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年末調整の記入漏れで税金の優遇措置を受け損ねているかも!「扶養親族」欄の注意点とは? 2023年(令和5年分)年末調整の書き方<4>

「令和6年 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記入手順を図解

年末調整の書き方「令和6年 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記入手順を図解【2023年(令和5年分)最新版】年末調整の記入漏れで税金の優遇措置を受け損ねているかも!「扶養親族」欄の注意点とは?

 「年末調整」がそろそろ盛り上がる時期だ。お勤めの会社によって年末調整の提出日は早い人は10月下旬、遅めの人は12月上旬、最も多いのが11月中旬。今週、そして来週、日本中の多くのサラリーマンに提出期限が迫っているだろう。

 第1回は急ぐ人向けに3枚の申告書の記入例など、第2回は「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の書き方、第3回は「令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書」の書き方を紹介した。今回は最後の1枚 「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」 の書き方を紹介しよう。さらに、会社への提出期限を過ぎてしまったらどうすべきかについてもアドバイスする。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは

 「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、来年1月以降の給与から天引きされる所得税の税額を決めるための申告書だ。扶養家族などの申告に漏れがあると、毎月の所得税、来年6月以降の住民税が増えるので漏れなく記入したい。

毎月天引きされる所得税はどうやって決まる?

 第1回でも触れたが、サラリーマンは毎月の給与明細に天引きされた所得税の金額が記載されている。今年2023年(令和5年)の所得税は「給与所得の源泉徴収税額表(令和5年分)」によりその月の給与の額から算出され、“みなし金額”がその月に納税されている。

 例えば「給与所得の源泉徴収税額表(令和5年分)」の「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」の299,000円以上302,000円未満の部分を見ると、「扶養親族等の数」が0人:8,420円、1人:6,740円、2人:5,130円、3人:3,510円……と、7人まで納税額(その月に天引きされる額)が記載されている。この表を見ると、扶養親族の人数が増えると天引きされる所得税が減ることも分かる。

「給与所得の源泉徴収税額表(令和5年分)」の一部抜粋
「給与所得の源泉徴収税額表(令和5年分)」で社会保険料等控除後の給与が30万円の場合、独身(扶養親族0人)なら、その月は所得税8420円、扶養親族が3人なら3510円が天引きされる

 そもそも「扶養親族等の数」は誰をカウントするのか。表の最後のページの注意書きには「扶養親族等とは源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族をいいます」と記載されている。これを翻訳しよう。まず「源泉控除対象配偶者」の「配偶者」は旦那さんから見た奥さん、奥さんから見た旦那さん。「源泉控除対象」の条件は以下のとおり。

 ① 自分の合計所得金額が900万円(年収1095万円)以下
 ② 配偶者の所得が95万円(年収150万円)以下

 多くのサラリーマンは年収1095万円以下なので①の条件はクリア。配偶者がパート/アルバイトで年収150万円以下であれば②の条件もクリアとなる。配偶者が正社員として働いている場合は年収150万円を超えると思われるので、人数にカウントされない。

 「控除対象扶養親族」は、所得48万円以下の16歳以上の子や親が対象となる。仮に旦那さんがサラリーマンで奥さんが専業主婦、高校生の子が1人なら、扶養親族等の数は2人となる。

 この扶養親族等の人数を確認するための申告書が「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」だ。配偶者や子どもを書き忘れることはないと思うが、別居の親などを書き忘れると毎月の納税額が増えることとなる。来年の年末調整でリカバリーはできるが、おそらくこの申告書に書き忘れる人は、そのまま何年も控除を受けることなく納税額が増えたままとなる可能性が高いので注意しよう。

住民票と居住地が異なる人は住所の記入に注意が必要

 この申告書は7つのブロックに分かれている。多くの人が該当するのは最上段の自分の情報、Aブロック:配偶者の情報、Bブロック:扶養親族(16歳以上)の情報、Eブロック:16歳未満の扶養親族の情報だ。ここではこの4つのブロックを順番に見ていこう。

「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の7つのブロックの説明
「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を7つのブロックに分けてみた

