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東日本大震災から時代が変わり、スマホやSSDの復旧依頼が増える―令和6年能登半島地震データ復旧支援レポート

富山銀行本店ビルで、能登半島地震により被災したPCなどのデータ復旧支援が行われました

 2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、デジタルデータにも深刻な損害を与えています。

 3月5日~7日に、富山銀行本店ビルにて、石川県と富山県の自治体や企業、個人事業主を対象にした無償のデータ復旧支援事業が行われました。被災によって損傷したPCや外付けドライブなどから、デジタルデータを救い出すのが狙いです。

 主催は、データ復旧専門会社のデジタルデータソリューション株式会社で、共催の株式会社富山銀行が本店ビルのフロアを提供して会場としていました。

落下や浸水、火災によりデータがアクセス不能に

 大規模な震災被害では、デジタル機器のデータ復旧依頼は発生から1カ月以後、インフラの復旧や衣食住の確保ができた頃から問い合わせが増える傾向があります。今回の取り組みも、震災からの復旧状況などを勘案して日取りを決めたといいます。

 3月5日、会場には初期診断を受けるために被災したデジタル機器を持ち込む依頼者の姿が見えました。

 石川県鹿島郡で農業を営む男性は、震災時にノートPCの上に物が落下し、内蔵するHDDが損傷したことで経理に関するデータが読み込めなくなったといいます。震災時にPC本体が机上から落下して起動できなくなり、仕事で使う図面データが取り出せなくなって難儀している同県七尾市の建設会社のPCも持ち込まれました。

持ち込みと初期相談の様子

 同県珠洲市でカメラマンとして活動している松田咲香さんも深刻なダメージを受けた一人です。津波により自宅兼事務所が浸水し、仕事のデータを保存している5台の外付けHDDが海水に浸かってしまいました。

依頼者と報道陣に囲まれながら、外付けドライブの状態を調査する
地震と津波に被災した松田さんの自宅兼事務所(松田咲香さん提供)

 いずれも起動できなくなり、今回の取り組みを知って申し込んだそうです。松田さんは診断結果を待つ不安な状況ながら、「こういうサービスがあるということはデータを大事にしている人の希望になると思います」と多くの報道陣の前で話していました。

 富山銀行の中田勝久執行役員も「被災してデータにアクセスできなくなっても復旧の可能性があることを多くの方に知ってもらいたいと思っています。今回の取り組みがそのきっかけになったら嬉しいですね」と語り、取り組みを見守っていました。

電子機器が水没したら乾かすのは厳禁!

 震災はデジタルデータの貯蔵庫も破壊します。落下や建物の倒壊によってPCや外付けドライブが破損するだけでなく、津波に呑まれて海水や汚泥まみれになったり、火災によって深刻な焼損を受けたりすることもあります。

 東日本大震災以来、災害関連の復旧相談を約3800件受けてきたデジタルデータソリューションによると、地震によるデジタル機器の被害で最も多いのは、機器の転倒や落下によって電源が入らなくなるトラブルです。次いで、停電によって電力供給が一瞬で途切れる「瞬断」や、過電流によりショートを起こしての故障、津波に呑まれて機器ごと泥まみれになるケースも頻発します。

 そうした事態に直面したときはどう対応すべきか。同社エンジニアの薄井雅信さんは「できるかぎり現状を維持したうえで、専門会社に相談していただくのが安全だと思います」と言います。

会場に持ち込んだクリーンルームで確認作業をする薄井さん

 たとえば、起動しないからといって何度も電源を入れ直すと、機器に大きな負荷が何度もかかり、故障の症状を悪化させたり別の障害を併発させたりする可能性が高まります。また、通電した際に異音がするならすぐに電源を落とすのが得策です。ストレージにHDDを使っている場合は、落下などの衝撃によって磁気ヘッドが変形している可能性があり、通電して回転するたびにディスクを傷つけるリスクが上がります。

 水没して起動できなくなったり泥まみれになったりした場合は、乾かすのも厳禁です。「内部に入り込んだ不純物が乾燥してディスクに固着してしまったり、機器の分解が困難になったりと、復旧の難易度が上がってしまいます」(薄井さん)とのことで、水没した場合は固く絞った濡れタオルに包んだり、泥まみれの場合は洗わずに状態を維持したりして、なるべく早く専門サービスに相談するのが良いでしょう。

水没した外付けドライブ類は固く絞った濡れタオルにくるまれていた

スマホとSSDのデータ復旧依頼が増えている

 東日本大震災から13年が経過しましたが、データ復旧の依頼内容は、2011年から大きく変化しているそうです。

 同社の代表取締役である熊谷聖司さんは「個人の方も法人の方も、スマートフォンのご依頼はとても増えています」と言います。法人で使うなら、常時クラウドに同期してチームで共有というのがひとつの理想かもしれませんが、実際はさまざまな事情から難しく、各端末に重要なデータが残されたまま取り出せなくて困るケースが後を絶たないようです。

 PCやデータサーバーのストレージとしても「HDDは1台あたりの容量が桁違いに増えていて、ドライブ全体を復旧する難易度はどんどん上がっていますね。また、SSDの割合も増えています」(同氏)とのこと。

デジタルデータソリューション代表取締役の熊谷聖司さん

 薄井さんも現在HDDとSSDの割合は「おおよそ8:2から7:3くらいです」と話していました。加えて、BitLockerやFileVaultなどの暗号化技術が標準で設定されている機器も増えており、プロであっても一筋縄ではいかないケースが増えているそうです。

 それでも、防災の基本は当時から不変です。同社は、次の3点を推奨しています。

  1. 普段から3つ以上のバックアップをとる体制を整えておくこと、
  2. 台風・豪雨災害時には、水没を防ぐため電子機器を窓から離れた高い場所に移動すること
  3. 地震、台風、豪雨災害時には、停電によるデータ消失を防ぐため電子機器の電源を落としてコンセントから外すこと

 災害はいつ発生するか分かりません。日頃から備えを意識しておきましょう。

同社が配布する「データの防災 ガイドブック」より