管理部門の人が無償で補ってくれる。1時間と数日の作業時間の差は管理部門のお陰だ。年末調整は、書く側より、数十人~数千人分の申告書を受け取って確認・修正する側の負担が大きい。そもそも年末調整は本人の税金を減らすための作業で、管理部門や会社には何の得もない。「早く出して」と督促されても感謝の気持ちを持っていただきたい。当然、遅れた場合も「申し訳ありません」と頭を下げて受け取ってもらおう。管理部門の人の心の声を代弁しよう――「年末調整は誰のため? あんただよ」。
記入例まとめ
3回にわたり年末調整の記入方法を紹介した。年に一度で忘れがちなうえ、徐々に複雑となり“不毛”としか思えない作業だが、国が決めたルールなので、マイナンバーを利用した自動化が行われるまではサラリーマンの義務だと思うしかない。3回の記事では少しでも(手抜きして)楽に記入できるように説明と記入例を紹介した。
第1回の冒頭で急いでいる読者のため3枚の記入例を掲載しているが、連載の最後にもう一度掲載しておこう。記入作業の際の参考にしていただきたい。INTERNET Watch読者の健闘を祈る。