 最上段は自分の氏名、個人番号(マイナンバー)、生年月日、世帯主の氏名と続柄、住所、配偶者の有無を記入する。個人番号の記入は会社のルール(過去に報告していれば記入不要など)に沿って、必要があれば記入する。世帯主の氏名欄は、自分が世帯主の場合は自分の名前を記入し、続柄は本人。例えば父親が世帯主の場合は父親の氏名を記入し、続柄は父または親と記入する。

「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の最上段のブロックの記入例の図解
最上段のブロックは自分の情報を記入する

 自身の住所に関する注意点は、居住地と住民登録の住所が同じなら住んでいる住所を書けばよいが、独身の人で住民票は居住地ではなく実家という場合は会社のルールを確認しよう。この申告書の情報をもとに市区町村にデータが送られ住民税が課税されるが、その際、住民登録がないと役所から会社に確認が行われる。したがって基本は住民票の住所を書くと思われる。

 会社側は実際に住んでいる住所も住民票のある住所も把握しておきたい。会社のルールが住民票の住所を記載となっていれば実家の住所を記入。欄外に現住所を記載し、住所欄は住民票の住所(あるいはその逆)を記載というルールならそれに従って記入する。独身で親を扶養していない人は、この欄を記入したらこの申告書の記入は完了だ。

 おそらく、左側の給与の支払者の名称(=会社名)、法人番号、住所などは会社が記入するので自分で記入する必要はない。左端の所轄税務署も会社が記入。その下の市区町村は、居住地に住民票があればその市区町村を記入。現住所と住民票が異なる場合、納税先となる住民票が置かれた自治体が基本だが、念のため会社のルールを確認しよう。

「源泉控除対象配偶者」の記入

 ここからがこの申告書の重要ポイント。配偶者、子ども、親など扶養する親族を漏れなく記載しよう。最初はAブロック:配偶者の情報。配偶者とは旦那さんから見た奥さん、奥さんから見た旦那さんで、家庭によってどちらも配偶者となりえるが、ここでは配偶者控除の対象を奥さんとして説明しよう。

 申告書には「A 源泉控除対象配偶者(注1)」と書かれていて、やや右下の注1には、源泉控除対象配偶者の説明が記載されている。その内容は以下のとおり。

 ① 自分の来年(令和6年)の合計所得金額が900万円(年収1095万円)以下
 ② 配偶者の来年の所得が95万円(年収150万円)以下

 青色事業専従者、白色事業専従者など意味不明な記述もあるが、概ね①②をクリアしていれば源泉控除対象配偶者だ。自分が年収1095万円以下(=ほとんどのサラリーマン)で、パートなどの奥さんの年収が103万円以下、あるいは住民税が非課税となる93万円~100万円以下(住民票を置く自治体による)を続けているなら、深く考えずに記入しよう。

「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「源泉控除対象配偶者」の記入例の図解
「源泉控除対象配偶者」の記入例

 記入欄の「令和6年中の所得の見積額」は、推定される年収から55万円を引いた額を記入する。年収100万円なら所得は45万円、年収150万円なら所得は95万円といった感じだ。奥さんが正社員で働いているなど年収が300万円とか400万円であれば控除の対象とならない。

「控除対象扶養親族(16歳以上)」の記入

 Bブロック:扶養親族(16歳以上)の情報は、控除対象となる扶養親族(子や親)を記入する。ここは年齢により控除額が異なるため、昭和30年・平成14年など生年月日に関する細かな記述があり少々複雑だ。まずは所得と年齢の条件を確認していこう。

 控除対象の年齢は来年(令和6年)の年末時点で16歳以上(平成21年1月1日以前生まれ)、ほぼ来春に高校1年生になる子から上の年齢が対象だ。ただし、早生まれの高校1年生(平成21年1月2日~平成21年4月1日生まれ)は年末時点で15歳のため控除対象外(=税金が高くなる)となる。個人所得税は年(1月1日~12月31日)を期間としているため、学年や年度とズレがあり、早生まれの子(推定4人に1人)を持つ親は税金が増えるアホな仕組みが長年続いているが、改善される見込みはない。

「控除対象扶養親族(16歳以上)の情報
控除対象の年齢は令和6年の年末時点で16歳以上、平成21年(2009年)1月1日以前生まれ

 年齢の条件に加え、所得48万円以下という条件もある。例えば子どもがアルバイトをしている場合は、年収で103万円以下であれば、給与所得控除の55万円を引くと所得は48万円以下となり控除対象となる。仮にバイト代が毎月6万円なら年収は6×12=72万円。72万円-55万円(55万円=令和2年以降の給与所得控除)=17万円が所得となり、控除対象となる。子に関して言えば、高校生・大学生といった制限はないので、就職浪人やリストラなどで所得が48万円以下(年収103万円以下)であれば25歳でも控除の対象だ。また、親が年金受給前に退職し、所得が48万円以下なら控除対象となる。

 親が公的年金を受給している場合は、年齢により控除額が異なる。65歳未満の公的年金控除額は60万円、65歳以上の公的年金控除額は110万円。よって公的年金のほかに給与所得などがない場合は、65歳未満なら公的年金が108万円以下であれば所得が48万円以下となり控除対象、65歳以上なら公的年金が158万円以下であれば所得が48万円以下となり控除対象だ。

 母親が遺族年金を受給している場合は注意したい。遺族年金は課税対象とならないので、厚生年金や国民年金などの被保険者であった父親が亡くなって、母親が遺族年金を受給している場合は、158万円を超えても扶養控除の対象となる。

「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「控除対象扶養親族(16歳以上)」の記入例の図解
「控除対象扶養親族(16歳以上)」の記入例

「老人扶養親族」「特定扶養親族」は大きな減税

 記入欄の真ん中あたりに「□ 同居老親等」「□ その他」「□ 特定扶養親族」と書かれたチェック欄がある。その上の項目欄には「老人扶養親族(昭30.1.1以前生)」「特定扶養親族(平14.1.2生~平18.1.1生)」と生年月日の縛りが記載されている。ここは重要だ。

 扶養親族には控除額の優遇が受けられる年齢がある。来年、令和6年の年末時点で昭和30年1月1日以前に生まれた人は70歳以上、平成14年1月2日から平成18年1月1日に生まれた人は19歳から22歳だ。この2つの年齢の扶養親族は控除額が増える(=税金が減る)。図を見ていただこう。

所得税における扶養親族の年齢と控除額
扶養親族の年齢と控除額。30歳以上は令和5年から条件が加わった

 一般の扶養親族の控除額は38万円。70歳以上は老人扶養親族で、同居の場合は58万円、それ以外は48万円の控除額の加算がある。特定扶養親族の対象となる19歳から22歳はほぼ大学生の年齢で、控除額が25万円加算され63万円となっている。これらの年齢の扶養親族がいると控除額がグッと増え、納税額が減るということだ。

 特定扶養親族は「大学生の子がいるとお金がかかるから税金を安くしましょう」という趣旨だが、年齢が条件なので特定扶養親族は大学生である必要はない。浪人生でもフリーターでも、生計を一として、年間の所得が48万円以下(アルバイトなら年収103万円以下)であれば特定扶養親族となる。来春から子どもが大学生だ、という人で注意したいのは、前述のとおり早生まれ(平成18年1月2日~4月1日生まれ)の子だ。令和6年の年末は18歳なので優遇を受けることはできない。

 70歳以上の親を扶養している場合、同居なら「同居老親等」に、離れた実家に住む親に仕送りしている、老人ホームに住んでいるなど別居であれば「その他」にチェックを付ける。同じく19歳から22歳の「特定扶養親族」にあたる子がいる場合は該当する欄にチェックを忘れないようにしたい。

<コラム>子どもの掛け持ちバイトに注意

 大学生の子(正しくは年末時点で19歳~22歳)で所得48万円以下なら所得税の控除額は63万円、住民税の控除額は45万円。ザックリ計算すると、課税所得が300万円の人(195万円超 330万円以下)の所得税・住民税の税率はどちらも10%なので、年間の納税額が所得税で6万3000円、住民税で4万5000円、合計10万8000円減る。かなりの減税だ。

 アルバイトの所得が48万円(年収103万円)を1円でも超えると、親の税金は10万8000円増えることになる。これはかなり痛い。十数年前、筆者の息子が掛け持ちで2つバイトをしていて年収が103万円を超えた。そんなことは知らずに、個人事業主なので確定申告に63万円の控除を記入して数カ月後。先に電話があったのは区役所。数日後に税務署。電話の内容はどちらも同じ。「息子さんの収入が103万円を超えたので控除が受けられません」ということで追徴課税となった。息子のバイト代が103万円をいくら超えたかは記憶にないが、もしかしたら数十円、数百円。何万円も超えることはなかなかないと思われる。追徴課税はそれをはるかに超えるので、知ったときのショックは大きい。

 令和5年(2023年)の東京都の最低賃金は1113円。平成25年(2013年)は869円(厚生労働省の資料)。10年で3割近く上がっている。バイト不足の店舗などは、最低賃金よりはるかに高い時給で募集を掛けるのが実態だ。103万円の壁は30年ほど固定されているため、昔よりパート/アルバイトの年収が103万円を超える可能性は高い。加えてマイナンバーにより発覚しやすくなっている。子どもの掛け持ちバイトには注意しよう。

 そもそも国は国民の所得を増やすことを目指すなら、同時に103万円の壁を最低賃金や実質の時給に合わせて上げるべきだと思う。

「16歳未満の扶養親族」の記入

 下段のEブロック:16歳未満の扶養親族の情報は、住民税のための事項だ。16歳未満の子どもは控除の対象から外されているが、住民税の非課税の判定に影響するので、令和6年の年末に16歳未満=平成21年1月2日以後に生まれた子どもがいる人はこのブロックに記入しよう。中学生以下が対象となるが、来春高校1年になる子のうち、早生まれの子も含まれる。

「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「控除対象扶養親族(16歳以上)」の記入例の図解
「16歳未満の扶養親族」の情報の記入例

 「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の主要な部分の記入はこれで完了だ。「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」や「令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書」より面倒な計算がないので、この申告書の記入は難易度が低いと思われる。

 「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の全体の記入例を掲載しておこう。

※記入例の画像はクリック/タップで拡大。さらにPCで閲覧している場合は、拡大画像の左上にある「+」アイコンをクリックすると、より高解像度な元画像を表示できます。

「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」全体の記入例の図解
「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の全体の記入例

 ほとんどの人はこれで年末調整の3枚の申告書の記入は終了となる。「書き方が分からん」という読者の手助けとなれば幸いだ。家族構成はほぼ毎年同じなので、記入が終わった申告書のコピー、写真、PDFなどを保存しておくと翌年は楽に記入ができる。

提出期限を過ぎてしまったら……自分で確定申告するしかない?

 「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の裏面には“令和5年の最後に給与の支払を受ける日の前日までに、給与の支払者に提出してください”、今回の「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の裏面には“令和6年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに、給与の支払者に提出してください”と書かれている。給料日が毎月25日なら、それぞれ12月24日、来年1月24日までが正式な提出期限となるが、現実は10月下旬~12月上旬に提出している人が大半だろう。

 仮に従業員1000人の会社で全員が12月24日に提出し、それから確認、間違いの修正、納税額の確定、給与システムに入力、振込手続きをしていたら、給与は正しく振り込みできないことが想像される。社員数が多いほど管理部門の作業が増えるため早めの提出が求められる。年賀状は12月25日までに……と似ていて、多くの人が25日までに投函していれば、少し遅れて投函しても元旦に届くことはある。

 ご自身の業務が多忙で、一身上の都合で、単にズボラで、会社が定めた提出期限を過ぎたらどうするか? 少人数の遅延であれば期限を過ぎてもリカバリーは可能と思われるので、1日でも早く担当の人に頭を下げて受け取ってもらおう。優先順位は「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 ……」と「令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書」。この2枚がないと納税額が確定しない。「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は来年の給与から源泉徴収する額を決めるための申告書なので、12月の給料日を過ぎても大丈夫と考えられるが、また頭を下げに行くのも辛いし、誠意が感じられないので3枚セットにして提出したい。もちろん「本当のタイムリミットはずっと先でしょ」などと、口が裂けても言ってはいけない。

 確定申告をすればよい、と安易に先送りをしないこと。初めて確定申告をする人は、その方法を調べる時間で年末調整は書ける。サラリーマン時代の筆者は「年末調整ってなに?」「面倒くさい」と思っていた。起業して確定申告をしてみると「年末調整ははるかに楽だった」と実感している。

 年末調整は、書く側より、数十人~数千人分の申告書を受け取って確認・修正する側の負担が大きい。今年は10月1日からインボイス制度が始まり、小規模の会社の管理部門はパニックになりそうな予感がある。例年よりイライラしている可能性があるので、年末調整の提出は遅れないようにしていただきたい。

 そもそも年末調整は本人の税金を減らすための作業で、管理部門の人や会社には何の得もない。「早く出して」と督促されても感謝の気持ちを持っていただきたい。当然、遅れた場合も「申し訳ありません」と頭を下げて受け取ってもらおう。管理部門の人の心の声を代弁しよう――「年末調整は誰のため? あんただよ」。

3枚の申告書の記入例まとめ

 年末調整の書き方についての記事を4回にわたり掲載し、少しでも(手抜きして)楽に記入できるよう手順を説明するとともに記入例を紹介した。年に一度で忘れがちなうえ、徐々に複雑となり“不毛”としか思えない作業だが、国が決めたルールなので、マイナンバーを利用した自動化が行われるまではサラリーマンの義務だと思うしかない。

 第1回の記事で急いでいる読者のため3枚の記入例を掲載しているが、最後にもう一度掲載しておこう。記入作業の際の参考にしていただきたい。INTERNET Watch読者の健闘を祈る。

※記入例の画像はクリック/タップで拡大。さらにPCで閲覧している場合は、拡大画像の左上にある「+」アイコンをクリックすると、より高解像度な元画像を表示できます。

「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の記入例
「令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入例 1
「令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書」の記入例 2
「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記入例

最後に

 最近の突っ込みどころ満載なホットな税金の話題は、インボイス制度と所得税減税だろう。サラリーマンはもちろん、日本中の企業、個人事業主に大きな影響があるインボイス制度については『インボイス制度で変わる サラリーマンの経費精算や取引先との関係(第2回:サラリーマン編)』も参照いただきたい。

 サラリーマンの年末調整は3年前から年収や所得を記入することになり、記入に時間を要する人が増えた。ほんの一部の高額所得者から税金を取るために、日本中のサラリーマンが無駄な時間を浪費することになった。この財務省・国税庁の第1弾の戦略を、国民は不満を感じつつ受け入れ、今年、4回目の年末調整が進行中だ。

 国民に無駄な時間の浪費を強いる第2弾がインボイス制度だ。増税で狙い撃ちされるのは、所得150万円程度の貧乏フリーランスなどの免税事業者。目標とする税収は消費税の約1%となる2480億円だが、当面は500億円程度にとどまりそうだ。インボイス制度の影響で企業や個人事業主が負担する事務量の増加の試算は、人件費に換算すると年間4兆円と言われている。税収も国民が負担する人件費も試算の域だが、0.05~0.25兆円の税収のために4兆円のただ働きを国民に強いるのがインボイス制度だ。その不満・負担を抱えつつ国民が受け入れると、次の一手が用意されている。

 国民に無駄な時間の浪費を強いる第3弾を予測してみた(真面目に読まないで欲しい)。筆者の妄想は「買い物マイナンバー義務付け制度」だ。コンビニやスーパーで買い物をする際、マイナンバーカード、免許証などで顔認証による本人確認をして誰がいつお金を払ったかを把握する。鉄道の改札でもマイナンバー等で本人確認、誰がいつどこまで利用したかを把握する制度だ。

 税務調査で「あなたこの日はここで買い物をして、ここに移動しているから、この領収書は他人から受け取ったものですよね」と追及し、税収を増やすシステムとなる。レジは大渋滞し、コンビニやスーパーで入場制限が発生する。改札にも長い列ができ、駅の乗り換えは30分以上かかるようになり、国民は疲弊する。インボイス制度と同様、国民の無駄な時間の浪費に対し、得られる増税額は国民負担の10分の1~100分の1しかない。「国民が疲弊しようが、1円でも税収が増えれば問題なし」「政治家は世の中の実務は知らないし、税の知識はないから第4弾も税制改正を通すぞ」という財務省・国税庁の戦略が進みつつある。

 「国民ただ働き」の第2弾となるインボイス制度は始まったばかりだ。

 前述のインボイス制度についての記事で掲載したグラフを見ていただきたい。財務省の「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」で公開しているもので、1975年(昭和50年)から2023年(令和5年)までの税収(赤線:実績、点線:予算)、歳出(青線:実績、点線:予算)、国債の発行額(棒グラフ)を表している。

財務省「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」グラフ

 1990年頃、税収は60兆円を超え、税収と歳出の差(赤線と青線の差)は縮まるが、バブル崩壊によりその差は大きく開き、新型コロナで歳出(青線)は大きく跳ね上がった。

 1990年の税収が60.1兆円、約30年を経てここ数年は過去最高の税収となっている。「過去最高、ニッポン最高、めでたいから所得税を減税しよう」ということで所得税減税の話題がニュースなどで報じられている。別の意味で“めでたい”話に聞こえる。

 家計に例えると1990年、30歳の年収が601万円。それから年収は下がり、2022年、引退(廃業・定年)間近の62歳で年収が684万円となり、過去最高を祝って大盤振る舞いをしよう、といった感じだ。年収は過去最高となったが、支出は1400万円。累積の借金は1億円を超えている。

 実に“めでたい”父親だ。

 10月末時点で所得税減税の詳細はまだ確定していないが、疑問の多い政策だと感じている。所得税で減税するけど、所得税を納税していない子ども達の人数も含めた定額(所得税3万円、住民税1万円)を、来年の6月から夏頃に減税するらしい。「それって、人数分を配るならコロナ禍の10万円特別定額給付と同じく給付でよくね?」と思った人は多いだろう。

 大家族になると扶養控除の額が増え、納税額が減る。大家族×4万円分が年間の所得税を超える人の減税はどうなる? これに関してはこれから検討するらしい。「やっぱ、定額給付でよくね?」。

 個人事業主は2024年の1~12月の業績を2025年の2~3月に確定申告して所得税を納税する。2025年、再来年の春まで減税は受けられない? 「やっぱ、定額給付でよくね?」。

 次から次へと疑問が浮かぶ所得税減税だ。筆者の推測は

  • コロナ禍の特別定額給付金は10万円。今回は4万円で給付金ではインパクトが弱い
  • 所得税減税は久しく実施していないので、インパクトがあるし歴史に名を残せる
  • 過去最高の所得税の税収を理由にすれば筋が通る
  • 給付金が早く還元できるけど、「分かりやすく速やかに」と言い切れば国民は騙せる
  • 長崎・高知の補欠選挙直前に公表すれば2議席キープは確実
  • 減税と言えば国民は喜び、内閣支持率は爆上がり

 このようなロジックでこじつけたのが所得税減税だと思われる。補欠選挙は1議席を失い、直後の内閣支持率は日経新聞、朝日新聞、産経新聞、共同通信、読売新聞などで発足後最低となった。

 街頭インタビューやアンケートでも、減税を支持しないという人は多く、国の借金・少子化対策に使うべきという回答が多かった。もらえばうれしいが、所得税減税は正しい手法ではないと思われる。

 国民に還元するなら給付だろう。コロナ禍の10万円特別定額給付金は、マイナンバーカードの暗証番号を忘れて役所に住民が殺到したり、役所でマイナンバーカード情報と住民台帳を手作業で照らし合わせる作業に追われたりとトラブルが発生した。

 その後、多額の税金をマイナポイントでばら撒いて、銀行口座との紐付けを行った。その効果を検証する絶好のチャンスだ。その気になれば給付決定の翌日には4万円が振り込まれるかもしれない。そうなれば日本中がDX化を実感するし、マイナンバーカードの評価も少し上がることが期待できる。

 減税か給付か、結論を待ちたい。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。